蟲師

蟲師

「鎖国を続けた日本」あるいは「江戸期と明治期の間にある架空の時代」を舞台に、謎の多い異形の生命体蟲が引き起こす現象と、それらに対峙する蟲師のギンコを描いた作品。2003年文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞。第30回講談社漫画賞一般部門受賞。2007年文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」マンガ部門選出。

正式名称
蟲師
ふりがな
むしし
作者
ジャンル
和風ファンタジー
レーベル
アフタヌーンKC(講談社)
巻数
既刊10巻
関連商品
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概要・あらすじ

、それは、この世のあらゆる生命よりも命の源流に近い異形の生命体。人によって見える者と見えない者がおり、その生命活動の中で様々な事象を引き起こす。そして、の対処を生業とする人々は、蟲師と呼ばれている。銀髪に緑の隻眼と、一風変わった風貌の青年ギンコは、各地を飄々と渡り歩く蟲師である。彼は、に悩まされている人々に出会い、話を聞き、その対処法を考える。

そして、ヒトとが共存できるような道を模索していくのであった。

登場人物・キャラクター

ギンコ

銀髪に緑色の隻眼と、一風変わった風貌の男性。作中で唯一の洋装である。蟲師を生業としており、各地を転々としながら、蟲によって引き起こされる事象と対峙していく。飄々とした性格で、表情も変化に乏しいが、感情が欠落しているわけではなく、むしろ人の気持ちには敏感である。蟲を殺めるばかりの他の蟲師とは異なり、可能な範囲でヒトと蟲が共存できるような手段を模索する。 生来蟲を引き寄せやすい体質であり、同じ土地に長期間滞在することができない。愛煙家であるが、吸っているのは蟲煙草という特殊な煙草であり、蟲除けのために吸っている。幼少期はヨキという名前で、目も髪も普通の色だったが、ある出来事をきっかけに、記憶も名前も失い、ギンコと名乗るようになる。

(むし)

『蟲師』に登場する生命体。この世のありとあらゆる生命よりも命の源流に近い者たち。「生」と「死」の間、「者」と「物」の間にいるもの。その形態は様々で虫のような形のものから液状のもの、また自然現象に擬態している大型なものまである。人によって見える者と見えない者がいるが、すべての人に見える蟲も時折存在する。また、存在が蟲側へと近づいた人ほど、はっきりと蟲が見えるようになっていく。 ギンコが「世を構成しているものの一部であり、それ以下でもそれ以上でもない。」と述べている通り、基本的に意思は持たず、そこに生命としてあるだけの存在である。

ヌシ

『蟲師』に登場する用語。山を統率する役目を負わされた動物。光脈筋上にある山は精気で溢れているため、ヌシが調整しない限り動植物が熟れ過ぎてしまう。「地主」や「家主」で言うところの「主」とは大きく異なり、ヌシのほとんどは人間以外の動物である。また、ヌシとなるものは先天的に決められており、産まれつき身体のどこかに草が生えている。 後天的にヌシとなるのは、蟲師がヌシの術を使った場合のみ。稀にヒトがヌシとなることもあるが、その重すぎる荷に苦しみ、ヒトとしての生き方と両立できなくなる者が多い。

化野 (あだしの)

とある村で医者をしている、眼鏡をかけた男性。ギンコと仲が良い。自身は蟲が見えないものの、熱心なコレクターであり、いわく付きの品を高値で買っては収集している。そこに漬け込まれ、ギンコに上手く利用されることもしばしばである。見るからに怪しい趣味を持っている彼だが、医者ゆえか村民からの信頼は厚く、彼に協力する者は多い。

狩房 淡幽 (かりぶさ たんゆう)

狩房家4代目筆記者の黒髪の女性。人里離れた開けた土地にある屋敷で、お付の蟲師の薬袋たまと共に暮らしている。狩房家は身体の中に封じた禁種の蟲を代々継いでおり、数代ごとにその蟲が身体の痣となって現れる。淡幽はその四代目であり、蟲を葬った話を書物として書き写すことによって、少しずつ禁種の蟲を封じている。 痣のついた右足は動かすことができないため、外を出歩くことができない。愛煙家で、キセルを吸っている。

ぬい

肩までかかった長い銀髪に緑の隻眼と、ギンコに良く似た特徴を持つ女性。土砂崩れで母親を亡くし、息絶え絶えに山を彷徨っていたヨキという少年を拾い、しばらくの間、山深くにある自分の家で面倒を見る。抑揚のない口調で話し、ヨキに対しても愛想がないが、それは家族や友人を皆亡くしてしまった孤独ゆえである。 ヨキに自分の子供の姿を重ね、徐々に愛情を感じるようになる。蟲師であり、蟲を引き寄せやすい体質のヨキが自分の身を守れるよう、蟲師としての基本を教える。

イサザ

数少ないギンコの幼馴染でワタリの青年。光脈筋の移動や蟲についての情報・噂を蟲師に売ることで生計を立てている。幼少の頃、ある山の地主の息子、沢と出会い、親密な関係となる。しかし、その地を離れることができない沢と、その地に留まることのできないイサザは、元来相容れない関係であり、半ば喧嘩別れのような形で疎遠になってしまう。

その他キーワード

蟲師 (むしし)

『蟲師』に登場する職業。異形の生命体蟲がもたらす様々な現象に対処し、解決することで生計を立てている人々。蟲煙草や光酒、ウロ繭といった特殊な道具や薬を携帯しており、それらを使って蟲に悩まされる人々の診察や治療、蟲の退治を行う。蟲の分野における医師のような職業である。また、蟲の生態にはまだまだ謎が多く、蟲師一人ひとりが研究者としての側面を持ち、新種の蟲やそれによって引き起こされる現象に関しては試行錯誤しながら対処する。 ギンコのように、蟲を呼び寄せる体質のため各地を転々と渡り歩く蟲師もいれば、一定の土地で過ごす蟲師もいる。たいていの蟲師は蟲を葬るだけで事象に対処しようとするため、ギンコのように人間と蟲の共存を図ろうとする蟲師は稀である。

光脈 (こうみゃく)

『蟲師』に登場する用語。世界に生命が誕生した時から、地中深くで流れている、光り輝く命の水脈。普通の状態の人間には見ることができないが、蟲に近しい存在の者は、真の闇の中で見ることができる。光酒の元となる微小な生物によって構成されている。光脈が流れている地域を光脈筋と呼び、周囲の土地一帯は精気で溢れかえる。 そのため、山の動植物は繁茂し、近くの里の人々は多くの子供を授かる。また光脈筋の上にある山には、山の精気を調整するヌシが現れる。光脈筋は時間と共に移動しているため、光脈筋から外れた山は精気が減少し、活力がなくなってしまう。

ワタリ

『蟲師』に登場する集団、または職業。各地を集団で渡り歩き、光脈筋の移動や蟲についての情報・噂を蟲師に売ることで生計を立てている。この職に就く者のほとんどが、蟲が見える、または、蟲を呼び寄せる体質という理由で、元いた里を追い出された人々である。同じ場所に長く留まることはなく、集団で移動する。また時折、複数の蟲師による会合を開いている。

蟲煙草 (むしたばこ)

『蟲師』に登場する用語。ギンコがよく咥えている煙草。煙には周囲に蟲を寄せ付けない効果があり、生来蟲を引き寄せてしまう体質のギンコにとっては欠かせない品。

光酒 (こうき)

『蟲師』に登場する用語。金色に輝く生命の水。すべての命の源であり、生命そのものとも呼べる液体で、人間と蟲の両者どちらにとってもこの上なく美味。また、光酒が染み込んだ地面一帯は生命力に溢れ、一晩で苔で覆われる。普段は地中深くにある光脈を流れており、蟲師達が特別な儀式をもって抽出する。蟲患いにとっては万薬の長であり、蟲師の間でも高値で取引される。

書誌情報

蟲師 10巻 講談社〈アフタヌーンKC〉

第2巻

(2002-02-20発行、 978-4063142846)

第3巻

(2002-12-18発行、 978-4063143126)

第4巻

(2003-10-22発行、 978-4063143324)

第5巻

(2004-10-21発行、 978-4063143614)

第6巻

(2005-06-22発行、 978-4063143812)

第7巻

(2006-02-22発行、 978-4063144048)

第8巻

(2007-02-23発行、 978-4063144420)

第9巻

(2008-02-22発行、 978-4063144888)

第10巻

(2008-11-21発行、 978-4063145373)

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