概要・あらすじ
作者が膨大な資料を基に、三葉虫の生態を妄想したことによって生まれた「珠玉の十篇」。約三億年前に滅んだはずの三葉虫が、生きて現代日本に出現。しかし、一大センセーションは起きる気配もなく、それどころか三葉虫は虐待されたり、料理されたり、プロレスの相手にされたりと、その価値を過小評価されてばかりの目に会ってしまう。
登場人物・キャラクター
三葉虫 (さんようちゅう)
全10エピソード全てに登場。草履形のエビのような生物。約2億5千万年前、古生代・ペルム紀に滅んだといわれているが、作品中にはその生き残りが、様々なシチュエーションで登場する。学会やメディアで発表すれば、一大センセーションを巻き起こすこと間違いなしの超貴重な生物であるが、作品中の三葉虫はどれも悲惨な末路をたどる。
前島 (まえしま)
ボーイッシュなショートヘア―が特徴の小学生の少女。おねだりしていた子猫が、遂に家に来るので全速力で帰宅する。が、そこにいたのはペット用のカゴの中でうごめく三葉虫だった。疑問を感じつつも、弟と共に恐る恐る世話をしてみるが、やることが全て裏目に出てしまう。
エツコ
ツインテールが特徴の幼女。一人で留守番中、家の中を這いずり回る三葉虫を発見する。新しいオモチャを手に入れたとばかりに三葉虫で遊び始めるが、手加減を知らない子供なため、その様は動物虐待にしか見えないのだった。
山口 (やまぐち)
「その③ グッちゃんの場合」に登場。全エピソード中でも珍しく三葉虫の価値を理解している田舎の少年。夏休みのある日、友人のカッパが虫相撲に三葉虫で参戦しているのを見て、何とかそれを手に入れられないかと考える。音羽に密かに思いを寄せている。
サンちゃん
「その④ サンちゃんの場合」の主人公の老男性。漁についての大げさな武勇伝ばかりを言うため、周りの人間からは「伝説の漁師」と呼ばれて馬鹿にされている。ある日、一人小舟で漁に出ると、釣り糸に超巨大な三葉虫が掛かる。タイトルの「サンちゃん」はアーネスト・ヘミングウェイの小説『老人と海』の主人公・サンチャゴが基になっていると思われる。 また、エピソード全体も同小説のパロディになっている。
包 丁次 (つつみ ちょうじ)
「その⑤ 丁次の場合」に登場。大衆食堂・「味包丁」の少年料理人。寝たきりの父親に代わり、借金返済と店の再興のため、食通杯料理コンクール優勝を狙う。コンクールのテーマ食材である三葉虫を市場に入れに行くが、ライバルの毒島に、質の良い三葉虫を全て買われてしまった後だった。
マーくん
「その⑥ マーくんの場合」に登場。団地に住む小学校低学年ぐらいの少年。連休のときに行った海で三葉虫を見つけ、自室でこっそり飼っていた。3億年前から生き残っているその生物を、「地球の守護神」だと信じている。
シーちゃん
「その⑥ マーくんの場合」に登場。マーくんと同じ団地に住む小学校高学年ぐらいの少女。全エピソード中でも珍しく三葉虫の価値を理解する、まともな判断力を持つキャラクター。そのためかマーくんのする突飛な発言や、その後遭遇するトンでもない事態などに頭を抱えている。
蛟 三葉 (みずち みつば)
「その⑦ 三葉の場合」に登場。三葉虫をモチーフにした魔法少女に変身する小学生。眼鏡とお下げ髪が特徴。魔法のステッキと呪文で三葉虫を操ることができる。困っている人や動物を助けるため、日夜秘密に活動しているが、その方法はエグいものばかり。
佐藤 (さとう)
「その⑧ 佐藤くんの場合」に登場する三葉虫怪人。島根県出身の男が、謎の組織にスカウトされ改造された姿。出られるはずもない同窓会の誘いを断り、また、近所の子供に「ダンゴ虫」と馬鹿にされている。人生を変えられると信じ、ひたすら下町の四畳半の部屋で出撃指令を待つ。
三中 洋 (みつなか ひろし)
「その⑨ 洋くんの場合」に登場。三葉虫の形をしたマスクをかぶった謎のレスラーの男。謎の格闘流派・三葉虫の使い手。キスで相手を失神させるテクニック、短い角材を尻で割るパワーなど、数々の理解不能な技を持つ。最強の男と戦うべく、プロレス団体「HTTP・WWW」道場に単独で乗り込んでくる。
宇宙人 (うちゅうじん)
「その⑩」に登場する宇宙人カップル。球状の身体、二本の角、触手状の長い腕が特徴。古生代の地球の浜辺にUFOで降り立ち、イチャイチャしていたところ、浜に打ち上げられて瀕死の状態の三葉虫と出会う。
名称不明
「その③ グッちゃんの場合」に登場。山口と同世代の少女。ボサボサ頭に半ズボン、タンクトップと、まるで少年のような身なり。友人達との虫相撲に、川で捕まえた角のある三葉虫で参加する。
音羽 (おとわ)
「その③ グッちゃんの場合」に登場。都会出身で清楚な雰囲気を漂わせる少女。山口から密かに思いを寄せられている。山口の通う学校に、一学期に転校してきたばかりだが、父親の仕事の都合でまた転校することに。
大鮫 (おおざめ)
「その④ サンちゃんの場合」に登場する超巨大生物。サンちゃんはこの生物を大鮫と呼ぶが、姿はどう見ても古生代・カンブリア紀に実在したアノマロカリス。奇妙なエビのような姿、頭部の大きな二本の触手が特徴。サンちゃんが釣って小舟の横に縛り付けておいた超巨大三葉虫に噛り付いているところを見つかり、戦いになる。
毒島 中 (ぶすじま あたる)
「その⑤ 丁次の場合」に登場。痩せ形で、長い白髪、黒いコックコートが特徴の男。「料理の死に神」の異名を持つ料理人で、包丁次のライバル。美味い料理のためなら手段を選ばず、毒さえも素材として使うため、彼の料理を食べた者は全員死ぬ。
田中 (たなか)
「その⑦ 三葉の場合」に登場。蛟三葉のクラスメイトの少年。ある夜、魔法少女が猫と女性を助けている現場を目撃する。彼女とクラスメイトの三葉に共通点を発見し、二人が同一人物ではないかと疑う。