聖マッスル

聖マッスル

記憶をなくした主人公聖マッスルは、たくましい筋肉を持つ青年。自分を知っている者を探すため、荒廃した死の都市、権力者が圧政をしく恐怖の都市、繁栄する巨人王の都市、巨大鯨と闘う北の大地、自由のない奴隷鉱山といった世界を放浪する。原作は宮崎惇。復刻された単行本に掲載された、当時の編集者インタビューによると、『女犯坊』を見てふくしまの絵に惚れ込んで週刊少年マガジンに招いた。原作も、まずふくしまの描きたいシーンありきで、それを外さずにストーリーを組み立てるという独特のスタイルだった。

正式名称
聖マッスル
ふりがな
せんとまっする
原作者
宮崎 惇
作画
ジャンル
ダークファンタジー
 
バトル
関連商品
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概要・あらすじ

たくましい筋肉と高潔で不屈の精神を持つ青年聖マッスルは、ある日花畑で目覚めたが、自身の記憶を失っていることに気づく。彼は己を知る者を探して世界をさまよううちに、荒廃した死の都市、権力者が圧政をしく恐怖の都市、繁栄する巨人王の都市、巨大鯨と闘う北の大地、奴隷地獄の鉱山を訪れる。こうした土地で様々な人々と出会った聖マッスルは、ときには命を狙われ、ときには悪と闘い、そしてときには虐げられた人々を鼓舞しながら、人間としての生き方を模索する。

登場人物・キャラクター

聖マッスル (せんとまっする)

記憶喪失の状態で、花畑にて目覚めた筋骨たくましい全裸の青年。自分が何者かを探し求めて、文明の荒廃した世界を放浪する。当初は名無しの身だったが、巨人王との一騎打ちの際に人々から「聖なる筋肉、聖マッスル!」と讃えられ、以後はその名前で定着する。目覚めてから巨人王の国を去るまでは全裸であったが、北の魔神がいる北の海を訪れたときからは衣服を着るようになった。 格闘技の経験は無いがたくましい腕力を有しており、己の前に立ちはだかる敵を倒してきた。また、弱きを助け強きをくじく高潔で不屈の信念の持ち主でもあり、圧政に苦しむ人々を各地で解放してきた。その強き力と誇り高き人間性に巨人王も惚れ込んで自分の片腕にと見込んでいたが、聖マッスルは自分の正体を探すべく巨人王のもとを去る。

人間城の王 (にんげんじょうのおう)

「1の章 人間城」に登場。放浪する聖マッスルが人間城に迷い込んだ際、彼をもてなすと見せかけて自身の城の一部にしようと目論む。粘液まみれで醜く肥満した全裸の巨漢で、幼少時から愛というものを知らずに育った。学問にはげんで権力を得ても愛を得られなかったのは変わらずじまいで、ついには己の美を創造しようと、生きた人間を石化させた人間彫刻による人間城を築く。 最後の1パーツとして聖マッスルも人間彫刻にしようとするが聖マッスルが城の要である黄金像を破壊した際に、崩壊した城に埋もれて死んだ。

巨人王 (きょじんおう)

「3の章 巨人王」から登場し「5の章 奴隷地獄」では大軍を率いて聖マッスルを救出した。聖マッスルにも負けない筋肉隆々とした大男で、両サイドのもみあげを伸ばして弁髪のようにした独特の髪型をしている。荒廃した国を己の力で立て直した一代の英雄で黒の帝王の侵略に負けない、強い国造りを目指している。 国民たちからも熱狂的な支持を得ている、カリスマ的な存在である。己の覇業の片腕として聖マッスルを我がものにしようともした。正義感は強いが弱肉強食の信念も強く、反逆する者に対しては妹であろうと容赦しない。それが原因で聖マッスルと決闘することもあった。

巨人王の妹 (きょじんおうのいもうと)

「3の章 巨人王」に登場。巨人王の妹だが、思想の違いを理由に国外を追放された。その後、覆面姿に身をやつし、志を共にする軍勢を率いて兄に反逆するが、結果として黒の帝王の走狗と化して国を破壊と混乱に陥れてしまう。最後は巨人王に捕らえられるも「権力に押しつけられた死よりも、自由の死を選ぶ!!」と叫んで自ら槍に身を投じて自害してしまう。

黒の帝王 (くろのていおう)

「3の章 巨人王」「5の章 奴隷地獄」で名前だけ登場。2の章 命の泉でも手先である黒い犬が姿を見せていた。巨人王いわく「邪悪をもって世界制覇を策す大権力」であり、黒い犬を放って各地で破壊工作を企む。巨人王の妹もその信念を黒の帝王に利用されていた。また奴隷鉱山の長官らも、黒の帝王の配下であった。

少年 (しょうねん)

「3の章 巨人王」に登場。小さい子供ながらも、鉄球をなんなく放り投げられる腕力の持ち主。兄も優秀な戦士だったが、円形闘技場の闘技会で国一番の戦士との戦いに敗れて死す。少年は兄の敵討ちを巨人王に志願して戦いに挑むが、力の差は歴然としており、気を失ってしまう。そして彼を助けるべく、闘技会に乱入したのが聖マッスルであった。

国一番の戦士 (くにいちばんのせんし)

「3の章 巨人王」に登場。鉄球を素手で割ることもできる巨漢で、円形闘技場での闘技会で最後まで勝ち残った。強さを鼻にかける傲慢な人物で、ライバルの戦士である少年の兄も闘技会で残酷に殺める。その後、兄の仇討ちとして襲いかかる少年を返り討ちにするが、少年をかばう聖マッスルとの戦いでは逆にフルネルソンを極められて気を失う。

北の魔神 (きたのまじん)

『聖マッスル』に登場する巨大鯨。「4の章 北の魔神」に登場。9年前に病気で鯨の墓場に流れ着いた子鯨を15人の漁師に屠られてしまい、復讐の鬼と化す。子を食べられた怒りで14人の漁師を立て続けに殺め、残った老漁師コタンクルも一騎打ちで勝利して倒す。その後、コタンクルの仇討ちに燃える、その孫ポイヤウンペの代わりに決闘に臨んだ聖マッスルと戦う。 この戦いで、聖マッスルはコタンクルが急所へ打ち込んでいた銛を深々と刺し、ついに北の魔神を倒した。

コタンクル

「4の章 北の魔神」に登場。北の地で熊に襲われた聖マッスルを助ける。隻腕だが経験豊かな老漁師で、9年前に病気で鯨の墓場に流れ着いた北の魔神の子を屠った一人。復讐の鬼と化した北の魔神に一騎打ちを挑むが、戦いの最中に海に落ちて落命する。だが、その際に北の魔神へと突き刺した銛が、後に聖マッスルにとっての勝利の鍵となった。

ポイヤウンペ

「4の章 北の魔神」に登場。北の地で凍死寸前になった聖マッスルを助けるため、許嫁のペシカと共に全裸になって聖マッスルの体を温める。祖父コタンクルが北の魔神との戦いに敗れて死んだ後、敵討ちを志すが鯨の急所も分からない未熟な漁師のため、戦いを聖マッスルに託す。 聖マッスルが北の魔神を倒した後は、ペシカと共に北の地で生きることを選び、新たな地へ向かう聖マッスルを見送る。

奴隷鉱山の長官 (どれいこうざんのちょうかん)

「5の章 奴隷地獄」に登場。奴隷たちを使って鉱山を管理している。奴隷たちを牛馬以下の道具として扱う冷酷な老人で、人間らしく愛し合うそぶりを見せた者には男女問わず残虐な死罪を与える。奴隷たちを助けようとした聖マッスルを鎖で捕らえ、配下のイヤコヤと戦わせようとする。最後は聖マッスルの戦いに勇気をもらい、自由を求めて立ち上がった奴隷たちに追い詰められ、緑の湖に落ちて魚に食われて死ぬ。

イヤコヤ

「5の章 奴隷地獄」に登場。奴隷鉱山の長官の配下で、金属で強化された丸木槍を振るう大男。反逆する奴隷たちを殺すのが主な仕事。長官の命令で捕らわれた聖マッスルと戦う。素手の聖マッスルに対してイヤコヤは馬にまたがって丸木槍を振り回すという圧倒的に有利な状況下だったが、投げつけた杭を打ち返されて死んでしまう。

奴隷たち (どれいたち)

「5の章 奴隷地獄」に登場。奴隷鉱山の長官のもと、金を掘る道具として牛馬同然の扱いを受ける。奴隷たちは皆、額に円の中に×印の入った烙印を捺されており、愛し合うことは禁じられている。これに背いたムビヤンという青年は「クルミ割りの刑」としてイサコヤに頭をかち割られ、恋人のクノンは「緑の湖の刑」で魚に生きたまま食われた。 マニベという青年と恋人のセトナは「ぬいぐるみの刑」としてそれぞれ豚と羊の皮を被せられて馬に引きずられる。マニベとセトナは「ぬいぐるみの刑」では死なずに済んだが、長官の人質になることを拒んでセトナは自害する。彼女の意思を目の当たりにした奴隷たちは口々に「人間自由!」と叫んで奴隷鉱山の長官を追い詰めた。

巨人王の馬 (きょじんおうのうま)

『聖マッスル』に登場した馬。「5の章 奴隷地獄」に登場。巨人王いわく、元々は海を隔てた遠い島国の馬らしい。黒の帝王の拠点でもある奴隷鉱山を解放すべく駆けつけた巨人王が乗っていたが、聖マッスルを慕うかのように自らの意思で彼のもとに駆けつける。聖マッスルもまた、馬のことを「いつもこれに乗っていたような」おぼえがあるようだが、その関係は最後まで明かされず。 その後、自分の正体を探す旅に出るため、聖マッスルは巨人王のもとを去るが、馬は何度拒んでも聖マッスルから離れない。ついには聖マッスルが険しい山を馬をかついで進むことになる。

場所

人間城 (にんげんじょう)

人間城の王の居城で聖マッスルが足を踏み入れるまでは、人間城の王とその従者しか人がいなかった。生きた人間を秘薬で石化させた人間彫刻によって作られており、聖マッスルそっくりな黄金像を人間彫刻にすることで完成するはずだった。しかし、聖マッスルが城の要である黄金像を破壊したため、人間城は崩壊する。

巨人王の国 (きょじんおうの国)

巨人王が治める国で、治水工事もなされて作物も生い茂っている富んだ国。周辺諸国からは理想の国造りがなされていると評判である。国民は尚武の気質で闘技会の勝者は国第一の戦士として巨人王に認められる。その反面、王の意思にそぐわないものは容赦なく国外へと追放され、反逆者は死刑に処せられる一面を持つ。

緑の湖 (みどりのみずうみ)

奴隷鉱山のすぐ近くにある緑色の水をたたえた湖。湖には人食い魚が住んでおり、足を踏み入れた者は生死を問わず食い殺される。「緑の湖の刑」という死刑に使われており、湖底には何体もの奴隷たちの白骨死体が沈んでいる。

命の泉 (いのちのいずみ)

『聖マッスル』の「2章 命の泉」に登場した泉。飲むと体が頑健になり、150歳まで生きられると言い伝えられている。命の泉の権力者たちはこの泉の水を独占し、市民たちには死のマラソンを強いている。また、命の泉の権力者たちは周辺諸国に泉の水を高く売りつけ、その金で軍隊を増強して市民たちの上に君臨している。実際は、この地の人間たちが元々長寿の家系だっただけで、泉の水の効果はまやかしだった。

その他キーワード

命の泉の権力者 (いのちのいずみのけんりょくしゃ)

『聖マッスル』の登場人物たち。「2の章 命の泉」に登場。命の泉を独占し、老人と子供たちに死のマラソンを強いる一方、泉の水を諸国に高額で売って財をなす。権力者は3人組で、真ん中は最も豪華なローブに身を包んだ小男、その左右もローブに身を包んだ二人の男性だが、その正体はどれも醜く老いた老人。元々、遺伝的に長寿なことをいいことに長寿は命の泉のおかげだと見せかけて権力と財力を我がものにしていた。 聖マッスルが泉のポンプを破壊した際、都の崩壊に呑まれて死す。

死のマラソン (しのまらそん)

『聖マッスル』の「2章 命の泉」に登場したマラソンの風習。課せられるのは15歳になった少年少女と70歳以上の老人。少年少女たちにとっては成人の儀式だが、その死亡率は70%にも達する。全裸で走らされる上、最後尾から馬に乗った兵隊たちに鞭でせかされる。しかも、倒れた者は置き去りにされ、定刻までに都に入れなかったら脱落者として国外追放処分となる過酷な内容。 取り仕切っているのは命の泉の権力者で、マラソンを拒めば泉の水をもらえなくなるので、市民たちは逆らうことが出来ずにいた。

クレジット

原作

宮崎 惇

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