概要・あらすじ
「この町に住むんには幸せになる覚悟がいる」小学生の時、加瀬ひかりは教師にそう言われた。ひかりの住む町は広島。広島は特別な町。原爆が落ちたから。でも、もっと特別なのは、それにも関わらず、皆で手を取り合って復興したこと。広島に住むからには、幸せになる覚悟がいる。幸せというのは、誰かのために生きること。なぜなら、幸せは1人でなるものではないから。
その言葉をかみしめ、今日も生きていくひかり。そんなある日、安芸信用金庫に勤める彼女は、広島支店の渉外担当として事故で失明した男・山崎と出会う。視力を失って外に出ることを頑に拒む山崎だったが、独特の雰囲気と会話で、間合いに入っていくるひかりに次第に心を開き、新たな一歩を踏み出し始める。
そして、この後、ひかりはふたりの少年と出会う。ひとりは、県立船出高校に通う田所順平、16歳。母親を亡くし、父と祖母と暮らす合唱部員。もうひとりは、中学を卒業し、病院の清掃員として働く若山正太郎、16歳。彼は缶コーヒーのシール集めや、鉄くず拾い、入院患者の買い物代行などで小金を稼いでいる。
ひかり、順平、正太郎。3人は知り合いではなかった。だが、彼らが誰かのために生きようとしたとき、3人は出会うことになる。
登場人物・キャラクター
加瀬 ひかり (かせ ひかり)
安芸信用金庫・広島支店勤務の女性。27歳。渉外担当で外回りが仕事。営業成績は、本人の談によれば、何年もトップとのこと。日々、スクーターで顧客廻りをしている。廃棄された古道具や家具を拾って使う趣味がある。小学校6年生の時、両親を亡くし、現在は一軒屋でひとり暮らしをしている。物怖じしない性格で前向き。独特の言い回しと雰囲気で人の懐に入るのがうまい。 過去、小学校の先生に言われた言葉に感銘を受け、「幸せになるために、誰かのために生きる」人生を送っている。チチトス白牛乳が好きでよく飲んでいる。
田所 順平 (たどころ じゅんぺい)
県立船出高校2年生の男子。16歳。母親は亡くなっており、父と祖母との3人暮らし。毎日祖母の作った弁当を持って登校している。中学時代は陸上部だったが、高校では合唱部に入っている。個人競技で孤独を感じる陸上より、皆と人生を楽しみたくて、合唱部を選んだ。チチトス白牛乳が好き。
若山 正太郎 (わかやま しょうたろう)
広島中央病院で清掃などして働いている少年。16歳。中学を卒業してすぐに病院で働き始めた。缶コーヒーのシール集め、鉄くず拾い、入院患者の買い物代行などで、小金を稼いでいる。勤務時以外は、英語教材をイヤホンで聞いて、英文を発声している。手すきの時、よくチチトス白牛乳を飲んでいる。
山崎 (やまさき)
加瀬ひかりの顧客の男性。自転車便会社のスタッフだったが、居眠り運転の車にぶつけられて失明した。事故の補償金が3000万円入り、ひかりはそれを定期預金にすることを勧めるため、彼の部屋を訪問した。盲目となって部屋に引きこもっていたが、ひかりの独特の心遣いと思いやりに触れて次第に心を開き、外の世界へ踏み出すようになった。
大田 (おおた)
山崎が勤めていた自転車便会社の社長。失明した山崎のため、保険金の申請や日々の買い物などを親身になって引き受けていた男性。役場の福祉課に行って、障害者手帳を申請することを山崎に勧めたが、外出して行動を起こすことを渋ったため、あえてきつい言葉をかけて奮起させようとする。
田所順平の祖母 (たどころじゅんぺいのそぼ)
田所順平と同居している彼の祖母。毎日、凝った弁当を作って、順平に持たせている。新しいモノ好きで、凝り性のハイカラなおばあさん。
凜 (りん)
田所順平の高校の同級生。漫画家志望の長身で眼鏡をかけた少女。順平のことが気になるらしく、何かと話しかけてくる。順平によれば、「中の下の上の中」の可愛さ。実家は安芸信用金庫と取引があり、加瀬ひかりが集金にやってくる。その際、漫画のアイディアを彼女に相談して、その独特の発想に驚嘆した。
集団・組織
安芸信用金庫 (あきしんようきんこ)
加瀬ひかりが勤務する信用金庫。広島を拠点としている。「笑顔のとなりにいつも安芸信用金庫」がキャッチフレーズ。障害を負った山崎が保証金3000万円を預けている金融機関でもある。田所順平の同級生凜の実家とも取引がある。
県立船出高校
田所順平や凜が通う広島県の県立高校。男女共学。淳平は合唱部に所属している。
その他キーワード
チチトス白牛乳
加瀬ひかり、田所順平、若山正太郎が愛飲する白牛乳。
クレジット
- 原作