地球の放課後

地球の放課後

「ファントム」と呼ばれる謎の存在によって人類が滅亡した後の日本を舞台に、4人の男女の生活を描いた作品。人類滅亡後という状況ではあるが、いわゆる極限サバイバルのようなジャンルではなく、どちらかといえば作品のタイトルにあるように、「放課後」を楽しんでいるかのようなほのぼのとした日常が描かれている。一方で、物語が進むにつれて、ファントムの正体や人類滅亡の真実に迫るSF作品としての一面も現れてくる。「チャンピオンRED」2009年9月号から2012年7月号まで連載された本編のほか、コミックス第6巻には「チャンピオンRED」2009年5月号に掲載されたプロトタイプの読み切り作品が掲載されている。

正式名称
地球の放課後
ふりがな
ちきゅうのほうかご
作者
ジャンル
終末・ディストピア
関連商品
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あらすじ

第1巻

ある時、世界各地にファントムと呼ばれる謎の存在が出現した。人類を飲み込み、消し去ってしまうファントムの襲撃により、わずか1年間で、地球上からはほとんどの人類が姿を消す事となった。それからさらに1年。日本では、川村正史早苗八重子杏南の四人が生き延びていた。彼らは、時々姿を見せるファントムにおびえ、未来への不安を抱きつつも、明るく精一杯の青春を謳歌していた。まるで永遠に続く学校の放課後のように静かになった地球で、野菜を育て、魚を釣り、四人だけの勝手気ままな日常生活を送るのだった。そして四人は、時になにもかもが正常だったかつての日々を懐かしみ、各々の大切な人に思いを馳せながら、まだ存在する事を信じて自分達以外の生存者を探し続ける。(AFTER1「地球の一日」。ほか、5エピソード収録)

第2巻

ある日、川村正史早苗八重子杏南を含めた四人それぞれがかつて暮らしていた家の場所を地図上に記すと、等間隔に並んでいるように見えるという事に気づく。これに何らかの法則があるとすれば、生き残った人間がいる地域がわかるはずと、四人はある程度地域を絞って捜索を開始するが、結局その周辺に人影を見つける事はできなかった。帰り道、そこから一番近い八重子が暮していた家に寄った四人は、その近辺の地面にたくさんの落書きを発見する。その中に、見覚えのあるマークを見つけた八重子は、高校で親しかった教師・平川に違いないと確信する。落書きのあった道路の先には、先ほどと同じマークが描かれた家と、手作りの菜園があったが、人の姿は見当たらなかった。正史は家の中で日記を発見するが、残念ながらその日記は2週間前で止まっていた。日記の字を見て、改めて平川が生存していた事を確信した八重子は、平川がまだどこかで生きている事を信じようとするが、最後の日記に書いてある一言を見て愕然とし、彼がもう存在しないであろう事を認め、生前の姿に思いを馳せる。(AFTER7「研究者」。ほか、5エピソード収録)

第3巻

7月17日、杏南は人知れず11歳になった。誰からも祝われる事のない誕生日を迎えた杏南は、複雑な面持ちで、いなくなった杏南の父親に思いを馳せる。時は遡り、杏南がまだ9歳だった頃、ファントムによって母親を失った杏南は、父親と二人で自宅に身を隠して暮らしていた。そんなある日、自宅が浸水の被害に遭った事をきっかけに二人は生活拠点を移す事を決め、残った人類を探そうと行動を開始。繁華街にさしかかった二人は、大きな交差点で炊き出しを行っている団体に遭遇し、そこで早苗と出会った。残された者同士が集まり、自然とできあがったというその集団で、杏南は父親と落ち着いたひと時を過ごす。しかしそれもつかの間、眠っていた杏南達の近くにファントムが現れ、付近は騒然とする。集団のリーダー的存在である眼帯の男と共に囮役を買って出た杏南の父親は、杏南を早苗に託してファントムの方へと向かっていき、戻って来る事はなかった。その後もたくさんの人々がファントムによって消されていく中で、早苗と杏南だけが命からがら逃げ延びる事に成功。両親を失った杏南は、その日以降、自分に誕生日が来る事はないと、永遠に9歳のままでいる事を心に誓ったのだった。(AFTER15「杏南の誕生日」。ほか、5エピソード収録)

第4巻

些細な事でケンカを始めた早苗八重子の様子を見た杏南は、川村正史に相談してみたものの、心配ないとろくに話も聞いてもらえなかった。正史はそのまま考え事に没頭してしまい、まったく取り合ってもらえないまま、部屋に戻った杏南は、寂しさや不安から涙しながら眠りにつく。するとその日、杏南は奇妙な夢を見る。その内容は、明らかに夢とわかるような不可思議なもので、ファントムに消されたはずの両親や、飼っていた猫のぼんきちが巨大化して登場。そのうえ、なぜか正史の妹・川村清美まで登場すると、ケンカ中の早苗と八重子を諭し、話を聞かない正史を叱るというタイムリーな内容だった。翌朝目を覚ました杏南が、四人で朝食を食べている最中に夢の話をすると、全員が同じ夢を見ていた事が発覚。四人とも、この不思議な現象に戸惑っていると、そこに、いなくなったはずのぼんきちが姿を現す。夢とぼんきちの存在をヒントに、考えを巡らせた正史は、ぼんきちが一度ファントムに消され、戻って来たのではないかと仮説を立てる。そしてそれを確認するために、四人は上野動物園へと向かう。(AFTER22「夢」、AFTER23「地球の動物園」。ほか、4エピソード収録)

第5巻

人気のない町中で、張り紙の簡単な漢字すら読めない杏南を見て、長期間勉強から離れている事に危機感を抱いた早苗は、八重子川村正史を呼んで青空教室を開催。それぞれの学年に合った勉強をしようと教科書や参考書も用意して、四人で久しぶりに机に向かおうと呼びかけた。しかし、話はなにかと脱線しがちで、なかなかまともに勉強する雰囲気にならなかったが、最終的に天才数学少年と呼ばれた正史が、数学について授業を行う事になった。すると、みんなイヤイヤながらも数学の問題をどんどん解いていく。杏南に至っては、暗算が得意である事が浮き彫りになると、さらにこの年齢では解けるはずのない問題を解き、年齢を超越した数学力を発揮。杏南は数に関してのみ、記憶力などの能力が異様に高い事が判明する。これにより正史は、自分達四人が優れた頭脳を持つという共通点を見い出し、四人がこの場に集まった事は偶然ではなく、選ばれた可能性があるのではないかと考え始める。そして、その理由になり得る共通点がほかにも存在するのではないかと、互いの事を知ろうとする。それにより、偶然と思い込んでいた渋谷での出会いすら、意図的なものだったのではないかと思い至り、話し合ううちに新たな事実に気づく事になる。(AFTER29「地球で勉強」、AFTER30「秘密の夜」。ほか、4エピソード収録)

第6巻

四人の共通点を知った川村正史は、過去の画像に残された眼帯の男について考察を巡らせる。そして以前、八重子がいっしょに行動していた集団を導いていた白髪の男性と、早苗杏南がいっしょに行動していた男性が、同一人物だった事が判明する。正史は仮に二人が同一人物であるとするならば、離れた場所に同時期に存在したという矛盾点から、時間を飛んだ可能性がある事を指摘する。その後、四人は、川村清美や眼帯の男が現れる夢の中で再び遭遇し、眼帯の男達から、これからなにかが始まる事を告げられる。その後、夢から覚めると杏南を筆頭に、八重子、早苗の順にファントムに消されてしまう。さらにぼんきちまでもが消えてしまい、正史だけがその場にたった一人残される形となった。孤独にさいなまれる正史だったが、そんな彼の前に、眼帯の男が姿を現す。彼は自分の正体を明かすと、今までに起こったすべての事について、正史の考察の答え合わせを始めるのだった。こうしてすべての謎を解き明かした正史は、地球の未来を決める一つの決断を迫られる。(AFTER31「謎の男」、AFTER32「襲来」、AFTER33「地球でひとりきり」。ほか、2エピソード収録)

登場人物・キャラクター

川村 正史 (かわむら まさし)

人類の終末を生き延びた4人のうちの一人で、唯一の男性。年齢は17歳。外見上は特筆するところもない普通の青年だが、農作物の育て方や車の運転方法の他、一般人はまず知らないガソリンスタンドの緊急時における給油方法など、かなり幅広い知識を持つ。世界に4人しか人間がいないという極限状態でも、落ち着いた振る舞いを見せる余裕があり、他の3人にとって精神的支柱としてもかけがえのない存在になっている。 また八重子から「人類繁栄のため」と迫られ続けているにも関わらず、まったく手を出そうとしないという思春期の青年らしからぬ紳士ぶりも見せる。人類消滅前は杉並区に住んでいた。

早苗 (さなえ)

人類の終末を生き延びた4人のうちの一人で、17歳の女の子。肩にかからない程度のミディアムボブの髪型で、メガネをかけている。女性3人の中では一番胸が大きく、八重子や杏南にいつもネタにされ、からかわれている。性格はやや真面目だが、基本的には穏やかで呑気な部分もある。人がいなくなった世界で出会い、助けてくれた川村正史には恩義を感じており、また淡い恋心があることも自覚している。 人類消滅前は千葉県に住んでいた。

八重子 (やえこ)

人類の終末を生き延びた4人のうちの一人で、18歳の女の子。生き延びた中で一番の年長者。茶色がかった髪をリボンでポニーテールに結った髪型をしている。非常に明るく活発な性格でノリも良く、早苗のバストサイズや、川村正史と3人の少女との関係についての冗談をよく口にする。一方で「人類はきっと戻ってくる」という正史の希望的観測に単純に同意はせず、本気で人類が滅亡する可能性を考えるなど、冷静な視点も持っている。 正史に関しては年相応の異性への興味や、その人物に対する好意もあるが、あまり自覚はしていない。人類消滅前は多摩市に住んでいた。

杏南 (あんな)

人類の終末を生き延びた4人のうちの一人で、まだ10歳の小さな女の子。ミディアムショートの短い髪を高い位置で二つ結びにした髪型をしている。年齢相応の幼さを残しており、川村正史の存在を気にせず服を脱いだり、「おっぱい」などの下ネタに過敏な反応を示す無邪気な性格。また精神的な未熟さを考慮しても不可解で奇抜な行動や恰好を好み、その度に早苗からツッコまれるというムードメーカー的存在でもある。 人類消滅前は浅草に住んでいた。

ファントム

2年前、突如世界に出現し、次々と人を襲って消していった謎の存在。基本的な見た目は黒い靄が集まった流体状のものから人間の手や足が生えた形。しかし定型は存在せず、影か水たまりのように地面や壁に張り付いていることもあれば、体の一部が立方体状に盛り上がり、触手を生やしたりする。また、人の心を読み取り、その人物が強く想っている存在を模したりすることもある。 ファントムに襲われたものは生命体、無機物を問わず、CTスキャンのように輪切りにされて呑み込まれ、消されてしまう。言葉を発さず、意思の疎通も不可能だが、唯一破壊音には敏感で、大きな音を出すと注意を引くことができる。

川村 清美 (かわむら きよみ)

川村正史の妹。胸ほどまでの長さの黒髪ロングストレートが特徴。人類の終末によって消えてしまった。しかし、時折正史の幻覚や夢に現れては、「もうすぐ会える」と語りかける。兄妹仲は良く、消えてしまうまでは毎日兄妹で登校していた。

鳳翔女子学園の女の子 (ほうしょうじょしがくえんのおんなのこ)

まだ人類の終末を迎える前、川村正史が毎朝登校している際にすれ違っていた女の子。正史の初恋相手。明るい色のロングストレートの髪型をしている。毎朝顔を合わせるため、いつしか正史と会釈をするほどの関係になった。その後川村清美が風邪を引いたことをきっかけに初めて言葉を交わす。さらに人類の終末によって鳳翔女子学園の閉鎖が決まると、学校が終わった後に会う約束を取り付けるまでに至った。 しかし、その放課後ついに約束の場所に現れず、それ以来行方不明になってしまう。

早苗の祖母 (さなえのそぼ)

早苗の祖母。交差点の中心に突如現れた早苗の家の中におり、自室に敷いた布団の中で体を起こしていた。部屋に入った早苗に対して「ちょっと見んうちにおおきくなった」と語りかけ、抱きついて泣きわめく早苗を優しく抱きしめる。家の消滅と共にその存在も消えてしまう。

平川 (ひらかわ)

まだ人類の終末を迎える前、八重子が通う高校で教師を務めていた男性。癖のあるボサボサの髪にウェリントン型のメガネをかけている。本当は大学で研究を続けたかったが、教授の強い勧めで臨時教員として働いていた。とにかく研究が第一の変わった人物で、書物に目を通しながら歩き、廊下に並べられたバケツに気づかず転倒したり、また転倒したその場で長時間読書をしたりする。 川村正史らが日課でもある生存者探しをしていた際、多摩市周辺でその痕跡を発見。平川のものと思われる日記も見つかったが、「ファントムに飛び込むと向こうに行ける?」という内容を最後に、2週間前の日付で途切れていた。

アップル

生存者探しをしていた川村正史が1年前に見つけた犬。頭部にひどいケガを負っており、手当をするついでに餌を与えたところ、ビスケットは食べないのにリンゴを食べたので、正史にこう名付けられる。手当の翌日にはどこかへ消えてしまったが、その後思わぬ形で再会を果たすことになる。

ビスケット

まさし農園の様子を見に行った川村正史が見つけた野良犬。かつて助けたアップルにそっくりだが、アップルと違ってビスケットを食べたため、正史にこう名付けられる。弱々しい鳴き声を頼りに発見した時には、高所から落ちたらしく、足にケガをしていた。犬の図鑑・「わんわん大百科」を見ても犬種が判明しなかったが、のちにニホンオオカミであり、またアップルの子供であることが分かった。

田中 (たなか)

川村正史が保護したビスケットを見るや襲いかかってきたニホンオオカミ。直後、アップルが制止するように正史の前に立ちふさがったのを見て、襲うのをやめる。このことからビスケットの母親であり、アップルの伴侶であることが分かった。最初に登場した時は特に名前はなかったが、のちに再登場した際、杏南の直感で名付けられる。

具合の悪いファントム (ぐあいのわるいふぁんとむ)

川村正史、八重子、杏南が遭遇したファントムの一種。杏南は以前にも似たような挙動を示すファントムと遭遇しており、おかしな様子からこう命名した。見た目は通常のファントムと同じだが、人を襲うことはせずにプルプルと震え、丸い形状に変化して目的もなく空を飛び、果ては丸く膨張したのち周囲の空間、物質すべてを巻き込んで消滅する。

杏南の父親 (あんなのちちおや)

杏南の父親。人類の終末を迎えた後、杏南と共に短い時間ながら生き延びた。杏南には、すでにファントムによって消された母親のことを「買い物に行っているだけ」と言い聞かせた。家を捨てて、眼帯の男をリーダーとする避難民の集まりに合流。この時、早苗とも会っている。のちに避難中にファントムに遭遇した際、杏南を早苗に託してファントムの注意を引き、そのまま行方不明となる。

眼帯の男 (がんたいのおとこ)

人類の終末を迎えた後、早苗や杏南を含む数少ない生き残りを集め、組織していた壮年の男性。肩ほどの長さの白髪をボブカットにした髪型と右目につけた眼帯が特徴。リーダーシップに富み、ファントムの行動にも詳しく頼りがいのある男性だった。渋谷を目指す途中でファントムに遭遇。他の避難民を逃がすため囮になって、そのまま行方不明となる。

山本 直道 (やまもと なおみち)

人類の終末を迎えた際、杉並区に災害派遣された自衛隊の隊員の一人。所属・階級は災害派遣部隊陸士長。短い髪を逆立てた髪型と太い眉毛が特徴。生き残りの人々を先導し、精肉店やアイスクリーム屋にソーラーパネルを設置して電力維持を行うなど、さまざまな活動を行った。また、その行動記録をデジタルビデオカメラで撮影して残していた。 ビデオに残した発言は形式ばった固い口調だが、それを冷やかされるなど周囲の人々からは愛されていた様子。しかし、避難開始からわずか2ヵ月あまりで山本直道を除くすべての民間人がファントムによって消失。失意の念と希望を託す独白を残したビデオメッセージを最後に消息を絶つ。

ぼんきち

人類の終末を迎える前に杏南が飼っていた猫。白黒色で、ハチワレに富士額の模様が特徴。杏南の夢に登場して巨大化し、女心の分からない川村正史を懲らしめる。しかし、実は同じ内容の夢を正史や早苗、八重子も見ており、夢から覚めた後、一同は現実世界でもぼんきちと再会することとなる。この時、もともとぼんきちのことを知らないはずの正史らが共通の夢を見たことが明らかとなり、人類の終末の謎を解明するきっかけとなる。

ジュスト・コティヤール (じゅすとこてぃやーる)

過去に「コティヤール予想」という理論を発表したフランスの物理学者。当人は登場しないが、彼の提唱した理論が物語の鍵を握っている。コティヤールの理論は学会から異端視され、失意に沈んだ彼は日本に移り住んで家庭を持った。その子孫が鳳翔女子学園の女の子である。

場所

まさし農園 (まさしのうえん)

川村正史らが住んでいる杉並区の家の近くに作った農園。畑を開墾し、トマト、キュウリ、レタスなどが植えてある他、鶏小屋で鶏の飼育もしており、卵も収穫できる。敷地には手書きの「まさし農園」という看板が立てられている。

まさし水田 (まさしすいでん)

川村正史らが住んでいる杉並区の家の近くにある水田。小学校の敷地を利用して米を植えている。描写から小学校の名前は「~之内小学校」であることが分かる。

鳳翔女子学園 (ほうしょうじょしがくえん)

杉並区にある女子校。人類の終末を迎える前、毎朝川村正史がすれ違っていた鳳翔女子学園の女の子が通っていた。川村清美いわく「お金持ちのお嬢様ばかりが集まる学校」。制服は白色がかった明るい色のブレザータイプで、襟元に大きなリボンを付ける。全校閉鎖が決まっていた10月20日にファントムの襲撃を受け、数名の生徒が消えてしまう。

早苗の家 (さなえのいえ)

都市部の交差点内に突如として現れた一軒家。早苗はそれを見て、以前に住んでいた家の建て替える前の姿であると語る。中に入るとまだ湯気が立っているカレーがあり、テレビはつけっぱなしで、10年前の日付の新聞があった。また家の中には7年前に死んだはずの早苗の祖母がおり、川村正史は幼い頃の早苗とも出会う。短い時間滞在することができたが、間もなく波のような奔流となって、早苗の祖母を含め、空へと消えてしまった。

タチバナヤ

川村正史らの住む杉並区の精肉店。正史の住居から自転車で行ける距離にある。食肉の細胞を壊さずに冷凍する業務用冷凍庫を備えている。人類の終末を迎えた後も山本直道ら避難民によってソーラーパネルで電力が維持され、新鮮な肉を食べることができる。人類の終末を迎えてから肉を食べる機会は限られているため、極めて貴重な場所である。 特に杏南にとっては「タチバナヤ」がごちそうの代名詞となっている。

アイス天国 (あいすてんごく)

山本直道ら避難民がソーラーパネルによる電力維持を行った店のひとつ。正式店舗名は「ICECREAM 21」だが、有志らによって「アイス天国」の垂れ幕がかけられた。山本が残したビデオによってその存在が明らかになり、川村正史らが訪れる。ちなみに山本の好物のアイスはバニラ。

ZAKKA'S

都内にある大きな雑貨屋。豊富な品揃えで、日用品から玩具、化粧品までなんでも揃う。店舗入り口の上部にソーラー電力で時を刻み続けるからくり時計がある。杏南は「たくさんの人形が出てきて踊る」、早苗は「男の子と女の子の人形が出てきてキスをする」、八重子は「イルカが動くだけ」と言って、からくりの実態が判然としない。 議論は白熱し、4人はそのからくりを見届けるため、半日間、店の前で暇を潰した。

大原ホームセンター (おおはらほーむせんたー)

都内にあるホームセンターのひとつ。まだ川村正史が早苗ら女性陣と出会う少し前に、店舗ビルの屋上に大きな取水所を作った。だが、ポリタンクの揚げ降ろしが困難なため放置されていた。取水所にはバイオコードが沈められ浄化されているので、飲用可能なまでに水質が保たれている。夏の日差しで周辺のコンクリートやパイプが温められ、水温も上がっていたので、露天風呂として再利用されることになった。

イベント・出来事

人類の終末 (じんるいのしゅうまつ)

世界各国に突如ファントムが出現し、人類が消えていった事件に対し、テレビアナウンサーが使った表現。2年前に海外を皮切りにファントムが出現し、間もなく日本でも鹿児島県出水市、千葉県浦安市、東京都杉並区などを中心にその姿が目撃されるようになった。ファントムが出現してからは次々と人類が消えていき、わずか1年の間に、地球上のほとんどの人類が消えてしまった。

みんなが出会って1周年記念パーティー (みんながであっていっしゅうねんきねんぱーてぃー)

人類の終末を迎えた後、川村正史ら4人が渋谷で出会って1年経ったことを祝って催されたパーティー。ビルの屋上に上り、各々が仮装衣装を着て、花火を打ち上げながら楽しんだ。ほかにも「正史のハーレム1周年記念パーティー」「早苗姉ちゃんのおっぱいはでかいパーティー」などの別名案が出されたが却下された。準備された垂れ幕にはその名残が見える。

杏南の誕生日 (あんなのたんじょうび)

7月17日、杏南が11歳になったことを記念して行われたパーティー。まさし農園の隣の駐車場に簡易テントを建て、風船やぬいぐるみでデコレーションした会場で催された。誕生日は早苗が杏南の父親から聞いていたが、10歳の誕生日は、ちょうど杏南が父親とはぐれたばかりで祝う余裕がなかった。

その他キーワード

コティヤール予想 (こてぃやーるよそう)

フランスの物理学者であるジュスト・コティヤールが発表したとされる理論。内容は、人間が感じる「第六感」や「虫の知らせ」のようなものはれっきとした生体反応であり、これを人為的に解明、利用することで物理現象を超越して超遠距離間でも一切のタイムラグなしで通信することができる、というもの。まだ人類の終末を迎える前、川村正史が予想の第6段階が解かれて以来20年ぶりに第7段階を解き明かした。 このことは数学界で大きな話題となり、専門誌にも写真付きで掲載。平川と八重子はこの雑誌を見て、正史のことを間接的に知っていた。

ビデオカメラ

デジタルビデオカメラで、新宿の付近にある小山電機の店頭にあった。バッテリーを交換すると正常に作動した。川村正史への日頃の感謝を込めて、八重子らが早苗のセクシーショットを映すために使用した。元々は店頭デモ用に置いてあったもので、中にはまだ人類の終末を迎える前の人々を映した映像が残されていた。その後も記録用に何かと持ち歩かれている。

マサコインワンダーランド

川村正史が女装したまま出歩き、それを見た早苗に「まだ生存者がいる」と勘違いさせ、惑わせた罰として撮影された自主製作映画。正史が女装した姿で主演を務める。一応「不思議の国のアリス」をモチーフにしてはいるものの、ストーリーはあってないようなもの。適当に撮影した映像をつなぎ合わせて製作した結果、支離滅裂な内容になった。 正史いわく「白昼夢のような映画」。

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