菌と鉄

菌と鉄

集英社「別冊マーガレット」ほかで活躍していた、作者・片山あやかの少年誌初連載作品。脳に寄生したキノコによって人類が菌類に支配され、あらゆる自由と思考を奪われた近未来が舞台。徹底した管理社会の中、一人だけ人間らしい感情を持つ少年兵士・ダンテは、ある少女との出会いから、政府への反逆を決意する。反乱組織「エーテル」に所属し、菌類による世界政府「アミガサ」と戦うダンテの姿を描いたSFサスペンス。片山あやかは、作中の異様な管理社会について、ジョージ・オーウェルの傑作ディストピア小説『1984』の影響を受けていることを公言している。また、キノコによる管理社会はあり得ないSF世界としながらも、支配する世界という設定は、現実にも通じるものとして描いているという。講談社「別冊少年マガジン」2021年4月号より連載。

正式名称
菌と鉄
ふりがな
きんとてつ
作者
ジャンル
終末・ディストピア
 
サスペンス
レーベル
講談社コミックス(講談社)
巻数
既刊6巻
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菌類の支配下、徹底管理されたディストピア

舞台は未来の地球。食物連鎖のトップにいるのは菌類である。全人類の脳に寄生しているアミガサダケは、神経系に菌糸を伸ばして人間の脳をコントロール。世界政府「アミガサ」を樹立し、徹底的な管理社会を実現した。感情や考える力を奪われた人類はアミガサに支配され、男女も隔絶されて生活している。ことの発端は、2023年のアミガサダケの世界的な大量発生。このアミガサダケは昆虫などに寄生する変異種であり、1か月で200種もの動植物が絶滅。生態系への脅威を提唱する学者もいたが、誰もまともに相手にしなかった。その後、動植物は激減しキノコだけが繁栄。食糧難に陥った人類はキノコを食べていたが、ある時期に大量に死滅。2100年頃には人口は3分の1ほどになっており、その頃に現れた武装集団「アミガサ」がやがて力を得て世界を支配するに至った。

世界政府「アミガサ」VS.反乱組織「エーテル」

「アミガサ」は広大なエリアを束ねるため、世界を五つのエリアに分け、本部の下に第1支部から第5支部を設置している。本部には「創(はじ)まりの5人」と呼ばれる特殊能力を持った幹部と、地球全土に菌糸を伸ばすアミガサダケを宿す「博士」がいる。これに対する反乱軍が、アミガサダケに寄生されながら自我を保っている人間たちの組織「エーテル」である。リーダーのグラントは総督として「アミガサ」に潜入しており、ずば抜けた身体能力と人間らしい感情を失っていない主人公、ダンテを「エーテル」に引き入れた。「エーテル」の標的は「アミガサ」本部。旧時代の軍事衛星「天空(エーテル)」で宇宙から本部を撃ち抜く「エーテル計画」を遂行しようとしている。

「エーテル」と「創まりの5人」による特殊能力バトル

「エーテル」の主要メンバーは、「メタルカプセル」という薬で特殊能力を得ている。脳のアミガサと金属を合成することで能力が得られ、金属の種類によって強化される能力も異なる。主人公のダンテは「アイアンカプセル」による鉄化の能力。リーダーのグラントは「ゴールドカプセル」で、分岐した未来を見ることができる。一方、「創まりの5人」たちも、地球全土を見通す能力の持ち主や、規格外の攻撃力と超装甲を誇る戦士といった最強の超人集団である。かなり特殊な設定の本作だが、基本は少年漫画であり、熱く胸躍る能力バトルも魅力の一つである。

登場人物・キャラクター

ダンテ

アミガサ政府が管理する「エリアD-18」で暮らす少年兵士。左の首筋に狼のような形をした痣を持つ。ずば抜けた身体能力を持つが、失読症で字が読めない。周囲と異なり、一人だけ「エリアD-18」の外の世界に興味を持ち、徹底した管理体制に疑問を持ちながら育つ。ある日、極秘任務で「エリアD-18」の外に出た際、反乱組織「エーテル」のメンバー、アオイと遭遇。話すうちに惹かれ合い、生きて再会することを約束する。その後、「エリアD-18」に潜伏していた「エーテル」のリーダー・グラントと接触。特大のアミガサダケに寄生されても自我を失わなかったことで「エーテル」に引き入れられる。「エーテル」の教官ギンから、薬品「アイアンカプセル」を受け取り体を鉄化する特殊能力を得る。

アオイ

食料や日用品を生産する、アミガサ政府の女性区に暮らす少女。余った食料を集めておいしいパンを作るのが得意。アミガサに抵抗する反乱組織「エーテル」のメンバーでもある。ある日、極秘任務で「エリアD-18」からやって来たダンテと出会って惹かれ合い、生きて再会することを約束する。

グラント

反乱組織「エーテル」のリーダーの男性。総督として「アミガサ」に潜入している。極秘任務で死ぬべきだったが生還したダンテを処置室に運び、特大のアミガサダケを寄生させる。それでも自我を失わなかったダンテに希望を見出し、「エーテル」に引き入れる。「ゴールドカプセル」という薬品の力で、分岐する未来を見る能力を持ち、組織を拡大させてきた。運動能力は極端に低い。腰にヘビのあざを持つ。

ラミ・バルガ

「エーテル」のスパイを狩る任務についていた「アミガサ」の兵士の男性。性格は軽くお調子者で、トラのあざを持つ。人工的に強化された両足を持ち、超スピードで動くことができる。ダンテとの戦いで死んだと思われていたが、細胞を繋(つな)げて蘇生(そせい)できる菌床を持っていて蘇(よみがえ)った。その後「エーテル」に興味を持ち、反乱軍をサポートする。負けたことが信じられなくて、ダンテと顔を合わせるたびにケンカをする。

書誌情報

菌と鉄 6巻 講談社〈講談社コミックス〉

第1巻

(2021-07-09発行、 978-4065235836)

第2巻

(2022-06-09発行、 978-4065281628)

第3巻

(2022-11-09発行、 978-4065296455)

第4巻

(2023-06-08発行、 978-4065318706)

第5巻

(2024-01-09発行、 978-4065341643)

第6巻

(2024-10-08発行、 978-4065370483)

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