あらすじ
ヘンリー(六世)との出会い
中世イングランドではヨーク家とランカスター家の両家が、王位争奪を繰り返していた。ヨーク家の三男であるリチャード・プランタジネット(三世)は、女性の胸と男女両方の性器を持つ両性具有として生まれたことから、母親のセシリー・プランタジネットに冷遇されていたが、父親のリチャード・プランタジネット(二世)からは、溺愛されていた。そんなリチャード(三世)は、父親のリチャード(二世)こそが王にふさわしいと考えていた。しかしリチャード(二世)は、ランカスター家のヘンリー(六世)との約束で、彼が亡くなるまでは王座を譲り、摂政の座に就いた。だが、今はその摂政職すら取り上げられてしまっていた。そんなある日、リチャード(三世)は小姓としてウォリック伯爵の家で暮らすことになる。そこにリチャード(二世)がやって来たことから、現状に強い不満を抱くリチャード(三世)は、ヘンリー(六世)が当主を務めるランカスター家に戦いを挑むよう進言する。これによって王に反旗を翻したヨーク軍とランカスター軍の戦いが始まるが、リチャード(三世)はまだ幼いことを理由に、この戦いに参加できずにいた。そして、ランカスター軍の襲撃を受けたリチャード(三世)はランカスター家の者に捕らえられてしまう。それでもなんとか逃げ出そうと牢を出たリチャード(三世)は、「ヘンリー」と名乗る羊飼いの若い男性と出会う。
リチャード・プランタジネット(二世)の死
ランカスター軍に勝利したヨーク軍は、現王のヘンリー(六世)を幽閉した。この勝利によって捕らえられていたリチャード・プランタジネット(三世)たちは解放されるが、ランカスター家の実権を握るマーガレットが逃げたことで戦いは終わらず、リチャード・プランタジネット(二世)は再び戦場へ向かうことになってしまう。リチャード(三世)は今回こそ同行したいと願い出るが、今度は母親のセシリー・プランタジネットに阻止され、ロンドン塔に閉じ込められてしまう。一方のリチャード(二世)は、マーガレットの攻撃に倒れ、辱めを受けたのちに殺害される。しかしこれを知らないリチャード(三世)は、リチャード(二世)に会うために、敵に占領された町を抜け出してヨークへ向かおうとしていた。そこでリチャード(三世)は、途中で出会ったランカスター兵を殺害し、その装備を奪ってランカスター軍のふりをすることを思いつく。そして、この目論みが成功し直後、またしても羊飼いのヘンリーに出会い、彼の優しい言葉に動揺する。それでもリチャード(三世)は、リチャード(二世)を優先してヨークにたどり着くが、そこで待っていたのは、さらし首にされたリチャード(二世)の姿だった。
ヨーク家の勝利
リチャード・プランタジネット(二世)の死に絶望したリチャード・プランタジネット(三世)は、戦場でヨーク軍の不利な戦況を覆すほどのすさまじい活躍を見せ、ランカスター軍との戦いは、ヨーク軍の勝利となる。玉座には長男であるエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)が就き、平和な日常が戻ったかのように思えた。それから数年後、成長したリチャード(三世)は、今後はヨーク家を影ながら支える存在として、この家を守っていこうと考えていた。女性好きのエドワード(ヨーク家四世)からは積極的に恋愛するように勧められ、子供の頃からいっしょに暮らしていたアン・ネヴィルともパーティで再会するが、リチャード(三世)は自らの身体を見せられない以上、恋愛などできるはずもないと悲観していた。そんなパーティの最中、「エリザベス・ウッドヴィル(母親)」と名乗る女性が突如現れ、先の戦でエドワード(ヨーク家四世)に取り上げられた領地を返して欲しいと頼み込んでくる。リチャード(三世)たちはあまりにも大胆なエリザベス(母親)の行動に驚くが、これをきっかけにエドワード(ヨーク家四世)はエリザベス(母親)と交流を持つようになり、すでに結婚を約束した女性がいるにもかかわらず、エリザベス(母親)に恋をしてしまう。
ヘンリー(六世)との再会
エリザベス・ウッドヴィル(母親)の目的は、先の戦でヨーク軍に殺された夫の敵を討つことだった。エリザベス(母親)はエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)に接近し、彼の妻になることでヨーク家を内側から支配しようと考えていたのだ。このことを知らないエドワード(ヨーク家四世)は、狩りに行くとウソをついては森で逢瀬(おうせ)を重ね、ますますエリザベス(母親)に夢中になる。そして偶然、二人の関係を知ってしまったリチャード・プランタジネット(三世)は、秘密を守る共犯者として毎回狩りに付き合わされ、森で過ごすことが増えていく。そんなある日、リチャード(三世)はエドワード(ヨーク家四世)から、現在ウォリック伯爵が進めているフランスのボーナ姫との縁談を破談にして、エリザベス(母親)と結婚しようと思っていることを打ち明けられる。エドワード(ヨーク家四世)は、エリザベス(母親)との関係が周囲に知られる前に結婚式を行い、神への誓いを済ませてしまえば、もう誰も口出しできなくなると考えていた。リチャード(三世)はこの申し出に呆(あき)れて反対するが、エドワード(ヨーク家四世)は聞く耳を持たず、そのままエリザベス(母親)と結婚式を挙げてしまうのだった。こうして取り残されたリチャード(三世)は一人狩りを続けるが、そこに羊飼いのヘンリー(ヘンリー(六世))がやって来る。
雨が止むまでは
リチャード・プランタジネット(三世)は、自分に会うために旅をしてきたという羊飼いのヘンリー(ヘンリー(六世))を無下にもできず、ひとまず雨が止むまでは屋敷でいっしょに過ごすことにする。こうして二人はお互いの素性を知らぬままに共に食事をしたり、おしゃべりをしたりして親交を深めていく。そんな中、リチャード(三世)は自分を友人と呼んで慕うヘンリー(六世)に徐々に心を許すようになる。一方その頃、ヘンリー(六世)の息子であるエドワード(ランカスター家七世)は、マーガレットの命令でヘンリー(六世)を探していた。その最中にエドワード(ランカスター家七世)は、村人たちから現在ヘンリー(六世)らしき男性が、「リチャード」という名前の人物を探して付近をうろついていると知らされる。そこでエドワード(ランカスター家七世)は、従者たちをうまくごまかして単身様子を見に行き、ようやくリチャード(三世)を発見した途端、リチャード(三世)は飛び出して行ってしまう。リチャード(三世)は、ヘンリー(六世)が何も言わずに出ていったとカンちがいし、慌てて探しに出ていくところだったのだ。
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)の結婚
エドワード(ランカスター家七世)は、リチャード・プランタジネット(三世)とヘンリー(六世)の仲睦(むつ)まじい様子を目にし、強い怒りを感じていた。エドワード(ランカスター家七世)とヘンリー(六世)は、親子ながらほとんどかかわりのない希薄な関係だった。しかしエドワード(ランカスター家七世)は、ヘンリー(六世)が自分を廃嫡しただけでなく、ひそかに自分が思いを寄せているリチャード(三世)と交際しているとカンちがいして、彼を許せなくなっていた。そこでエドワード(ランカスター家七世)は、先ほどの村人たちに、ヘンリー(六世)を殺して来いと命じるのだった。一方その頃フランスでは、ウォリック伯爵がフランス王に謁見し、王の義妹、ボーナ姫とエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)との婚姻の話を成立させていた。すぐにウォリック伯爵はイングランドに戻って婚姻を発表しようとするが、その前にエドワード(ヨーク家四世)が、エリザベス・ウッドヴィル(母親)とすでに結婚したことを発表してしまう。これに激怒したウォリック伯爵は、自分とエリザベス(母親)のどちらが大切なのかとエドワード(ヨーク家四世)にせまるが、エドワード(ヨーク家四世)はエリザベス(母親)であると即答。この日を境に、二人は険悪な関係になってしまう。
ミドラム城での暮らし
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)とエリザベス・ウッドヴィル(母親)が自分たちの許可なく結婚したことで、ウォリック伯爵とフランス王は激怒していた。しかし、フランス王はもともとランカスター家派であり、ボーナ姫をヨーク家に嫁がせることに乗り気ではなかった。そこでウォリック伯爵から報告を受けたフランス王は、今後自分とウォリック伯爵が協力して、エドワード(ヨーク家四世)を玉座から引きずり下ろすのはどうだろうかと提案するのだった。そんな中、先日エドワード(ランカスター家七世)に命令された村人たちが、ヘンリー(六世)を連れてリチャード・プランタジネット(三世)たちの城へやって来る。村人たちは結局ヘンリー(六世)を殺さず、殺すのは貴族の役目であると、城まで連れてきたのだ。これを聞いたリチャード(三世)は、ヘンリー(六世)が捕らえられた塔まで向かい、さっそく殺そうとするが、ジョージ・プランタジネットに止められてしまう。かろうじてヘンリー(六世)と扉越しに会話はしたものの、リチャード(三世)は、その声が羊飼いのヘンリーに似ているような気がして驚く。その直後、リチャード(三世)はエドワード(ヨーク家四世)の命令で、当面ウォリック伯爵の家であるミドラム城で過ごすことになる。そこでアン・ネヴィルとイザベル・ネヴィル姉妹と暮らすことになったリチャード(三世)は、趣味を通じてアンと親交を深めていく。
ウォリック伯爵の企み
リチャード・プランタジネット(三世)がミドラム城で暮らしている中、ウォリック伯爵はジョージ・プランタジネットに近づき、ジョージこそが王にふさわしいとそそのかしていた。ジョージはエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)とエリザベス・ウッドヴィル(母親)との結婚についても事前に聞かされておらず、エドワード(ヨーク家四世)は自分よりもリチャード(三世)を優遇しているのではないかと、疎外感と不満を抱いていた。ウォリック伯爵はこれに付け込み、まずはジョージとイザベル・ネヴィルを結婚させて関係を強め、その後リチャード(三世)とアン・ネヴィルも結婚させることで、ウッドヴィル家よりも優位に立とうと考えたのだ。これに乗せられたジョージは、さっそくイザベルと結婚するためにエドワード(ヨーク家四世)の許可を取りに行くが、アンは父親のウォリックのこの企(たくら)みに乗り気ではなかった。生真面目なアンは、リチャード(三世)に本気で惹(ひ)かれているからこそ、彼を利用するようなことはできないと考えていたのだ。そこでアンは自分は絶対にリチャード(三世)とは結婚しないと宣言する。しかし結婚しないという一言だけを、偶然リチャード(三世)に聞かれてしまう。この言葉にリチャード(三世)は深く傷つき、アンを避けるようになる。
エリザベス・ウッドヴィル(母親)の出産
フランスに到着したマーガレットとエドワード(ランカスター家七世)は、フランス王の紹介でウォリック伯爵と手を組むことにした。ウォリック伯爵はエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)と仲違(たが)いしたことから、ヘンリー(六世)を王に戻そうと考えており、そのためにマーガレットたちに会いに来たのだった。それでもウォリック伯爵を信用しきれないマーガレットは、アン・ネヴィルとエドワード(ランカスター家七世)を結婚させるという条件を取り付けるのだった。しかし、これはただの口約束でしかなく、ウォリック伯爵はランカスター家と組むのはあくまで最終手段であると考えていた。だがエドワード(ヨーク家四世)は、この関係を利用すれば、現在ミドラム城にいるリチャード・プランタジネット(三世)に会えるとの考えに至り、帰路につくウォリック伯爵についていくことにするのだった。一方その頃、ジョージ・プランタジネットは、エドワード(ヨーク家四世)にイザベル・ネヴィルとの結婚を許可してもらえず、腹を立てていた。エドワード(ヨーク家四世)はウォリック伯爵を警戒しており、結婚によって関係を強めさせてはならないと考えていたのだ。また時を同じく、エリザベス・ウッドヴィル(母親)はエドワード(ヨーク家四世)との第一子を出産するが、それは女児のエリザベス(娘)だった。世継ぎは生まれなかったものの、いずれ生まれるだろう男児の存在にジョージは焦る。
反乱
リチャード・プランタジネット(三世)は、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)やエリザベス・ウッドヴィル(母親)の弟であるアンソニーたちと共に、北方の小さな反乱を収める戦いに出た。しかしこれに乗じてジョージ・プランタジネットとイザベル・ネヴィルが許可なく結婚したという知らせを受ける。リチャード(三世)は、これを聞いてジョージとウォリック伯爵が、エドワード(ヨーク家四世)に反旗を翻す同盟を結ぶのではないかと不安になる。そこでエドワード(ヨーク家四世)にこの考えを伝え、一旦引き返すべきだと提案するものの、エドワード(ヨーク家四世)は耳を貸さず、そのまま進軍するのだった。しかしその夜、エドワード(ヨーク家四世)たちのテントはウォリック伯爵の手下に襲われ、エドワード(ヨーク家四世)は捕らえられてしまう。リチャード(三世)はとっさに女性に変装し、ウィリアム・ケイツビーに助けられたことで逃げ切り、アンソニーもエリザベス(母親)のもとに戻って状況を伝える。すると、その場にいたヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)は誰に恩を売り、誰に戦を仕掛けるかを考えた末に、リチャード(三世)につくことを決める。そして、まだ戻ってこないリチャード(三世)を探し始める。
エドワード・プランタジネット(ヨーク四世)奪還作戦
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)を捕らえたウォリック伯爵は、ミドラム城へ向かっていた。これを推測したリチャード・プランタジネット(三世)とウィリアム・ケイツビーはあとを追うが、その途中でエドワード(ランカスター家七世)を見つけ、お互いに名を聞かないことを条件に協力することになる。リチャード(三世)側からすると、エドワード(ランカスター家七世)はウォリック伯爵の客人のようだった。しかし、彼はウォリック伯爵のことを嫌っており、またエドワード(ヨーク家四世)を助けようとしているようだったため、敵には見えなかったのだ。そこで三人は、女装したリチャード(三世)をエドワード(ヨーク家四世)の恋人ということにして彼の軍と共に行動し、その途中でエドワード(ランカスター家七世)は、リチャード(三世)に贈るブローチを買うのだった。こうしてミドラム城にたどり着いた三人は、まずはエドワード(ランカスター家七世)がエドワード(ヨーク家四世)の部屋に行き、リチャード(三世)を娼婦(しょうふ)として差し入れる。そして正体を明かしたリチャード(三世)が、エドワード(ヨーク家四世)に武器を渡すという作戦を立てる。この作戦は成功し、無事脱出したリチャード(三世)はエドワード(ランカスター家七世)と別れるが、その時にブローチをプレゼントされるのだった。
旗
リチャード・プランタジネット(三世)たちは、助けに来たバッキンガム公爵の手引きで安全な場所で一息つく。一方その頃、エドワード(ランカスター家七世)はジョージ・プランタジネットと話しているウォリック伯爵のもとに行き、現在ウォリック伯爵は誰を王だと思っているのかと尋ねる。二人の板挟みになったウォリック伯爵は、エドワード(ランカスター家七世)につくことを決意。そしてジョージを裏切り、すぐさまエドワード(ランカスター家七世)とアン・ネヴィルを結婚させる。これによって、玉座にはヘンリー(六世)が戻り、ヘンリー(六世)は解放されるのだった。そんなヘンリー(六世)は、ウォリック伯爵を摂政にし、政権を譲渡すると約束する。この決定にジョージは衝撃を受けるが、それでもウォリック伯爵を信じるほかなく、この決定に従うのだった。その直後、リチャード(三世)はエドワード(ヨーク家四世)の命令で、ジョージにヨーク家の旗を届けに向かっていた。しかしその途中で、なぜかランカスター派の貴族の一団に襲われる。リチャード(三世)はその理由がわからず混乱するが、そこに偶然「羊飼いのヘンリー」を名乗る青年が現れる。そこでリチャード(三世)は、先ほど負った傷が癒えるまで、いっしょに森に隠れることにする。
約束
リチャード・プランタジネット(三世)は、羊飼いのヘンリー(ヘンリー(六世))が過去のトラウマから人を愛すること、情欲を持つことを恐れており、自分のことを信頼できる友人として大切に思っていることを理解した。リチャード(三世)はすでに羊飼いのヘンリーに恋をしていたが、この事実を知った以上いっしょにいることはできず、助けに来たウィリアム・ケイツビーと共に森を去る。しかし別れ際、1年後またこの森で会おうと、羊飼いのヘンリーと約束するのだった。だがウィリアムは、この時羊飼いのヘンリーをリチャード(三世)の友人として紹介されたものの、すぐにその正体に気づき驚いていた。それでもウィリアムは、ひとまずこの件を黙っておくことにし、二人はそのままジョージ・プランタジネットたちのいる城へたどり着くのだった。そして単純な性格で騙(だま)されやすく、お酒に溺れがちなジョージの人間性を利用して、リチャード・プランタジネット(二世)の亡霊が、ジョージの決定に怒り狂っていると思い込ませると共に旗を届ける。これは単なるウィリアムの変装だったが、ジョージはあっさりリチャード(二世)の亡霊だと信じ、苦悩し始めるのだった。そんな中、フランスがバーガンディー公国と戦争状態に突入し、バーガンディーの支援を受けたエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)が、イングランドに向けて出航したとの報せを受ける。
エドワード(ランカスター家七世)とアン
エドワード(ランカスター家七世)とアン・ネヴィルは、家族に無理やり結婚をさせられたものの、リチャード・プランタジネット(三世)を思う者同士、友人として良好な関係を築いていた。一方のマーガレットは、エドワード(ランカスター家七世)たちといっしょにフランスからイングランドに移動し、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)と戦う準備を整えていた。その頃、リチャード・プランタジネット(三世)とアンソニーはエドワード(ヨーク家四世)と合流し、その直後に出会ったジョージ・プランタジネットを仲間に加える。先日の亡霊を本物だと信じたジョージはすっかり怖気づき、エドワード(ヨーク家四世)側に戻ることにしたのだ。こうして三きょうだいが集い、一同はヘンリー(六世)のいるロンドンへ向かう途中、ウィリアム・ケイツビーが、もしヘンリー(六世)を見つけても、処置は自分させて欲しいと言い出す。リチャード(三世)はその真意がわからず、困惑するのだった。こうしてロンドンに着いたリチャード(三世)たちは、エリザベス・ウッドヴィル(母親)やヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)と再会し、こちらに向かっているウォリック伯爵を迎え撃つ。
ウォリック伯爵の最期
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)が率いるヨーク軍と、ウォリック伯爵が率いるランカスター軍の戦いが始まったが、戦場には深い霧が立ち込め、ランカスター軍は混乱していた。これを好機と見たリチャード・プランタジネット(三世)は、鎧(よろい)で顔を隠したヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)に自分のふりをさせてその場を任せる。そして、自らはランカスター軍のふりをして彼らを先導し、同士討ちをさせるのだった。これでランカスター軍はますます窮地に追い込まれていき、エドワード(ヨーク家四世)とウォリック伯爵の一騎打ちが始まる。しかしそれでもエドワード(ヨーク家四世)は、ウォリック伯爵を殺すつもりはなかった。二人は今でこそ険悪な関係ながら、かつては非常に仲がよく、その情が残っていたのだ。そこでエドワード(ヨーク家四世)は、一騎打ちの最中に突如逃げ出したウォリック伯爵を、殺さずに捕らえよと兵士たちに命ずる。しかし、そこに顔を隠したヘンリー(バッキンガム公爵)が現れ、ウォリック伯爵を殺害する。
羊飼いヘンリーの正体
ヘンリー(六世)が戦場をうろついていると聞いたリチャード・プランタジネット(三世)は、ついに彼を発見。しかしそこにいたのは羊飼いのヘンリーで、リチャード(三世)は二人が同一人物であることを知り、絶望する。ウィリアム・ケイツビーはこの事実をなんとか隠そうとヘンリー(六世)を探していたが、間に合わなかったのだ。そして、呆然(ぼうぜん)とするリチャード(三世)のもとへ兵士たちが駆けつけてヘンリー(六世)を捕らえ、戦はヨーク軍の勝利となる。一方その頃、アン・ネヴィルたちはウォリック伯爵の死の知らせを聞き、動揺していた。そんなアンにマーガレットは、ウォリック伯爵の死により戦況は厳しくなり、勝てる確証はないことを告げ、それでもエドワード(ランカスター家七世)だけは守って欲しいと頼む。その夜、アンはエドワード(ランカスター家七世)を気絶させて安全な場所に移し、代わりに顔を隠して自分が影武者となって戦に参加することを決意。こうしてエドワード(ヨーク家四世)率いるヨーク軍と、マーガレット率いるランカスター軍の戦いが始まり、ここでもリチャード(三世)は大胆な作戦でランカスター軍を混乱させていく。そんな戦いの最中、偶然エドワード(ランカスター家七世)に出会ったリチャード(三世)は、その正体を知らぬままに先日協力し合った彼が、今はランカスター家に与(くみ)したのだと思い込み戦いを挑む。しかし、エドワード(ランカスター家七世)は戦意がないことをリチャード(三世)に伝えて彼を抱きしめ、これにひるんだリチャード(三世)は、その場にエドワード(ランカスター家七世)を置いて去っていく。
エドワード(ランカスター家七世)の最期
エドワード(ランカスター家七世)は、アン・ネヴィルの行方を探していた。昨日アンはエドワード(ランカスター家七世)の影武者を用意していると話していたが、エドワード(ランカスター家七世)は、心優しいアンが誰かを犠牲にする戦法を取るとは思えなかったのだ。そしてもしかすると、アン自身が影武者を務めているのではないかと考えていた。その途中、これがマーガレットの企みでもあると知ったエドワード(ランカスター家七世)は、母親や妻を犠牲にして生き延びるくらいなら名誉ある死を遂げることを覚悟する。アンをエドワード(ランカスター家七世)とカンちがいして殺そうとしていたリチャード・プランタジネット(三世)に、自分の正体を告げる。そしてアンを助ける代わりに、自らが捕らえられるのだった。こうしてすでに追い詰められていたマーガレットのもとへたどり着いたエドワード(ランカスター家七世)は、マーガレットの代わりに殺され、すべてを理解したリチャード(三世)の手でとどめを刺される。
ロンドン塔
ヨーク軍とランカスター軍の戦いはヨーク軍の勝利に終わり、リチャード・プランタジネット(三世)は、ヘンリー(六世)を殺すためにロンドン塔に到着した。しかしヘンリー(六世)は、度重なるショックにより精神に異常をきたし、今ではまともに話すことすらできず、自分が何者なのかもわかっていない様子だった。これを聞いたリチャード(三世)は深いショックを受け、そこにセシリー・プランタジネットが現れたこともあり、ヘンリー(六世)には会えずじまいとなる。しかしその夜、リチャード(三世)は再びロンドン塔を訪れ、改めてヘンリー(六世)もとに向かう。しかしやはり会話にならず、ヘンリー(六世)はリチャード(三世)のこともわからない様子だった。この時もリチャード(三世)は、ヘンリー(六世)を殺せずに二人で話しているところを、セシリーに目撃されてしまう。
ヘンリー(六世)との別れ
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)は、セシリー・プランタジネットの話を聞き、リチャード・プランタジネット(三世)とヘンリー(六世)は親しい関係にあるのではないかと疑っていた。そこでリチャード(三世)を呼び出し、自らの手でヘンリー(六世)を殺して来いと命ずるのだった。これを知ったウィリアム・ケイツビーは、ヘンリー(六世)に似た死体を用意して死んだように見せかけようと提案する。しかしリチャード(三世)は、決着をつけるためにもロンドン塔へ向かい、ヘンリー(六世)と対面するのだった。そこでリチャード(三世)は、ヘンリー(六世)を愛していること、自分は男性でも女性でもないことを打ち明け、すべてを聞いてもらったうえでヘンリー(六世)を殺そうとする。しかしヘンリー(六世)がこの告白を受け入れたことで、リチャード(三世)は生まれて初めての幸福に満たされ、共に地獄へ落ちる決心を固める。だが、二人の思いが通じ合ったかのように思えた瞬間、ヘンリー(六世)の脳裏に女性不信になった元凶である母親の姿が浮かび上がり、ヘンリー(六世)は錯乱状態になってしまう。
アンとの結婚
リチャード・プランタジネット(三世)は、錯乱状態になったヘンリー(六世)を見て、やはり自分は受け入れられなかったのだと絶望していた。そしてリチャード(三世)は、ヘンリー(六世)の左目を切り裂いて失明させてその場を去る。後日ヘンリー(六世)の葬儀が始まるが、アン・ネヴィルは参加できずにいた。アンにとってヘンリー(六世)は義理の父親であるにもかかわらず、現在はイザベル・ネヴィルによって召使い同然の扱いを受けており、自由の身ではなかったのだ。イザベルは表向きには、アンとの再婚をもくろむ相続財産目当ての男たちから、アンを守るためだとしていた。しかし実際は、妊娠の兆候があるアンをわざと辛(つら)い環境に放置することで、無理な出産によって不慮の死を遂げてくれればいいと考えていたのだ。そんな中、エリザベス・ウッドヴィル(母親)は、ジョージ・プランタジネットとネヴィル家の台頭を恐れ、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)に、リチャード(三世)とアンを結婚させてはどうかと提案する。リチャード(三世)はこの提案を受け入れてアンに会いに行き、ヘンリー(六世)を殺したのも、エドワード(ランカスター家七世)を殺したのも自分であると打ち明ける。そのうえで、それはアンへの思いゆえのものであり、ぜひ再婚したいとウソをつく。そしてアンもまた、リチャード(三世)の思いがウソであると理解しながらも、結婚を承諾するのだった。
魔女ジェーン
リチャード・プランタジネット(三世)とアン・ネヴィルの結婚から月日が経ち、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)とエリザベス・ウッドヴィル(母親)の三人の子供たちも大きく成長していた。そんなある日、ロンドンで宴が開かれることになり、ふだん国の北部で生活しているリチャード(三世)とアンも参加することになる。しかしその宴の最中、お酒に酔ったジョージ・プランタジネットが大騒ぎしてひんしゅくを買う。ジョージはエドワード(ヨーク家四世)によって権力を大きく剝奪されたことですっかり自暴自棄になっており、王家への不満を抱えていた。それでも宴は続く中、エドワード(ヨーク家四世)は、そこで出会ったアンの侍女のジェーンに夢中になっていた。ジェーンは自らを魔女と名乗る不思議な女性で、奇妙な媚薬(びやく)ですぐにエドワード(ヨーク家四世)を虜(とりこ)にする。そしてもうすぐイニシャルが「G」の人物が、エドワードに不幸をもたらすと予言するのだった。それからしばらく経ったある日、リチャード(三世)はまた宴に呼ばれるが、前回周囲からアンとの第二子が生まれない件について追及されたことで、アンを困らせないためにも、今回は自分一人で参加することにする。こうしてリチャード(三世)はヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)といっしょに宴に参加するが、ここでエドワード(ヨーク家四世)は、男性参加者のみを娼婦たちのいる場所に集めて「奇跡の酒」と呼ばれる謎のお酒の提供を始める。
魔女の館
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)が出した「奇跡の酒」とは、ジェーンが作った飲みもので、飲んだ者を狂わせ、異性を混乱状態にさせる強烈な媚薬だった。すぐさまこれに気づいたリチャード・プランタジネット(三世)とヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)は会場をあとにし、リチャード(三世)はウィリアム・ケイツビーに介抱される。しかしこの際にヘンリー(バッキンガム公爵)は、リチャード(三世)の上半身を偶然見てしまったことで、リチャード(三世)が実は女性なのではないかと疑うようになる。その後もエドワード(ヨーク家四世)は、友人のヘイスティングス卿と共に、体調を崩すほどジェーンに夢中になり、エリザベス・ウッドヴィル(母親)に対しては無関心になっていく。そんなある日、ウィリアムはヘイスティングス卿から、ジェーンをエドワード(ヨーク家四世)のもとに連れて来て欲しいと頼まれる。これを好機と見たリチャード(三世)は、教えられた住所にウィリアムと出向き、ジェーンが本当に魔女なのかどうかを確かめることにする。するとそこでは多くの女性たちが集まり、ジェーンと怪しげな集会を開いていた。女装してこの集会に紛れ込んだリチャード(三世)は、ジェーンが魔女である証拠を集めようとするが、そこで参加者の一人が、王を呪ったと怪し気な言葉を口にする。
イザベル・ネヴィルの死
ウィリアム・ケイツビーは、ジェーンの集会に参加していた怪しい女性のあとを追い、呪いの儀式に使う人形と「エドワード王に死を」と書かれた不審なメモを見つけた。一方その頃、リチャード・プランタジネット(三世)は王宮に戻り、ジェーンがエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)に、エドワード(ヨーク家四世)を呪った者がいると報告しているのを目にする。そのうえジェーンはその犯人を、イニシャル「G」の一人でもあるジョージ・プランタジネットであると断言するのだった。この言葉にエドワード(ヨーク家四世)は驚くものの、証拠がない限りは捕まえることができず、たとえジェーンが犯人であっても王弟に罪を着せればただではおかないと説明する。しかし、そこにリチャード(三世)がウィリアムが得た証拠を持って割って入ったことで、詳しい調査が始まるのだった。その頃、ジョージは絶望の淵(ふち)にいた。それは体調を崩していたイザベル・ネヴィルがわけもわからぬまま亡くなり、その原因が怪しい薬だとわかったからだ。ジョージはすぐさま知人からその薬を取り寄せた侍女を暴行して問い詰めるが、詳しい説明も聞けぬまま侍女は死亡する。そしてジョージは彼女の断片的な証言から、エドワード(ヨーク家四世)の愛人が侍女を通じてイザベルに毒を飲ませたのだと解釈する。
秘密
リチャード・プランタジネット(三世)は、もはやジョージ・プランタジネットは王家の毒にしかならないと判断し、この呪い事件の真相が明らかになっても、彼を逮捕すべきであると考えていた。そこでリチャード(三世)は、ウィリアム・ケイツビーとヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)の三人でジョージのもとへ向かうが、その途中でヘンリー(バッキンガム公爵)から、今後リチャード(三世)に協力する代わりに、自分に秘密がないことを誓えとせまられる。そしてリチャード(三世)は、両性具有の秘密を隠したまま、秘密はないとウソをつくのだった。これによってリチャード(三世)は、ヘンリー(バッキンガム公爵)からジェイムズ・ティレルと呼ばれる殺し屋に関して教えてもらい、いざという時は彼に依頼すればいいと考える。その後、ジョージの城のある街にたどり着いた三人は、呪いをかけたのはイザベル・ネヴィルであり、先日ジェーンの館にいた怪しい女性は、イザベルの侍女であることを知る。しかし、これだけではジョージを逮捕できないため、リチャード(三世)はジョージに会って彼をそそのかし、同時に魔術師を紹介する。これによってジョージがエドワード(ヨーク家四世)に呪いをかけさせ、その現場を押さえる作戦に出るのだった。
悪魔の子
リチャード・プランタジネット(三世)の企みが功を奏し、ジョージ・プランタジネットは逮捕された。それでもエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)はジョージを殺すつもりはなく、しばらく監視下に置くことにした。そんな中、体調が回復したエドワード(ヨーク家四世)は、リチャード(三世)、ウィリアム・ケイツビー、ヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)、そしてヘイスティングス卿の四人を連れて街へ遊びに行く。しかしリチャード(三世)は、なぜかエリザベス(娘)がついてきていることを不思議に思っていた。そこでリチャード(三世)、ウィリアム、ヘンリー(バッキンガム公爵)の三人はエリザベス(娘)の護衛をしながら一晩を過ごすが、以前リチャード(三世)に襲いかかり、その全身を見た男がついてきているのには気づいていなかった。
ジョージ・プランタジネットの死
リチャード・プランタジネット(三世)とヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)は、話し合った末にジョージ・プランタジネットを暗殺すること、そしてこれをウッドヴィル家の手の者だと見せかけることにした。そこでリチャード(三世)は、ジョージの死刑が決まったとウソをついてジョージを錯乱させる。そして、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)やエリザベス・ウッドヴィル(母親)、エリザベス(母親)の息子たちをはじめウッドヴィル家の人間がそろう場所で、ジョージにウッドヴィル家への罵詈(ばり)雑言を浴びせさせる。これによってエドワード(ヨーク家四世)はジョージを処刑すべきか悩むが、そのあいだにヘンリー(バッキンガム公爵)はジェイムズ・ティレルを呼び寄せる。こうしてジェイムズは自死に見せかけてジョージを殺害し、翌朝ジョージの自死の報せを受けたエドワード(ヨーク家四世)は悲しみのあまり、この自死は自分を止めようとしなかったウッドヴィル家の責任でもあると断罪する。これにエリザベス(母親)の息子たちは怒り狂い、これをいさめたヘイスティングス卿と喧嘩(けんか)になる。しかし、リチャード(三世)が悲しんでいる演技をしてその場を収め、ひとまず平穏を取り戻す。
スコットランドとの戦い
スコットランドの兵が越境し、イングランドで略奪を行っているとの報せを受ける。北部を管轄しているリチャード・プランタジネット(三世)はこの件を任せられるが、そんな中、ヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)はジェーンから不審な噂(うわさ)を聞いていた。最近ロンドンではリチャード(三世)は身体に大きな秘密を隠していると、触れ回っている男がいるのだという。この報告を聞いたヘンリー(バッキンガム公爵)は、まずジェイムズ・ティレルを北部に向かわせてリチャード(三世)の護衛をさせると共に、噂の元凶を突き止めることにする。一方その頃、戦に出向いたリチャード(三世)は今回の戦が、スコットランド王のジェームズ・スチュワードに反発したスコットランド貴族の暴走が発端であり、王弟のオールバニ公爵もジェームズを裏切り、国外逃亡していることを知らされる。このままではスコットランドもイングランドも王が戦いに参加することができず、小競り合いが続くばかりだと判断したリチャード(三世)は、オールバニ公爵に会いに行く。
王
リチャード・プランタジネット(三世)は、オールバニ公爵をそそのかして、共にスコットランド王のジェームズを倒すことにした。その夜リチャード(三世)の部屋に忍び込んだジェイムズ・ティレルは、眠っているリチャード(三世)の服を脱がして噂の真相を確かめようとするが、リチャード(三世)の顔を見た途端、自分の王はリチャード(三世)であり、ヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)からの依頼よりも、リチャード(三世)の秘密を守るべきだと考えを改める。そして翌朝、白い猪(いのしし)をお詫(わ)びの品として置いて行くのだった。これを見たリチャード(三世)は、この白い猪が以前ヘンリー(六世)といた頃、いっしょにかわいがっていた猪であるとすぐに気づくが、白い猪を置いていった人物には心当たりがまったくなかった。一方その頃、ヘンリー(バッキンガム公爵)は噂を流している男を捕まえていた。このことを知らないリチャード(三世)は、ジェームズ・スチュワードのもとへとたどり着くが、彼はヘンリー(六世)に似て、極端に争いに向かない人物だった。これを理解したリチャード(三世)は、ジェームズには殺す価値もないと判断し、捕らえて帰国する。しかしこの時、ジェームズのような戦う意欲のない人間は王にふさわしくないとの思いから、リチャード(三世)に心境の変化が訪れる。
エドワード・プランタジネット(四世)の死
リチャード・プランタジネット(三世)が帰国してすぐ、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)が倒れてしまう。この状況にエドワード(ヨーク家四世)の周辺は、もし王が死亡した場合についての協議を始める。そんな中、エリザベス(娘)はエリザベス・ウッドヴィル(母親)が、ヨーク家によって夫を殺され、復讐のためにエドワード(ヨーク家四世)に嫁いだことを知ってしまう。その直後、エドワード(ヨーク家四世)は死亡するが、ヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)は先日の男から聞いた噂について、まだリチャード(三世)本人に確かめられずにいた。リチャード(三世)は先日の誓いどおり秘密を隠しているようには見えず、つい先ほどもエリザベス・ウッドヴィル(母親)の夫であるジョン・グレイを殺したのは自分であると打ち明けるほど、ヘンリー(バッキンガム公爵)との約束を守ろうとしているように見えていた。一方、エドワード(ヨーク家四世)が死んだことにより次期王はエドワード(ヨーク家五世)に決まり、ヘンリー(バッキンガム公爵)から夫のジョンの死の真相を聞かされたエリザベス(母親)は、息子のリヴァース伯爵を摂政にし、リチャード(三世)を処刑しようと考えていた。
共犯者
エドワード(ヨーク家五世)を迎えに行った先で、リチャード・プランタジネット(三世)はヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)に自らが両性具有であること、本当は王になりたいと願っていることを知られてしまう。しかしヘンリー(バッキンガム公爵)は、長年自分の秘密を打ち明けられずに苦悩していたリチャード(三世)に共感し、ますます自分たちは一心同体であるという気持ちを強める。そして秘密を共有した二人は、共犯者として王冠を手に入れる誓いを交わすのだった。そこで二人は翌日、リヴァース伯爵をリチャード(三世)に無実の罪を着せようとした容疑で逮捕。その後、この報(しら)せを聞いて乱心したリヴァース伯爵の兄弟、ドーセットも逮捕する。首謀者であるエリザベス・ウッドヴィル(母親)はエリザベス(妹)と共に聖院にひきこもらせるのだった。しかしまだ油断はできず、リチャード(三世)たちは監視役としてジェーンを送り込む。ジェーンは現在ヘイスティングス卿の愛人となっているため、都合がよかったのだ。しかし自由奔放なジェーンは、エリザベス(母親)の心を開かせる一方で、ヘイスティングス卿を摂政にしようとしていた。
ヘイスティングス卿の裏切り
リヴァース伯爵とドーセットが逮捕されたことにより、リチャード・プランタジネット(三世)はエドワード(ヨーク家五世)の摂政となった。しかしリチャード(三世)とヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)は、次の議会までにいかに支持者を増やすかが勝負だと考えていた。そこで二人は、まずはイーリーの司教であるジョン・モートンを、お金とリチャード(三世)の魅力で口説く。その後、すでにリチャード(三世)の支持者であるノーサンバランド伯爵とハワード卿にも会いに行く。そしてヘンリー(バッキンガム公爵)は、ヘイスティングス卿とスタンリー卿の説得に向かう。もしこれがうまくいかなかった場合は、殺害することも視野に入れていた。一方その頃ヘイスティングス卿は、すっかりエリザベス・ウッドヴィル(母親)の魅力に魅了され、頻繁に聖院に行くようになっていた。ウィリアム・ケイツビーはこれを知りつつも、いつリチャード(三世)に報告すべきかを悩んでいたが、ヘンリー(バッキンガム公爵)がヘイスティングス卿の現状を知ったことにより、リチャード(三世)に改めて会いに行く。そして、現在の自分の主は確かにヘイスティングス卿だが、心はつねにリチャード(三世)にあり、いざとなればヘイスティングス卿を殺すことも厭(いと)わないことを伝える。
礼拝式
リチャード・プランタジネット(三世)は、ジョン・モートンから、エリザベス・ウッドヴィル(母親)とエドワード(ヨーク家五世)が、礼拝式を企画していることを知らされる。礼拝式が行われれば、未だエリザベス(母親)の権力は絶大であることを世に知らしめることになるが、とはいえリチャード(三世)たちが阻めば、エリザベス(母親)と聖職者たちの敵とみなされ反感を買うことになる。リチャード(三世)たちはどう対抗するか悩むが、これがヘイスティングス卿の助力によるものであるとわかったことで、ヘイスティングス卿の裏切りは決定的なものとなった。そこでリチャード(三世)は、自分ではなく王命によってエリザベス(母親)の礼拝式を中止させることにし、代わりにリチャード(三世)のための礼拝式を行うことにする。そして、聖院にいるリチャード(四世)を差し出すようにエリザベス(母親)に命じるのだった。エリザベス(母親)はこの命に激怒し、リチャード(三世)の弱点を探るため、セシリー・プランタジネットに会いに行くのだった。
ヘイスティングス卿の死
エリザベス・ウッドヴィル(母親)、ヘイスティングス卿、スタンリー卿、ジョン・モートンの四人は、セシリー・プランタジネットからリチャード・プランタジネット(三世)が両性具有の悪魔であることを知らされ、驚愕(きょうがく)していた。特にヘイスティングス卿は激怒し、次の議会でリチャード(三世)を告発してやろうと考えていた。そんな中、ジェーンと会ったリチャード(三世)とヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)は、現在自分たちが肉体関係にあることを見抜かれ驚くが、リチャード(三世)は自分に女性器があろうと、妊娠することはないだろうと考えていた。そして議会当日となるが、その場にはリチャード(三世)、ヘイスティングス卿、スタンリー卿、ジョン・モートンの四人の顧問官しか集まっていなかった。これを不審に思ったヘイスティングス卿は、告発の証人にするため、すぐさまウィリアム・ケイツビーに近くにいる貴族をできるだけ集めるよう命じる。しかし、これはリチャード(三世)の罠(わな)だった。その場にいるものはスタンリー卿以外すべてリチャード(三世)側の人間で、この議会はヘイスティングス卿を殺すために開かれたものだった。
噂
ヘイスティングス卿が暗殺され、一部始終を見ていたスタンリー卿は慌ててリチャード・プランタジネット(三世)側につき、ヘイスティングス卿との関係を疑われたエリザベス・ウッドヴィル(母親)は、リチャード(四世)を差し出さざるを得なくなる。しかしエリザベス(母親)はあきらめておらず、今度はリチャード(四世)と協力してリチャード(三世)を殺す計画を企てる。そこで王宮に入ったリチャード(四世)は、数日後にせまるエドワード(ヨーク家五世)の戴冠式に祝宴として狩りイベントをするように提案する。エリザベス(母親)とリチャード(四世)は、このイベントの最中、事故に見せかけてリチャード(三世)を殺害しようと考えたのだ。リチャード(三世)はこれに参加せざるを得なくなり、同時にエドワード(ヨーク家五世)の命令で、北部で暮らしているアン・ネヴィルと、息子のエドワード(アンの息子)を呼び寄せる。そこでリチャード(三世)はヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)から聞いた、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)が不義の子であるという噂についてをアンに聞く。この噂は生前ウォリック伯爵とイザベル・ネヴィルがしていたものだったが、アンも何か知っているのではないかと考えたのだ。アンは今さらそんな噂を掘り返すことを不思議に思うが、もしこれが真実だった場合は不義の子である息子、エドワード(ヨーク家五世)よりも、正当な血筋であるリチャード(三世)の方が王にふさわしいことに気づく。
狩り
アン・ネヴィルはリチャード・プランタジネット(三世)が、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)の血筋に関する噂を利用して、エドワード(ヨーク家五世)を玉座から引きずり下ろす計画に納得できず、何があっても止めなくてはならないと憤慨していた。そのまま夏至になって狩りイベントが始まり、エドワード(ヨーク家五世)チームとリチャード(三世)チームに分かれて競うことになるが、エドワード(ヨーク家五世)は勝利の報酬として、エドワード(アンの息子)を得ようとしていた。エドワード(アンの息子)が気に入らないエドワード(ヨーク家五世)は、彼を手に入れて下僕にしようと考えていたのだ。リチャード(三世)とアンは、このイベントを茶番だと思いつつも狩りを始めるが、リチャード(四世)はなぜかアンに随伴すると言い出し、リチャード(三世)とアン、リチャード(四世)は二手に分かれることになるが、これはリチャード(四世)の罠だった。リチャード(四世)は、一人になったリチャード(三世)を自分の手の者に殺させ、さらにそれをアンが放った矢による事故に見せかけようとしていたのだ。リチャード(三世)はすぐに命を狙われていることに気づくが、そこに現れたのはジェイムズ・ティレルだった。
ジェイムズ・ティレルとの再会
暗殺者の一人がリチャード・プランタジネット(三世)に矢を放ったことにより、ジェイムズ・ティレルは激怒し、その場にいる全員を殺す。そのうえで、近くまで来ていたウィリアム・ケイツビーとヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)に助けを求め、自らは姿を消すのだった。しかしリチャード(三世)は、ジェイムズの正体が以前左目を切りつけて殺そうとしたヘンリー(六世)であることに気づき動揺する。そんなリチャード(三世)が目を覚ますと、傍にはヘンリー(バッキンガム公爵)がおり、今回の暗殺計画について知る者を捕らえたことを伝える。これによって一気にリチャード(三世)が優勢となるが、アン・ネヴィルはリチャード(四世)に、もしアンがリチャード(三世)を殺せば、今後エドワード(アンの息子)の将来は保証すると持ち掛けられていた。
正統な王
アン・ネヴィルはリチャード(四世)の誘いには乗らず、リチャード・プランタジネット(三世)側につくことを決意した。これによって狩りは終わり、暗殺計画が発覚したエドワード(ヨーク家五世)は、すべての罪をリチャード(四世)になすりつけて逃げ出そうとする。しかしここでヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)は、エリザベス・ウッドヴィル(母親)が息子たちを使ってでもリチャード(三世)を暗殺しようとしていた理由を参加者たちに明かす。エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)には、エリザベス(母親)やボーナ姫よりも先に結婚した女性がいた。そのためエリザベス(母親)、エドワード(ヨーク家五世)、リチャード(四世)は正式な妻と子供ではなく、エリザベス(母親)はこれを知られる前に戴冠式を済ませようとしていたのだ。この事実が暴かれたことにより、エドワード(ヨーク家五世)とリチャード(四世)はロンドン塔へ投獄される。
嫉妬
エドワード(ヨーク家五世)とリチャード(四世)が捕らえられたことにより、リチャード・プランタジネット(三世)はついに国王となる。同時に投獄中のリヴァース伯爵とドーセットもジェイムズ・ティレル(ヘンリー(六世))によって暗殺され、ついにリチャード(三世)には敵が誰もいなくなる。しかしその祝宴で、不思議な説教劇が開かれた。この祝宴はもともとエドワード(ヨーク家五世)のための祝宴だったため、エドワード(ヨーク家五世)の希望で決まった題材のはずだった。だが、その劇はまるでリチャード(三世)が悪魔であると揶揄(やゆ)しているような内容で、リチャード(三世)は不審に思うのだった。この祝宴後、リチャード(三世)はアン・ネヴィルと寝ることにし、ヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)もこれを納得しているはずだった。しかしヘンリー(バッキンガム公爵)はこの現実に耐え切れず、思わず城を飛び出してしまう。ヘンリー(バッキンガム公爵)はこれまで、自分とリチャード(三世)は単なる共犯関係であるとして、自分の心を偽っていた。しかし、リチャード(三世)がアンといっしょにいる姿を目にしたことで、本気でリチャード(三世)を愛していることを自覚したのだ。そして出ていくヘンリー(バッキンガム公爵)に気づいたリチャード(三世)もまた、結局アンとセックスすることなくヘンリー(バッキンガム公爵)に会いに行くが、二人が話をしようとした途端、昼の説教劇の役者が殺されたという報せが入る。
リッチモンド伯爵
リチャード・プランタジネット(三世)を揶揄した説教劇の役者2名が、死体として見つかった。周囲はこれをリチャード(三世)による見せしめだと噂されるが、リチャード(三世)は劇で一番目立っていた役者の死体がなかったことに疑問を抱いていた。そこでリチャード(三世)は、その役者も含めた大勢の人々に宴の招待状を送る。その招待状にはふだんの自分とは違う姿になることが参加条件で、リチャード(三世)は女装、アン・ネヴィルは男装して参加することになる。リチャード(三世)はこの宴の中で先日の役者を探そうとするが、女装姿が目立ちすぎることもあってなかなかうまくいかず、悪魔の仮装をしたヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)と共に会場を抜け出す。そこで夜の森に隠れた二人はお互いの本心を打ち明け、真の恋人同士となる。そして、以前リチャード(三世)がヘンリー(六世)と過ごした建物で一夜を明かすことにするのだった。一方その頃、エドワード(アンの息子)は、先日の役者にリチャード(三世)とまるで似ていないことから、実は血がつながっていないのではないかと絡まれていた。でが、ひそかに招待されていたエリザベス(娘)があいだに入ったことで事なきを得る。その役者の正体はランカスター派でスタンリー卿の義理の息子でもあり、現在は旅芸人として潜伏しているリッチモンド伯爵だった。
愛
リチャード・プランタジネット(三世)は、ヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)に、以前ヘンリー(六世)の素性を知らぬまま愛してしまったが、自分が両性具有であると打ち明けたことで、拒絶されてしまったことを打ち明けた。これによって二人はさらに絆(きずな)を確かのものにするが、その光景をジェイムズ・ティレル、つまりヘンリー(六世)が見ていた。ジェイムズは現在記憶喪失になっており、自我が希薄だった。しかし二人の関係を観察するうちに、自分も誰かを愛したいと思うようになっていたのだ。そこでジェイムズはヘンリー(バッキンガム公爵)に、自分に恋愛を教えて欲しいと頼み込み、ヘンリー(バッキンガム公爵)は後日その希望を叶(かな)えると約束するのだった。こうして宴は終わるが、エドワード(アンの息子)は先日リッチモンド伯爵に言われたことに深く傷ついていた。そんなエドワード(アンの息子)をリチャード(三世)は愛(いと)しく思うが、ヘンリー(バッキンガム公爵)はエドワード(アンの息子)は実の子ではないという噂を払しょくするためにも、第二子を作るべきだと進言する。
血筋
リチャード・プランタジネット(三世)は、ヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)に現在王宮で広まっている噂は本当であり、これまでアン・ネヴィルとはセックスしていないどころか、アンはリチャード(三世)の身体の秘密を知らないことを打ち明ける。この事実を知ったヘンリー(バッキンガム公爵)は廃嫡を勧めるが、エドワード(アンの息子)はエドワード(ランカスター家七世)の息子である以上、血筋は正統である。そのうえ現在自分はエドワード(アンの息子)を愛しており、とても廃嫡できないことを伝えるのだった。これによってリチャード(三世)とヘンリー(バッキンガム公爵)は口論になるが、その後もヘンリー(バッキンガム公爵)はリチャード(三世)と距離を置き始める。そんな中、リッチモンド伯爵の手によってエドワード(ヨーク家五世)とリチャード(四世)がロンドン塔を脱走する事件まで起き、リチャード(三世)はウッドヴィルの強硬派がまだ王宮に残っていることを思い知らされるのだった。さらにリチャード(三世)は、この頃から体調を崩し始める。
妊娠
ジェーンの診察を受けたリチャード・プランタジネット(三世)は、妊娠の可能性があると聞かされ動揺していた。それでもヨークでの戴冠式がせまっているため出発するが、ここで突如ヘンリー・スタフォード(バッキンガム公爵)が、領地に戻ると言い出す。これにショックを受けたリチャード(三世)は、アン・ネヴィルたちを先に行かせ、ウィリアム・ケイツビーと二人でヘンリー(バッキンガム公爵)の居城へ向かう。しかしここでもヘンリー(バッキンガム公爵)は冷たく、これにショックを受けたリチャード(三世)は食事中に体調を崩して倒れてしまう。これによってようやくヘンリー(バッキンガム公爵)と二人きりになったリチャード(三世)は、ヘンリー(バッキンガム公爵)がエドワード(アンの息子)にさえ嫉妬するほど、リチャード(三世)を愛していることを知り安堵(あんど)する。そこでリチャード(三世)は現在の体調不良と、妊娠の可能性があると言われたことを伝える。この言葉にヘンリー(バッキンガム公爵)は喜ぶが、リチャード(三世)は自分の身体から子供が生まれてくるなど耐え難く、政治的にも絶対に産めないと悲観していた。
スピンオフ
本作『薔薇王の葬列』のスピンオフ作品として、阿部川キネコの『キング・オブ・アイドル 薔薇王の学園』がある。リチャード・プランタジネット(三世)をはじめとする登場人物たちが、アイドル育成学校に通いトップを目指すという設定のコメディとなっている。
メディアミックス
テレビアニメ
2022年1月より、本作『薔薇王の葬列』のテレビアニメ版『薔薇王の葬列』がTOKYO MXほかで放送された。監督を鈴木健太郎、シリーズ構成と脚本を内田裕基、キャラクターデザインを橋詰力が務めている。キャストは、リチャード・プランタジネット(三世)を斎賀みつき、ヘンリー(六世)を緑川光が演じている。
小説
2021年12月、本作『薔薇王の葬列』の小説版として真楠ヨウの『薔薇王の葬列 original novel 五つの幕間』がKADOKAWA「富士見L文庫」から刊行された。原作、原案、イラストを漫画版の作者である菅野文が担当している。
登場人物・キャラクター
リチャード・プランタジネット(三世)
ヨーク家の三男として生まれた両性具有の人物。のちにグロスターの公爵となり「グロスター公」と呼ばれるようになる。黒髪サラサラのショートヘアで、細身の中性的な体型ながら、女性の胸と男女両方の性器を持つ。そのため、裸の上半身を見たエドワード(ランカスター家七世)には、女性とカンちがいされた。オッドアイの瞳を持つが、子供の頃に周囲が悪魔のようだと揶揄したことから、長い前髪で左目を隠している。両性具有であることから、母親のセシリー・プランタジネットからは悪魔扱いされ、生まれてから現在までずっと冷遇されてきた。そのため自己否定感が強く、後ろ向きな性格をしている。両性具有であることから、自分は王になることもできず、恋愛どころか人とコミュニケーションを取ることも難しいと考えている。しかし努力家でつねに鍛錬を怠らず、武芸にも戦術立案にも非常に優れ、戦場では鬼神のごとき強さを誇るために周囲から慕われている。また、男性とも女性ともつかない不思議な魅力があり、影のある落ち着いた雰囲気も相まって、人を惹きつける力がある。母親のセシリーには冷たくされてきたが、父親のリチャード・プランタジネット(二世)からは愛されて育てられたことから、リチャード(二世)の役に立ちたいという気持ちが非常に強い。そのため、リチャード(二世)が王を続けることを何よりも望んでいたが、彼の死により、上の兄であるエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)が王位を継承した。それでもリチャード(二世)の思いを汲(く)んでエドワード(ヨーク家四世)を支えようとするが、彼の腐敗した行いを間近で見るうちに、自らが王になりたいという気持ちが強くなる。両性具有であることは、両親と乳母、そして幼なじみで従者のウィリアム・ケイツビーしか知らない。唯一、ウィリアムに対してだけは心を開いている。好きな食べ物は苺(いちご)。
ヘンリー(六世)
ランカスター家の当主を務める青年。ランカスター家が戦に勝利した際は王位を継承する人物。金色のふんわりとしたショートヘアに青い瞳を持ち、中性的なかわいらしい顔立ちをしている。ふわふわとおっとりした雰囲気を漂わせており、穏やかで心優しい性格の持ち主。敬虔(けいけん)なクリスチャンで、たくさんの兵士や民の命を奪う戦争に対して、非常に否定的にとらえている。戦にはまったく興味がなく、王として過ごすよりも一介の羊飼いとして静かに暮らす方が自分に合っていると考えている。そのため政治には関与しておらず、妻のマーガレットに実権を譲っている。ある日、ランカスター家とヨーク家の争いの最中、ランカスター家に捕らえられていたリチャード・プランタジネット(三世)と偶然出会う。この時の会話で素性を誤魔化したことにより、リチャード(三世)に羊飼いだとカンちがいされ、それ以後はリチャード(三世)の前では「羊飼いのヘンリー」と名乗るようになった。性に奔放すぎる母親やマーガレットとの結婚後、強姦(ごうかん)されるに等しいプレイで彼女とセックスをしているため、極度の女性不信に陥っている。そのため女性の身体を見たり、女性に近づかれただけで気分が悪くなってしまう。また、マーガレットとのあいだに息子のエドワード(ランカスター家七世)がいるものの、親子関係は希薄。このような境遇から情欲と愛情を抱くことを非常に恐れており、信頼できる友人さえいればほかの人間関係はどうでもいいと思っている。そのため、男性だと認識したリチャード(三世)と、お互いの正体を知らぬまま奇妙な友情関係を築くようになるが、いつしかリチャード(三世)を愛するようになり、思い悩むようになる。やがてランカスター家の敗北により投獄され、この時にリチャード(三世)の正体を知る。それでもリチャード(三世)を受け入れようとするが、その瞬間に母親の幻覚を見て錯乱。拒絶されたと思い込んだリチャード(三世)によって左目を切りつけられ、失明する。その後、死んだことにされるが、殺し屋を生業として生き延びていた。しかしこの頃にはすべての記憶を失っており、「ジェイムズ・ティレル」と名乗っていた。
ヘンリー・スタフォード
バッキンガムの公爵を務める若い男性。黒のベリーショートヘアに金色の瞳を持ち、丸眼鏡をかけている。知的ながら野心が強い。本名は「ヘンリー」だが、周囲からは「バッキンガム公爵」と呼ばれている。つねにクールに振る舞い、政治状況を読むことに長(た)けている。血筋でいえば王になってもおかしくない人物だが、ヨーク家の意向で田舎貴族の娘と結婚させられたことに不満を持っていた。そんな少年時代のある日、エリザベス・ウッドヴィル(母親)が王妃になった際に知り合ったリチャード・プランタジネット(三世)に興味を持ち、リチャード(三世)のキングメイカーになるのも悪くないと考えるようになる。以来、何かにつけてはリチャード(三世)とかかわるようになり、やがてリチャード(三世)の鬱屈した野望をくすぶらせる姿に共感を抱く。そしてある日、リチャード(三世)から王になりたいという本音を聞き、彼の共犯者として生きることを決意する。リチャード(三世)を王にするため次々と権力者を殺害し、共に手を汚していく。そんな中、リチャード(三世)の身体の秘密を知り、リチャード(三世)を女性としても愛するようになっていく。
ウィリアム・ケイツビー
ヨーク家の従者の男性。リチャード・プランタジネット(三世)の幼なじみで、生まれた時からリチャード(三世)に仕えている。リチャード・プランタジネット(二世)の死後は、リチャード(三世)の紹介でヘイスティングス卿に仕えるようになる。焦げ茶色の癖のある髪をショートヘアにしている。青い瞳に褐色の肌を持ち、異国の雰囲気を漂わせている。誠実な性格で生真面目なことから、主に忠実に従っている。そのためヘイスティングス卿からの信頼も厚いが、ウィリアム・ケイツビー自身はリチャード(二世)やヘイスティングス卿よりもリチャード(三世)を何よりも大切に思っており、最優先に物事を考えている。リチャード(三世)が生まれた時からそばにおり、彼が両性具有であることを知っている数少ない人物。そのため、この秘密がばれないようにつねにリチャード(三世)をサポートしながら生きてきた。リチャード(三世)のことを主以上、友人以上の存在として思いを寄せているが、その気持ちを決してリチャード(三世)に伝えることはなく、従者に徹している。
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)
ヨーク家の長男。リチャード・プランタジネット(三世)の兄で、金色の少し癖のある髪をボブヘアにしている。たくましい体型で、碧眼(へきがん)のイケメン。三人のきょうだいの中では最もリチャード・プランタジネット(二世)に似ている。朗らかな性格で周囲から慕われているが、大の女性好きで数えきれないほどの恋人がいる。リチャード(二世)が生きていた頃から結婚を約束する女性がいたが、リチャード(二世)の死後に出会ったエリザベス・ウッドヴィル(母親)に強く惹かれるようになる。婚約者やウォリック伯爵が結婚の話を進めていたがそれを無視して、エリザベス(母親)と結婚した。その後、これまで良好な関係だったウォリック伯爵との仲が一気に悪化し、対立するようになってしまう。女性を愛し女性からも好かれるが、あまり女性を見る目はない。そのため、復讐のために近づいてきたエリザベス(母親)と結婚したり、素性の怪しいジェーンを気に入ったことでどんどん体調を崩したりと、主に女性問題が原因で失脚していく。しかし弟たちには優しく、特にジョージ・プランタジネットのことはかわいがっていた。そのため、のちにジョージと敵対しても彼を憎み切ることができなかった。
ジョージ・プランタジネット
ヨーク家の次男。リチャード・プランタジネット(三世)の兄で、金色の髪をショートヘアにしている。爽やかな印象の碧眼のイケメン。明るく素直な性格で良識もあるが、物事を深く考えないところがあり、周囲から心配されている。また目先の欲望に飛びつきがちで、迷信や呪いの類をすぐ信じてしまう。そのため非常に騙されやすく、単細胞であると陰口を叩かれている。兄のエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)、弟のリチャード(三世)とも仲がよく、リチャード(三世)がセシリー・プランタジネットに冷遇されていることを知りつつも関係は良好。しかし、優秀な二人にコンプレックスを抱いており、エドワード(ヨーク家四世)の即位後、彼が自分よりもリチャード(三世)を重用しているのではないかと疑念を抱くようになる。そしてその後、エドワード(ヨーク家四世)から権力の多くを奪われたことで、精神的に不安定になっていく。のちに妻となるイザベル・ネヴィルとは、エドワード(ヨーク家四世)の即位後、パーティで知り合ったのをきっかけに、彼女の熱烈なアプローチを受けて結婚した。お酒が大好きで、自分に都合の悪いことを忘れるために酒に溺れていく。
リチャード・プランタジネット(二世)
ヨーク家の公爵。リチャード・プランタジネット(三世)の父親で、周囲から「ヨーク公」とも呼ばれる。金色のロングウェーブヘアのイケメンで、高潔で堂々としている。リチャード(三世)を両性具有であると理解したうえで非常にかわいがっており、自らの名前を与えるほどに溺愛している。また後継ぎとしても、長男のエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)や、次男のジョージ・プランタジネットよりも期待している。フランスとの戦いでジャンヌ・ダルクを追い詰めるが、フランスと和睦を結ぼうとするヘンリー(六世)の決定に納得がいかず、意見が対立するようになる。また、当初はヘンリー(六世)の死後、あとを継いで王となる約束をして摂政となったが、やがて摂政職を取り上げられたことに強い不満を抱いていた。そんなある日、リチャード(三世)の進言もあり、王に反旗を翻す。そしてヨーク軍の代表としてランカスター軍と戦うが、ランカスター軍の代表であるマーガレットとの直接対決に敗北し、彼女に散々辱められたのちに絶望を味わいながら殺害された。死後はさらし首にされ、リチャード(三世)を絶望させた。
セシリー・プランタジネット
リチャード・プランタジネット(二世)の妻。リチャード・プランタジネット(三世)の母親で、亜麻色のロングヘアを一つにまとめ、つり目で三白眼の近寄りがたい雰囲気を醸し出した女性。リチャード(三世)が両性具有であることから、生まれた瞬間から忌み嫌っており、非常に冷たく接していた。リチャード(三世)が自己否定的な性格になったのも、主にセシリー・プランタジネットが原因であると考えられている。その一方で、リチャード(二世)を深く愛し信奉しており、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)とジョージ・プランタジネットも非常にかわいがっている。人が集まる場所は好きではなく、ふだんはあまり目立たないようにしている。しかしリチャード(二世)の死後、次第に王宮でリチャード(三世)の影響力が強まっていくことを恐れ、何かにつけてリチャード(三世)を傷つけるような発言をしたり、リチャード(三世)は悪魔であると周囲に触れ回ったりしている。それでもリチャード(三世)が両性具有である秘密は誰にも話さずにいたが、リチャード(三世)が王になる頃にこの事実をバラして足を引っ張る。
エドワード(ランカスター家七世)
ランカスター家次期当主。ヘンリー(六世)とマーガレットの息子で、オレンジ色の癖のある髪をボブヘアにしている。青い瞳を持ち、生意気で不遜な印象を与える。自己中心的でわがままな性格だが、根は素直で誠実な人物。立派な王になるために男性らしくあろうという気持ちが強い。そのため曲がったことを嫌い、欲しいものは正々堂々と手に入れるべきだし、家族は何があっても男性が守るべきだと考えている。このような人柄から優しくて気弱、戦にまるで興味のないヘンリー(六世)を王らしくないと毛嫌いしているため、ヘンリー(六世)に対しては非常に辛辣である。リチャード・プランタジネット(三世)とは、ヨーク家とランカスター家の戦の際、リチャード(三世)たちを捕らえたことで知り合った。この時リチャード(三世)が悪魔の子であるという噂を聞くが、なぜそう呼ばれているのかまでは知らず、捕らえたリチャード(三世)を襲って、どんな身体をしているのかを確かめようとした。これは結局失敗するものの、この時リチャード(三世)の胸を触ったことから、リチャード(三世)を女性として認識するようになった。そして、リチャード(三世)を意識するようになり、その美しさや淋(さび)し気な雰囲気に惹かれていく。のちにマーガレットの意向でアン・ネヴィルと結婚することになるが、生真面目で正義感が強いアンとは気質が似ていたこともあり、恋愛感情はなかったものの、同じリチャード(三世)を思う者同士として友情関係を築くようになる。
マーガレット
ヘンリー(六世)の妻で、エドワード(ランカスター家七世)の母親。争い事を嫌うヘンリー(六世)に代わってランカスター家の実権を握り、戦においても指揮を務めている。金色のロングウェーブヘアを一つにまとめ、険しい顔立ちで近寄りがたい雰囲気を漂わせている。非常に知的で勇ましいが、部下に高圧的な立ち居振る舞いをする。そのためマーガレットには、ヘンリー(六世)やエドワード(ランカスター家七世)も逆らえない。15歳の時にフランスからランカスター家に嫁いで来たが、ヘンリー(六世)を陥れようとする宮廷の人々の悪意にさらされて困難な生活を送っていた。また唯一愛した男性も死亡し、ヘンリー(六世)に対してはまったく愛情がないまま夫婦生活を続け、エドワード(ランカスター家七世)も、嫌がるヘンリー(六世)を無理やり縛り付けてセックスして産んだ経緯がある。
エリザベス・ウッドヴィル(母親)
ランカスター派の下級貴族、ウッドヴィル家の女性。のちにエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)の妻となる。金色のロングウェーブヘアの、たれ目で優し気な顔立ちをしたスタイル抜群の美女。ヨーク家とランカスター家の戦いで夫のジョン・グレイが殺されたことで、ヨーク家に激しい憎しみを抱いている。そんな中、エドワード(ヨーク家四世)の即位後、取り上げられた領地を返して欲しいと彼に頼み込みに行ったことで出会い、エドワード(ヨーク家四世)に魅了される。そしてエドワード(ヨーク家四世)と結婚することでヨーク家を乗っ取り、復讐を果たそうとしている。そのため、エドワード(ヨーク家四世)とのあいだに生まれた三人の子供のことは復讐の道具としか考えておらず、特にエリザベス(娘)には冷たく接し、仲も非常に悪い。しかし夫を殺した張本人が、リチャード・プランタジネット(三世)であることを長らく知らなかった。
エリザベス(娘)
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)とエリザベス・ウッドヴィル(母親)の長女。サラサラの髪の毛をストレートロングヘアにしている。両親のいいところを兼ね備えた美少女で、エリザベス(母親)とは対照的に、明るく快活な性格をしている。この人柄からエリザベス(母親)とは仲が悪く、彼女の企みについてはまったく知らない。
エドワード(ヨーク家五世)
エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)とエリザベス・ウッドヴィル(母親)の長男で王位継承者。サラサラの髪を内巻きボブヘアにしている。両親のいいところを兼ね備えた美少年ながら傲岸不遜な性格で、傍若無人に振る舞っている。成長と共にさらに人間性が歪(ゆが)み、エリザベス(母親)のような意地悪で醜悪な表情をすることが増えていく。
ウォリック
ウォリックの伯爵を務める男性。ヨーク派としてリチャード・プランタジネット(二世)の参謀的な存在。茶髪のマッシュショートヘアで、三白眼でギョロギョロとした目付きをしている。クールな落ち着いた性格で、政治権力者の人選を左右する「キングメイカー」を自認している。子供の頃に出会ったリチャード(二世)に、一目見た瞬間から強く惹かれ、当時の王であるヘンリー(六世)よりも、リチャード(二世)の方が王にふさわしいと考えるようになる。以来、リチャード(二世)を全面的に支えながら、彼を王にするために行動している。リチャード(二世)の死後は、その長男であるエドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)をイングランド国王にすべく奔走するが、エドワード(ヨーク家四世)が、エリザベス・ウッドヴィル(母親)に恋した結果、ウォリック伯爵が進めていたフランスのボーナ姫との縁談を無視し、エリザベス(母親)と結婚してしまう。これを裏切りとみなし、エドワード(ヨーク家四世)と対立するようになるが、それまでは非常に仲がよかった。目的のためなら手段を選ばないところがあり、娘のアン・ネヴィルとイザベル・ネヴィルを利用することも厭(いと)わない。この気質はイザベルに受け継がれている。
アン・ネヴィル
ウォリック伯爵の長女。のちにエドワード(ランカスター家七世)の妻を経て、リチャード・プランタジネット(三世)の妻となる女性。焦げ茶色のロングヘアを三つ編みにした美少女。おとなしく自己主張が苦手な控えめな性格ながら、生真面目で心優しく、正義感が強い。そのため自分の家族や己の復讐心のためであっても、間違ったことをしてはならないと考えている。あまり身体は丈夫ではないが、身体を動かすことが大好き。裁縫などの女性的なものより、狩りやテニスといった男性的なものを好む。特に狩りの腕は高く、さらに馬術においては男性にも引けを取らず、リチャード(三世)をも驚かせるほどの実力を持つ。そのため、もし自分が男性であれば騎士として戦いたかったと考えている。リチャード(三世)とは、彼が幼い頃に小姓として自らの城にやって来たことで出会い、そのミステリアスな雰囲気や不器用ながらも誠実な人柄に触れて思いを寄せるようになる。しかし、ささいな行き違いから仲違いし、その後はエドワード(ランカスター家七世)のもとへと嫁いだ。エドワード(ランカスター家七世)とは恋愛感情はないものの、彼の一本芯の通った性格には好感を抱いており、友人と呼べるほど仲がいい。この頃、マーガレットの意向によりエドワード(ランカスター家七世)の子供を妊娠。しかしエドワード(ランカスター家七世)が戦死して、のちにリチャード(三世)に嫁ぐことになり、運命に翻弄されていく。エドワード(ランカスター家七世)との子供はリチャード(三世)と結婚後に出産したため、エドワード(ランカスター家七世)の子供であることはリチャード(三世)とアン・ネヴィル自身しか知らない。この子供を「エドワード(アンの息子)」と名づける。
イザベル・ネヴィル
ウォリック伯爵の侍女。のちにジョージ・プランタジネットの妻となる。焦げ茶色のウェーブヘアを腰まで伸ばし、ぱっちりとした瞳の気の強い性格の美少女。顔立ちは姉のアン・ネヴィルと似ているが、性格は対照的で目的のためには手段を選ばない。王妃になることにあこがれており、エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)の即位後、ジョージとパーティで知り合ったのをきっかけに、熱烈なアプローチをして結婚した。その後もジョージを王にすることを願い、すべての人生をジョージのためだけに捧げた。そのためアンを裏切って召使い同然に扱ったり、ジェーンの呪いに頼ったりするが、悲劇的な結末を迎える。ジョージとのあいだに女の子と男の子をもうけた。
ジェーン
アン・ネヴィルの侍女。魔女を自称する謎の女性。紫髪のロングウェーブヘアで、セクシーで魅惑的なスタイル抜群の美女。自分の好きなように生きる自由奔放な性格ながら、人の心に入り込むのがうまく、いつのまにか周囲の男女問わず夢中にさせている。エドワード・プランタジネット(ヨーク家四世)の即位から数年後、イングランド北部で暮らしていたリチャード・プランタジネット(三世)とアンが王宮に戻って来て、宴に参加した際にエドワード(ヨーク家四世)と出会い、すぐさま彼に気に入られて愛人となる。そして自らの肉体と媚薬「奇跡の酒」を使ってエドワード(ヨーク家四世)を骨抜きにし、心身共に衰えさせていく。媚薬のみならず堕胎薬といったさまざまな薬の調合が得意で、呪いに関しても詳しい。そのため周囲の女性を集めては、自分の館で魔女の集会を開いているが、魔女であるという明確な証拠はない。誰の敵でも味方でもないスタンスで、その時の自分の気持ちで行動する。そのため、自らを敵視するリチャード(三世)のことも特に嫌っておらず、その身体の秘密もすぐに見抜いた。のちにその技術を買われ、リチャード(三世)の専属医師となる。またエドワード(ヨーク家四世)の死後は、その友人であるヘイスティングス卿の愛人となった。
ジャンヌ・ダルク
かつて「フランスの魔女」と呼ばれ、男装の罪で処刑された若い女性。癖のあるぼさぼさ髪のボブヘアで、鼻の周辺にそばかすがある。中性的な細身な体型で、少し意地悪な性格をしている。一人称は「僕」で、現在はリチャード・プランタジネット(三世)にのみ見える幽霊として、リチャード(三世)の周囲を漂っている。リチャード(三世)が子供の頃にはすでに存在し、自らをリチャード(三世)そのものであると自称している。しかし、リチャード(三世)の絶対的の味方という訳ではなく、折に触れてはリチャード(三世)を傷つけるような言葉をささやいたり、彼の不幸に笑みを浮かべたりと冷たく振る舞っている。その一方で気まぐれなところがあり、リチャード(三世)が疲弊している時には抱きしめるなど、サポートする姿勢を見せることもある。
クレジット
- 原案
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ウィリアム・シェイクスピア