オリエント

戦国時代に突如飛来した「鬼神」により一変してしまった世界が舞台。鬼に支配された人々を救うため、最強の「武士」を目指す少年の姿を描いたバトルファンタジー。「週刊少年マガジン」2018年26号より連載。2022年1月にテレビアニメ化。同年7月に第2クールが放送。

正式名称
オリエント
ふりがな
おりえんと
作者
ジャンル
和風ファンタジー
レーベル
講談社コミックス(講談社)
巻数
既刊16巻
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あらすじ

武蔵と小次郎

およそ150年ほど前、人間の暮らす世界「日ノ本」に、突如、「鬼」と呼ばれる未確認生命体が飛来する。名だたる戦国武将はことごとく討ち死にしたとされ、日ノ本は鬼の中でも特に力の強い「鬼神」が支配する世界となった。そんな中、10歳の少年、武蔵鐘巻小次郎は、鬼に立ち向かう唯一の存在である武士を目指し、共に剣術に励んでいた。そして二人は、核となる最強の武士団を作るという約束を交わす。それから5年後。武蔵は武士ではなく、「鉱夫」になるための授業を受けていた。武蔵が暮らす竜山町では、武士は残虐非道な化物といわれ、鬼は守り神として崇(あが)めるように情報操作をされていた。そのため、鬼が食べるという鉱石を掘る鉱夫になるのがふつうだったのである。武蔵は、内心では武士になる夢をあきらめていなかったが、ある時、小次郎から鉱夫に甘んじていることを指摘される。その結果、すれ違いが生じたことで二人は喧嘩(けんか)別れする。2日後、武蔵は竜山町の中心部にある鉱山の入山式に参加した。武蔵は、自分の信念と決心が本物であることを証明するため、つるはし型の刀で鉱山の門の奥にいるという鬼を倒そうと考えていた。竜山鉱山の鉱夫に内定した武蔵たちは、鉱山が教科書で教えられたような楽園などではなく、たくさんの労働者が過酷な肉体労働を強いられている地獄だったことに驚く。さらに猫又鬼が、労働者の命を弄ぶかのように殺していく。武蔵はこれに恐怖することなく猫又鬼に挑もうとするが、入り口で武器を預けたために素手だった。竜山町を支配する役人たちは、猫又鬼の攻撃で半死半生になる武蔵に対して「鉱夫になる」と言えば助けると条件を出すが、武蔵は「自分の夢は武士だ」と言い放ちこれを拒絶する。猫又鬼が武蔵にとどめの一撃を加えようとした時、鬼鉄騎にまたがった小次郎が現れてピンチを救う。小次郎から、つるはし型の刀を受け取った武蔵は、鐘巻一心流抜刀術「千旋裂斬剣」を使って猫又鬼を両断する。そして、いっしょに武士になって武士団を作ろうと、改めて小次郎を誘う。その時、空から円形の光が差し、鬼神である炎獄天狗が降り立つ。武蔵と小次郎は鬼鉄騎に乗り、鬼退治の手柄を挙げるべく炎獄天狗のもとへと走る。

武田武士団

竜山町の鉱山に降り立った炎獄天狗は、役人から差し出された大量の鉱石を喰らい、炎をまとった巨大な姿へと変貌する。鐘巻小次郎は、刀を手に炎獄天狗に立ち向かうが、抵抗空しく刀を丸呑(の)みにされてしまう。くやしさに震える小次郎だったが、そこに武蔵が炎獄天狗の腹部に攻撃を加える。これを受けた炎獄天狗は怒りのあまり武蔵に反撃しようとするが、その結果自らの腹部を破壊してしまい、倒れ伏す。武蔵は炎獄天狗の腹の中から小次郎の刀を取り返すが、そこに武田武士団の武田尚虎が現れる。尚虎は武蔵に対して、鬼神は腹を破られても再生する力を持つことを告げつつ、炎獄天狗を武田武士団に任せて逃げるようにうながす。しかし、武士になりたいという衝動に駆られ、初手柄を上げるために躍起になっていた武蔵は、武田武士団に横やりを入れられることに反発し、小次郎が止めるのも構わず、彼らより先に炎獄天狗を仕留めようと挑み続ける。武蔵は、硬い表皮を前に決定打を入れられず、そのあいだに武田武士団が必殺の陣形である青刀隊突撃陣「碧天鶴翼」で炎獄天狗を仕留めてしまう。竜山町の人々は、鬼の暴虐から自分たちを救ったうえで役人たちの欺瞞(ぎまん)を暴いた尚虎や武田武士団を口々に褒めたたえ、尚虎に父親、鐘巻自斎の姿を見た小次郎も彼にあこがれを抱く。しかし武蔵だけは、手柄を横取りされたとして尚虎に食って掛かる。尚虎自身も武蔵の気概を認め、その証(あかし)として真角万華鏡を譲り渡すが、武蔵の怒りは収まらない。しかしその夜、武蔵は自斎の忘れ形見の一つである絵巻物を発見する。その中で、真角万華鏡が鬼の座標を示す効果を持つことと、すべての鬼神を倒した暁には、その時点でもっとも鬼退治に貢献した武士こそが、天下統一を果たして日ノ本の王になれることを知り、同時に尚虎が自分にチャンスを与えたことを悟る。武蔵は、尚虎以上の武士になるためにもあえて彼の企てに乗り、小次郎と共に天下統一を志す。

外の世界

天下統一という夢を抱いた武蔵は、武田尚虎から受け取った真角万華鏡を頼りに鬼退治を目標に定め、竜山町から旅立つ。武蔵と鐘巻小次郎は初めて目の当たりにする外の世界に期待を馳(は)せるが、その旅路はとても順調とはいえず、時には些細(ささい)なことでケンカをしてしまう。そんな中、二人の前に服部つぐみが現れ、鬼鉄を狙って襲い掛かってくる。つぐみは女性慣れしていない小次郎に色仕掛けを行い、そのスキを突いて戦闘不能に追いやるが、鉱夫候補生ゆえに女性人気が高く、免疫のある武蔵には通用しなかった。つぐみは飛燕双流剣を構え、本気を出して武蔵を排除しようとするが、ほら貝の音が響くと、小次郎の鬼鉄騎を奪って小雨田武士団の拠点である五月雨城に逃げ込んでしまう。武蔵と小次郎はつぐみを追って小雨田城に入り、そこでつぐみから報告を受けた小雨田英雄の歓待を受ける。最初は友好的だった小雨田だが、武蔵と小次郎が鬼鉄のことすら知らないことを聞かされると豹変し、二人を投獄する。そのうえ、領内に現れた木霊鬼の大群を退治するために、領民を捨て駒にする作戦を立て、つぐみにもこれを強要する。一人きりになることを極端に恐れるつぐみは、命令に背けば追放するという小雨田に逆らえずにいたが、窮地の中で幼い時に自分をかばってくれていた服部つばめの姿を思い出す。さらに脱獄を果たした武蔵と小次郎の力強い姿に奮起し、領民の命を守るためにも小雨田との決別を決意する。

つぐみと小雨田

武蔵鐘巻小次郎は、小雨田英雄から離反した服部つぐみと合流し、彼女から返却された鬼鉄騎に乗り込んで五月雨城を脱出する。そして、空中から津波のように襲い来る木霊鬼の群れを確認すると、広場に集められた領民たちをすぐにでも逃がそうとするが、許しもなく勝手な行動を取らせたら、小雨田の手によって民衆が処断される恐れがあることをつぐみから聞かされる。武蔵たちは二手に分かれて広場に近づくと、つぐみが小雨田を説得しているあいだに、小雨田の命令によって領民を捕らえようとする小雨田武士団の武士たちを撃破する。三人は広場の門を開けて領民たちに逃げるようにうながすが、小雨田に恐怖で支配されている彼らは身動き一つ取れずにいた。さらに小雨田武士団の新手が殺到する中、つぐみは武士たちの相手を武蔵と小次郎に任せ、小雨田を打ち倒すために飛燕双流剣を抜く。小雨田の力は強く、つぐみは彼の鋭い太刀筋の前に防戦を強いられ、やがて倒れてしまう。小雨田はここぞとばかりにつぐみを殴りつけるが、かつて服部つばめが自分を守ってくれたように、今度は自分が領民を守る意思を固めると、つぐみは飛燕双流剣の力を高めて小雨田と互角に競り合う。そして、緑刀捕縛で小雨田を縛り上げ、行動不能に陥らせると、彼の敗北によって恐怖を払った領民たちに避難をうながす。領民たちを逃がし終えたつぐみは、殺到する木霊鬼を前に死を覚悟するが、武蔵の鬼鉄騎に拾われることで命拾いする。やがて木霊鬼が去ると、つぐみは領民たちの提案を受けて、武蔵や小次郎の旅に加わる決意を固める。武蔵は、小次郎とつぐみと共に半壊した五月雨城をあとにして、新たな場所へと向かう。

刀の試し

武蔵鐘巻小次郎、服部つぐみは、慣れない世界に戸惑いながらも旅を続ける。ある朝、群れからはぐれた木霊鬼が小次郎の刀を盗み取ろうとしたところを目撃した武蔵は、これを追って仕留めようとする。しかし木霊鬼には攻撃が通じず、逆に刀を壊されてしまう。なおも逃げる木霊鬼を追う武蔵は、荒野の中に無数の鬼鉄刀が刺さっているという異様な光景を目にする。そして、刀の持ち主である犬飼四郎にうながされるまま、刺さっていた鬼鉄刀の一本を引き抜き、木霊鬼を倒す。初めて一人で鬼を倒した武蔵は鬼鉄刀の魅力に取りつかれ、駆け付けてきた小次郎とつぐみに対して、自分用の鬼鉄刀が欲しいと告げる。そして、真角万華鏡が次に鬼神が降臨する地点に指し示した大東鉱山にたどり着くと、「龍造寺武士団」という武士団の刀鍛冶(かじ)が作り上げたという鬼鉄刀の競売に参加する。武蔵は焔魔大太刀を、小次郎は裂空八重桜を希望し、それぞれ鬼鉄刀の前に座り、競りの開始を待つ。そして刀鍛冶の長舩ミツルから刀の柄を握るよううながされ、先にそれを行った武蔵の身体が、焔魔大太刀と共鳴を始める。ミツルは武蔵に起こった変化に驚く小次郎とつぐみに対して、鬼鉄刀の持ち主になるためには、「刀の試し」と呼ばれる試練を受け、その鬼鉄刀から認められる必要があることを語る。焔魔大太刀と共鳴した武蔵は、不思議な力で意識だけを過去の竜山町に飛ばされ、幼い頃の記憶を追体験する。

犬飼四郎

鐘巻小次郎は刀の試しを成功させ、裂空八重桜の正当な持ち主として認められる。一方、意識のみを過去の竜山町に飛ばされた武蔵は、そこで謎の女性と出会う。しかし女性から「お前は要らない」と吐き捨てられ、武蔵の意識体をバラバラに引き裂いてしまう。現実の世界に引き戻された武蔵は、黒い気をまとうようになったうえに身体の中に黒い鉱石が発生し、その影響で焔魔大太刀から拒絶され、刀の試しの失敗を宣言される。さらに、ほかの売れ残った鬼鉄刀からもことごとく拒絶されたことで、やがて忌人であることが判明し、鬼鉄刀を使うことは不可能だと断言される。そこに青色鬼神である阿形・吽形が放った鬼が襲ってくる。鬼は裂空八重桜を振るった小次郎に退けられたが、武蔵は武士になれなくなったことに強く落胆し、阿形・吽形の討伐隊にも加われないまま、小次郎たちを見送らざるを得なくなる。小次郎は武蔵の再起を信じて、服部つぐみと共に大東鉱山の内部を進む。鬼鉄刀が振るえずに途方に暮れる武蔵の前に、犬飼四郎が現れる。四郎は、突然涙ながらに「君に会いたかった」と告げるが、武蔵にはなんのことかわからない。四郎はそれに構わす身体の中から黒い鉱石を発生させ、「無明」と呼ばれる禍々(まがまが)しい形状の鬼鉄刀を振り下ろして巨大な空洞を発生させる。そして、武蔵を鬼鉄刀に変えることと、その素材として小次郎とつぐみも犠牲にすることを宣言しつつ、武蔵を穴の中へと突き落とす。穴の奥は溶岩で満ちており、それに焼かれて命を落とすか、心を失って鬼鉄に変化するかの二択をせまられる。武蔵は手にしていた刀を使って穴を這(は)い上がろうとするが、そこに焔魔大太刀に触れた際に見えた女性、黒曜の女神が現れる。

黒曜の女神

阿形・吽形の討伐隊に加わった鐘巻小次郎と服部つぐみは、大東鉱山の中心部へとたどり着く。しかし、阿形・吽形はすでに討伐されており、その実行者と思しき犬飼四郎が、「刀狩り」と称して武士たちを次々に殺害していく。小次郎に目をつけた四郎は、彼に追いすがって圧倒するが、そこに大穴からの脱出を果たした武蔵が現れる。武蔵の手には鬼鉄刀ではない刀が握られていたが、小次郎はその晴れ晴れとした表情から彼が立ち直ったことを確信し、これを喜ぶ。そこに犬坂七緒が現れ、犰尾七鉦刀の力を開放して襲い掛かってくる。七緒は犰尾七鉦刀の刃を七つに分割し、鞭剣七刀流奥義「轢殺車」などの技で武士たちを翻弄するが、武蔵、小次郎、つぐみの連携で分割された刃の一つを破壊される。すると、彼女に見切りをつけた四郎が前に出て、無明を振るって武蔵たちがいる空間を切り取り、天と地を逆さまにして彼らを落下死させようと目論む。そこで黒曜の女神が武蔵の身体から現れ、「器である武蔵に死んでもらっては困る」と、彼だけを救おうとする。武蔵はそれを拒み、小次郎やつぐみがいっしょにいるからこそ力を発揮できると主張する。武蔵の信念を感じ取った黒曜の女神は、彼が「黒曜の女神の器」に相応(ふさわ)しいと判断し、彼に憑依(ひょうい)して姿を現す。そして、全身から黒い鉱石を発生させつつ、四郎から無明を奪って空間への干渉を解除する。武蔵と小次郎の絆(きずな)を確認した黒曜の女神は、討伐隊の生き残りが持つ鬼鉄刀から力を集めて、それを束(つか)ねて四郎と七緒に放つ。こうして四郎たちを退けた黒曜の女神は力を使い切って眠りにつき、武蔵や小次郎たちは勝利を喜ぶ。そして、四郎の犠牲になった武士たちを弔うと、武蔵は改めて刀の試しに挑戦し、晴れて焔魔大太刀の持ち主である赤刀武士として認められる。

上杉陣営へ

大東鉱山を出立した武蔵鐘巻小次郎、服部つぐみは、道中で蛸壺鬼から一人の女性を救い出す。すると、女性の従者である爺から、彼女が「猿渡武士団」と呼ばれる武士団の団長の娘、猿渡みちるであることを聞かされたうえで、みちるを助けた礼として戦車型の鬼鉄騎に同乗をうながされ、共に上杉連合の拠点である播磨の地を目指す。その途中でみちるたちと別れた武蔵たちは、道中で鐘巻自斎が上杉武士団の一員であった可能性があることを知り、たどり着いた播磨の港で上杉武士団についての情報を集めようとする。そして、上杉竜臣と面会するために上杉陣営に向かうも、直江兼竜や島津秋弘らに門前払いを喰(く)らってしまう。だが、そこに現れた武田尚虎から口裏を合わせてもらい、進入に成功する。ただし、竜臣との面会は果たせずに、しばらく陣営内に留まることを余儀なくされる。そんな中、かつて竜山町で助けてくれた真田青志や山本春雷と再会した武蔵は、武田武士団が上杉連合に参画した理由が、淡路島に出没しているという最強の鬼神の一体である砲戦竜八岐大蛇を討伐する目的を持った、淡路島奪還作戦に参加するためであることを知る。武蔵は鬼退治と聞いて心を躍らせるが、今は自斎の情報を集めることこそが目的であると思い直し、別れて竜臣を探すことを優先する。武蔵はつぐみの飛燕双流剣の力で天守閣へと飛び、そこで一人の武士と出会う。そして、話すうちにたちまち意気投合するが、その武士こそが竜臣その人だった。しかし、竜臣は掟(おきて)に対して非常に厳格で、尚虎と示し合わせて陣営の中に入ったことを知られると、武蔵たちを「タコ部屋」と呼ばれる懲罰部屋へと入れてしまう。

尼子と島津

武蔵鐘巻小次郎、服部つぐみは、タコ部屋で過酷な労働を強いられる。だが3日後に、武田尚虎から要請を受けた上杉竜臣の意向により解放されて兵舎へと送られ、淡路島奪還作戦への参加を余儀なくされる。さらに武蔵は、小次郎やつぐみとほかの小隊に参加させられる。その小隊には、以前出会った猿渡みちるのほか、尼子勝巳や島津秋弘といった、クセの強い武士がそろっていた。勝巳と秋弘は、それぞれの武士団のメンツをかけて、小隊長の座をかけた決闘を提案し合う。しかし、二人の並みならぬ雰囲気を恐れた種子島しげと種子島まもりは、武蔵を小隊長に推薦して、三つ巴(どもえ)の戦いをすることになる。武蔵は最初に勝巳との戦いを選択し、鐘巻自斎より習った剣技を頼りに猛攻を加える。しかし、割って入った秋弘が武蔵や勝巳を一方的に叩(たた)きのめし、彼らを散々に罵倒したうえに小隊長となることを宣言し、武蔵やみちる、勝巳は彼の指揮下で戦うこととなる。武蔵はこれに反発するが、勝巳やみちる、そして尼子武士団の武士たちは秋弘に従う道を選ぶ。翌日、淡路島に渡るために船の形状をした鬼鉄騎に乗り込むが、そこでも武蔵は野口雉之介や直江兼竜からも武士としては不向きと揶揄(やゆ)されるなど、苦難が続く。そんな中、鬼鉄騎の進行先に砲戦竜八岐大蛇が差し向けた口裂鬼が立ちふさがる。武蔵は好機とばかりに口裂鬼に挑みかかるが、焔魔大太刀をもってしても口裂鬼の真角に傷一つ付けられない。武蔵たちは危機に陥るが、そこに龍鎖烈陣刀を構えた兼竜が介入し、口裂鬼を倒す。

みちるの正体

口裂鬼との戦いで戦果をあげられなかった武蔵は、野口雉之介や猿渡みちる、尼子勝巳とその部下たちが島津秋弘に文句を言わず付き従う理由が、彼を恐れているからではなく鬼神を倒すのに有効であるためであることを知り、自分がただのわがままでしかなかった事実に打ちのめされる。しかしその夜、勝巳から叱咤(しった)激励され、彼と共に強くなることを決意する。一方みちるは、生みの親である犬田八咫郎から黒曜の女神の器である武蔵の始末を命じられていたが、これまでの触れ合いでいつしか武蔵に好意を抱き、殺害を強く躊躇(ちゅうちょ)するようになる。そんな中、鬼鉄刀の稽古をしていたみちると武蔵の身体が共鳴し、黒い鉱石が発生する。これを怪しんだ上杉陣営の軍師、宇佐美黒子は、すでにみちるが黒曜石の八人の一味であることをつかんでおり、武蔵を敵の間者として捕えて、彼を心配するみちるが黒い鉱石の力を使い、その大本である八咫郎の位置を特定する。ある事情から手柄を立てる必要にせまられていた秋弘は、武蔵に天狼鉄脚を突き付けて、命が惜しければ武蔵と島津は無関係であることを証明することをせまる。しかし、その表情は明らかに不本意であるようで、武蔵は彼になにがあったのか計りきれずにいた。そこに3703とその姉妹たちが現れ、みちるの本来の役割を武蔵と島津に暴露する。さらに、武蔵への思いから任務を躊躇するみちるをも始末しようとするが、そこに直江兼竜率いる上杉武士団の精鋭たちが立ちふさがる。

軍神闘衣

武蔵と猿渡みちるは、3703とその姉妹たちの攻撃で窮地に陥るも、直江兼竜や宇佐美黒子の活躍によって九死に一生を得る。上杉武士団の猛攻に遭った姉妹たちは突如共食いを始めて、砲戦竜八岐大蛇の力を受けた鬼として復活する。さらに、彼女たちと同じ特性を持つ犬田八咫郎の娘たちが上杉陣営に大挙して攻め寄せ、やがて共食いを繰り返して融合する。融合した姉妹たちは口裂鬼をはるかに凌駕(りょうが)する強さを発揮し、八咫郎の命に従って紫龍城の破壊と、みちるの殺害を目論むが、そこに上杉竜臣が立ち上がる。竜臣は意外にも武士としての実力は抜きん出たものではなく、融合した娘たちは彼を力に任せて一気に彼らを仕留めようとする。だが、黄刀武士である竜臣の神髄は味方の強化にあり、彼が軍神闘衣を発動すると、上杉武士団の武士たちの鬼鉄刀の力や身を守るための刀気が一気に増大し、連鎖させた刀気を兼竜が発射することで逆に圧倒し、難なく撃破する。武蔵は上杉武士団の戦い方が巧みであることに舌を巻き、鬼鉄刀の奥深さを改めて思い知る。一方、竜臣は3703たちがいつの間にか播磨に潜入していたことを訝(いぶか)しんでいたが、そこに黒幕の一人である犬飼四郎が現れ、無明で竜臣に攻撃を仕掛ける。四郎の前には為(な)す術(すべ)もなく、竜臣は生死不明となってしまう。これに憤った兼竜は、竜臣の代わりに刀気を連鎖させて四郎を討とうとするが、新たに現れた犬川静六が金瘡執糸刀を振るうと、文字の形状をした刀気が兼竜に集中した刀気を霧散させてしまう。静六は四郎に対して、そのまま上杉武士団を殲滅(せんめつ)するよう要求するが、四郎はこれを拒否して、武蔵と黒曜の女神を切り離すため、無明の力を使って空間転移を発動し、武蔵とみちるを八咫郎のもとへと送り込む。

上杉陣営瓦解

犬飼四郎の手により転移させられた武蔵を迎え撃った犬田八咫郎は、猿渡みちるが武蔵に好意を抱いたことを危険視し、彼女の記憶を書き換えて武蔵のことを忘れさせてしまう。そのうえで、大富道黒雷を振るって武蔵にトドメを刺そうとするが、みちるはわずかに武蔵のことを記憶しており、無意識のうちに彼をかばってしまう。八咫郎は、ここで武蔵を始末するのは難しいと考え、彼をもとの場所へ解放しつつ、みちるを完全に洗脳するために連れ去る。上杉陣営で目を覚ました武蔵は、鐘巻小次郎と服部つぐみから、上杉竜臣が生死不明であることと、それに伴い上杉陣営に参画していたほかの武士団の団員たちが離反していることを聞かされる。そこに直江兼竜が現れ、竜臣は生きているものの四郎によって捕らえられており、その救出のために黒曜の女神の器である武蔵の力を貸して欲しいと願い出る。小次郎は、これ以上深入りすると武蔵に危機が及ぶと考え、一度は断るように勧めるが、みちるのためにも八咫郎と決着をつける必要があると考えた武蔵は兼竜の申し出を受け入れることを決める。そして、黒曜の女神の力を引き出すとされる黒曜の女神の血を飲み、黄刀武士の刀気を発動できるようになる。一方、上杉陣営からの武士の離反は思いのほか深刻で、島津秋弘の配下の武士や、小次郎やつぐみの所属する小隊の武士たちも何人もいなくなっていることが判明する。さらに、武田尚虎が黒子に対して、武田武士団も作戦には参加できないと宣言してしまう。

淡路島奪還作戦

上杉陣営は、犬飼四郎と犬川静六の襲撃で大きな被害を被ったうえに竜臣が捕らえられ、武田武士団をはじめとした武士たちの離反などが重なり、あとがない状態に追いやられる。鐘巻小次郎やつぐみの小隊は解散状態となり、武蔵の所属する小隊も、複数の武士がいなくなるなど、深刻な状況を迎えていた。そんな中、黒曜の女神の器である武蔵の助力を得た直江兼竜と宇佐美黒子は、四郎たちの討伐と竜臣の救出、そして砲戦竜八岐大蛇の撃破を目的とした淡路島奪還作戦の実行を宣言する。武蔵は、所属する小隊を含めた100人の武士と共に、砲戦竜八岐大蛇の主食である鉱石が眠る諭鶴羽山を破壊し、エネルギー供給源を断つ任務を命じられる。彼らの前には砲戦竜八岐大蛇が差し向ける小鬼がせまり、さらに砲戦竜八岐大蛇が使用する最強の矛盾が、武蔵たちの陽動のために先んじて出撃した上杉武士団を狙っていた。だが、黒子の指示によって陽動部隊が砲戦竜八岐大蛇の足元に火攻めを行うと、炎を敵と誤認した砲戦竜八岐大蛇が足元に最強の矛盾を発射し、自ら大混乱に陥る。最強の矛盾がさく裂したことで生じた煙は小鬼たちの視界を奪い、武蔵や尼子勝巳、島津秋弘たちは、淡路島への上陸に成功し、そのまま諭鶴羽山の中腹を目指す。しかし、彼らの動きを見越した静六は、鉱山の進行ルートに百足鬼を筆頭とした鬼を配置していた。武蔵たちは思わぬ敵の襲撃に苦戦を覚悟するが、そこに秋弘とその兄弟たちが天狼鉄脚を展開し、周囲にいた鬼をまとめて蹴散らす。彼らの活躍に勢いづいた武蔵たちは、気分も新たに百足鬼たちとの戦いに臨み、撃退に成功する。

軍師の戦い

犬川静六は、砲戦竜八岐大蛇が暴走した際に発生した火事を消し止めようと単身で出撃するが、そんな彼らを武田武士団の船が追跡していた。武田尚虎が作戦に参加できないと発言したのは、彼らの近くに静六の放った間者が存在することを見越した宇佐美黒子と共に打った芝居だったのである。黒子は、彼らが静六を倒して、上杉武士団の主力部隊にかけられた金瘡執糸刀の刀気を解除し、さらに武蔵たちが大量の爆薬を使って諭鶴羽山にある鉱石を破壊して砲戦竜八岐大蛇の弱体化を果たし、主力部隊にこれを討伐させる算段を組んでいた。しかし、差し向けた間者が見聞きしたことを、体内の鉱石を通じて直接確認できる静六はこの作戦すらも見越しており、犬飼四郎を武蔵のもとに差し向ける。四郎は無明を構えて空間転移能力を発動し、武蔵たちが仕掛けた爆薬を、静六を追っていた船団の上に転移させ、そのまま一網打尽にしようとする。だが、爆破した船団に武田武士団の姿はなかった。静六が差し向けた間者は、自分の所属する武士団の旗を踏むという、武士なら絶対にしないミスを犯しており、黒子から正体を突き止められていた。黒子はあえて静六と四郎を泳がせて、無人の船団を四郎に狙わせていたのである。単身でおびき出された静六の前に直江兼竜が現れ、彼の持つ金瘡執糸刀の一本を破壊する。さらに、武蔵を仕留めようとする四郎の前に武田武士団を率いる尚虎が現れ、四郎の相手を引き受ける代わりに、八咫郎と砲戦竜八岐大蛇の打倒を託す。こうして軍師同士の読み合いは黒子に軍配が上がり、戦況は兼竜対静六、尚虎対四郎、そして武蔵対犬田八咫郎の戦いにもつれ込む。

兼竜VS静六

犬川静六は、宇佐美黒子との読み合いに敗れたうえ、金瘡執糸刀の一本を直江兼竜に破壊される。しかしあくまで余裕を崩さないまま、もう一本の金瘡執糸刀を抜き、刀気の糸で攻撃を仕掛ける。上杉武士団の中でも最強の力を誇る赤刀武士である兼竜は、圧倒的な刀気の力で一気に勝負をつけようとするが、静六が目に見えないほど小さく練り上げた複数の刀気を受け、幻覚による失明状態に陥る。静六は、兼竜の眼が見えなくなったスキを突いて、多数の刀気による火傷や打撲といった、さらにさまざまな苦痛の幻覚を送り込む。金瘡執糸刀が放つ刀気によるあまりにもリアルな幻覚を受けた兼竜は、激痛に加えて実際に出血を伴うなど、戦闘不能寸前の状態にまで追い込まれる。だが、この状況を打開すべく、負傷を覚悟であえて自分自身に刀気をぶつけると、静六の刀気が余波ではじけ飛び、金瘡執糸刀から解放される。兼竜は、幻覚が消え去ったものの、自分自身への刀気による攻撃と、幻覚の後遺症により大きなダメージを負っており、全力を発揮できない状態にあった。チャンスがまだあると考えた静六は、直接金瘡執糸刀でトドメを刺そうと接近戦を挑み、割って入った甘粕政紀ごと刺し殺そうとする。だが、捕らわれた竜臣に代わって武士団を支える信念を強めた兼竜の乾坤一擲(けんこんいってき)の一撃によって逆に重傷を負い、撤退を余儀なくされる。静六を退けた兼竜はしばらく戦えない状態に陥りつつも、自身の力が上杉武士団の支えになれたことを改めて誇りに思う。

尚虎VS四郎

犬飼四郎は、宇佐美黒子の策略によって武田尚虎率いる武田武士団に包囲され、山本春雷の放った刀気による結界に閉じ込められる。黒曜の女神以外に興味を持たない四郎は彼らとの戦いを面倒と考え、無明の力を解放して結界を破り、その場から去ろうとする。しかし、尚虎から黒曜の女神を愚弄する発言で挑発されると静かに怒りを見せ、刀を使わず彼らを皆殺しにしようと目論む。四郎はまず、無明の力で尚虎や真田青志、春雷らが集っている周囲の空間を深海と入れ替えて、水圧で彼らを押しつぶそうと目論む。だが、尚虎が青羽々斬の力で周囲の水を散らし、自身も武士団の団員たちも無傷のままその場を乗り切る。四郎は、尚虎の力と信念から、自分が戦うに足る相手であることを認め、戦いは鬼鉄刀同士の打ち合いにもつれ込む。早期の決着を望む尚虎は、青羽々斬から複数の刀気を砲弾のように飛ばして四郎を仕留めようとするも、無明の空間転移能力で起動を変えられ、全弾が尚虎に命中してしまう。このことから、四郎が現在日ノ本の国に二人しかいないという白刀武士であることが判明し、武田武士団の団員たちは大いに動揺する。四郎は、青刀武士は数が多いうえに刀気が持つ特性も中途半端であることから、戦っていて面白くない凡庸な存在と断じ、尚虎をはじめとした青刀武士たちに対し、見下すどころか憐れむようなそぶりを見せる。だが、尚虎はこれに動じることなく、水と炎を自在にあやつる力を発揮して対抗する。さらに、青羽々斬に反物質をまとわせることで破壊力を強めて、四郎が気づかないあいだに強烈な一撃を加える。重傷を負った四郎はその場から撤退し、戦いは武田武士団の勝利に終わる。尚虎もまた、両腕に鬼鉄刀を振るえなくなるほどの傷を負い、武蔵たちに作戦の完遂を託す。

砲戦竜八岐大蛇制圧

武蔵の所属する砲戦竜八岐大蛇攻略部隊は、犬飼四郎の空間転移能力によって爆薬を奪われながらも、再度諭鶴羽山の攻略を目指す。部隊を総括する島津秋弘は、命令を下さないまま攻撃を始めてしまい、島津春久をはじめとした兄弟たちもそれに追随する。武蔵と尼子勝巳を含めたほかの武士たちは、やむなく独自に小鬼への攻撃を行う。ここにきて本気を出した勝巳は、秋弘に匹敵するほどの刀気を発揮し、突撃三連などの大技を駆使して、やがて小鬼たちを全滅に追い込む。障害を排除した武蔵たちは、諭鶴羽山の最深部へとたどり着き、大量に発生している鉱石を破壊しようとするが、そこに犬田八咫郎が立ちふさがる。武士としての力量が四郎や静六には到底及ばない八咫郎は、自らに付き従っていた猿渡みちるの姉妹たちを殺害して、彼女たちを構成する砲戦竜八岐大蛇の細胞を鬼鉄刀に取り込み、砲戦竜八岐大蛇との融合を果たす。その強さは圧倒的で、勝巳すら恐怖を覚えるほどだったが、なんとしても砲戦竜八岐大蛇を倒して手柄を取ることを望む秋弘は、これを千載一遇のチャンスと考え、天狼鉄脚を構えつつ、兄弟たちに自分の力を増幅させるよう命じる。だが、余裕がないことから兄弟たちから捨て駒扱いされていると思われ、孤立してしまう。秋弘がこうまで手柄に固執するのは、自分と同じく父親に冷遇されているたちを救うためで、武蔵や勝巳たちだけでなく、兄弟たちにもとげとげしい態度を取ったのも、彼らを危険から遠ざけるためだった。秋弘は、兄弟たちを大切に思う気持ちを押し殺し、彼らや武蔵たちに対して、黙って自分に刀気を出すように命令する。そして春久たちの無事を願いつつ、相打ちを覚悟で砲戦竜八岐大蛇の真角に突撃する。

武蔵VS八咫郎

武蔵や尼子勝巳、島津春久らの刀気を束ねた島津秋弘は、砲戦竜八岐大蛇に飲み込まれるも、口の中から真角を破壊しようと奮闘していた。刀気が途切れていないことから秋弘の生存を確信した春久たち兄弟は、武蔵の後押しによって秋弘の救出を成し遂げ、彼の真意を知ったことで和解を果たす。気持ちを一つにした武蔵たちは、秋弘の天狼鉄脚にありったけの刀気を集め、ついに彼の一撃が砲戦竜八岐大蛇の真角を叩き折る。これによって砲戦竜八岐大蛇の身体は崩れ去り、大量の鬼鉄と成り果てる。さらに、直江兼竜や上杉竜臣を救出した鐘巻小次郎や服部つぐみとも合流し、淡路島奪還作戦は成功を収めたかに思われた。そこに、黒い甲冑(かっちゅう)のような形をした鬼神が、巨大な鬼鉄刀を携えて現れる。鬼神の正体は、砲戦竜八岐大蛇の力を完全に自分の物にした犬田八咫郎で、先ほど倒した砲戦竜八岐大蛇は力を失った抜け殻でしかなかった。鬼鉄刀は猿渡みちるの肉体を再構成したもので、八咫郎は黒曜の女神と同等の能力を発揮できるようになったとうそぶく。上杉陣営の武士たちは、八咫郎の鬼鉄刀に刀気を根こそぎ奪われ、絶体絶命の危機に陥る。自らがオリジナルの黒曜の女神の器として君臨せんと目論む八咫郎は、武蔵に狙いを定めて、彼をかばおうとした小次郎ごと倒そうとする。そこで時間が止まり、武蔵の前に記憶を失いつつも武蔵への思いを残していたみちるが現れ、対話の末に本来の記憶を取り戻す。さらに、本物の黒曜の女神が、上杉陣営で武蔵が飲んだ血の力を目覚めさせ、武蔵の身体を一時的に強化させる。武蔵は黄金刀気を使って八咫郎を戦闘不能に陥れ、みちると八咫郎の別れを見届ける。こうして砲戦竜八岐大蛇は完全に消滅し、淡路島奪還作戦は真の意味で終わりを迎える。

武蔵とみちる

淡路島奪還作戦が終結してから半月が過ぎた。武蔵鐘巻小次郎、服部つぐみは、一時はタコ部屋送りにされたことから、目立つことを極力避けながら、紫龍城に滞在していた。そんな中、淡路島奪還作戦の功労者に、上杉竜臣から褒賞として、領地や城のほか、砲戦竜八岐大蛇の身体を構成していた鬼鉄を贈与されることが決まる。武蔵たちは、かつて不法侵入などをしてきたことから、自分たちには褒賞など与えられないと思っていた。だが竜臣は、犬田八咫郎を打倒した働きに比べれば、そのような不法は些細(ささい)なものだと切って捨てて、武蔵を上杉武士団に直々にスカウトする。しかし武蔵は誘いを断り、鐘巻武士団としてこれからも戦うことを宣言する。竜臣はスカウトをあきらめつつも、猿渡みちるの自由の保証と鐘巻自斎の捜索を条件に、武蔵が黒曜の女神の血をすべて飲み、いずれ訪れる黒曜石の八人との戦いに加わるよう依頼する。こうしてみちるは自由の身となるが、彼女の身体はすでに限界を迎えており、あとわずかで消滅することが明らかになる。武蔵とみちるは、最後の思い出作りを果たそうと、二人きりで城下町を巡る。みちるは、互いの気持ちが通っていたことに心からの幸福を感じつつ、跡形もなく消滅した。武蔵はみちるの遺志を継ぎ、今まで以上に強くなることを決意する。一方、宴会中に行方不明になっていた尼子勝巳は、復活した犬飼四郎の無明による空間転移によって連れ去られていた。勝巳は、気を失っているあいだにその場で仲間の武士を皆殺しにされた挙句、自らも犬川静六にトドメを刺されたうえで、胸に黒い鉱石を埋め込まれて蘇生(そせい)させられる。そして、彼らから八咫郎に代わる新たな黒曜石の八人として迎え入れられてしまう。

五傑将会議

猿渡みちるが死を迎えてから半月が経過し、淡路島奪還作戦に参加した上杉陣営の武士たちは正式に解散となる。上杉竜臣と武田尚虎は、残りの黒曜の女神の血を武蔵に譲り渡すことを提案する五傑将会議を開くため、五傑将の仲間である北条獅氏門、伊達宗馬、徳川翼を紫龍城に呼び寄せることを決める。この会議に参加するため、しばらくのあいだ紫龍城に留まることになった武蔵、鐘巻小次郎、服部つぐみは、島津秋弘やその兄弟、五月川早苗、種子島しげなど、いっしょに戦ってきた仲間たちに別れを告げる。そして月日が流れ、獅氏門、宗馬、翼が紫龍城へとやって来る。宗馬と翼は、五傑将が停戦の条件として、分け合った黒曜の女神の血を安易に手放すことはできないと考え、武蔵への供出を拒否する。一方、獅氏門はあっさりと武蔵に黒曜の女神の血を譲り渡すが、その理由は彼に対する期待によるものではなく、黒曜の女神に興味がないという、どちらかといえばネガティブなものだった。武蔵は証拠を見せるとばかりに黒曜の女神の力を解放するが、宗馬と翼の反応は芳しくない。そんな中、ずっと興味なさげだった獅氏門が突然小次郎の前に跪(ひざまず)き、15年前に小次郎らしき武士と会ったことがあるという。その特徴から武蔵たちは、その武士が鐘巻自斎であることをほぼ確信するが、獅氏門が言うには、その武士は「富田勢源」と名乗っていたという。勢源はかつて上杉連合に所属しており、15年前の大戦で五傑将の危機を救っていたが、その活躍を知るのは五傑将を含めたほんの僅かな武士のみだった。小次郎が勢源の息子であることを知った翼たちは、恩人の息子と、その仲間たちなら信じられるという理由から、それぞれの武士団が保有していた黒曜の女神の血を武蔵に差し出す。これで一件落着かと思われたが、そこに徳川武士団から黒曜石の八人の全員が表立って行動を起こしたことを伝えられる。さらに、武蔵の体内の黒曜石を通じた宣戦布告がなされる。武蔵は、その声の主が行方不明の尼子勝巳であることを知り、愕然(がくぜん)とする。

黒曜石の八人

犬田八咫郎に代わる八人目に尼子勝巳を迎えた黒曜石の八人は、その長兄であり指導者でもある犬塚一眞佐と、その補佐役である犬江藍二郎と犬飼四郎から召集を受ける。今まで黒曜石の八人は、鬼神の影として、彼らの活動をサポートするのみにとどまっていたが、一眞佐は、今後は五傑将をはじめとした武士団と真っ向から対決しながらあらゆる鉱山の鉱石を確保し、日ノ本の国を手中に収める方針に変更すると宣言する。それを聞いたほかの兄弟たちは、この時を待っていたとばかりに勢いづき、手始めとして真角万華鏡が反応していた摂津の多田鉱山、出羽の尾去沢鉱山のほか、鬼神がいないと思われる下野の篠井鉱山、長門の長登鉱山、筑前の筑豊鉱山、相模の丹沢鉱山、出雲の鷺鉱山に、それぞれ単独攻撃を仕掛ける。そのうえ、武蔵の体内にある黒い鉱石を通じて、新たに黒曜石の八人となった勝巳が無辜の民を躊躇なく殺害する様子をわざと知らせつつ、すべての鉱山の鉱石を黒鬼神に提供し、日ノ本の国を滅亡に追いやることを宣言する。五傑将会議に参加していた武士団の団員たちは、今まで鬼神のいるところにのみ現れていた黒曜石の八人が、突如として大規模な作戦行動に踏み切ったことに動揺する。これに対して五傑将は、作戦行動をわざわざ見せつけるのは、真の目的を悟られにくくするための陽動ではないかと考えつつも、あえて現地に兵を進めて首謀者たちを討つことを決める。その結果、丹沢鉱山に北条武士団、尾去沢鉱山と篠井鉱山に伊達武士団、筑豊鉱山に武田武士団、多田鉱山と鷺鉱山に徳川武士団、長登鉱山と土佐にある最後の鉱山に上杉武士団が出撃する。武蔵は、頼もしい仲間であった勝巳が凶行に及んだことに強いショックを受けるも、その時の様子から犬村三喜人の持つ霊幻刀にあやつられていることを見抜き、鐘巻小次郎と服部つぐみに対して、尼子にかけられた刀気を解除したいと願い出る。そして、快諾した彼らと共に、北条武士団に同行を申し入れ、彼らと共に勝巳がいると思(おぼ)しき相模へと向かう。

白獅子城

武蔵鐘巻小次郎、服部つぐみは、黒曜石の八人の手に落ちた尼子勝巳を救う術を探すために、北条獅氏門率いる北条武士団に同行する。北条武士団は「丁型」と呼ばれる、船の形状をした鬼鉄騎を所有しており、武蔵たちはそれに乗って快適な海の旅を満喫していたが、そんな彼らの前に口裂もどき鬼が姿を現す。口裂もどき鬼は、純度の高い鬼鉄で構成されている黒刀を獅氏門の身体ごと食らいつくそうとするが、獅氏門は緑刀武士の技で攻撃をあっさりと防ぎ、その場で口裂もどき鬼を両断してしまう。武蔵たちは、白刀武士である獅氏門が、緑刀武士の能力を使えることに驚く。獅氏門は赤刀武士である武蔵も、かつて黒曜の女神の力によって、黄刀闘士の技である黄金刀気を使ったことを指摘する。そのうえで、すべての黒曜の女神の血を飲みほした武蔵なら、いずれほかの魂色の力も使えるようになることを示唆するが、炎魔大太刀では不可能で、より強力な鬼鉄刀である黒刀を得るためには、「暗黒結晶」と呼ばれる、黒鬼神自らを構成する鬼鉄を鋳造しなければならないと告げる。武蔵は、そもそも生存する黒鬼神から鬼鉄を奪うなど不可能なのではないかと訝しむが、そうこうしているうちに北条武士団の本拠地である白獅子城に到着する。白獅子城は、外観、内装共に鬼神の体組織を参考に作られており、それを目の当たりにした武蔵たちはしばし呆気(あっけ)にとられる。そこに獅氏門の妹である北条玉藻が現れ、獅氏門たちを出迎える。女性に慣れていない小次郎は、ボーイッシュな玉藻をうっかり男性とカンちがいしてしまい、一時は気まずい雰囲気が流れた。だが、小次郎が鬼鉄刀の鍛冶(かじ)師として活躍する玉藻に敬意を表すると、次第に打ち解けていく。そんな中、白獅子城に飛頭蛮が襲撃してくる。飛頭蛮は、かつて武田武士団が100人がかりで討伐した炎極天狗に匹敵する力を持つ鬼神だったが、北条武士団はたった八人の青刀武士が北条式黒刀連鎖術「獅子咆哮」を使ってこれを葬り、黒刀の有用性を示す。これを知った小次郎は、武蔵のみならず自分自身も大幅な戦力強化ができることを知り、新たな鬼鉄刀の取得に意欲を見せる。

黒の鬼鉄刀

鐘巻武士団の三人は、北条獅氏門の計らいで白獅子城に滞在することになる。武蔵鐘巻小次郎は、黒刀を取得することでさらに強くなれると意気込むが、服部つぐみは黒鬼神の鬼鉄から作られるという黒刀は危険なのではないかと懸念していた。武蔵も、かつて小次郎が鐘巻自斎の消息を追うために仲間を危険な目に合わせたくないと言ったことを思い出し、尼子勝巳を救うために仲間を危機に晒(さら)すことを躊躇する素振りを見せる。北条玉藻から黒刀の錬成や、その素材である暗黒結晶の採取に危険が伴うことを聞かされた小次郎は、一度はあきらめかけるが、玉藻の前でこれ以上格好悪いところを見せたくないと思い直し、武蔵と共に暗黒結晶を採取することを決意する。そして翌日、武蔵と小次郎は黒刀の使い手を志願した北条武士団の団員と共に、最強の黒鬼神の体内へと侵入する。武蔵たちは、黒鬼神の抵抗がすさまじいものであることを覚悟するが、体内を構成する組織から散発的な抵抗こそ受けるものの、砲戦竜八岐大蛇ほど激しい攻撃が飛んでくることはなかった。同行していた風魔俊介によると、北条武士団は白獅子城で暮らすうちに鬼熱を大量に帯びるようになり、それがきっかけで黒鬼神からは配下の鬼と誤認されているのだという。武蔵と小次郎はこれを好機と考え、ぶっつけ本番で刀気の連携を試みて、これを成功させる。そして、さしたる被害を受けることもなく黒鬼神の中枢へ進入を果たし、暗黒結晶と対面する。玉藻のためにいち早く目的を果たしたいと考える小次郎は、暗黒結晶に触れたことで刀の試しを受けさせられ、意識を過去の竜山町へ飛ばされる。すでに裂空八重桜の刀の試しを通過していた小次郎は、今回も心を乱さなければ受かるだろうと考えていたが、そんな彼の前に突然自斎が現れる。

自斎と小次郎

黒鬼神の身体の中で暗黒結晶に触れた鐘巻小次郎は、強制的に刀の試しを受けている状態になって意識を過去の竜山町へと飛ばされるが、その中で鐘巻自斎と再会を果たす。自斎は、自らがすでに息絶えていることを認めつつも、小次郎や獅氏門の現在について把握していた。それどころか死を迎えた時から、15年後に自分に会いに来ることすら予期していたという。そのうえで、武蔵や小次郎が立派な武士として育ったことを喜びつつ、5年前に起こった悲劇について語り出す。かつて自斎は、武蔵や小次郎が知らないところで犬村三喜人と戦っていた。そこで後れを取った結果、竜山町の役人たちに捕まり、鉱山に無断侵入した罪を着せられ、処刑されたのだという。小次郎は、現在武蔵が倒したがっている三喜人が、父親の仇(かたき)でもあることに因縁を感じずにはいられなかった。自斎は小次郎の中に眠る力を目覚めさせたうえで、「黒曜の女神の鞘になってくれ」と言い残す。こうして武蔵と小次郎は、2度目の刀の試しに成功し、暗黒結晶ひいては黒刀の所有者として認められる。しかし小次郎は、自斎から言われたことがあまりに衝撃だったことから終始上の空で、服部つぐみからはその様子を不思議がられる。そんな中、武蔵と小次郎以外の合格者たちが、一斉に武蔵たちめがけて斬りかかってくる。これを予期していた小次郎が武蔵をかばうように身をかがめ、二人はことなきを得る。合格者たちが襲ってきたのは、三喜人の霊幻刀の効果によるもので、三喜人は彼らがしくじったことを察すると、自ら動き出して武蔵と小次郎に攻撃を仕掛ける。だが、そこに北条獅氏門が割って入り、これを阻止する。三喜人は悪びれる様子を少しも見せずに、黒曜の女神の器である武蔵を渡すようにせまる。さらに、「どうせ鞘の方も隠し持っているんだろ?」と問いかけてくる。鞘については獅氏門すら心当たりがなさそうな素振りを見せ、この事実は小次郎を困惑させる。

三喜人の襲撃

襲撃をかけてきた犬村三喜人は、霊幻刀の力で手駒にした武士たちを巧みにあやつり、北条武士団の陣営を混乱に陥れる。さらに、鐘巻小次郎が刀の試しの中で見たことを明かすと、三喜人は武蔵のみならず小次郎も標的に定める。北条獅氏門は、恩人の息子である小次郎をなんとしても守り通そうと考えるが、三喜人の真の目的は獅氏門を始末することだった。彼は犬飼四郎を狂信的なまでに崇拝しており、彼が唯一の白刀武士であることを結果的に阻んでいる獅氏門の存在が我慢ならなかったのである。三喜人は霊幻刀の力を高めて、北条武士団の武士たちを自在にあやつり、味方を相手に本気を出せない武蔵たちを圧倒しようとする。そのうえ、あやつった武士たちに刀気の連携で獅氏門を仕留めるよう指令を下す。だが、獅氏門が五色慧明の力を解放すると、黄刀武士、緑刀武士、青刀武士、赤刀武士の力を次々に使いこなし、逆に三喜人を圧倒する。三喜人はあやつっていた武士を盾にして凌(しの)ぎきるも、現段階で獅氏門を倒すのは無理と考え、四郎への手土産として小次郎の拉致を目論む。そのために、鐘巻自斎が死を迎えた本当の理由は、三喜人自身が禁を破らなければ武蔵と小次郎を殺すと脅したためであることを明かしたうえで、彼の死をさんざんに侮辱し、小次郎をおびき出そうとする。しかし、恩人である自斎を侮辱されたことで怒りを爆発させた獅氏門は、人前では滅多に見せない白刀武士としての力を発揮して、一瞬で三喜人の身体を細切れにしてしまう。こうしてひとまず危機は去り、武蔵たちは改めて、獲得した暗黒結晶を用いた黒刀の作成を依頼する。一方、小次郎は自斎や黒曜の女神の鞘についての情報を求めて、獅氏門のもとを訪れる。それを迎えた獅氏門は、自斎の死を受け入れるながら、自らと自斎の出会いについて語り始める。

鞘の一族

今より15年前、北条獅氏門は初めて鬼鉄刀の力を解放した際に、慕っていた兄である北条氏輝に刀気で大きな傷をつけて、寝たきりの状態にさせてしまう。そのショックから刀気を極端に恐れ、周囲に自分は鬼鉄刀を使うことができないと触れ回るようになる。それからいくらかの時が流れ、獅氏門はふとしたことから「富田勢源」と名乗っていた鐘巻自斎と知り合う。獅氏門と氏輝の事情を知った自斎は、兄を傷つけた事実から目をそらしてもなんの解決にもならず、いつか取り返しのつかないことになりかねないと忠告する。痛いところを突かれた獅氏門は反発するが、同時に彼に興味を抱き、親交を結ぶようになる。そんな中、砲戦竜八岐大蛇と同等の力を持つ白面金毛九尾狐と、重装攻殻御石神、そして冥王千手我者髑髏が、まったく同じ場所、同じ時期に降り立つというお告げが真角万華鏡によって下される。黒鬼神が現れて以来となる未曽有(みぞう)の事態に、現在の五傑将の兄弟、あるいは親に当たる武士たちが連携してこれの対処を行うことが決まり、間もなく大戦が始まる。戦いは熾烈(しれつ)を極めながらも、手前勝手に暴れるだけの鬼神やその小鬼たちは、連合軍の連携の前に次第に押されていく。そこに犬塚一眞佐と、彼が率いる黒曜石の八人が現れると戦況は一変し、連合軍の中核たる武士たちが次々と殺害されてしまう。獅氏門もまた、犬江蒼二郎の攻撃を受けかけるが、現れた自斎および彼の仲間である鞘の一族に助けられる。自斎は蒼二郎と犬村三勒を圧倒的な力で倒し、一眞佐の鬼鉄刀を折ることに成功するも、鞘の一族も犬飼四郎の手によってその大半が切り伏せられる。だが、これ以上の戦力の喪失は避けるべきと判断した一眞佐の指示により、3体の鬼神と黒曜石の八人は撤退する。この戦いで氏輝と父親を失った獅氏門は、自分の力を受け入れる覚悟を決め、北条武士団の新たな団長に就任する。そして、自斎から黒曜の女神と鞘の一族について聞かされたうえで、いずれ現れる息子たちと共に戦って欲しいと依頼されると、これを快く引き受ける。

メディアミックス

テレビアニメ

2022年1月から3月にかけて、テレビアニメ版の第1クール「安芸旅立ち編」が、テレビ東京、BSテレ東、AT-Xで放送された。武蔵鐘巻小次郎の旅立ちから、武蔵が黒曜の女神を得るまでの物語が展開される。制作はA・C・G・Tが担当している。監督は柳沢テツヤ、シリーズ構成は國澤真理子が務めている。キャストは、武蔵を内田雄馬、小次郎を斉藤壮馬、服部つぐみを高橋李依、武田尚虎を日野聡が演じている。さらに2022年7月から、第2クールとなる『オリエント 淡路島激闘編』が、テレビ東京、BSテレ東、AT-Xで放送。制作スタッフは前作そのままで、キャストは、上杉竜臣を前野智昭、直江兼竜を花江夏樹、島津秋弘を内山昂輝、尼子勝巳を梶原岳人が演じている。同年7月から9月にかけては、第2クール「淡路島激闘編」が放送された。

小説

2021年10月14日に、本作『オリエント』の小説版『オリエント』が、青い鳥文庫より刊行された。作者はしもっち、挿絵は大高忍が担当している。

登場人物・キャラクター

主人公

竜山町の農家に生まれた赤刀武士の少年。年齢は15歳で、身長は167センチ。命がけで夢を叶(かな)えようとする、強い意志の持ち主。竜山町では大きなつるはし型の刀を武器として使用していたが、旅先では「焔魔... 関連ページ:武蔵

鐘巻 小次郎 (かねまき こじろう)

竜山町の武家に生まれた青刀武士の少年。年齢は15歳で、身長は168センチ。鞘の一族の出身で、黒曜の女神の直系の子孫にあたる。金髪にくわえタバコが特徴。竜山町を発(た)ってからしばらくのあいだは、鬼鉄刀ではないふつうの日本刀を使用していたが、旅の途中で刀の試しに合格してからは、「裂空八重桜」と呼ばれる鬼鉄刀を獲得する。仲間思いの優しい性格で、親しい誰かを支えるために自分の力を使うことを望んでいる。武蔵が黒曜の女神の力を受け継ぐ特別な存在であることを知っても、そのことになんらコンプレックスを抱くことなく、自分にできる範囲で彼の助けになれればそれでいいと割り切っている。幼い頃から一人暮らしであったことから自活能力が高く、この点を武蔵や服部つぐみに頼られることも多い。一方、女性との接触がまったくなかったため、デリカシーに欠ける言動を取ることも少なくない。差別の対象とされる武家の生まれで、父親である鐘巻自斎から、鬼は化物であり、武士はそれを倒せる唯一の存在であるという教えを受ける。自斎が引き取った武蔵とは兄弟のような間柄で、幼少時より共に剣術の修行をし、最強の武士団を作る誓いを立てる。だが、自斎が命を落とすと一人で暮らさざるを得なくなり、やがて自給自足の生活を送るようになる。その時の苦労から一度は夢を失いかけ、鉱夫となった武蔵とも疎遠になっていた。しかし、彼が武士としての情熱を失っていないことを知ると、その危機に駆け付けた。竜山町が武田尚虎によって救われると、彼が武蔵に渡した真角万華鏡を調べることで鬼と武士についての仕組みを理解し、武蔵と共に天下統一を目指すべく旅立つ。旅の道中で服部つぐみを仲間に加えると、鐘巻武士団を結成し、武蔵の推薦を経てその団長に就任する。また、自斎が黒曜の女神となんらかのかかわりがあることを示唆されると、彼の素性を知ることを旅の目的のひとつに定める。やがて自斎の素性を知る北条獅氏門と出会い、自身の父親が15年前に大戦の勝利に大いに貢献したことや、自斎や鐘巻小次郎自身が、黒曜の女神の直系の子孫であることを知る。さらに、暗黒結晶を獲得する際に行われた2度目の刀の試しの中で、自斎の幻影と遭遇する。そして、彼から身体の中に秘められた力を目覚めさせられたうえで、「黒曜の女神の鞘になってくれ」と言い残される。

犬村 三喜人 (いぬむら みきと)

犬村三勒の死後、新たに黒曜石の八人に加わった黄刀武士の少年。「霊幻刀」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。黒っぽい肌を持ち、人前に出る際には護符のような布で顔を隠している。黒曜石の八人の中でも極めて残虐な性格で、気に入らない相手の肉体や精神を痛めつけることにまったく躊躇がない。しかし犬飼四郎のこと以外は、自分を含めて客観的に見ることが得意で、自分の手に負えないことはしっかりと認めたうえで、最善手を取ろうとする冷静さも持つ。また陣駒の名人で、あやつった武士たちを駒に見立てて戦術を組み立てることも得意としている。北条武士団からは「黄犬」のコードネームで呼ばれる。その因縁から、武蔵や鐘巻小次郎からも強く憎まれており、倒すべき敵の一人と認識されている。四郎に心酔し、黒曜石の八人が日ノ本の国を奪ったあかつきには、彼が頂点に立つ世界を実現させようと考えている。四郎以外で唯一の白刀武士である北条獅氏門を強く敵視しているため、彼を倒して四郎を無二の白刀武士にしようともくろんでいる。また、犬村三喜人自身と同様に四郎を崇拝する犬坂七緒のことも毛嫌いしており、彼女が四郎の付き人のように振る舞うことを快く思っていない。犬田八咫郎に代わる新たな黒曜石の八人の候補として目をつけられた尼子勝巳を霊幻刀であやつり、強制的に行動を共にさせている。さらに、彼を黒曜石の八人だと認識させるため、勝手に「犬村八尋」と名づける。大戦で四郎を追い詰めた鐘巻自斎を執拗に追い回しており、やがて彼が竜山町に滞在していることを知ると、直接出向いて彼と激闘を繰り広げる。その中で、町で鬼神が崇拝されていることを利用しようと思い立ち、武蔵や小次郎の命を盾にして脅し、彼が処刑されるように仕向ける。北条の陣に攻め込んだ際は、自ら自斎を陥れたと公言したうえ、彼の死をこき下ろす発言まで行ったことで、小次郎や自斎を強く尊敬する獅氏門から強い憤りを向けられる。その結果、獅氏門から白刀武士としての力を受けて消滅したかに思われた。しかし、死亡したのは三喜人の分身の一人に過ぎず、のちに本体らしき人物が黒曜石の八人の本拠地に平然と姿を現す。

飛頭蛮 (ひとうばん)

青の魂色を持つ鬼神。無数の瞳に人のような顔と、魚を彷彿とさせる胴体が特徴。北条獅氏門からは、口裂け鬼と同様に「ミシャグジ系」というカテゴリに分類されている。鬼神だけあって口裂もどき鬼とは次元の違う強さを誇り、炎獄天狗にすら匹敵するといわれているが、獅氏門からははっきり弱いと断言されている。事実、北条領の海を襲った時は、たった八人の青刀武士のみが出撃し、獅氏門が戦いに参加しないままに放たれた北条式黒刀連鎖術「獅子咆哮」を受けて窮地に陥る。

白面金毛九尾狐 (はくめんきんげのきゅうびぎつね)

赤色の魂色を持つ鬼の中で最強を誇るとされる鬼神。攻撃能力に長けており、体から高熱を放つことで周囲を瞬時に砂漠化させられる。15年前に突如として重装攻殻御石神、冥王千手我者髑髏と共に姿を現し、北条領に攻撃を仕掛けて「大戦」と呼ばれる戦いを引き起こす。その時も、全身から凄まじい勢いで炎の渦を放射して攻撃を仕掛けるものの、徳川康国の作り出す結界に阻まれ、一時はほかの鬼神ともども窮地に陥る。しかし戦場に黒曜石の八人が現れると、犬塚一眞佐の鬼鉄刀によって統率されることで逆に連合の武士たちを圧倒する。そこに「富田勢源」こと鐘巻自斎が現れ、一眞佐の鬼鉄刀が折られると、彼の指示に従って犬飼四郎やほかの鬼神たちと共に戦場から離脱する。

宇佐美 黒子 (うさみ くろこ)

上杉武士団に所属している緑刀武士の女性。年齢は25歳で、身長は172センチ。黒髪のポニーテールの髪型で、右目に走る刀傷がある。頭脳明晰で、優れた記憶力や注意力、用心深さから上杉武士団の参謀として重用されており、淡路島奪還作戦では軍師として、武田武士団をはじめとした上杉連合所属の武士たちに指令を下す立場となる。一方で、ストレス発散のために派手に散財するなど、ユニークな一面も見られる。上杉連合が播磨に集結すると、作戦遂行のためのプランを練っていたが、その矢先、主君である上杉竜臣が犬飼四郎に連れ去られ、さらに武田武士団の尚虎からも作戦には参加できないと言われてしまう。しかし尚虎との会話は、間者が潜んでいることを前提とした芝居で、水面下では尚虎と共に砲戦竜八岐大蛇や黒曜石の八人の撃破と、竜臣救出のための新たな策略を編み出す。そして、敵側の軍師的存在である犬川静六との頭脳勝負に打ち勝ち、大きな犠牲を払うことなく淡路島奪還作戦を成功に導く。

口裂もどき鬼 (くちさけもどきおに)

青の魂色を持つ野生鬼。住処は伊勢湾沖の温かい海底で、北条獅氏門からは「ミシャグジ系」というカテゴリに分類されている。かつて、砲戦竜八岐大蛇が使役していた口裂鬼と外見が酷似しており、武蔵からは口裂鬼そのものと誤認されるほどだが、実際はまったくの別種である。鐘巻武士団と北条武士団が船型の鬼鉄騎である「丁型」で北条領に向かっていたところ、水中から顔を出して進行を妨げようとする。さらに胴体部で持ち上げた丁型を武蔵たちが所持している鬼鉄刀ごと食らおうともくろみ、獅氏門を鋭い牙でかみ砕こうとする。しかし、彼が五色慧明から放った緑色の刀気で防がれ、そのまま返り討ちに遭う。なお、鬼の中では美形らしく、鬼の生態に詳しい獅氏門から容姿を褒められていた。

島津 時雨 (しまづ ときさめ)

青刀武士の青年で、島津多嘉久の甥にあたる。年齢は18歳で、身長は175センチ。「天狼鉄脚」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。島津忠雪とは双子の間柄で、身長こそ似通っているが、外見から趣味や性格まで大きく異なる。スタイルのいい女性が好みで、「自分の子供を30人くらい産んで欲しい」など、下品な冗談を言うこともある。ただし、ストレスがたまったときなどに街に繰り出す点は忠雪と変わらず、島津夏樹とも気が合う。兄弟や武士団の仲間たちと共に上杉連合に参画した際は、不真面目な面はいっさい見せることなく、部隊長となった島津秋弘に従って刀気をつなげる役割を果たしていた。淡路島奪還作戦では、手柄を焦る秋弘の部隊長命令によって刀気をつなげる役割を強制されていた。だが、やがて彼の真意を知ると、武蔵やほかの兄弟の力を秋弘につなげて、砲戦竜八岐大蛇を倒す手助けを行う。その後、ほかの兄弟と共に紫龍城に滞在していたが、そこで黒曜石の八人が土佐に侵攻したという報を聞き、兄弟たちと共に上杉武士団に助力する。

蛸壺鬼 (たこつぼおに)

緑の魂色を持つ野生鬼。植物に寄生することで根や茎を自在にあやつるほか、蔓の先端を手の形に変えて獲物を捕らえて、そのまま縛り上げる性質を持つ。播磨を目指す鐘巻武士団の前に姿を現し、鐘巻小次郎と服部つぐみを相次いで捕らえる。さらに武蔵も捕まえようと襲い掛かるが、逆に焔魔大太刀で反撃される。なお、小次郎たちの前に猿渡みちるを捕らえていたが、まとめて武蔵に奪還される。

長尾 定国 (ながお さだくに)

上杉武士団に所属している青刀武士の男性。年齢は32歳で、身長は195センチ。顎に蓄えられた髭が特徴で、薙刀のような形状をした鬼鉄刀を所有している。3703をはじめとした犬田八咫郎の娘たちが紫龍城を襲撃すると、上杉竜臣に率いられて、兼竜や政紀らと共に出撃する。そして、兼竜に刀気をつなげて、融合して巨大化した八咫郎の娘たちを倒す。しかし、その直後に現れた犬川静六から金瘡執糸刀による攻撃を受け、刀気をつなげることができなくなり、事実上の戦闘不能状態に追い込まれる。

北条 氏輝 (ほうじょう うじてる)

北条獅氏門と北条玉藻の兄で、優秀な武士。いずれ獅氏門の父親の跡を継いで、北条武士団の団長になるだろうと期待されていた。自らの地位や強さを鼻にかけることなく、心優しい性格であることから獅氏門からも慕われていた。獅氏門が目の前で刀気を発現させた時、珍しい白刀武士であることを知り、自分のことのように喜ぶ。だが、あまりにも強烈な力によって傷つけられ、寝たきりの状態にさせられてしまう。北条氏輝自身は、傷つけられたことをまったく恨んでおらず、それどころかかいがいしく介護する獅氏門に申し訳なさそうにするほどだが、その優しさが余計に獅氏門に自責の念を植え付ける結果となる。

武田 信貴 (たけだ のぶたか)

武田尚虎の兄で、かつて武田武士団の団長を務めていた青刀武士の青年。弓の形状をした鬼鉄刀を所有している。弟の尚虎同様に、青刀武士としては破格といえる戦闘能力を有するほか、すぐれた用兵術の使い手でもある。上杉龍景や徳川康国、伊達麒世宗と共に大戦に参加し、武田武士団の精鋭を率いて重装攻殻御石神に立ち向かう。その際、重装攻殻御石神が海を逆巻かせて生成した大槍を、的確な指示と自らの鬼鉄刀から放たれる刀気ですべて迎撃し、仲間たちへの被害を最小限に抑える。だが、戦場に黒曜石の八人が現れると戦況は逆転し、武田信貴自身も、魂石すら出していない状態の犬飼四郎に圧倒されてしまう。このことが、尚虎が四郎を敵視する原因の一つとなる。

犬坂 七緒 (いぬさか ななお)

黒曜石の八人に所属している緑刀武士の少女。「犰尾七鉦刀」と呼ばれる鬼鉄刀を所有し、七本の刃を同時に展開して攻撃することができる。ふだんは陣僧として活動しており、狐のようなお面をかぶっている。体内に埋め込まれている鉱石からほかの兄弟の映像を現出させ、連絡を取り合うことが可能。しっかりした性格の反面、外見やしゃべり方に幼さを感じさせる。犬飼四郎に心酔しており、彼を主人のように崇めている。一方で、犬田八咫郎から嫌らしい目を向けられることがあり、辟易している。また、四郎を崇拝する犬村三喜人からは露骨に嫌われており、犬坂七緒自身も三喜人をライバル視することがある。四郎からは三喜人ともども取るに足らない存在として冷遇されているが、それでも一途に慕い続けている。四郎が黒曜の女神の器の捜索に出ると付き人として従い、彼が天然ボケを見せるたびに冷静かつ的確な突っ込みを入れつつも、何かと身の回りの世話を焼いている。ある時偶然武蔵と出会い、互いに素性を知らないまま親しくなる。だが、彼が黒曜の女神の器と知ると、四郎のために平然と彼を犠牲にして鬼鉄刀を作るもくろみに加担する。しかし、彼が黒曜の女神の力を得たことで失敗し、鐘巻小次郎や服部つぐみとの合流を許す。この失態を挽回すべく、犰尾七鉦刀の力を全開にして、鞭剣七刀流奥義「轢殺車」を使って三人をまとめて始末しようとするが、彼らの連携の前に苦戦を強いられ、四郎によって戦線から退くように言いつけられる。その後は四郎と離れ、連絡係として独自に行動していた。やがて犬塚一眞佐によって五傑将との全面対決が宣言されると、彼の指示によって下野の篠井鉱山を襲撃し、ほかの兄弟たちと同様に「種」と呼ばれる仕掛けを施して撤退する。

重装攻殻御石神 (じゅうそうこうかくみしゃくじ)

青色の魂色を持つ鬼の中で最強を誇るとされる鬼神。青色鬼神であることから自然に干渉することを得意とする。15年前に突如として白面金毛九尾狐、冥王千手我者髑髏と共に姿を現し、北条領に攻撃を仕掛けて「大戦」と呼ばれる戦いを引き起こす。そして、巨大な渦潮を発生させたうえ、海から巨大な槍を生成して武士たちをなぎ払おうとするが、武田信貴率いる武田武士団の青刀武士たちの干渉によって思うように攻撃ができず、一進一退の攻防が続いていた。戦場に黒曜石の八人が現れると、犬塚一眞佐の鬼鉄刀によって統率されることで逆に連合の武士たちを圧倒する。だが、一眞佐の鬼鉄刀が「富田勢源」こと鐘巻自斎に折られると、一眞佐の指示に従って犬飼四郎やほかの鬼神たちと共に戦場から離脱する。

五月川 早苗 (さつきがわ さなえ)

尼子武士団に所属している緑刀武士の女性。年齢は15歳で、身長は165センチ。日本刀のような形をした鬼鉄刀を所有している。尼子武士団の中でも特に尼子勝巳を慕い、彼と共に故郷の淡路島を取り戻すことを願っている。そんな中、上杉竜臣が淡路島奪還作戦の実行を企てていることを知ると、勝巳や山中盛鹿らと共に上杉連合に参画する。そして、これが成功すると、勝巳や盛鹿ともども、砲戦竜八岐大蛇を討伐した功労者として認められる。これにより、尼子武士団の今後の展望は明るいと喜ぶが、負傷者として休んでいたはずの勝巳が行方不明になり、大きな衝撃を受ける。そのうえ、宇佐美黒子から、心配であることは上杉武士団も同じであると諭されながらも、紫龍城を退き、淡路島に帰るようにうながされる。しかし、島津武士団から移動城塞を譲られ、さらに武蔵から必ず勝巳を取り戻すと宣言されたことで不安を解消し、故郷で武士団の仲間と共に勝巳の帰りを待つことを決める。

野口 雉之介 (のぐち きじのすけ)

淡路島奪還作戦で武蔵と共闘した黄刀武士の少年。年齢は16歳で、身長は148センチ。武士としての箔をつけるため、淡路島奪還作戦への参加を志し、上杉連合に参画する。愛嬌のある外見に違わないひょうひょうとした性格で、同じ部隊に所属することになった武蔵からも、会うなり「いろいろな意味でただものではなさそう」と思われる。また、ひそかに思いを寄せていた種子島しげに振られてもまったく動じないなど、よく言えばプラス思考、悪く言えばしつこいところがある。ただし、ただの興味本位で作戦に参加したわけではなく、上杉竜臣が生死不明になって淡路島奪還作戦の発動自体が危うくなる中、多くの武士が離脱を選択しても戦場に残ろうとするなど、気骨のある一面も見せる。鬼鉄刀についての知識が豊富で、部隊長に就任した島津秋弘の傲慢な態度と、彼の命令に逆らおうともしないことに反感を抱く武蔵に対して、鬼神との戦いでは刀気の連携が何より重要であり、力量が十分な指揮官に従うことが勝利につながりやすいことを説く。その後も武蔵や秋弘、尼子勝巳らと共に戦い抜き、やがて秋弘が砲戦竜八岐大蛇を倒したことで、淡路島奪還作戦の功労者の一人に認められる。作戦終了後に開かれた祝勝会では、しげに秘めていた思いを打ち明けるが、みごとに玉砕する。

甘粕 政紀 (あまかす まさき)

上杉武士団に所属している青刀武士の青年。年齢は19歳で、身長は176センチ。日本刀の形状をした鬼鉄刀を所有している。幼少時の名前は「甘粕操丸」で、竜山町のような武士が虐げられ、鬼が信仰されている町で育つ。だが、8歳の時に直江兼竜と名乗る「直江兼高」によって鬼神が倒されると町に平和が戻り、その時の兼高の雄姿を見たことから将来の夢を武士に定める。生真面目ながらもおおらかな性格で、何事もキッチリとした兼竜からよく叱られている。また、兼竜が妻と不仲であったことを茶化すなど、遠慮のない物言いをすることが多い。彼の融通の利かない点を心配してもいるが、幼少時に救われたことや、彼が上杉武士団で最強の実力を誇る武士だと知っていることから、内心では彼を誰よりも尊敬している。一方で、酔っぱらうと七人の妻への未練を語る点には少々辟易している。淡路島奪還作戦では、柿崎景悟や長尾為国、長尾定国と連携して砲戦竜八岐大蛇の生み出した小鬼と戦っていたが、やがて犬川静六に苦戦する兼竜を救援しようと駆け付ける。静六に一撃を加えるこことそ叶わなかったが、このことが苦戦していた兼竜を奮起させ、彼が静六を退けるきっかけとなる。

黒鬼神 (こくきしん)

150年前に日ノ本の国に突如として降り立った異形で、すべての鬼の頂点に君臨する最強の鬼神。山脈を思わせるほどの凄まじい巨体を誇り、日ノ本の国土の半分を埋め尽くしている。端末として砲戦竜八岐大蛇や白面金毛九尾狐などの鬼神を各地に放っており、彼らが鉱石を取り込むことでさらなる巨大化を果たし、しまいには日ノ本の国全域が黒鬼神に食らい尽くされるともいわれている。事実、黒曜石の八人はさまざまな手段を駆使して鬼神たちに鉱石を与え、そのたびに肥大化を続けている。弱点となる角ははるか上空に存在し、武士であろうと到達不可能であるため、現時点ではまったく打つ手がない。また、体内には高純度の鬼鉄を生成する器官があり、そこに蓄えられている鬼鉄は「暗黒結晶」と呼ばれている。ほかの鬼神同様に知性らしきものは確認できず、自ら巨大化しようとする意志も持たない様子。だが、防衛本能は備わっており、ひとたび異物である人間が近づいて来れば、砲戦竜八岐大蛇の最強の矛盾以上の威力を持つ攻撃を仕掛けて即座に全滅させる。ただし、鬼熱の変化を感知する機能が備わっておらず、その影響で鬼に近い生態を得た北条武士団の団員たちを味方と誤認し、近づかれても以前ほどの激しい抵抗はしない。その結果、黒鬼神は彼らにとって最強の敵でありながら、最高の武器の素材ともなっている。

犬塚 一眞佐 (いぬづか かずまさ)

黒曜石の八人の筆頭を務めている男性。年齢は不明だが、15年前からまったく外見が変わっていない。日本刀の形状をした鬼鉄刀を所有しており、そこから放たれる刀気を用いて鬼神の行動を自在に統制することができる。必要とあらば前線に出ることをいとわない行動派で、武士としての実力も黒曜石の八人の中ではトップクラス。「富田勢源」こと鐘巻自斎からは犬飼四郎に匹敵する実力を持っていると考えられている。黒曜石の八人の役割を「鬼神の影」と例えており、彼らが鉱石を食らって肥大化し、日ノ本の国を食らいつくすことをサポートしなければならないと仲間たちに言い聞かせている。一方で、戦場では明らかに鬼神を使役する様子を見せていることから、竜山町の役人たちのように、ただ鬼神に従っているわけでもないことがうかがえる。大戦では犬江蒼二郎や犬村三勒、四郎と共に鬼神を助けるために出撃し、武田信貴を自らの手で打ち取る。さらに、自斎に蒼二郎と三勒が倒されると、弔い合戦と称してみずから自斎と正面から打ち合う。しかし、所有していた鬼鉄刀の一本を破壊されると、これ以上の戦いは無意味と判断し、四郎や白面金毛九尾狐、重装攻殻御石神、冥王千手我者髑髏と共に戦場から撤退する。それから15年のあいだは表立った行動を起こすことはなかったが、犬田八咫郎と砲戦竜八岐大蛇が倒されると本腰を入れて行動の開始を宣言する。そして仲間たちに、摂津、出羽、下野、長門、筑前、相模、出雲、土佐の鉱山を襲撃し、その中で「種」と呼ばれる仕掛けを施すように命じる。

山中 盛鹿 (やまなか もりしか)

尼子武士団に所属している緑刀武士の青年。年齢は17歳で、身長は176センチ。日本刀のような形状をした鬼鉄刀を所有している。尼子武士団の中でも地位は高く、つねに勝巳のそばに控えている。上杉竜臣が淡路島奪還作戦の実行を企てていることを知ると、勝巳や五月川早苗らと共に上杉連合に参画する。その際、同じ部隊の所属となった島津武士団の兄弟たちと顔を合わせるが、互いの認識の違いからケンカ腰になり、やがて騒動に発展してしまう。

服部 つぐみ (はっとり つぐみ)

小雨田武士団に所属していた緑刀武士の少女。年齢は14歳で、身長は146センチ。「飛燕双流剣」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。武蔵と同様に他者の心境の変化に敏感で、空気を読む術に長けている。反面、罵倒ばかりされていたことから褒められ慣れておらず、いざというときに自信を持てなかったり、お世辞を本気にしたりすることもある。また、感情によって表情が大きく変わり、泣いたり喜んだりした際は、武蔵からブサイクと言われるほど。幼い頃から武士としての鍛錬を積んでおり、身のこなしと格闘術に精通しているほか、飛燕双流剣を用いた二刀流を得意とする。緑刀武士であることから、刀気を練り上げて結界を張ることも可能。両親が亡くなると、姉である服部つばめと共に小雨田英雄に引き取られ、彼の直属の武士として励もうとする。しかし、劣悪な本性を隠し持った小雨田から日常的にモラルハラスメントを受け続け、さらに姉であるつばめを失ったことで、次第に小雨田の命令に従う以外には自分の存在価値がないと考えるようになる。しかし、武蔵と鐘巻小次郎と出会い、彼らの真っすぐな心に触れることでつばめの姿を思い出す。小雨田が木霊鬼を攻略するために領民を犠牲にしようとしていることを知ると、彼との決別を決意し、直接対決で彼を下したことで呪縛から解放される。その後は、小雨田の治めていた土地の領民にうながされて、武蔵や小次郎の旅に同行することを決める。そして、その場で武蔵の提案によって鐘巻武士団が結成されると、その一員として認められる。仲間になった当初は、長いあいだ小雨田の命令に従うばかりであったことから、ぎこちない言動を取ることもあった。しかし、やがて仲間として強く信頼するに至り、武蔵や小次郎からも頼りにされている。小雨田のことは、彼が騒動の末にすっかりしおらしくなってしまったこともあって嫌うに嫌いきれず、旅の途中に手紙のやり取りを行っている。

砲戦竜八岐大蛇 (ほうせんりゅうやまたのおろち)

緑色の魂色を持つ鬼の中で最強を誇るとされる鬼神。巨大な竜のような頭と、人間の女性のような体を持つ。緑色鬼神であることから過剰ともいえる防衛本能が備わっており、敵と認識した存在が付近に現れると、それに反応して口裂鬼を差し向けたり、最強の矛盾を使って直接攻撃を仕掛ける。ただし知性を有しておらず、自らの周囲に発生した炎に対して最強の矛盾を発射し、逆に砲戦竜八岐大蛇自身を窮地に陥れることもある。大戦が発生する数年前に姿を現し、1000人もの武士を殺害する。それ以降は表立った行動を起こさず、大戦でも姿を現すことはなかった。だが、最近になって淡路島に攻撃を仕掛けて自らの住処に作り替え、諭鶴羽山に眠っている鉱石を食らうことで成長を続けている。このことから、かつて淡路島に拠点を構えていた尼子武士団からは怨敵として憎まれている。上杉竜臣からは最優先の討伐対象として認識されており、やがて彼の手によって淡路島奪還作戦が実行されると、その生態を逆手に取った宇佐美黒子の策略によって攻撃部隊の上陸を許し、その一員であった島津秋弘の手によって角を折られる。しかし、その時に倒された肉体は抜け殻に過ぎず、力そのものはすでに犬田八咫郎に抽出されており、彼を鬼神以上の存在へと押し上げる燃料として利用される。

上杉 龍景 (うえすぎ たつかげ)

上杉竜臣の兄で、かつて上杉武士団の団長を務めていた赤刀武士の青年。当時の上杉武士団では最強の武士と認められており、弟の竜臣とは対照的に、自ら前線に出て圧倒的な力で鬼神を倒すという、赤刀武士らしい戦い方を得意としている。武田信貴や徳川康国、伊達麒世宗らと共に大戦に参加し、仲間たちのサポートを頼りに冥王千手我者髑髏の真角を折るべく突貫する。だが、黒曜石の八人のうち、四人が同時に戦場に現れるという前代未聞の事態に驚愕する。そして、信貴や麒世宗が犬飼四郎や犬村三勒に敗れる中、上杉龍景自身も犬塚一眞佐の猛攻の前に、劣勢に立たされる。

島津 忠雪 (しまづ ただゆき)

青刀武士の青年で、島津多嘉久の甥にあたる。年齢は18歳で、身長は176センチ。「天狼鉄脚」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。島津時雨とは双子の間柄で、身長こそ似通っているが、外見から趣味や性格まで大きく異なる。清楚かつ地味な異性が好みで、ストレスがたまったときなどには山本春雷や五月川早苗のような眼鏡をかけた女性に近づきたいと街に繰り出す点は時雨と変わらず、島津秋弘が女性から人気を集めていることを快く思っていない。兄弟や武士団の仲間たちと共に上杉連合に参画した際は、主に時雨と行動を共にしており、兄弟たちと淡路島奪還作戦を戦い抜く。その後、ほかの兄弟と共に紫龍城に滞在していたが、そこで黒曜石の八人が土佐に侵攻したという報を聞き、上杉武士団に助力する。

獅氏門の父親 (ししかどのちちおや)

北条獅氏門や北条氏輝、北条玉藻の父親。獅氏門の前に北条武士団の団長を務めていた男性で、厳格な性格ながら、家族や武士団の団員たちを心から大切に思っており、彼らを守るためなら率先して戦場に出ることもいとわない。用心深く、武士団にかかわる人間は、鬼以外の脅威にさらされることもあると考えている。そのため鬼鉄刀だけでなく、人間の刺客に襲われたときのためにふつうの刀も携帯しておくように獅氏門に言い聞かせている。獅氏門自らが鬼鉄刀が使えないと吹聴していた内容を疑っていないが、大戦発生時は鬼鉄刀が使えなくても、やがて生まれてくる玉藻を守ってほしいと言い残す。そして、黒曜石の八人との戦いの中で命を落とすが、その信念は獅氏門にしっかりと伝わる。

青刀武士の青年で、尼子武士団の団長の息子。年齢は16歳で、身長は166センチ。日本刀のような形状をした鬼鉄刀を所有している。幼い頃より家門の跡取りとして育てられているために面倒見がよく、その理性的な顔... 関連ページ:尼子 勝巳

百足鬼 (むかでおに)

砲戦竜八岐大蛇が使役している、緑の魂色を持つ小鬼。巨大な男性のような外見をしており、全身にまとったムカデを自由自在にあやつる能力と、鉱山の中の植物に干渉して坑道の形を変える能力を持つ。口裂鬼以上の巨体を誇るが、数は少ない。淡路島奪還作戦の妨害をもくろむ犬川静六によって諭鶴羽山の中心部に通じる坑道の門番として配置され、砲戦竜八岐大蛇を討伐するために侵入してきた武蔵や尼子勝巳、島津秋弘たち上杉連合の武士たちの前に立ちふさがる。狭い坑道内で数多のムカデを差し向けて武蔵たちを苦戦させるが、兄弟たちと刀気を連携させた秋弘の放った天狼鉄脚の一撃によって大きな手傷を負う。

犬江 藍二郎 (いぬえ あいじろう)

犬江蒼二郎の死後、新たに黒曜石の八人に加わった青年。「愛染羽々弓」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。犬塚一眞佐の補佐を行っており、彼からは犬飼四郎と同様に一目置かれている。淡路島奪還作戦によって犬田八咫郎と砲戦竜八岐大蛇が倒され、武蔵が黒曜の女神の器と判明すると、一眞佐や四郎と共にほかの兄弟たちを招集する。そして一眞佐の指示に従い、出雲の鷺鉱山に襲撃をかける。武士からは広く顔を知られているようで、行動の際はフードを深くかぶって顔を隠している。

黒曜の女神 (こくようのめがみ)

黒鬼神と同じく150年ほど前に日ノ本の国に現れたといわれている、謎の女性。すべての鬼鉄刀を支配するとされており、肉体を失った現在も、意識体をほかの人間の体に宿すことで生き永らえている。意識を宿した人間は「黒曜の女神の器」と呼ばれ、かつては鐘巻自斎が、現在は武蔵が該当する。黒曜の女神の器となった武士は、当初は忌人という状態になって鬼鉄刀を握ることすらできないが、体内の黒曜の女神とコンタクトを取ることで鬼鉄刀を使えるようになるほか、黒曜の女神に体を明け渡すことで、一時的に強力な力を発揮できる。また、五傑将の所属する武士団が保有している黒曜の女神の血を飲んだり、黒刀を振るったりすることで、白刀武士以外のすべての魂色の力を使いこなせる。なお本来、黒曜の女神の器は、かつて黒曜の女神とそのあいだに生まれたという子供の系譜である鞘の一族に限定されるはずだが、自斎と血がつながっていないはずの武蔵が黒曜の女神となった理由は明かされていない。

犬田 八咫郎 (いぬだ やたろう)

黒曜石の八人に所属している青刀武士の男性。推定年齢は35歳で、身長は191センチ。「大富道黒雷」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。黒曜石の八人になる前は豪商の生まれであったが、体が弱いことから冷遇されていた。黒曜石の八人になってからは病弱な点を克服するが、それでも犬田八咫郎自身が黒曜石の八人の中でも弱いことを自覚している。そのうえ、犬飼四郎から心ない言葉を浴びせられたり、犬川静六から弱いことを同情されたりしたため、生い立ちも相まって兄弟たちに対して強いコンプレックスを抱いている。豪商の跡取りという表の顔を使って多数の女性を誘っては、砲戦竜八岐大蛇の細胞を植え付け、猿渡みちるや3703など、鬼の特性を持った子供を産ませている。娘たちには愛情を注いではいるものの、自分が成り上がるための道具としか考えておらず、力が及ばなくなったら廃棄したり、共食いをさせようとしたりするなど、目的のためなら手段を選ばない。一方で、鬼神を素直に敬ったり、自分を客観的に分析できたりする。また、四郎や静六が並みならぬ実力を持っていることも理解しており、曲者ぞろいの黒曜石の八人にしては珍しく謙虚な一面を見せることもある。独善的であるとはいえ、かつて自身も弱者であったことから、今際の際には持たざる者に寄り添う姿勢も見せる。なお、娘たちは細胞の主である砲戦竜八岐大蛇が死ぬことで肉体が崩壊するが、犬田八咫郎自身はこのことを知らない。上杉連合が淡路島奪還作戦をもくろんでいることを知ると、四郎や静六と共にこれを阻止するべく動き出す。そして、みちるや爺をスパイとして潜入させたり、3703をはじめとした娘たちを紫龍城に派遣したりするなど暗躍するが、みちるが武蔵と惹かれ合ったうえ、上杉連合が静六の策を覆すなど、予想外の事態が続発したことで次第に追い詰められていく。起死回生の一手として、みちるの武蔵に関する記憶を消去したうえで鬼鉄刀に変貌させ、その力を用いて黒曜の女神にも近しい能力を身につけるに至る。

犬飼 四郎 (いぬかい しろう)

黒曜石の八人に所属している白刀武士の青年。推定年齢は22歳で、身長は182センチ。犬塚一眞佐と同じく15年前からまったく姿が変わっていない。「無明」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。15年前から世界でただ二人しかいない白刀武士というだけでなく、黒曜石の八人の中でも特に優れた戦闘能力を誇る。明らかにほかの七人とは異質といえるほどのカリスマを備えており、犬村三喜人や犬坂七緒といった、同格であるはずの黒曜石の八人たちからも崇拝する者が現れるほど。一方で、犬飼四郎本人は、自分以外のすべてを弱者と考えている節があり、戦場で連携することを拒むほか、力のなさに苦しむ犬田八咫郎に対して弱いことは大変そうだと面白半分に言い放ったり、慕ってくれる三喜人や七緒を平気で捨て駒として利用したりと、他者に対してなんの関心も抱いていない。人の顔をいっさい覚えず、魂色で個人個人を見分けて認識するなど、独自の価値観を持つ。さらに、気持ちの移り変わりが激しい気分屋でありながら、つねに同じ表情をしているために喜怒哀楽がわかりづらい。ただし、黒曜の女神の器である武蔵と、勝ち目のない戦いに挑もうとする鐘巻小次郎に対しては一目置いている。鬼鉄刀と黒曜の女神に対してだけは並ならぬ執着を見せており、「刀狩り」と称して武士から鬼鉄刀を奪い取ったり、生きた人間を鬼鉄刀の素材にしようともくろんだりするほか、黒曜の女神を侮辱する素振りを見せた武田尚虎に対して静かに怒りを向けたこともある。大戦では、白刀武士としての本来の力を使わないまま武田信貴を倒したうえ、「富田勢源」こと鐘巻自斎の仲間であり、彼に匹敵する力を持つ鞘の一族を次々と殺害するなど、この時点でもほかの兄弟とは明らかに次元の違う力を発揮した。また、信貴を殺害したところを彼の弟である尚虎から見られており、彼からは兄の仇と認識されている。大戦終結後は、黒曜の女神の器である自斎の捜索を三喜人に任せていたが、自斎が亡くなると新たな黒曜の女神の器を自ら探し始めて、やがて武蔵に行き当たる。当初は、彼を殺害して鬼鉄刀の素材に変化させ、それを自ら振るうことで黒曜の女神の力を我が物にしようとする。だが、それに失敗すると様子を見ることを決め、しばらくはほかの兄弟たちのサポートに徹する。

島津 多嘉久 (しまづ たかひさ)

島津武士団の団長を務めている男性。島津秋弘、島津春久、島津夏樹の父親で、複数の側室がおり、秋弘ともう一人の息子は側室との子供である。当初は秋弘にまったく興味を示しておらず、顔を合わせたこともほとんどなかった。長男の春久に家督を継がせようとしていたが、子供たちが元服を迎え、天狼鉄脚の刀の試しを行ったところ、秋弘だけが赤刀武士であることが発覚すると、当初の予定をあっさりと翻して秋弘を跡取りにすると言い出し、春久たちにも秋弘に従うように言い聞かせる。さらに、秋弘が順当に手柄を立てると島津多嘉久自身の地位が危うくなると考え、お気に入りの側室とのあいだに生まれた無能な息子を当主に据えることで引き続き島津武士団を思うがままにあやつろうともくろむようになる。そのため、邪魔になった秋弘たちを捨て駒同然の扱いで上杉連合に参画させる。このように、有能だが自分本位かつ身勝手な性格であることから、息子や甥たちからは嫌われている。

猫又鬼 (ねこまたおに)

炎獄天狗が使役している、赤の魂色を持つ小鬼。つねに複数で行動しており、竜山町の鉱山を住処としている。名前のとおり猫のような外見であるほか、瞳のない眼と星のような形状をした口が特徴。狡猾な性格で、竜山町の役人たちと結託し、彼らが町を支配する手助けをする代わりに、鉱夫となった住民たちに対し、炎獄天狗の食料となる鉱石を掘るように強制する。さらに、面白半分に鉱夫を殺害する残虐性も発揮し、そこに居合わせた武蔵を憤らせる。ただし鬼としての力は弱く、鬼鉄刀を持たない武蔵に圧倒されるほど。

島津 冬家 (しまづ ふゆいえ)

青刀武士の青年で、島津多嘉久の甥にあたる。年齢は18歳で、身長は184センチと兄弟や従兄弟の中では最も高い。「天狼鉄脚」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。 礼節を重んじており、尊敬に値すると判断すれば、年下が相手でも敬語を使う。まじめな性格で、島津夏樹が島津時雨や島津忠雪を連れて遊びに繰り出した時も、島津春久に連れ戻すべきか尋ねる。兄弟や武士団の仲間たちと共に上杉連合に参画した際は、真っ先に武蔵を信頼し、淡路島奪還作戦でも彼の行動に同調しようとする。さらに島津秋弘の真意を知ると、武蔵たちと共に秋弘の持つ天狼鉄脚に刀気をつなげて、彼が砲戦竜八岐大蛇を倒す手助けを行う。作戦終了後は、ほかの兄弟と共に紫龍城に滞在していたが、そこで黒曜石の八人が土佐に侵攻したという報を聞き、兄弟たちと共に犬村三喜人との戦いに臨む。

口裂鬼 (くちさけおに)

砲戦竜八岐大蛇が使役している、緑の魂色を持つ小鬼。人間の女性の体に巨大な顔が付いたような形状で、名前のとおり口が大きく裂けている。最強の鬼神の一体である砲戦竜八岐大蛇の配下だけあり、小鬼でありながら並の鬼をはるかに凌駕する巨体と実力を誇るほか、水の中でも不自由なく行動できる。鬼の例にたがわず鬼鉄が大好物で、船を丸ごと食らうこともある。淡路島の周辺海域に展開しており、砲戦竜八岐大蛇に近づく武士を鬼鉄騎ごと沈めようとする。淡路島奪還作戦の中で、諭鶴羽山に攻め入ろうとする上杉連合の武士たちの前に姿を現し、その巨大な口でひと飲みにしようとする。だが、陽動部隊が砲戦竜八岐大蛇の足元に油を投げ込んで火攻めを行うと、敵と誤認した砲戦竜八岐大蛇が放った最強の矛盾に巻き込まれてしまう。

阿形・吽形 (あぎょううんぎょう)

大東鉱山に居を構えている青色鬼神。鬼神としては弱い方で、炎獄天狗や飛頭蛮にも及ばないとされる。牛のような姿をした小鬼を召喚する能力を持つ。長らく眠りに就いていたが、真角万華鏡から近々動き出すというお告げが下され、それを知った武士団たちによって討伐隊が結成される。しかし、彼らが大東鉱山に赴いた時には首が切断されており、討伐隊からは阿形・吽形が何者かによって殺害されたと考えられている。一方で、姿かたちはそのままであることから、真角を折られていないのではないかという疑惑が持ち上がる。

服部 つばめ (はっとり つばめ)

服部つぐみの姉で、小雨田武士団に所属していた女性。優れた力を持つ武士で、その強さと立ち居振る舞いから、つぐみからは非常に慕われていた。一方で、「本気で好きになった人が現れたら、脱ぎなさい」と教えるなど、貞操観念がずれているという短所を持つ。現在のつぐみと同様に、小雨田英雄からぞんざいに扱われていたが、つぐみに心配をかけまいと気丈に振る舞っていた。現在は故人だが、その教えは今でもつぐみの中にしっかりと根付いている。

直江 兼竜 (なおえ かねたつ)

上杉武士団に所属している赤刀武士の青年。年齢は26歳で、身長は150センチ。幼少時の名前は「直江兼高」。「龍鎖烈陣刀」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。人や物、金があるべき場所へキッチリと収まっていることを好んでおり、ふだんは文官として数多の事務処理に忙殺されている。その小柄で冴えない姿からは一見すると武士らしくないと思われがちだが、実際は「龍神」の異名を持つ上杉武士団最強の武士であり、団長であり五傑将でもある上杉竜臣以上の実力を誇る。このことから部下たちに慕われ、竜臣や宇佐美黒子など、団の重要人物たちからの信頼も厚い。また、竜臣の軍神闘衣で強化された青刀武士が多数の刀気をつなげるという、武士の戦いを尊いものと思っている反面、少数の武士のみで行われる北条武士団の戦い方をあまり快く思っていない。私生活では若干だらしないところがあり、七回も結婚しては離縁されることを繰り返している。酒癖も悪く、酔っぱらったときに鬼鉄刀を握ると手に負えなくなると陰口を叩かれている。3703をはじめとした犬田八咫郎の娘たちが紫龍城を襲撃した際は、竜臣の軍神闘衣で強化された上杉武士団の青刀武士たちの刀気を束ねて、砲戦竜八岐大蛇に匹敵する巨体となった3703の真角を折ることで勝利へと導く。しかしその中で、犬飼四郎の手によって竜臣が生死不明になると、直江兼竜自身の至らなさを深く悔いる。そのうえ、犬川静六の金瘡執糸刀によって大きなダメージを負うが、やがて竜臣が生きていることを知ると、彼を奪還するために黒子の立てた作戦に乗り、再戦の末に静六を倒す。だが、トドメを刺すには至らず、のちに黒曜石の八人が五傑将会議の中で宣戦布告をした時に彼の姿を確認すると、仕留めきれなかったことを憤る。さらに、黒曜石の八人が大々的に襲撃しておきながら、早々に撤退したことを訝しんだ竜臣から現地の調査を任されると、そこで奇妙な痕跡を発見する。

風魔 俊介 (ふうま しゅんすけ)

北条武士団に所属している青年。優れた力を持つ武士で、主君である北条獅氏門からも信頼されている。風魔俊介自身も獅氏門を尊敬しているが、彼の居眠り癖には辟易しており、時には頰をはたいて無理やり起こすこともある。獅氏門の依頼を受けて、尼子勝巳を助けるために北条武士団と同行しようとする武蔵や鐘巻小次郎、服部つぐみに対して、北条武士団や白獅子城の詳しい情報を解説するなど、さまざまなサポートを行う。武蔵と小次郎のことは初対面の時から一目置いており、黒鬼神の内部では、二人による息の合った刀気の連携を目の当たりにして、「ただの二連鎖ながらもみごとな連携」と賞賛する。

種子島 まもり (たねがしま まもり)

淡路島奪還作戦で武蔵と共闘した黄刀武士の少女。年齢は15歳で、身長は156センチ。武士としての箔をつけるため、淡路島奪還作戦への参加を志し、従妹である種子島しげと共に上杉連合に参画する。作戦に向ける熱意は本物で、上杉竜臣が生死不明となって淡路島奪還作戦の実行が危ぶまれても、ほかの武士たちが相次いで撤退する中、しげと共に部隊に残る。黄刀武士ということもあって鬼鉄刀を使った直接対決は得意ではなく、諭鶴羽山に向かう際、現れた多数の口裂鬼を島津武士団が蹴散らしていく様子を見ては、呆気に取られていた。それでも最後まで戦い抜き、最終的には同じ部隊の島津秋弘が砲戦竜八岐大蛇の角を折り、その手助けをしたということから功労者の一人に認められる。

武田 尚虎 (たけだ なおとら)

五傑将の一人に数えられる青刀武士の青年。武田武士団の団長を務めている。年齢は27歳で、身長は175センチ。「青羽々斬」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。同じ五傑将である上杉竜臣とは特に親しく、淡路島奪還作戦では上杉連合の傘下に入って共に戦う。その実力と明朗快活な性格から、団員やその関係者たちからは兄のように慕われている。容貌がよく口も達者で、武田武士団以外の女性からの人気も高く、幼い頃は徳川翼からお嫁さんにしてほしいとねだられていた。反面、翼に思いを寄せている伊達宗馬からは、あまり快く思われていない。青刀武士でありながら、ほかの魂色の武士を圧倒するほどの実力を備えている。また、本来は鬼神にトドメを刺す役割は赤刀武士が担うが、武田武士団では例外的に武田尚虎自らが行う。尚虎が五傑将として認められているのは、その血筋や統率力のみならず、表で知られている青刀武士の中で最強を誇るからにほかならない。このことから、真田青志をはじめとする武田武士団所属の青刀武士からは特に尊敬されており、青刀武士でも努力と工夫次第で頂点まで上り詰められるという希望のよりどころにもなっている。鬼が正しいという歪んだ思想教育を施していた竜山町の欺瞞を暴いたことから、鐘巻小次郎を含む住人たちから、やがて英雄のように讃えられるようになる。一方で、戦場に現れてはおいしいところだけを持っていくなど、よく言えば豪放磊落、悪く言えば無神経と呼べることから、武蔵にはあまり快く思われていなかった。それは上杉陣営の本拠地である播磨で再会した時も同様だったが、彼が淡路島奪還作戦の激闘を経て成長したことで、やがて対等の戦友として認め合う。鬼神をはじめとした鬼たちのことは、敵ではなく対処可能な災害ととらえており、それ自体には憎しみを向けていない。しかし、鬼神の暴虐に乗じて暗躍する黒曜石の八人のことは明確に敵視しており、その存在を認める気はないと考えている。特に15年前の大戦で、犬飼四郎が武田信貴を殺害したことを今でもうっすらと覚えているため、淡路島奪還作戦で実際に相対した時は自分の手で打ち取ると宣言する。その結果、トドメを刺し損ねたものの、彼を撤退させることに成功する。

島津 夏樹 (しまづ なつき)

青刀武士の青年で、島津多嘉久の息子。年齢は17歳で、身長は166センチ。「天狼鉄脚」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。生真面目な島津春久や、冷静沈着な島津秋弘とは対照的なまでに軽い性格のムードメーカー的な存在で、気に入らないことがあると鬼鉄騎の運転が荒くなるなど、兄弟の中では最も感情的になりやすい。また顔がいい女性が好みのタイプで、他者の恋愛話に首を突っ込むことを好む。上杉連合に参画した時は、島津武士団以外を下に見ており、ほかの兄弟と同様に秋弘こそが部隊長にふさわしいと主張する。一方で、秋弘とはほかの兄弟同様、かつては仲がよかったが、現在はすっかり冷徹になったうえに手柄を立てたがる理由を知らず、戦場に出て変わってしまったと考えている。だが、淡路島奪還作戦で諭鶴羽山に潜入した際、武蔵の働きかけによって本心を理解して和解する。そして、兄弟や仲間たちと共に刀気を秋弘に託して、砲戦竜八岐大蛇を倒す手助けを行う。武蔵とは、当初は自分たちのことを調べたという事実を気味悪がっていたが、淡路島奪還作戦が終わってからは、その成功を祝った宴会の中で恋愛の話に興じるなど、すっかりなかよくなる。その後、ほかの兄弟と共に紫龍城に滞在していたが、そこで黒曜石の八人が土佐に侵攻したという報を聞き、兄弟たちと共に上杉武士団に助力する。ただし、島津夏樹自身はこの戦いに乗り気ではなく、露骨に面倒くさがる。

鐘巻 自斎 (かねまき じさい)

鐘巻小次郎の父親。孤児だった武蔵を引き取ったことから、武蔵からも父親代わりの存在として慕われている。竜山町ではほぼ唯一となる武家の身分だが、竜山町では武士が悪しき存在と認識されていたため、肩身の狭い思いを強いられる。そのことに不満を持ったり迎合したりすることはなく、武蔵と小次郎に対して武士が決して悪しき存在ではないことを教え、彼らが武士団として旅立つきっかけとなる。だが、ある時立ち入り禁止であるはずの鉱山に踏み入った罪を問われ、処刑されてしまう。小次郎からは、なぜ立ち入り禁止区域に入ったのか疑問に思われていたが、その真相は犬村三喜人から武蔵や小次郎の命をネタに脅され、鉱山におびき出された結果によるものであることがのちに判明する。さらに、黒曜の女神の直系の子孫である鞘の一族の一人であることや、武蔵の前の黒曜の女神の器だったことも明かされた。生まれ持った魂色は明かされていないが、黒曜の女神の器であることから青刀武士、赤刀武士、黄刀武士、緑刀武士の能力をすべて使用できる。このほか、武士が鬼鉄刀から放つ刀気の流れを目視し、次の行動を予測することが可能で、この二つを両立することで非常に高い戦闘能力を発揮する。15年前は「富田勢源」と名乗る傭兵武士で、上杉武士団の依頼により、鞘の一族の仲間である富田和親をはじめとした仲間と共に、大戦の救援を引き受ける。その際、北条武士団の陣営で北条獅氏門と知り合い、やがて親しくなる。そして、程なくして発生した大戦では、黒曜石の八人の介入で壊滅状態に陥った味方陣営を救うべく前線に立ち、犬江蒼二郎と犬村三勒を倒したうえで犬塚一眞佐の所持していた鬼鉄刀の一本を破壊し、彼らを撤退に追い込んだ。この殊勲から、五傑将からは英雄として讃えられるようになるが、黒曜石の一族に付け狙われていることから目立つことを好まず、北条武士団にかくまってもらう。さらに、鐘巻自斎自身の死期をすでに予期しており、獅氏門に対して「いつか自分の息子と共に戦って欲しい」と依頼する。獅氏門からは、小次郎が自斎の息子であることを明かされたことでさまざまな便宜を図るなど、現在でも強く尊敬されている。実在の人物、鐘捲自斎および富田勢源がモデル。

徳川 翼 (とくがわ つばさ)

五傑将の一人に数えられる緑刀武士の女性。徳川武士団の団長を務めている。年齢は26歳。幼い頃は朗らかな性格で、武田尚虎のお嫁さんになりたいと思っており、伊達宗馬からもひそかに好意を抱かれていた。しかし現在は厳格な性格となり、服部つぐみからも「怖い人」と評されている。一方で、宗馬が今でも自分に未練を残していることを知っており、それを利用しようとするなど、したたかな一面を持つ。上杉連合が淡路島奪還作戦を成功させ、武蔵が黒曜の女神の器であることが判明すると、彼に黒曜の女神の血を託すことを望む上杉竜臣や尚虎から、五傑将会議の招集を受ける。当初は武蔵のことを信用しておらず、黒曜の女神の血を譲ることも反対していた。しかし、会議の中で武蔵と小次郎が、大戦を勝利を導いた英雄である「富田勢源」こと鐘巻自斎の関係者であることを知ると、信頼に値すると確信し、黒曜の女神の血を武蔵に託す。

北条 獅氏門 (ほうじょう ししかど)

五傑将の一人に数えられる白刀武士の青年。北条武士団の団長を務めている。年齢は27歳。かつてはふつうの鬼鉄刀を使っていたが、現在は「五色慧明」と呼ばれる黒刀を所有している。やや童顔ながら大柄な体型で、お茶が大好物。ふだんはのんびりとした性格で、人前でも平気で眠ってしまうような少々だらしないところがある。その反面、日ノ本の国で二人しかいないとされる白刀武士の一人で、五色慧明の力を解放することで赤刀武士、青刀武士、黄刀武士、緑刀武士の力を自在にあやつり、黒曜石の八人の一人である犬村三喜人を成す術もないまま追い詰めるなど、五傑将の中でもトップクラスといえるほどの圧倒的な実力を誇る。過去の経験から、今でも自分の白刀武士としての力は危険なものだと考えているため、ふだんはほかの四つの魂色の力を使って戦っている。また、妹の北条玉藻に対しても、白刀武士としての力を見せないことはもちろん、できることなら鬼鉄刀自体から離れてほしいと考えている。鬼の生態に強い興味を持っており、「鬼が好き」と公言してはばからない。ただし黒曜石の八人のような鬼を利用したり、崇拝したりして人間を苦しめようとする存在に対しては敵意をあらわにする。幼少の頃、刀の試しに成功して初めての鬼鉄刀を獲得し、珍しい魂色である白刀武士であることを喜んでいた。だが、その力が暴走したことで大好きな兄・北条氏輝を傷つけ、寝たきりの状態に陥れてしまうと、一転して自分の力を忌み嫌うようになる。しかし、北条獅氏門自身にとってはある意味幸いなことに、氏輝を傷つけた時は周囲に誰もおらず、氏輝を傷つけた罪悪感から逃れるため、自分には鬼鉄刀はいっさい使えないと吹聴していた。しかしある時、鐘巻自斎から「逃げ続けてばかりではきっと後悔する」と諭される。さらに、大戦の中で犬江蒼二郎に襲われた時に自斎に助けられると、大戦終結後に北条武士団の団員たちに自らの過ちを詫びるとともに領土の復興を宣言する。そんな中、自斎から受けたヒントで黒刀を作り出したり、鬼の生態を解析して白獅子城を鬼神の体のように作り替えたりと活躍を続けて、誰からも認められる名君となる。自斎のことを誰よりも尊敬しており、その息子である鐘巻小次郎に対しても、当初はコンプレックスのような感情を抱いていたが、やがて彼やその友人である武蔵に助力することを惜しまなくなる。

3703 (みなみ)

犬田八咫郎の娘で、猿渡みちるの妹の一人。スパイとして潜入したみちるとは別に、上杉連合の陣営を混乱させる役割を担っている。砲戦竜八岐大蛇の細胞が移植されており、緑の刀気を自在にあやつる。人間の姿そのものであるみちるとはまったく形状が異なり、顔こそ人間の少女に近いが、全身が緑色で体には鱗や牙が点在している。このほか、真角を折られると活動できなくなるなど、姿や生態ともに人間より鬼に近い。みちるをはじめとした旧型の娘たちを快く思っておらず、公然と侮辱するほど。上杉連合が淡路島奪還作戦をもくろんでいることを知ると、黒曜石の八人の兄弟たちにいいところを見せたいと考える八咫郎の命を受けて、紫龍城の襲撃を企てる。その際に、姉妹たちと共食いを繰り返して一匹の鬼に変貌する。その体軀は、紫龍城に匹敵するほどの巨大なもので、その場に居合わせた武蔵たちをまとめて始末しようとする。さらに、そこに立ちはだかった上杉竜臣を見つけると、大将首を狙わんと襲い掛かる。しかし、彼の軍神闘衣を受けた上杉武士団の前には手も足も出ず、一方的な苦戦を強いられる。

富田 和親 (とだ かずちか)

「富田勢源」こと鐘巻自斎の仲間の一人で、鞘の一族に連なる青年。自斎にこそ及ばないものの武士として高い実力を誇り、自斎からは相棒として頼りにされている。戦術の考案や解説が得意であったり、黒刀の製法を編み出し、北条獅氏門に伝授するほどに頭脳明晰。穏やかで心優しい性格で、白獅子城に滞在していた頃は、北条玉藻の世話に苦心する獅氏門を手伝うこともあった。これらのことから、獅氏門からは自斎に並んで尊敬されている。15年前に自斎や仲間たちと共に、上杉武士団の傭兵武士として大戦に参加し、自斎に刀気をつなげることで犬江蒼二郎と犬村三勒の撃破をサポートする。しかし、仲間たちが次々に犬飼四郎に倒されたことで、自斎以外では唯一の生還者となる。大戦後は自斎と共に白獅子城にしばらく滞在するが、やがて落ち着くと自斎と共に旅に出る。出立の際の自斎の発言から、獅氏門からは富田和親自身も竜山町で暮らしていると思われていた。しかし、鐘巻小次郎とは会ったことがないことから、二人からは道中で何かあったのではないかと推測される。なお、犬村三喜人とは陣駒の名人であったり、浅黒い肌を持つなど、複数の共通点がある。

木霊鬼 (こだまおに)

青い魂色を持つ野生鬼。一体一体の力は弱く、大半の小鬼にすら及ばない。だが、群れとなって押し寄せることで大津波のような破壊力を発揮するという特性を持ち、並の武士団ではその侵攻を防ぐことすら困難になる。五月雨城に進軍した際は、その城主である小雨田英雄が領民をエサにするという卑劣な策を用いようとしたが、武蔵や鐘巻小次郎、服部つぐみによって領民が助けられたことで失敗に終わる。その結果、五月雨城の大半が破壊されたが、武蔵たちの避難勧告によって人的被害は生じなかった。なお、のちに群れからはぐれた木霊鬼が武蔵たちの所有していた刀を盗み取るという事件が発生する。

長尾 為国 (ながお ためくに)

上杉武士団に所属している青刀武士の男性。年齢は34歳で、身長は198センチ。薙刀のような形状をした鬼鉄刀を所有しており、烏帽子と鬼のような仮面をかぶっているため、その素顔はうかがい知れない。また、長尾定国とは同じ苗字で、姿も似通っているが、その関係は明らかにされていない。甘粕政紀や柿崎景悟らと同様に、ふだんは直江兼竜の近くで構えており、3703をはじめとした犬田八咫郎の娘たちが紫龍城を襲撃すると、上杉竜臣に率いられて、兼竜や政紀らと共に出撃する。そして竜臣の軍神闘衣で強化されると、刀気を兼竜につなげて、融合した八咫郎の娘を撃破する手助けを行う。

犬川 静六 (いぬかわ せいろく)

黒曜石の八人に所属している黄刀武士の青年。推定年齢は26歳で、身長は172センチ。「金瘡執糸刀」と呼ばれる鬼鉄刀を三本所有している。犬田八咫郎や尼子勝巳と同様に、黒曜石の八人になる以前の記憶を持っており、医者であった時の経験は、現在の行動理念にも強く影響している。勝利を前にした武士たちが足元をすくわれる様子を見て喜ぶような、残虐な一面を見せることが少なくない。一方、期待ゆえの重圧に苦しむ直江兼竜や八咫郎に対して、自らの過去を重ねて本気で同情したり、黒曜石の八人の仲間たちをそれとなくフォローしたりするなど、犬飼四郎に比べると他者を思いやる心を持っている。上杉連合が淡路島奪還作戦を企てると、四郎や八咫郎と共に砲戦竜八岐大蛇のサポートを任され、上杉武士団を相手取る。その際、黒い鉱石を利用した間者を紫龍城に多数差し向け、そこで得たヒントを頼りに、宇佐美黒子の策をすべて潰そうともくろむ。しかし、実際に武士団に加入したことがなく、家紋を踏むという最大のタブーについて理解せずにいたことが災いして、間者の存在に気づかれて策略を見破られてしまう。これに際して、素直に黒子が自分を上回る軍師であることを認めたうえで、自らの失態を清算すべく、自ら金瘡執糸刀を抜いて、上杉武士団最強の武士である兼竜を迎え撃つ。兼竜からは、黄刀武士であることから、剣術は及ばないだろうと侮られていたが、それを覆すかのように巧みな刀捌きを披露する。だが、甘粕政紀の救援によって奮起した兼竜に二本目の金瘡執糸刀を折られ、犬川静六自身も腹部を貫かれる重傷を負う。しかし、核となっていた黒い鉱石が無事だったことから一命を取り留め、四郎と共に本拠地に撤退する。その後しばらくは、療養と金瘡執糸刀の修理に専念していたが、やがて犬塚一眞佐の指示によって長門の長登鉱山を襲撃する。その際、兼竜から付けられた傷が完治していなかったものの、二本の金瘡執糸刀を同時に振るって敵の同士討ちを誘い、自ら攻撃を仕掛けることなく目的を達成する。

島津 春久 (しまづ はるひさ)

青刀武士の青年で、島津多嘉久の息子。年齢は18歳で、身長は164センチ。「天狼鉄脚」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。まじめで面倒見がよく、島津武士団の団員たちから慕われている。島津夏樹をはじめとした弟たちの奔放な様子に手を焼かされることもあるが、彼らの苦労も知っているため、表立って注意することはあまりない。兄弟たちの中で最も早く誕生したことから、跡取りとして育てられており、ほかの兄弟たちにもそれを認められていた。しかし、弟の一人である島津秋弘が赤刀武士であったことから、父親の独断で跡取りの座を下ろされてしまう。さらに秋弘が、欲しくもなかった跡取りの座や、それに通じる赤刀武士の力など要らなかったと感情的に口にすると、島津春久自身もコンプレックスを爆発させ、関係が悪化してしまう。一方で、秋弘が人の上に立つこと自体は理にかなっていると考えており、上杉連合に参画した時は、同じ部隊に所属することになった尼子武士団や武蔵、種子島しげたちに対し、秋弘を部隊長にするように求める。淡路島奪還作戦では、砲戦竜八岐大蛇の真角を折る役割を担うが、手柄を焦る秋弘から暴言を吐かれてしまい、一時は決定的な亀裂が生じる。しかし、武蔵の活躍によって秋弘の本心を理解し、玉砕覚悟で砲戦竜八岐大蛇に挑みかかった秋弘を救い出すと、武蔵や尼子武士団の仲間たちや、秋弘を含めた兄弟と力を合わせて砲戦竜八岐大蛇を倒す。この功績から褒章として大量の鬼鉄と移動城塞を獲得する。だが、尼子勝巳が行方不明になって不安を見せる尼子武士団に移動城塞を譲り渡し、兄弟と共にしばらくのあいだ紫龍城に滞在する。手柄を立てられたことや、秋弘と仲直りできたことに安堵するものの、島津武士団から脱走者を出してしまったことを懸念しており、今後は兄弟のみならず武士団全体の問題を解決する必要があると認識している。その後は、秋弘の希望から紫龍城に滞在するが、黒曜石の八人が土佐に侵攻を開始すると、上杉武士団の助っ人として出撃する。

犬江 蒼二郎 (いぬえ そうじろう)

かつて黒曜石の八人に所属していた青年。鬼鉄刀を使わず素手で戦うが、攻撃の際に刀気が発生することから武士であることはほぼ間違いないと考えられている。しゃべる際に「うんうん」と唸るクセがある。綺麗好きだからという理由で、戦場にいる人間を有無を言わさず「掃除」と称して無差別に殺害するなど、大雑把かつ身勝手な性格の持ち主。自らの体の周囲に展開した刀気を、拳にまとって撃ち出す攻撃を得意とする。武蔵や鐘巻小次郎らが北条領を訪れる15年前の大戦で、白面金毛九尾狐、重装攻殻御石神、冥王千手我者髑髏を援護するため、犬塚一眞佐、犬村三勒、犬飼四郎と共に北条領を襲撃する。そんな中、鬼鉄刀の力を解放できずにいた北条獅氏門を目ざわりという理由で殺害しようとするが、駆け付けた「富田勢源」こと鐘巻自斎に阻止される。負けじと三勒と共に返り討ちにしようとするが、自斎の「刀気を見る能力」で攻撃を先読みされ、防戦一方の状態に陥る。

徳川 康国 (とくがわ やすくに)

徳川翼の姉で、かつて徳川武士団の団長を務めていた緑刀武士の女性。槍のような形状の鬼鉄刀を所有している。大戦に参加した武士の中で、最も優れた緑刀武士といわれている。武田信貴や上杉龍景、伊達麒世宗らと共に大戦に参加し、刀気を集中させることで防壁を展開し、最強の赤色鬼神である白面金毛九尾狐が作り出した炎の渦を遮って味方の進軍をサポートする。また信貴や龍景、麒世宗と異なり、戦いの中で討ち死にしたという連絡が入っておらず、その生死は現在も不明となっている。

山本 春雷 (やまもと しゅんらい)

武田武士団に所属している緑刀武士の女性。年齢は22歳で、身長は152センチ。薄青色の髪で、眼鏡をかけている。真田青志と共に武田尚虎を強く慕っており、彼の側近として控えている。鬼鉄刀から鞭のような刀気を発射することが可能で、結界を張るのみならず、任務の障害になるような存在を緑刀捕縛で拘束する役割も果たす。竜山町で炎獄天狗と戦った際、割って入ろうとした武蔵の身の安全を確保するために刀気で拘束する。しかし、武蔵の力があまりに強いことから拘束を解除され、予想外の事態に大いに驚く。のちに淡路島奪還作戦で、宇佐美黒子の依頼を受けて、尚虎や青志と共に犬飼四郎との戦いに臨む。その中で、彼が無明で切り取った深海の中へと入れられ、肉体が潰れるほどの水圧を受けて絶体絶命の危機に陥る。しかし、尚虎が青羽々斬の力で深海を分解したことで、事なきを得た。

真田 青志 (さなだ あおし)

武田武士団に所属している青刀武士の青年。年齢は22歳で、身長は181センチ。山本春雷と共に武田尚虎を強く慕っており、彼の側近として控えている。かつては自分を含めた青刀武士を凡庸な存在だと考え、尚虎の真の実力を知るまでは自信を持てずにいた。しかし、尚虎が五傑将でも屈指の実力者にまで上り詰めたことから、青刀武士にはほぼ無限の可能性があることを思い知り、このことに強い誇りを抱くようになる。竜山町の戦いでは、炎獄天狗を倒すために刀気をつなぐ役割を果たしていたが、その最中に鬼鉄刀を持たない民間人である武蔵が現れ、彼が春雷の拘束を振り切って挑む様子を見て呆気に取られていた。その後も武蔵に対してはいい印象を持てず、播磨で再会した時も彼の相手をすることを露骨に嫌がっていた。

上杉 竜臣 (うえすぎ たつおみ)

五傑将の一人に数えられる黄刀武士の青年。上杉武士団の団長を務めている。年齢は29歳で、身長は187センチ。左目の眼帯が特徴。鬼神の中でも特に強大な一体である、砲戦竜八岐大蛇を討伐する淡路島奪還作戦を実行するために「上杉連合」と呼ばれる連合組織を結成し、播磨の港に連合への参加を希望する武士団を集結させる。同じ五傑将の一人・武田尚虎とは幼い頃から親交があり、淡路島奪還作戦でも自ら救援を要請する。家門や血統に重きをおいており、身内と認めた者をとても大切にする。一方で、門外の者はあっさりと切り捨てる非情な一面もあり、一時は武蔵たちを不審者として始末することも考えていた。武士としての力量は五傑将の中でも高い方ではなく、純粋な実力だけでいえば直江兼竜にも及ばない。その反面、黄刀武士の真髄である他者を強化する能力に関しては群を抜いている。それに加え、傷ついた武士を回復する能力も備えているため、上杉武士団の部下たちや五傑将たちから大いに頼られている。指揮官としてはまさに適格な能力を備えているといわれており、3703をはじめとした犬田八咫郎の娘たちが共食いを繰り返して砲戦竜八岐大蛇に匹敵する巨体になり、紫龍城を襲撃した際も、軍神闘衣を展開することで一方的な勝利に導いている。ただし、巨大かつ思考が単純な鬼神に対しては有利に立ち回れるものの、強力な力を持つ武士である黒曜石の八人とは相性が悪く、その弱みを理解している犬飼四郎に重傷を負わされた挙句人質として連れ去られ、一時は淡路島奪還作戦の実行すら危うくなりかけてしまう。だが、宇佐美黒子によって作戦の継続がなされ、上杉竜臣本人も鐘巻小次郎と服部つぐみに救出される。淡路島奪還作戦成功後は、黒曜の女神の器である武蔵を上杉武士団に迎え入れようとするものの、鐘巻武士団として戦いたいという理由からこれを断られる。しかし、武蔵の存在は近いうちに訪れる黒曜石の八人や、強力な鬼神との戦いの切り札になると確信しており、彼にすべての黒曜の女神の血を委ねるべく、五傑将会議の開催に踏み切る。

小雨田 英雄 (こさめだ ひでお)

小雨田武士団の団長を務めている黄刀武士の青年。徳川武士団の団長である徳川翼から五月雨城を預かっている。弓の形状をした鬼鉄刀を所有しており、遠距離から攻撃を仕掛けることができる。一見すると爽やかな性格で、武士団の領民を家族ととらえ、実の家族を失って一人ぼっちになったつぐみには「娘」として特に目をかけている。また、武蔵と鐘巻小次郎に対して共闘を申し出たこともある。しかしその笑顔の中には、武蔵たちが役に立たないと判断するや否や地下牢に閉じ込めたり、つぐみに執拗なモラルハラスメントを行って逆らえないようにしたりするなど、残虐な一面が見え隠れしている。武士としての実力は決して低くなく、鬼鉄刀を用いた攻撃のみならず格闘術にも精通している。五月雨城に殺到しつつある木霊鬼を倒すために領民を犠牲にしようと画策しており、これをきっかけにつぐみから決別を宣言される。これに激怒してつぐみを痛めつけようとするが、彼女の飛燕双流剣の前に敗れ、木霊鬼に城を半壊に追い込まれる。これらの出来事が重なったショックですっかりしおらしくなり、つぐみとの関係も手紙のやり取りを行う程度に改善される。

種子島 しげ (たねがしま しげ)

淡路島奪還作戦で武蔵と共闘した黄刀武士の少女。年齢は15歳で、身長は157センチ。武士としての箔をつけるため、淡路島奪還作戦への参加を志し、従妹である種子島まもりと共に上杉連合に参画する。ただし、強力な武士団に所属しているわけではなく、同じ部隊に所属することになった尼子勝巳や島津秋弘が部隊長として名乗りを上げた時も、彼らを怖いと思いながらも何もできなかった。しかし、なんの後ろ盾もない武蔵がこれに参加すると、彼に一目置くようになる。一方で、「いくら部隊長の命令でも、嫌だと思えば従わなくていい」という彼の持論を聞くと、武士の戦い方の基本である刀気の連携を知らないことを見抜き、見損なってしまう。だが、武蔵が過ちに気づいて奮起し、部隊の人間関係を改善しようとし始めると、その心意気と手腕を認めるに至る。上杉連合の中で日々を過ごすにつれて、同じ部隊の野口雉之介から思いを寄せられ、淡路島奪還作戦の成功後にとうとう告白される。しかし実際は故郷に彼氏がおり、そもそも大して交流もなかったことから、どうしてそういう流れになったのか理解できず、困惑してしまう。さらに、彼からあいさつした回数まで数えられていることを聞かされるが、それでも偏見を持ったり嫌ったりすることがないまま自然にあしらい、それを見ていた武蔵や勝巳、島津夏樹を唸らせた。

赤刀武士の青年で、島津多嘉久の息子。年齢は17歳で、身長は173センチ。「天狼鉄脚」と呼ばれる鬼鉄刀を所有し、兄弟たちの刀気を集めた蹴りによる攻撃を得意としている。上杉武士団が淡路島奪還作戦を実行する... 関連ページ:島津 秋弘

冥王千手我者髑髏 (めいおうせんじゅがしゃどくろ)

黄色の魂色を持つ鬼の中で最強を誇るとされる鬼神。ほかの二体と異なり、どのような攻撃手段を持っているのか明かされていない。白面金毛九尾狐や重装攻殻御石神と共に北条領に攻撃を仕掛けて大戦を引き起こし、黒曜石の八人の救援もあって一時は連合軍を圧倒する。しかし、「富田勢源」こと鐘巻自斎に犬江蒼二郎と犬村三勒が倒され、さらに犬塚一眞佐の鬼鉄刀が折られると、不利を悟った彼の指示に従い、戦場から離脱する。

北条 玉藻 (ほうじょう たまも)

北条獅氏門の妹で、鬼鉄刀専門の鍛冶師を生業としている女性。年齢は15歳。大戦終了後に生まれたことから、それ以前に亡くなった獅氏門の父親や北条氏輝の顔を知らずに育った。獅氏門から大切にされており、北条玉藻自身も彼を尊敬しているが、獅氏門が氏輝を傷つけた顚末を知らないため、鬼鉄刀から遠ざけられることを不満に思っている。鬼鉄から物を作りあげることを好み、ふだんは「タタラ場」と呼ばれる工房で黒刀を含めた鬼鉄刀を鋳造している。そのアクティブな姿勢やボーイッシュな風貌から、鐘巻小次郎には初対面の時に男性と間違えられてしまった。このことから、当初彼とはぎこちない関係になってしまっていたが、小次郎から鍛冶をしている姿を素直に褒められると途端に喜び、たちまち打ち解ける。ふつうの鬼鉄刀はともかく、黒刀や暗黒結晶に関してはその危険性を熟知しており、小次郎がそれを取りに行くと宣言した際は、慌てて止めようとした。しかし、そのことが逆に小次郎のプライドを揺さぶり、彼が黒鬼神に挑むきっかけとなってしまう。

(じい)

猿渡みちるの付き人として活動している、老年の男性。愛嬌のある外見と性格をしている。武士ではないが、戦車の形状をした専用の鬼鉄騎を自在にあやつれることから、みちるからも頼りにされている。鐘巻武士団が蛸壺鬼からみちるを助けると、コミュニケーションが苦手な彼女に代わって礼を言いつつ、鬼鉄騎で播磨の地まで送り届ける。その後は、上杉連合に合流したみちるのそばにはおらず、武蔵からもその存在を忘れられていた。その正体は、犬田八咫郎の作り出した生体端末のような存在。コウモリのような姿に変身が可能で、自在に空を飛び回ることができる。淡路島奪還作戦で、砲戦竜八岐大蛇の打倒と、上杉竜臣の救出を成し遂げた上杉連合の前で姿を現し、武蔵たちが倒した砲戦竜八岐大蛇は、八咫郎に力を奪われた抜け殻に過ぎないことと、今や八咫郎は黒曜の女神に匹敵する力を持つことを自慢げに語る。

炎獄天狗 (えんごくてんぐ)

竜山町の役人から崇められている赤色鬼神。猫又鬼をはるかに上回る巨体と八本の腕を持ち、手にはそれぞれ異なる武器を携えている。存在するだけで周囲に炎が巻き起こる生態を持つが、白面金毛九尾狐のように環境すら変化させるほどの力はなく、武田尚虎や北条獅氏門など、歴戦の武士には脅威と見られていない。なんらかの理由により長期間の休眠を必要としており、卵のような物体に潜みつつ、竜山町の鉱夫に集めさせた鉱石を食らっては復活の準備を進めていた。そして、5年のあいだ力を蓄え続けたことで蘇り、竜山町の鉱山を大混乱に陥れる。そこに居合わせた武蔵から最初の手柄として狙われ、彼が所有していた刀で腹部を切断される。しかし、鬼鉄刀を持たない武蔵からは致命傷を受けず、逆に武蔵と助けに来た小次郎を始末しようとする。だが、真角万華鏡の力で復活を予期していた尚虎と、彼が率いる武田武士団に狙われ、その連携に翻弄される。

猿渡 みちる (さるわたり みちる)

「猿渡武士団」という武士団の団長の娘を自称している緑刀武士の女性。「瑠璃蓮花」と呼ばれる鬼鉄刀を所有している。年上好きの武蔵をときめかせるほどの美貌を誇るが、一方で引きこもりを自称するほどの人見知りな性格の持ち主。旅の途中で蛸壺鬼に襲われ、身動きを取れずにいたところを鐘巻武士団に助けられ、しばしのあいだ同行する。三人以上で行われる会話に入ることができず、武蔵たちともぎこちない関係が続いていたが、やがて打ち解ける。播磨にたどり着く前に一度別れるが、その後鐘巻武士団が上杉連合の傘下で戦うことが決まると、偶然ながら武蔵と同じ小隊に所属する。それをきっかけに武蔵と交流し、やがて恋心を抱くようになる。その正体は黒曜の女神の器を発見するために父親・犬田八咫郎に差し向けられた「3000」と呼ばれる存在で、3703をはじめとした姉妹たちの姉にあたる。旧式であるという理由から、姉妹たちからは蔑まれることも少なくないが、娘たちの中では唯一鬼鉄刀を扱えることから、八咫郎からは特別な存在と認識されている。武蔵に対して抱いた好意は、彼が黒曜の女神の器であることとは関係なく抱いたもので、武蔵に迷惑をかけないまま任務を果たそうと躍起になる。だが、上杉竜臣からはスパイであることも武蔵と親しいことも見抜かれており、こともあろうに彼から敵の正体を見極めるために武蔵を利用される。さらに、八咫郎から武蔵を好きになったことを失敗と判断され、彼の手で拠点に戻されたうえ、武蔵に関する記憶を消される。そのうえ、砲戦竜八岐大蛇の角が折られ、犬飼四郎と犬川静六が敗北したことで窮地に陥った八咫郎により、黒き女神の大剣に変貌させられてしまう。しかし、記憶を失いながらもおぼろげながら武蔵に対する思いが残っており、このことが、武蔵が八咫郎を倒す決定打となる。

犬山 五万理 (いぬやま いまり)

黒曜石の八人に所属している赤刀武士の女性。日本刀の形状をした鬼鉄刀を所有している。真角万華鏡のような形をした魂石を複数作り出し、それに鬼鉄刀の分身をまとわせて攻撃を仕掛ける。また、自ら魂石の上にまたがることで自在に飛行することも可能。大人びた雰囲気を漂わせ、ほかの兄弟に対して姉のように振る舞うこともある。一方、戦場ではどう猛な様子を見せるなど、犬村三勒と似た特徴を持つ。淡路島奪還作戦で犬田八咫郎と砲戦竜八岐大蛇が倒されると、犬塚一眞佐から召集を受けて、五傑将を相手取って戦争を仕掛ける方針を聞かされ、彼の指示を受けて筑前にある筑豊鉱山を襲撃する。その際、自らの鬼鉄刀の力を存分に発揮し、相対した武士から大いに恐れられる。

伊達 麒世宗 (だて きよむね)

伊達宗馬の兄で、かつて伊達武士団の団長を務めていた黄刀武士の青年。「黄刀の名手」と称えられるほどの実力者で、回復に特化した刀気を用いて、鬼神との戦いで傷ついた仲間たちをたちどころに癒すことができる。大戦では、武田信貴や上杉龍景、徳川康国らと共に出撃し、最強の鬼神に数えられている白面金毛九尾狐や重装攻殻御石神の攻撃を受けた味方の武士たちを刀気で回復することで、戦線を支えていた。しかし、黒曜石の八人が現れると一気に戦線が崩壊し、伊達麒世宗自身も犬村三勒の手によって深手を負わされる。

伊達 宗馬 (だて そうま)

五傑将の一人に数えられる赤刀武士の青年。伊達武士団の団長を務めている。年齢は26歳。幼い頃から徳川翼に思いを寄せている。しかし、彼女は武田尚虎に惹かれているため、尚虎に対しては現在でも軽いコンプレックスを抱いており、彼と上杉竜臣から五傑将会議の招集を受けた際も、一度は断っている。最後は押し切られて結局は参加するものの、翼と同様に武蔵が黒曜の女神の器であることをまったく信じておらず、保有している黒曜の女神の血を渡すことにも反対する。武蔵と鐘巻小次郎が「富田勢源」こと鐘巻自斎の関係者だと判明しても及び腰だったが、翼からおねだりされることで覚悟を決め、武蔵に黒曜の女神の血を譲り渡す。

長舩 ミツル (おさふね みつる)

鐘巻武士団が大東鉱山で出会った、刀鍛冶の女性。姉御肌気質の持ち主で、年上好みの武蔵から一目惚れされる。大東鉱山で鬼鉄刀を含めた刀の販売や刀の試しの審判を行っており、初めて鬼鉄刀を手にしようとする武蔵と鐘巻小次郎に対して、刀の試しについて解説するとともに、それをうながす。武蔵が焔魔大太刀を握った際に忌人であることを確信し、初めての事態に大いに動揺する。だが、武蔵が黒曜の女神から力を授かり、彼があらためて刀の試しに合格すると自分のことのように喜ぶ。

犬村 三勒 (いぬむら みろく)

かつて黒曜石の八人に所属していた、赤刀武士の女性。華奢な容貌とは裏腹に、金棒のような形状をした鬼鉄刀を軽々とあやつる力を持つ。黒曜石の八人らしい好戦的な性格で、一見すると上品な容貌だが、ひとたび戦いになればどう猛さや残虐さを隠そうとせず、笑顔で敵兵や敵将を殺害する。大戦では犬塚一眞佐や犬江蒼二郎、犬飼四郎と共に鬼神たちを補助するべく介入し、武士の中核の一人である伊達麒世宗を打ち取るなどの暗躍を見せる。しかし、そのあとに現れた「富田勢源」こと鐘巻自斎には手も足も出ず、一方的に追い込まれる。

柿崎 景悟 (かきざき けいご)

上杉武士団に所属している青刀武士の青年。年齢は26歳で、身長は183センチ。日本刀の形状をした鬼鉄刀を所有しており、首には鎖の付いた首輪をはめている。女好きの遊び人で、鬼鉄刀が発する刀気を利用して空を飛ぶなど破天荒な遊びを楽しんでいることから、まじめな性格の苦労人である甘粕政紀とは、そりが合わない様子を見せることもある。しかし戦闘時は政紀と共に、直江兼竜を側面から支えている。3703をはじめとした犬田八咫郎の娘たちが紫龍城を襲撃すると、上杉竜臣に率いられて、兼竜や政紀らと共に出撃する。そして、竜臣の軍神闘衣で強化された腕で、融合して巨大化した八咫郎の娘の腕を引きちぎり、さらに刀気を兼竜につなげてトドメの一撃をサポートする。

集団・組織

上杉武士団 (うえすぎぶしだん)

播磨の紫龍城を拠点としている武士団。かつては上杉龍景が団長を務めており、大戦では武士たちの連合の中核の一つとなっていた。龍景が命を落としてからは、その弟である上杉竜臣が団長になっている。宇佐美黒子や直江兼竜など、一癖も二癖もあるような武士がそろっているが、竜臣自身が配下の武士たちを家族のように思っていることから結束は非常に固い。戦場では、竜臣の軍神闘衣で強化された武士たちが圧倒的な力を発揮して鬼神を翻弄し、最後に甘粕政紀をはじめとした青刀武士たちがつなげた刀気を赤刀武士である兼竜につなげてトドメを刺す戦法を用いている。一方で、団長である竜臣が黄刀武士であることから戦闘にはあまり向いておらず、彼を直接狙われると危機に陥りやすいという弱点を持ち、犬飼四郎の手によって竜臣が連れ去られた時は、準備中であった淡路島奪還作戦の実行が危ぶまれるばかりか、上杉武士団の壊滅すら危惧されるほどだった。しかし黒子や兼竜、武田武士団をはじめとした上杉連合の協力者たちの活躍によって作戦は成功し、最強の鬼神の一つである砲戦竜八岐大蛇を倒すという成果を挙げる。黒曜石の八人が日ノ本の国の鉱山に同時襲撃を仕掛けた際は、長門や土佐に進軍して犬川静六を討ち果たそうとする。だが、静六はすでに撤退したあとで、その引き際があまりにも鮮やかだったことから、襲撃以外の目的が存在することが指摘され、竜臣の命令で付近の徹底捜査を行う。

鐘巻武士団 (かねまきぶしだん)

竜山町から旅立った武蔵と鐘巻小次郎が、服部つぐみを加えた際に結成した武士団。ほぼ即席で作り出したこともあり、団員は三人と武士団としては非常に少ない。移動城塞や領土を持たず、知名度も皆無に等しい。手柄を立てる機会にも長らく恵まれていなかったが、播磨の地で成り行きから淡路島奪還作戦に参加することになる。そんな中、小次郎とつぐみは黒曜石の八人に捕らえられていた上杉竜臣の救出に成功し、武蔵は黒曜の女神の力を発揮して砲戦竜八岐大蛇の力を吸収した犬田八咫郎を倒す。この殊勲により、武蔵は上杉武士団や武田武士団から直接スカウトされるが、武蔵自身は鐘巻武士団として戦いたいという理由から辞退する。これに伴い、鐘巻武士団の名は広く知れ渡ることとなる。

上杉連合 (うえすぎれんごう)

淡路島奪還作戦を実行するため、上杉竜臣が上杉武士団を中心として結成した武士団の連合軍。五傑将である竜臣が主導しているだけあり、彼の盟友である武田尚虎率いる武田武士団が名乗りを上げたほか、島津武士団や尼子武士団など、さまざまな武士団が参画する。ただし尼子武士団は、かつての領土であった淡路島の奪還を切望し、対して島津武士団は団長の意向によってその息子たちを捨て駒同然に派遣しており、派遣された島津秋弘がこれを覆すために大きな手柄を欲しているなど、参画の目的は武士団によって大きく異なる。そのため、決して一枚岩とはいえず、盟主である竜臣が犬飼四郎の手に落ち、淡路島奪還作戦の続行が危うくなると、多くの武士たちが離脱してしまう。だが、残された武士たちの奮闘によって砲戦竜八岐大蛇の打倒および竜臣の救出が果たされ、淡路島奪還作戦は大成功という結果に終わる。戦後はそれぞれの武士団が多くの褒章を受け取り、中でも武田武士団は15万貫もの鬼鉄を獲得する。その1か月後に連合は解散となるが、秋弘の希望から紫龍城に滞在していた島津武士団は、黒曜石の八人との戦いで引き続き上杉武士団と共闘する。

北条武士団 (ほうじょうぶしだん)

白獅子城を拠点としている武士団。かつては獅氏門の父親が団長を務めており、やがて北条氏輝に継承されるはずだった。だが、氏輝が事故によって寝たきりになったことから、引き続き獅氏門の父親が団長として活動せざるを得なくなる。大戦が発生すると武士たちの連合の一角として戦うが、獅氏門の父親が戦死したうえ、身動きの取れない氏輝も戦いに巻き込まれて死亡する。北条獅氏門自身も犬江蒼二郎に狙われて殺されかけるが、割って入った「富田勢源」こと鐘巻自斎と、その仲間である鞘の一族たちに救われる。大戦終結後は、自斎と富田和親を相模にかくまい、兄を傷つけてしまったことを告白したうえで武士団の再興を宣言した獅氏門が団長となる。そして、和親から仕入れた知恵をもとに黒刀の開発が進められたり、獅氏門自身による鬼の研究の成果を白獅子城にフィードバックさせたりするなど、異例の早さで立て直しが行われ、やがて武田武士団や上杉武士団に劣らない勢力を有するに至る。団長である獅氏門の実力もさることながら、団員の多くが黒刀を所有しており、通常なら100人がかりで行う刀気の連携をわずか八人で実現できる。その技術を生かして、飛頭蛮など多くの鬼神を仕留めた実績を持つ。五傑将会議が終わると、同行を希望する鐘巻武士団を受け入れて、武蔵や小次郎と共に黒鬼神の内部へと突入し、「暗黒結晶」と呼ばれる鬼鉄の採取に成功する。さらに、犬村三喜人の分身体が白獅子城に攻め入ってくるが、獅氏門が打ち取ることで被害は最小限に抑えられる。

島津武士団 (しまづぶしだん)

上杉連合に参画した武士団の一つ。島津多嘉久が取り仕切っており、当初は彼の長兄・島津春久が家督を継ぐことになっていたが、島津秋弘が赤刀武士だと判明すると、息子やその従兄弟たちの意思をまったく無視して彼に跡取りを切り替えようとした。この影響で、秋弘とほかの兄弟や親族たちとのあいだに溝ができるなどの悪影響を及ぼした。さらに、秋弘が順当に手柄を立てることで立場が危うくなると考えた団長の悪だくみから、捨て駒同然の扱いで上杉連合に参加させられる。しかし秋弘はここで手柄を立てれば、島津武士団における兄弟や従兄弟の地位が安泰であると考え、淡路島奪還作戦でなんとしても活躍しようと意気込む。手柄を焦る秋弘と兄弟たちの溝があらためて表層化したり、上杉竜臣が犬飼四郎に捕らえられたことで団長から撤退命令が出たりするなど、相次いでトラブルに見舞われるが、武蔵の協力によって再び団結を果たし、秋弘が砲戦竜八岐大蛇の角を折るという殊勲を達成する。その結果、竜臣から多くの鬼鉄に加えて移動城塞を褒章として受け取り、秋弘たちが島津武士団から独立することも可能となる。だが、このまま島津武士団から逃げることをよしとせず、主君である尼子勝巳が行方不明になって途方に暮れる尼子武士団に移動城塞を譲り渡す。その後は領地に帰ることを渋っていた秋弘の意向によって紫龍城に滞在していたが、黒曜石の八人が日ノ本の国の鉱山に同時襲撃をかけると、これを阻止すべく上杉武士団と共に出撃する。

小雨田武士団 (こさめだぶしだん)

かつて服部つぐみが所属していた武士団。団長は小雨田英雄が務めている。徳川武士団の下位組織といえる武士団で、徳川翼から預かった五月雨城を拠点としている。一見すると結束が固く、外から訪れる武蔵や鐘巻小次郎に対しても当初は友好的に接する。しかし実際は、独善的な小雨田が恐怖によって支配しており、団員や五月雨城の領民たちは肩身の狭い思いを強いられていた。木霊鬼が五月雨城に殺到してきた際も、小雨田の意向から領民をおとりにして被害を抑えるという劣悪な作戦が展開されかけたが、これに反対したつぐみや武蔵たちによって阻止される。その結果、五月雨城の大半が木霊鬼に飲み込まれ、小雨田本人もショックで気落ちしてしまう。ただし今のところ、翼からこの失態に対する処分は下されていない。

武田武士団 (たけだぶしだん)

日ノ本の国で二番目に大きいとされる武士団。かつては武田信貴が団長を務めており、大戦では武士たちの連合の中核の一つとなって、重装攻殻御石神を翻弄するほどの活躍を見せる。信貴が大戦の中で命を落としてからは、その弟である武田尚虎が団長となる。真田青志をはじめ、団員には青刀武士が多いが、これは数の多さから凡庸であるといわれがちな青刀武士たちが、尚虎から青刀武士が持つ無限の可能性を示されたことに起因する。優れた緑刀武士である山本春雷が緑刀捕縛で鬼神を拘束し、そのスキに青刀隊突撃陣「碧天鶴翼」で100人分もの刀気を束ねてぶつけるという戦い方を得意とする。竜山町に現れると、そこで猛威を振るっていた炎獄天狗を撃破し、そこに居合わせた武蔵や鐘巻小次郎を保護する。さらに竜山町の役人たちの腐敗を暴くと、住民たちに深く感謝されて彼らの武士に対する偏見を払しょくするが、武蔵からは手柄を奪われたという理由から快く思われなかった。のちに尚虎の盟友である上杉竜臣の依頼を受けて上杉連合の一員として、淡路島奪還作戦に参加する。そんな中、尚虎が犬飼四郎を退けると、その褒美として15万貫もの鬼鉄を獲得してさらなる勢力拡大を果たした。黒曜石の八人が日ノ本の国の鉱山に同時襲撃を仕掛けた際は、彼らの一派を討ち果たすべく筑前に進軍する。

黒曜石の八人 (こくようせきのはちにん)

100年ほど前に現れて以来、武士でありながら鬼に利する行為を働いている謎の八人組。全員が首輪を付けており、五傑将からは「黒犬」と呼ばれる。犬塚一眞佐が筆頭を務め、その側近として犬江藍二郎と犬飼四郎が控えている。構成員は全員が体内に黒い鉱石を宿しており、それを破壊されない限りは何度でも復活することが可能。また人間とは異なる生態で、老けることがない。さらに構成員が死を迎えても、ほかの武士に黒い鉱石を植え付けることで新しく補充することが可能で、犬江蒼二郎の代わりに藍二郎が、犬村三勒の代わりに犬村三喜人が、犬田八咫郎の代わりに「犬村八尋」こと尼子勝巳が補充される。竜山町の役人たちのように鬼に付き従ってるわけではなく、八咫郎以外の兄弟たちは鬼神に対して忠誠心が皆無であるどころか、むしろ下に見るような言動を取ることも少なくない。特に一眞佐は、鬼鉄刀の力で逆に鬼神を統率している。兄弟と認識し合うなど構成員同士の仲はよく、特に四郎は同じ黒曜石の八人である三喜人や犬坂七緒から強く慕われている。鬼神の手助け以外に黒曜の女神やその器の捜索を目的としており、その役割はもっぱら黒曜の女神に対して強い愛情を持つ四郎が担当している。本来は歴史の裏で暗躍する集団であったが、最強の鬼神の一つである砲戦竜八岐大蛇が倒され、黒曜の女神の器である武蔵が発見されると、表立って五傑将をはじめとした武士たちに宣戦布告を行う。

鞘の一族 (さやのいちぞく)

歴史の裏で鬼神や黒曜石の八人と戦い続けていたという一族の総称。「富田勢源」こと鐘巻自斎や、その息子である鐘巻小次郎、富田和親が該当する。全員が黒刀を武器として使用しており、のちに北条武士団にその製法を伝授する。150年前、現世に降臨した黒曜の女神が一人の武士と恋に落ち、その子孫が鞘の一族になったという。そのため、刀気の流れを読み取るといった、ふつうの武士では実現不可能な能力が備わることもある。現在は黒曜の女神本人と並んで、黒曜石の八人から付け狙われており、できるだけ目立たないようにすることを心がけている。15年前に発生した大戦では、黒曜石の八人や鬼神たちとの対戦で窮地に陥った武士たちの前に現れ、犬江蒼二郎と犬村三勒を倒したほか、犬塚一眞佐の持っていた鬼鉄刀を折るなどの活躍を見せる。ただし、その戦いの中で犬飼四郎に一族の仲間たちを殺害されるなど、鞘の一族自体も少なくない損害を被る。自斎や和親もこの戦いで負傷したため、療養のためにしばらく北条武士団のもとに身を寄せる。その際、新たに北条武士団の団長となった北条獅氏門に黒刀の製法などを伝授し、彼からは恩人として慕われるようになる。なお、黒曜の女神の力を体内に宿して鬼神や黒曜石の八人と戦う「黒曜の女神の器」は、本来は自斎の息子である小次郎がなるはずだったが、現在はなぜか鞘の一族ではない武蔵に継承されている。

伊達武士団 (だてぶしだん)

五傑将の一角である伊達家が率いている武士団。大戦では武士たちによる連合の中核の一つとなり、当時団長だった伊達麒世宗をはじめとした黄刀武士たちが、傷ついた武士たちの回復や強化を担っていた。しかし、この戦いで麒世宗が犬村三勒に殺害されると、その弟である伊達宗馬があとを継いで団長となる。黒曜石の八人が日ノ本の国の鉱山に同時襲撃を仕掛けた際は、彼らの一派を討ち果たすべく、出羽と下野に部隊を分けて進軍する。

尼子武士団 (あまこぶしだん)

上杉連合に参画した武士団の一つ。かつて淡路島を拠点としていたが、数年前に砲戦竜八岐大蛇の襲撃を受けて避難を余儀なくされ、故郷を失う。移動城塞も持たないために流浪の武士団となるものの、上杉竜臣が淡路島奪還作戦を志していることを知ると、迷わずこれに同調する。そして、団長の息子である尼子勝巳や、山中盛鹿、五月川早苗など、若手の武士を派遣する。淡路島奪還への熱意は非常に強く、竜臣が犬飼四郎に捕らえられて作戦の遂行が危うくなり、連合から離反者が相次いでも誰一人作戦への意欲を失わないほど。その結果、勝巳たちが所属した部隊の隊長である島津秋弘が、砲戦竜八岐大蛇の角を折るという成果を挙げ、尼子武士団自体もそれに助力したとして特別報酬の一部を獲得する。故郷の奪還が達成されたことは団員たちに大いに喜ばれるが、その矢先に勝巳が行方不明になり、一転して不安に駆られる。だが、これを察した島津武士団から移動城塞を譲られ、武蔵からも勝巳を取り戻す意思を示されると、彼らを信じて淡路島で勝巳の帰還を待つことを決める。

徳川武士団 (とくがわぶしだん)

五傑将の一角である徳川家が率いている武士団。かつては徳川康国が団長を務め、大戦では武士たちによる連合の中核の一つとなり、白面金毛九尾狐の熾烈な攻撃から連合への被害を防ぐ。その後の顚末は語られていないが、大戦が発生してから15年のあいだに団長の交代が行われ、現在は康国の妹・徳川翼が団長を務めている。また、小雨田武士団を傘下に収めており、その団長である小雨田英雄に五月雨城を任せている。黒曜石の八人が日ノ本の国の鉱山に同時襲撃を仕掛けた際は、彼らの一派を討ち果たすべく、出雲と摂津に部隊を分けて進軍する。

イベント・出来事

五傑将会議 (ごけつしょうかいぎ)

淡路島奪還作戦の約1か月に、上杉竜臣と武田尚虎が五傑将を招集することで行われた会議。当初は尚虎を快く思わない伊達宗馬が参加を渋っていたが、ほかの五傑将の執り成しによって最終的には参加に同意され、無事に開催することができた。議題は、今後激化するであろう鬼神や黒曜石の八人との戦いに備えて、新たに黒曜の女神の器となった武蔵に、それぞれの武士団が保管している黒曜の女神の血を譲り渡すというもの。当初、武蔵が黒曜の女神の器であることをみな信じられず、黒曜の女神自体に興味がない北条獅氏門以外からは黒曜の女神の血の提供を渋られる。しかし、武蔵と鐘巻小次郎が、大戦の英雄であった「富田勢源」こと鐘巻自斎の親族であることが知られると、満場一致で武蔵に黒曜の女神の血を譲り渡すことが決まる。

淡路島奪還作戦 (あわじしまだっかんさくせん)

上杉竜臣が立案し、上杉連合が実行に移した一大作戦。砲戦竜八岐大蛇の打倒と、彼に制圧された淡路島の奪還が主な目的となる。上杉連合には、母体となる上杉武士団に加えて、竜臣と個人的な親交がある武田武士団や、淡路島を故郷に持つ尼子武士団など、各国からの精鋭が集っており、いかに最強の鬼神である砲戦竜八岐大蛇が相手でも成功率は低くないと見られていた。だが、これを妨害しようともくろむ黒曜石の八人によって竜臣が連れ去られると、連合から脱走者が続出し、作戦の遂行は一気に危うくなる。なお、鐘巻武士団の三人は、もともとこの作戦に参加するつもりはなかった。だが、武蔵が敵の一人である犬田八咫郎と因縁ができたことで、参戦を決める。また、上杉武士団の宇佐美黒子からも、作戦の成功には黒曜の女神の器である武蔵の存在が不可欠と断言される。

大戦 (たいせん)

15年前に発生した、白面金毛九尾狐、重装攻殻御石神、冥王千手我者髑髏と、それに抵抗する複数の武士団の連合による戦争。ことの発端は黒鬼神に次ぐ力を持つという三体の鬼神が同時に、同じ場所に現れるという真角万華鏡の予言によるもので、彼らに立ち向かうために武士団の連合が結成され、現在の五傑将の親族である上杉龍景や武田信貴、徳川康国などが参戦する。戦いは一進一退を繰り返すが、連携することを知らない鬼神たちに対して、やがて武士団の連合が有利に立ち回る。だが、そこに黒曜石の八人が現れ、犬塚一眞佐の鬼鉄刀によって鬼神やその小鬼たちが連携を始め、さらに犬江蒼二郎、犬村三勒、犬飼四郎が連合の主要人物を次々に殺害したことで、一転して危機に陥る。しかし、そこに参戦した「富田勢源」こと鐘巻自斎の活躍で蒼二郎と三勒が討ち果たされ、一眞佐も鬼鉄刀を失い、四郎や鬼神たちと共に撤退する。この結果から、自斎は参戦した武士たちから殊勲者として讃えられる。だが、目立つことをよしとしない自斎たちは、表舞台に立たず白獅子城にかくまってもらう道を選ぶ。

場所

五月雨城 (さみだれじょう)

徳川武士団の指揮下にある移動城塞。現在は徳川武士団の団長を務める徳川翼が、その配下に当たる小雨田武士団の団長・小雨田英雄に統治を任せている。小雨田の統治によって表向きは平和が保たれているように見えるが、小雨田は恐怖で人々を支配しており、服部つぐみを含めた領民たちは彼に逆らえずにいる。さらに、訪れた武蔵や鐘巻小次郎を傭兵武士として召し抱えようとするが、彼らが鬼鉄刀を持たないことを知ると、無実の罪を着せて投獄する。やがて、木霊鬼が襲撃しようとしている事態が発覚すると、小雨田の意向によって住民たちを犠牲にする作戦が展開されることになる。だが、これに反発したつぐみが脱走した武蔵と小次郎の助けを借りて、小雨田を制圧すると作戦は中止となり、城の大部分が破壊されたものの、住民たちは全員無事に保護される。

大東鉱山 (だいとうこうざん)

服部つぐみを仲間に加えた武蔵と鐘巻小次郎が最初に訪れた鉱山町。鉱山の奥で眠っている阿形・吽形が動き出すという予言が万華鏡から下され、それを知った多くの武士団たちや、彼らを相手に商売をしようとする商人など、さまざまな人たちが集結している。商売道具の中には焔魔大太刀や裂空八重桜といった、長舩ミツルが率いる刀鍛冶たちが鋳造した鬼鉄刀もあり、これを競り落とすための刀の試しも開催されている。武蔵と小次郎も刀の試しに参加し、小次郎は裂空八重桜の持ち主に認められるが、武蔵は忌人であることが判明し、鬼鉄刀を扱うことができない可能性を示唆される。そんな中、阿形・吽形が動き出し、その小鬼たちが町を襲撃したことで、いよいよ討伐隊が動き出す。しかし、犬飼四郎と犬坂七緒がひそかに行動を起こしており、武蔵や小次郎たちもその暗躍に巻き込まれてしまう。

日ノ本の国 (ひのもとのくに)

武蔵や鐘巻小次郎をはじめとした武士たちの国。周囲が海に囲まれている島国で、大きな戦などもなく平和な日々が続いていた。だが、150年前に突如として黒鬼神が飛来し、日ノ本の国の国土の半分ほどが、その体内に収まってしまう。黒鬼神は成長を続けており、最終的には日ノ本の国全土が住民ごと黒鬼神に飲み込まれ、滅び去るといわれている。さらに、黒鬼神の端末といえる鬼神たちが各地に現れると、「鬼熱」と呼ばれる気配が充満する。その影響から髪の色が変化したり、鬼鉄と反応する気配を発するようになったりと、人間の体にもさまざまな変化が発生する。やがて鬼鉄刀を武器に鬼と戦う武士が現れ、至る所で鬼と武士の戦いが繰り広げられる。一方、鬼神に力を貸してその成長を助ける黒曜石の八人が暗躍を始めると、戦いは混迷を極めていく。なお、海を渡ったはるか先には「大陸」と呼ばれる地域が存在する。しかし、日ノ本の国の住民たちが到達したという話は今のところなく、前人未到の地とされている。

竜山町 (たつやまちょう)

安芸に存在する鉱山町で、武蔵や鐘巻小次郎が暮らしていた場所。主な産業は鉱業で、町の中にある「竜山鉱山」と呼ばれる鉱山で多数の鉱夫が働いている。鬼神を崇める役人たちの支配下にあり、武士は残虐非道な化物といわれ、鬼は善なる守り神として崇めるように情報操作をされている。さらに、武蔵と小次郎を人質にするように嘯(うそぶ)いた犬村三喜人の企てによって鐘巻自斎を公開処刑したり、鬼神への捧げものとなる鉱石を採掘している鉱夫が猫又鬼に襲われていたりと、至る所に歪みが発生している。武蔵と小次郎は、自斎から武士に関する正しい知識を得ていたが、自斎が死亡すると、生きていくために武士としての生活をあきらめざるを得なくなる。やがて5年のあいだ眠りに就いていた炎獄天狗が復活し、そこに居合わせた武蔵や小次郎を殺害しようとするが、真角万華鏡から復活を予期していた武田武士団が炎獄天狗を倒し、役人たちの悪行を暴いたことで追放に追いやり、ようやく平和が訪れる。この戦果から、武蔵を除いた竜山町の住人たちは武田武士団や、その団長である武田尚虎を英雄のようにもてはやすようになる。

諭鶴羽山 (ゆづるはやま)

淡路島の中心部に位置する巨大な鉱山。潤沢な鉱石を狙った砲戦竜八岐大蛇が制圧してからは、食糧庫として利用されている。宇佐美黒子からは、諭鶴羽山に眠る鉱石を破壊することで砲戦竜八岐大蛇の活力源を奪えると推測しており、このことから淡路島奪還作戦の最優先目標の一つに指定されている。本来はだだっ広い坑道で構成されているはずだったが、緑の魂色を持つ砲戦竜八岐大蛇が自然へ干渉を行ったことで植物が異常活性しており、その影響で迷宮のように入り組んでいる。上杉連合の精鋭たちが淡路島で砲戦竜八岐大蛇の足止めをしているあいだに、武蔵や尼子武士団、島津武士団を擁する部隊が突入する。だが、犬川静六はこのことを見越しており、坑道内に百足鬼をはじめとした護衛用の小鬼を派遣する。また静六のほか、犬飼四郎や犬田八咫郎も滞在しており、八咫郎がもしものときに備えて、砲戦竜八岐大蛇の力を利用する算段を立てていたことが判明する。

白獅子城 (はくじしじょう)

北条武士団が所有している移動城塞。北条獅氏門や北条玉藻、風魔俊介が滞在している。獅氏門の父親が団長だった頃から使用されており、その時はふつうの移動城塞と大して変わらなかった。しかし獅氏門が団長になってからは、彼が研究してきた鬼神の生態の再現が試みられ、現在は強力な鬼神のような外見になっている。それに伴い、高濃度の鬼熱がつねに充満している状態になっており、北条武士団の武士たちが黒鬼神から味方と誤認される状態になっている。また「タタラ場」と呼ばれる特殊な鍛冶用設備が存在し、日ノ本の国で唯一、黒刀の鋳造が可能。五傑将会議終了後は相模にある鉱山の付近に停泊しており、新たな黒刀を作り出すために黒鬼神の体内に眠る「暗黒結晶」と呼ばれる鬼鉄を採掘するべく準備が進められていた。そして俊介や、彼に連れられた武蔵や鐘巻小次郎によって無事に暗黒結晶が回収されると、その場で刀の試しが行われる。刀の試し自体は成功に終わり、そのスキを見計らっていた犬村三喜人の分身体に襲撃を受けるものの、獅氏門によって阻止される。

紫龍城 (しりゅうじょう)

上杉武士団が所有している移動城塞。上杉竜臣や宇佐美黒子、直江兼竜らが滞在している。現在は淡路島奪還作戦の準備のために播磨に滞在しており、上杉連合の本拠地としても利用されている。広いうえに入り組んでいることから隠れる場所には困らず、武蔵たちが情報収集のために内部に潜入したこともある。また五傑将に運用されているだけあり、その堅牢さは確かで、3703をはじめとした犬田八咫郎の娘たちから襲撃をかけられた時も、大した損害を受けずに退けることに成功する。淡路島奪還作戦成功後は、殊勲者の表彰や作戦の成功を祝う宴会などが行われ、連合が解散するまでの1か月のあいだ、所属する武士団たちによって滞在されるが、その最中に潜入してきた犬飼四郎に尼子勝巳が拉致されてしまう。上杉連合の解散後は、武蔵に黒曜の女神の血を譲り渡す相談のために五傑将会議が開かれた。なお、島津武士団は連合が解散してからも紫龍城に滞在し続け、黒曜石の八人が日ノ本の国全域の鉱山に同時に襲撃をかけた際は、兼竜らと共に土佐へ進軍する。

その他キーワード

天狼鉄脚 (てんろうてっきゃく)

島津武士団で運用している鬼鉄刀。ほかの鬼鉄刀とは異なって量産されており、島津秋弘のほか、島津春久や島津夏樹、島津時雨、島津忠雪、島津冬家に愛用されている。飛燕双流剣のように格闘術を補強する役割を持ち、足にはめて蹴り上げることで鬼神たちを倒すことができる。また、天狼鉄脚同士での刀気の伝達は、ほかの鬼鉄刀を介するよりスムーズに行うことが可能で、百足鬼との戦いでは秋弘以外の五人がすさまじい速度で秋弘の天狼鉄脚に刀気を収束させ、一撃で仕留めるほどの威力を発揮する。

武士団 (ぶしだん)

鬼神から人間の世界を取り戻すため、戦い続けている武士の集団。真角万華鏡と絵巻物で鬼神を探し出し、実際にその場に赴いて討伐するというパターンで行動している。移動の方法は武士団によってさまざまだが、専用の鬼鉄騎を扱うことが多く、規模の大きい武士団は本拠地である移動城塞を使って直接移動することもある。また、優れた青刀武士を多く擁する武田武士団は、100人分もの刀気を連携させた青刀隊突撃陣「碧天鶴翼」を使いこなし、上杉武士団は上杉竜臣の軍神闘衣で強化した武士たちが一斉に攻撃を仕掛けるなど、得意とする戦法も武士団によって大きく異なる。

真角万華鏡 (しんかくまんげきょう)

鬼が出現する場所を指し示す役割を果たす六角柱の結晶体。覗き込むことで次に活動を開始する可能性が高い鬼の姿が映し出され、さらに絵巻物と照合することで、その鬼の現在地が示される。これらの特徴から、鬼を退治する役割を担う武士団には必須の道具となっている。複数の武士団が臨機応変に連携できるのも、この道具の恩恵によるところが大きく、大東鉱山で阿形・吽形が活動の兆候を見せ始めた時も、多くの武士が一堂に会して討伐隊が結成されるほど。武蔵は竜山町を訪れた武田尚虎から、「炎獄天狗を仕留められなかった残念賞」と称してこれを渡され、その時の不敵な様子に憤慨していた。しかし、のちに鐘巻自斎の家にあった絵巻物と照合することで武士の本当の役割を知り、彼や鐘巻小次郎が竜山町を旅立つきっかけとなった。

最強の矛盾 (さいきょうのほこたて)

砲戦竜八岐大蛇の使用する能力の一つ。八つある口から放たれる巨大な緑色の光線で、砲戦竜八岐大蛇が危機を感じた際に、その原因と思われる場所に向けて自動的に発射される。敵を倒す最強の矛の特徴と、自分の身を守る最強の盾の特徴を兼ね備えていることから、上杉武士団によって「最強の矛盾」と名づけられた。けた違いの威力を持つことから、優れた武士であってもしのぎ切るのは困難だが、細かい発動条件を設定できないという欠点を持つ。宇佐美黒子はこれを利用し、砲戦竜八岐大蛇の足元に炎を巻きあげ、そこに最強の矛盾を撃たせることで、敵への被害を広げることに成功する。

黄金刀気 (おうごんとうき)

武蔵が、上杉武士団の保有していた黒曜の女神の血を飲んだことで使用可能になった技の一つ。その場にいるほかの武士が持つ鬼鉄刀の力を解放し、その刀気の色をすべて強制的に黄色に変化させて、武蔵自らを強化する。強化された武蔵は、軍神闘衣をまとった上杉武士団や、黄色の魂色で自らを強化した北条獅氏門などと同じように全身が黄色の刀気に包まれる。ただし彼らとは異なり、体全体を覆うように魂石と刀輪が発生し、いわば武蔵の体が鬼鉄刀そのものになったような見た目となる。強化の度合いも凄まじく、黒き女神の大剣で強化され、軍神闘衣をまとった武田尚虎や直江兼竜を一方的にあしらうほどの力を得た犬田八咫郎を、拳の一撃で撃破するほど。

飛燕双流剣 (ひえんそうりゅうけん)

服部つぐみが愛用している鬼鉄刀。腕輪の側面に刃がついた二振りの小刀で、刀気をまとってつぐみの得意とする格闘術を補助する役割を担う。また、つぐみが緑刀武士であることから、刀気を束ねて防御壁を展開したり、左右両方の刃から同時に緑刀捕縛を繰り出したりすることも可能。なお、かつてはつぐみの姉である服部つばめが使用しており、つぐみにとっては姉の形見となっている。

鬼鉄騎 (きてつき)

鬼鉄で作られた乗り物の総称。動力には「動力結晶」と呼ばれる魂石が使われており、一般的な乗り物と異なって燃料の補給を必要としない。鐘巻小次郎が鐘巻自斎から譲り受けたバイク型や、猿渡みちると爺が乗っていた戦車型、北条武士団で運用されている「丁型」と呼ばれる船型など、さまざまなバリエーションがある。武士は基本的に、真角万華鏡と絵巻物が指し示した鬼の居場所に自らの足で向かう必要がある。そのため、鬼鉄刀や移動城塞に次いで重要なアイテムとなっており、高額で取り引きされる傾向にある。また、鬼鉄刀と違って使うために刀の試しのような儀式を受ける必要はなく、知識と技術があれば誰でも乗りこなせる。

突撃三連 (とつげきさんれん)

尼子勝巳が使用する技の一つ。鞘から抜いた鬼鉄刀を構えたまま目標に向けて突進し、すれ違いざまに三回斬りつけて納刀する。威力より手数を重視する技で、刀気をまとっていないことから鬼を直接倒すほどの威力は持たない。ただし、切れ味は真角以外の体を切断できるほど鋭く、再生するまでのあいだ敵の動きを封じられるなど、優れた使い勝手を誇る。淡路島奪還の中で砲戦竜八岐大蛇の差し向けた小鬼に対して使用され、その鮮やかな太刀筋で武蔵たちを驚かせた。

刀気 (とうき)

武士が鬼鉄刀の柄を握ることで発生するエネルギー。刀気の色は鬼鉄刀を使う武士の魂色に対応しており、赤刀武士や青刀武士、白刀武士の発する刀気は純粋な破壊のための力で、緑刀武士の刀気は防御や拘束に適しており、黄刀武士の刀気は敵対する武士の洗脳や神経への作用、味方の武士の身体強化や回復に利用できるなど、その特性も魂色によって大きく変化する。なお、鬼の急所である「真角」を折るためには、その強度を上回る刀気をぶつけるか、刀気をまとった鬼鉄刀で斬りつける必要がある。

鬼鉄刀 (きてつとう)

刀身に鬼鉄が含まれている刀の総称。鬼を完全に倒すことのできる唯一の武器で、オーソドックスな日本刀のようなものから、槍や杖、籠手、具足、弓など、さまざまな形状のものが存在する。基本的には一品だけのものが多いが、天狼鉄脚のように量産されている鬼鉄刀もある。刀の試しで認められた武士が構えることで、その武士の魂色に対応した刀輪と魂石が発生し、刀気を放ったり、常人をはるかに上回る力や速度を発揮したりすることができる。放たれた刀気をつなげると、その出力を強化することも可能で、大抵の武士は「武士団」と呼ばれる集団を結成して、複数で鬼と戦う傾向にある。

黒き女神の大剣 (くろきめがみのたいけん)

犬田八咫郎が砲戦竜八岐大蛇から奪い取った力をもとに、猿渡みちるを変化させることで誕生した鬼鉄刀。黒曜の女神の力を限定的に引き出すことが可能で、かつての八咫郎はおろか、砲戦竜八岐大蛇すら上回る強大な力を発揮できる。サイズ自体も相応に大きく、さらに八咫郎自身も大幅に強化されていることもあり、軍神闘衣で強化された武田尚虎や直江兼竜を一撃で戦闘不能に追い込むほどの威力を発揮する。

鬼熱 (きねつ)

北条獅氏門によって発見された、鬼鉄から放たれている波動。人間の眼には見えず、鬼だけがこれを感じ取ることができる。人間の体にわずかながら影響を与えており、かつての日ノ本の国の住民は、例外なく黒い髪の毛だったが、黒鬼神が現れてから10年ほど経過すると、彼が放つ鬼熱の影響でさまざまな色に変化するようになる。また、鬼が同属とそれ以外を見分けるためのセンサーとして機能しているが、鬼熱を大量にまとうことでこれをごまかすことができる。これに着目した獅氏門は、黒鬼神の体内に入って「暗黒結晶」と呼ばれる特殊な鬼鉄を入手するために、武具や鬼鉄騎、移動城塞を鬼とほぼ同質の素材で組み上げ、つねに大量の鬼熱を浴びるように仕向ける。その結果、見た目こそそのままだが体質が鬼に極めて近くなり、黒鬼神を不完全ながら欺くことに成功する。

魂石 (こんせき)

武士が鬼鉄刀の力を引き出した際に、刀輪と共に現れる物質。刀の試しを成功させた時に体から発生することもある。刀気が具現化したものであり、発生させた武士に対応した魂色の特徴を持ち、実際に触れることも可能。さらに刀気と同様に、鬼鉄刀の使い手の意のままにあやつることができ、犬山五万理は発生させた魂石に乗り込み、自由自在に飛び回ることで敵対する武士を欺いた。また刀気による攻撃を用いず、純粋に鬼鉄刀で斬りつけるだけなら魂石を出す必要はない。事実、剣士としても無類の強さを誇る犬飼四郎は大戦でいっさい魂石を使わない状態で武田信貴や鞘の一族の精鋭たちと戦い、白刀武士であることを悟られないまま彼らを倒すことに成功する。

裂空八重桜 (れっくうやえざくら)

鐘巻小次郎が愛用している鬼鉄刀。スマートな日本刀のような形状で、焔魔大太刀と同じく六分一合の鬼鉄が使用されている。もとは長舩ミツルが率いる鍛冶師たちの手によって生み出されたもので、大東鉱山付近の街で競りに出されているところを小次郎に選ばれ、彼の手によって刀の試しが行われる。刀の試し自体はつつがなく終わり、小次郎の愛刀として認められると、その場で阿形・吽形の差し向けた小鬼を倒すために振るわれる。その際、軽く振るっただけで刀輪が発生し、ふつうの刀とはけた違いの破壊力を発揮する。黒鬼神の体内では、彼を防衛の器官との戦いの中で、武蔵の持つ焔魔大太刀に刀気を連携させて、強い破壊力を発揮することに成功する。ただし、北条獅氏門からは「小次郎は黒刀に持ちかえることでさらなる力を発揮できる」といわれるなど、現時点で彼の全力を引き出しているとは言い難い。

鐘巻一心流破壊術「大刀殺し」 (かねまきいっしんりゅうはかいじゅつだいとうごろし)

武蔵が鐘巻自斎の残した修行帳を見ることで会得した技の一つ。「連撃を以て一穴を為し、一穴を以て千丈の堤を斬る」の掛け声とともに、つるはし状の刀で地面の一点を連続で突き刺す。もとは名前のとおり、敵の武器を破壊するためのもので、これを考案した自斎は、実際にこの技を使って自分の物よりはるかに大きく頑丈な太刀を叩き折ったことがある。武蔵はこれを応用し、炎獄天狗を武田武士団より先に仕留めようと思い立ち、この技で大地を叩いて地割れを起こすことで、炎獄天狗へ接近するきっかけをつくり出した。

青羽々斬 (あおのはばきり)

武田尚虎が愛用している鬼鉄刀。刀身の長い日本刀のような形状をしている。刀気を具現化して複数の魂石を召喚し、そこから高出力の刀気をレーザーのように撃ち出せる。また、水と炎を自在にあやつる力を持ち、マグマや水を瞬時に分解したり、「炎虎」「水虎」と呼ばれる二匹の獣の姿に練り上げて敵にけしかけたりもできる。そのため炎獄天狗のような、火を用いて攻撃してくる鬼神に対して特に有利に戦える。また、尚虎自身が青刀武士であることから刀気の伝達能力にも秀でており、武田武士団の団員たちの刀気を集めることで青刀隊突撃陣「碧天鶴翼」を発動できる。さらに熱と冷気を分子レベルで反応させて、あらゆる防御を無効化する破壊を引き起こすことも可能で、この能力で犬飼四郎の展開した鉄壁の防御を崩したこともある。

絵巻物 (えまきもの)

鐘巻自斎が自宅で大切に保管していた書物の一つ。鬼や武士の歴史などについて書かれている。それに加え、真角万華鏡と照合することで次に活動を開始する可能性の高い鬼神の居場所を知ることも可能。武蔵と鐘巻小次郎は、自斎の自室を探る中で絵巻物を発見し、武士の使命や役割を学ぶ。さらに、真角万華鏡と照合することで鬼退治を進められることを知ると、その先にある天下統一を目指して竜山町を旅立つ。

青刀武士 (せいとうぶし)

青色の魂色を発現させた武士。武士の中では飛び抜けて人口が多く、鐘巻小次郎をはじめ、大半の武士が該当する。刀気同士を連結する術に長けており、鬼との戦いでは刀気をつなげてほかの武士の力を上昇させることが主な役割とされている。純粋に数が多い点に加えて、強力な力を持つ赤刀武士や特殊な能力を使用できる緑刀武士、黄刀武士、白刀武士と比べると、中途半端とみなされる場合が多く、それが理由で青刀武士と判明した武士が悲観することもある。しかし実際は、敵の青刀武士の刀気の連携を奪い、仲間たちの力として振るうことができるなど、ほかの武士とは比較にならない応用力を備えている。そのうえ、優れた力を持つ青刀武士は、自然現象に干渉することすら可能で、武田尚虎は青刀武士でありながら大半の赤刀武士を凌駕するほどの戦闘力を発揮できる。さらには黒刀を得ることで新たな戦いを実践できるなど、工夫と努力次第では、ほかの魂色の武士を大きく超えられる可能性を持っている。

鞭剣七刀流奥義「轢殺車」 (べんけんななとうりゅうおうぎれきさつぐるま)

犬坂七緒が使用する技の一つ。刀気をまとった犰尾七鉦刀を七つに分解させて、それらを緑色の刀気を使って回転させつつ敵にめがけてぶつける。分解された犰尾七鉦刀は七緒の意のままに動くほか、同時に複数をけしかけることも可能。持ち主である七緒を戦闘不能にすれば解除されるものの、それを達成するには七つの刀をすべて回避しなければならず、武蔵や鐘巻小次郎ですら成し得なかった。一方、犰尾七鉦刀の耐久性に問題があるという欠点を持ち、それに着目した武蔵によって七つのうちの一つを破壊されてしまう。

五色慧明 (ごしきけいみょう)

北条獅氏門が愛用している黒刀。大型で切れ味も鋭く、襲ってきた口裂もどき鬼の真角を容易く切断するほど。獅氏門の潜在能力を引き出すための仕掛けが組み込まれており、緑色の刀気をまとって防御したり、黄色の刀気で使用者の力を増大させたりするなど、白刀武士として力のみならず、ほかの魂色の力も自在に引き出せる。そのほか、犬村三喜人が白獅子城に襲撃を仕掛けてきた時は、彼が霊幻刀であやつった武士たちによる刀気の連携を青色武士の力で奪取し、その力を赤刀武士の力で束ねたうえで放出するという攻撃を仕掛けたこともある。さらに長槍に変形させることも可能で、刀と槍の形態を使い分けることで距離を選ばない戦いを実現できる。なお、獅氏門が本来の白い刀気を扱うときは使用されない。

焔魔大太刀 (えんまのおおたち)

武蔵が愛用している鬼鉄刀。巨大な蛮刀のような形状で、六分一合の鬼鉄が使用されている。もとは長舩ミツルが率いる鍛冶師たちの手によって生み出されたもので、大東鉱山付近の街で競りに出されているところを武蔵が気に入り、彼の手によって刀の試しが行われる。一度は黒い鉱石の影響で失敗に終わったが、犬坂七緒や犬飼四郎との戦いの中で黒曜の女神との融合を果たすと、体内の刀気が安定したことで二度目の刀の試しに成功する。それからは武蔵の手によって振るわれ、多くの鬼を撃破する。破壊力に特化しており、赤刀武士である武蔵と相性がいい。ただし、黒曜の女神の力を引き出すようにはできておらず、黒曜の女神の血が覚醒して黄金刀気を発現させた時は、焔魔大太刀を使わず素手による攻撃で戦っている。さらに北条獅氏門からも「黒曜石の八人と真っ向から戦うには、より強力な鬼鉄刀が必要」といわれるなど、焔魔大太刀より強力で武蔵に適した鬼鉄刀が存在することが示唆されている。

霊幻刀 (れいげんとう)

犬村三喜人が愛用している鬼鉄刀。刀身と同等の長さを持つ柄が特徴。刀身の先から鎖のような形をした刀気を飛ばし、巻き付けた相手を自在にあやつることができる。操作可能な対象は鬼神にも及び、相模を襲った際は、山のように大きな鬼神を二匹同時に操作し、立ちはだかる武士たちを圧倒するほど。だが、この鬼鉄刀の本質は敵の武士を同士討ちさせられることにあり、三喜人は霊幻刀の刀気を巻き付けた武士たちをあらかじめ潜入させておき、混乱を起こすことで目標を達成するという手段を好んで遂行する。また、敵の攻撃に対する盾としても有効に作用したりと、残虐な本性を持つ三喜人にふさわしい鬼鉄刀となっている。なお、新たに黒曜石の八人となりながら、意思を保っている尼子勝巳を無理やり従わせるためにも使われており、このことからつねに三喜人が勝巳のそばについている。そのため、武蔵は三喜人を倒すか夢幻刀を破壊することで、勝巳を取り戻せるのではないかと推測する。

瑠璃蓮花 (るりれんげ)

猿渡みちるが愛用している鬼鉄刀。日本刀のような形状を持つ。また、ほかの鬼鉄刀と異なって刀身が真っ黒だが、黒刀というわけではない。スパイ疑惑をかけられた武蔵を上杉武士団から救出するために使われた。その際、刀気を用いて複数の武士を殺害せずに制圧しているが、どのような方法であったかは明らかにされていない。犬田八咫郎の手でみちる自身が黒き女神の大剣になったことで、この鬼鉄刀も失われた。

大富道黒雷 (おおとのくろいかづち)

犬田八咫郎が愛用する鬼鉄刀。軍刀のような形状をしている。構えることで30近くの刀輪を発生させ、そこから同時に刀気を打ち出すことができる。犬飼四郎の無明による空間転移で目の前に現れた武蔵に対して振るわれ、鬼鉄刀を持たない彼を一方的に圧倒し、やがて彼を窮地に追い込む。だが、諭鶴羽山での再戦では、八咫郎が砲戦竜八岐大蛇の力を奪ったことで黒き女神の大剣を得たため、大富道黒雷が使われることはなかった。

移動城塞 (いどうじょうさい)

一部の名の知れた武士団が拠点として使用している、空中を移動する能力を備えた城。上杉武士団が所有する紫龍城や、北条武士団の白獅子城などが該当する。真角万華鏡と絵巻物が指し示した鬼の居場所に直接出向き、万全の状態で戦闘が可能になるため、鬼神との戦いの効率が飛躍的に向上する。なお、徳川武士団が小雨田武士団に五月雨城を預けたり、淡路島奪還作戦の功労者に上杉竜臣が新しい移動城塞を与えたりするなど、複数の動城塞を持つ武士団が、褒美や統治権の授与などの理由でほかの武士団に移動城塞を譲ることもある。

黄刀武士 (おうとうぶし)

黄色の魂色を発現させた武士。上杉竜臣や犬村三喜人、犬川静六などが該当する。赤刀武士や青刀武士のような破壊や、緑刀武士のような防御、拘束とは異なり、他者の肉体や精神に作用する刀気の操作を得意としている。作用の方向性はさまざまで、竜臣の軍神闘衣や伊達麒世宗の回復能力のように、人体にいい影響を与えるものから、三喜人の霊幻刀のように敵の武士を洗脳したり、静六の金瘡執糸刀のように刀気の流れを断ったり人体に悪影響を及ぼしたりするなど、使い手によって大きく変化する。なお、黒曜の女神の器である武蔵は、竜臣が秘蔵していた黒曜の女神の血を飲み干すことで、赤刀武士でありながら黄刀武士の技である黄金刀気を使いこなせるようになる。

赤刀武士 (せきとうぶし)

赤色の魂色を発現させた武士。伊達宗馬や直江兼竜、島津秋弘などが該当する。鬼鉄刀の持つ破壊力を引き出す術に長けており、単体では白刀武士の次に高い戦闘能力を発揮する。そのうえ、青刀武士から刀気を受け取ると強力な鬼神の真角を容易く折ることもできるため、武士団では鬼神へのトドメを刺す役割を担う場合が多い。さらに、白刀武士の次に希少であることから武士団の団長に推薦されるケースも多く、島津多嘉久が当初長男の島津春久を跡取りにしようとしていたところ、ろくに目をかけていなかった秋弘が赤刀武士である事実が発覚するや否や、彼を跡取りに挿げ替えようとするほど。なお、武蔵も本来は赤刀武士だが、鐘巻自斎から黒曜の女神の器を継承し、黒曜の女神の血を飲み干したことで、青刀武士や緑刀武士、黄刀武士の能力も発揮できるようになる。

愛染羽々弓 (あいぜんはばゆみ)

犬江藍二郎が愛用している鬼鉄刀。弓のような形状をしており、貫通能力と誘導性能を備えた刀気を、遠距離から一度に複数飛ばすことができる。優れた破壊力と距離を問わない戦い方ができることが特徴で、藍二郎が出雲に襲撃をかけた時は、雷のような軌跡を描く刀気を大量に飛ばして、鉱山の守備についていた武士たちを次々と殺害する。

緑刀捕縛 (りょくとうほばく)

服部つぐみや山本春雷、山中盛鹿など、多くの緑刀武士たちが使用する技の一つ。鬼鉄刀から鞭のような形状の刀気を飛ばして、敵対する武士や鬼の動きを封じることができる。主に拘束目的で使用され、優れた使い手になると巨大な鬼神の動きすら完全に封じることができる。鬼鉄刀や、そこから放たれる刀気を直接押さえつけることも可能で、つぐみはこの能力を用いて犬坂七緒の犰尾七鉦刀を直接抑え込み、鞭剣七刀流奥義「轢殺車」を破るきっかけをつくったことがある。

五傑将 (ごけつしょう)

日ノ本最強と謳われる五人の武士。天下統一に最も近いといわれており、現在は武田尚虎、上杉竜臣、北条獅氏門、徳川翼、伊達宗馬の五人が該当する。かつては天下統一を視野に入れて行動していたことから手柄を争っていたが、黒曜石の八人や竜山町の役人のように鬼に与(くみ)する人間が現れて鬼神との戦いが不利になり始めたことをきっかけに、黒曜の女神の血をそれぞれの武士団が管理するという条件をつけて、有事の時は強力し合うように同盟を結ぶ。15年前の大戦では、主に五傑将の親族が中心となって鬼神と戦っていたが、黒曜石の八人の参戦で危機に陥ったところを「富田勢源」こと鐘巻自斎や、その仲間たちに救われる。そのため、現在の五傑将は自斎を英雄視しており、中でも獅氏門にとっては恩人のような存在になっている。現在も五傑将同士のいざこざが皆無というわけではないが、それ以上に黒曜石の八人に対する敵意が強いことから、団結されている。さらに、武蔵や鐘巻小次郎が自斎の親族であることが発覚すると、彼らを中心に鬼神や黒曜石の八人と戦う態勢が整いつつある。

緑刀武士 (りょくとうぶし)

緑色の魂色を発現させた武士。徳川翼や服部つぐみ、猿渡みちる、宇佐美黒子、犬坂七緒など、主に女性の武士が該当する。ほかの武士と比べて守備に秀でており、鬼の攻撃から身を守るための結界を張ることができる。展開できる結界の強度は使い手の能力によって大きく左右し、中でも優れた使い手である徳川康国の結界は、最強の破壊力を誇るという白面金毛九尾狐の攻撃を受けても傷一つ付かないほど。また、ほとんどの緑刀武士が緑刀捕縛を使えることから、それを使って鬼の動きを封じる役割を担う場合も多い。

青刀隊突撃陣「碧天鶴翼」 (せいとうたいとつげきじんへきてんかくよく)

武田武士団が使用する連携攻撃の一つ。青刀武士で翼を広げた鳥のような陣形を組んで刀気をつなぎ、束ねた刀気を武田尚虎が鬼神の真角に直接発射する。大抵の武士団は、青刀武士がつなげた刀気を赤刀武士が増幅して撃つという戦法を取っているが、青刀隊突撃陣「碧天鶴翼」は使用者のすべてが青刀武士で構成されている。これは実際に刀気を放つ尚虎が、赤刀武士すら上回る実力を誇っているからにほかならない。もう一つの特徴として応用力の高さが挙げられ、炎獄天狗との戦いでは、武田武士団に手柄を取られたくない武蔵の放った鐘巻一心流破壊術「大刀殺し」が発生させた地割れに一度陣を乱されて尚虎の放った攻撃が外れるものの、素早く組み直された陣形から放たれた二撃目が、炎獄天狗の真角を折ることに成功する。

金瘡執糸刀 (きんそうしっしとう)

犬川静六が愛用している鬼鉄刀。小型の日本刀のような形状をしている。刃の先から糸のように細い刀気を飛ばし、敵の体や鬼鉄刀から放たれる刀気に巻き付けて、静六自身が念じた事柄を文字に変化させて送り込む能力を持つ。これによって、敵の体に脱臼や失明、火傷など、人体損傷を示す文字を送り込み、それに伴う激痛の幻覚をもたらしたり、攪乱を示す文字を送ることで武士団の味方同士を互いに敵と誤認させて同士討ちを誘ったりすることができる。敵の鬼鉄刀から放たれる刀気に付着させることで、刀気同士の連携を強制的に遮断することも可能。幻覚による攻撃は、巻き付けられた刀気を払うことで解除できるが、刀気への干渉で一度連携を断たれた武士は、ほかの武士に対して刀気をつなぐことも、刀気を受け取ることもできなくなる。この特性から、青刀武士に対しては絶大な力を発揮するが、単体でも強大な力を持つ赤刀武士とは相性が悪い。また、金瘡執糸刀自体を破壊されると、刀気への干渉を解除させられるという欠点も持つ。

(おに)

150年ほど前に、空から降ってきたとされる謎の存在。主に強力な力を持つ「鬼神」と、鬼神が生み出す端末である「小鬼」、自然発生して散発的に活動する「野良鬼」に分けられる。鉱石を食らってエネルギーを蓄え、なんらかのネットワークを介すると、すべての鬼神の原点である黒鬼神を肥大化させることができる。このメカニズムから黒鬼神は現在も成長を続けているため、最終的には日ノ本の国全土を食らいつくす可能性が示唆されている。体は鬼鉄で構成されており、破壊されても短時間で再生することが可能。「真角」と呼ばれる角を折れば倒すことができるが、そのためには束ねた刀気を鬼鉄刀に込めて切断する必要がある。基本的に意思の疎通ができないため、目的や存在理由などはいっさい不明。人間を含めたほかの生物を容赦なく襲うことから、武士のあいだでは滅ぼすべき敵と認識されており、大抵の土地ではその教えが浸透している。ただし、武蔵と鐘巻小次郎の故郷である竜山町や、甘粕政紀の故郷では守り神として崇められており、鬼に利する鉱夫こそが地位の高い存在と教えられていた。また、武田尚虎は天災のようなものだと考えていたり、北条獅氏門は興味の対象ととらえたりしている。さらに、黒曜石の八人からは同志として見られているなど、場所や団体、個人によって認識に大きな違いがある。

刀輪 (とうりん)

武士が鬼鉄刀の力を引き出した際に現れる、リング状の刀気。刀輪が現出した状態の鬼鉄刀は大量の刀気が集まっていることから切れ味が鋭い。さらに、この状態になると赤刀武士は刀身から高出力の刀気を発射し、鬼神すら圧倒できる。また、青刀武士は複数の刀輪を展開し、同時に刀気を放つことができる。中でも犬田八咫郎の扱う大富道黒雷は、30近くもの刀輪を同時に展開可能で、相対した武蔵を苦戦させるほど。なお、黒刀は通常の鬼鉄刀と異なり、五角形のような刀輪が発生する。

白刀武士 (はくとうぶし)

白の魂色を発現させた武士。極めて希少な存在で、現時点では犬飼四郎と北条獅氏門の二人のみが該当する。刀気を空間に直接作用させることが可能で、四郎は無明で斬りつけた空間を別の空間に入れ替える力を使い、獅氏門は敵の体を空間ごと組み替えて、粉々に破壊することができる。ほかの魂色の力以上に制御が困難で、かつて獅氏門は兄である北条氏輝に褒められた嬉しさから気持ちが高ぶり、その結果能力を暴発させて彼に重傷を負わせて寝たきりの状態にさせてしまう。そのため、獅氏門は大戦が終結して家族を失うまでのあいだ自分の能力を隠し通しており、現在も滅多に白刀武士としての力を使おうとはしない。黒刀を用いることで赤刀武士、青刀武士、緑刀武士、黄刀武士のすべての技が使用可能になり、三喜人との戦いではこれらの力を巧みに使い分けて、白刀武士としての力を使わないまま彼を圧倒する。なお、獅氏門の見立てによると、黒曜の女神の器である武蔵も、成長次第で白刀武士と同じようにほかの魂色の特性を身につけることが可能とされている。

龍鎖烈陣刀 (りゅうされつじんとう)

直江兼竜が愛用している鬼鉄刀。鬼鉄刀の中でも屈指の大きさを誇り、刀身の長さは兼竜の全長に匹敵する。だがそれ以上に、上杉武士団最強の武士である鐘竜の力をフルに引き出すことで発揮される破壊力が注目されており、兼竜が上杉武士団から頼りにされている理由の一つになっている。特に、上杉竜臣の軍神闘衣による補助を受けた際の威力は凄まじく、融合を繰り返して紫龍城と同等の大きさにまで巨大化した犬田八咫郎の娘に生えていた真角を難なく叩き折るほど。純粋な武器としても強力で、犬川静六との戦いでは彼との打ち合いを制して、瀕死の重傷を負わせる。

武士 (ぶし)

鬼鉄刀を用いて鬼と戦うことを生業としている人間たちの総称。土地によって扱いが大きく異なっており、竜山町では役人たちが鬼神と結託していることから、情報操作によって悪しき化け物と忌み嫌われていた。そのため、鐘巻自斎やその息子である鐘巻小次郎、養子の武蔵は肩身の狭い思いを強いられてきた。自斎に至っては、竜山町の歪んだ世界観を利用した犬村三喜人のもくろみによって謀殺される。だが、竜山町で崇められていた炎獄天狗が武田武士団に討伐されると、悪しき鬼から日ノ本の国を守る存在として認識されるようになる。

鐘巻一心流抜刀術「千旋裂斬剣」 (かねまきいっしんりゅうばっとうじゅつせんせんれつざんけん)

武蔵が鐘巻自斎の残した修行帳を見ることで会得した技の一つ。「大地を以て鞘となし、飛旋を以て羅刹を斬る」の掛け声とともに、つるはし状の刃の片方を地面に突き刺しながら反対側に力を込め、てこの原理を利用して強化された破壊力をもって敵を切り裂く。鬼鉄刀でないふつうの刀にもかかわらず猫又鬼を一撃で倒すほどの、途方もない威力を誇る。

黒刀 (こくとう)

黒鬼神の体内で生成される「暗黒結晶」と呼ばれる、鬼鉄で生成された鬼鉄刀。通常の鬼鉄刀をはるかに上回る性能を誇り、中でも青刀武士は、わずか八人で通常の100人分の刀気の連携が可能となり、白刀武士や黒曜の女神の器となった武士も、赤刀武士、青刀武士、緑刀武士、黄刀武士のすべての技が扱えるようになる。白獅子城には、「タタラ場」と呼ばれる専用の鍛冶場があり、そこに持ち込んだ暗黒結晶を納品することで新しい黒刀を作成できる。なお、黒刀の製法は北条武士団にのみ伝わっているが、これは北条獅氏門と個人的に親交のあった富田和親が、大戦が終わってからしばらくのあいだ白獅子城に滞在していたことに起因する。

北条式黒刀連鎖術「獅子咆哮」 (ほうじょうしきこくとうれんさじゅつししほうこう)

北条武士団が使用する連携攻撃の一つ。黒刀を用いて刀気を連携させ、鬼神の角に向けて発射する。ふつうの刀の連携では加算形式で増えていくはずの刀気が累乗形式で増加していくのが特徴で、わずか八人で青刀隊突撃陣「碧天鶴翼」に匹敵する威力を実現させられる。また、使用者の八人は全員が青刀武士で、北条獅氏門は参加していない。この事実は、鐘巻小次郎が青刀武士に秘められた潜在能力と、それを引き出せる黒刀のポテンシャルを思い知り、黒刀の獲得に意欲を燃やすきっかけとなる。

無明 (むみょう)

犬飼四郎が愛用している鬼鉄刀。十字の形状をした柄と、四郎の背丈に匹敵するほどの巨大な刀身が特徴。切断した空間を、指定した別の空間と入れ替える能力を持つ。入れ替えられる空間同士の距離や範囲には一応の制限があるものの非常に広く、複数の人間がいる場所の周囲を深海の水やマグマと入れ替えられるほど。また、刀気の軌道を変化させる防壁を張ることも可能。ふだんは空間を入れ替えることで敵対する武士を始末しているが、武田尚虎のように自然現象に干渉する能力を持つ相手には効果が薄い。ただし、四郎自身が優れた剣術の使い手であることから、この点も大きな弱点にはなっていない。

陣駒 (じんこま)

マスの上に置いた駒を互いに動かすことで勝敗を決する、二人対戦用の遊戯。かつては軍議で陣形を考えるときに用いられていたが、時を経るうちに武士たちによる遊びに変化していった。優れた軍略家である富田和親は陣駒が非常に得意で、北条獅氏門と対戦をした限りでは一度も負けたことがなかった。一方、犬村三喜人も陣駒の名人で、犬山五万理と犬川静六の勝負に割って入り、わずか一手で静六の逆転勝利を誘発する。

忌人 (いみびと)

黒い魂色に侵されているとされる存在。あらゆる鬼鉄刀から忌み嫌われ、決して刀の試しが成功することがない。武蔵は大東鉱山で焔魔大太刀の刀の試しを受けたところ、体から黒い鉱石が発生して焔魔大太刀から拒絶され、忌人であることが判明する。鬼鉄刀を使えないという事実に打ちのめされかけるが、犬飼四郎から襲撃を受け、絶体絶命の危機に陥った際に体の中に眠る黒曜の女神と接触した時に、忌人の本質が刀気の流れを自在にあやつる能力の産物であることを知る。そして、黒曜の女神と意思を通わせることでその力を制御し、鬼鉄刀を扱えるようになる。

軍神闘衣 (ぐんしんとうい)

上杉竜臣が使用する技の一つ。鬼鉄刀を構えることで集中させた刀気を発射し、命中した相手の身体能力や鬼鉄刀の性能を劇的に強化する。強化された武士は、単体でも砲戦竜八岐大蛇の力を持つ犬田八咫郎の娘たちと渡り合えるほどの力を発揮する。さらに同時に複数の武士に対して付与することも可能で、軍神闘衣をまとった武士同士で刀気の連携を取ることもできる。このことから、上杉武士団では、赤刀武士である直江兼竜および青刀武士の甘粕政紀や、柿崎景悟を同時に軍神闘衣で強化したのち、政紀や景悟たちが増幅した刀気を連携させ、それを兼竜が鬼神の真角に打ち込むという戦術が主に使われている。

黒曜の女神の血 (こくようのめがみのち)

五傑将がそれぞれ保管している杯。中には現在でも黒曜の女神の血液が液状のまま封入されており、黒曜の女神の器となった人間がそれを飲み干すことで新たな力を獲得できるといわれている。事実、武蔵が上杉竜臣の持つ黒曜の女神の血を飲んだことで黄色の刀気が一時的に増幅し、黄金刀気を発動させることで犬田八咫郎を一方的に追い込んだこともある。ただし即効性があるわけではなく、力を解放するにはなんらかの条件が必要であることが示唆されている。かつて五傑将は、天下統一を巡ってにらみ合いを続けており、足並みがそろわないことも多かった。だが、黒曜石の八人が現れ、これに伴って鬼神の動きが活発化すると、武士団同士で団結する必要性が認められ、その口実として五つある黒曜の女神の血がそれぞれの武士団に預けられ、ひいては五傑将誕生の契機となる。のちに、武蔵が黒曜の女神の器であることが判明したため、竜臣と武田尚虎の提案により、武蔵に黒曜の女神の血をすべて譲り渡すべく五傑将会議が開催される。当初は、黒曜の女神に興味のない北条獅氏門からあっさり提供されたものの、武蔵の活躍を知らない徳川武士団や伊達武士団からは提出を拒まれる。だが、武蔵が大戦の英雄である「富田勢源」こと鐘巻自斎の養子だと判明したため、満場一致ですべての黒曜の女神の血が彼のもとに集まる。

天下統一 (てんかとういつ)

武士の最終目的の一つとされる偉業の一つ。鐘巻自斎の自室で発見された絵巻物によると、武士は鬼神を倒す使命を背負っており、最強の鬼神を倒したあかつきには「神器」と呼ばれる秘宝が手に入り、いずれ日ノ本の国を左右する力を得るという。武士たちが鬼の打倒を志すのは、日ノ本の国の平和を取り戻すこと以外に、天下統一を果たすという理由も大きい。ただし、現在は鬼神以外に黒曜石の八人という明確な敵がいるため、天下統一以上に彼らの打倒を優先する武士団も多い。

刀の試し (かたなのためし)

鬼鉄刀の所有者となるために必要な儀式。実際に鬼鉄刀に触れることで開始される。儀式の最中は刀が中に入ってくる感覚があり、人によっては過去の出来事を見せられることもある。これを乗り越えることで鬼鉄刀に主と認められ、実際に扱えるようになる。大抵の武士は、元服を迎えた際に行うことが通例となっているが、武士を疎む竜山町で育った武蔵と鐘巻小次郎はこれを行えず、大東鉱山を訪れた時にようやく受けることができた。なお、刀の試しは鬼鉄刀だけではなく、「暗黒結晶」と呼ばれる純度の高い鬼鉄に触れた場合も発生する。だが、ふつうの鬼鉄刀の刀の試しとは段違いに難度が高く、北条武士団の精鋭がこれを受けたところ、228人のうちわずか10名しか合格できなかった。

犰尾七鉦刀 (きゅうびしちせいとう)

犬坂七緒が愛用している鬼鉄刀。ふだんは杖のような形状で、一見すると殺傷力があるようには見られない。だが、戦闘時は刀身を七つに分割し、それぞれから巨大な刃のような刀気を展開できる。この特性から対多数の戦闘に特化しており、下野に襲撃を仕掛けた時もこの特性を存分に生かした戦いを見せつける。一方で、犰尾七鉦刀自体の強度はそこまで高くなく、鐘巻武士団との戦いではこの弱点を突かれて七つの刃のうち一つを破壊されてしまう。

鬼鉄 (きてつ)

鬼の体を構成している、鉄のような物質。鬼が真角を折られ、体が粉々に砕け散った際に発生する。体が大きく強い鬼ほど、良質かつ大量の鬼鉄を持っているとされている。中でも最強の鬼神である黒鬼神の体内で生成される鬼鉄は「暗黒結晶」と呼ばれており、一般の鬼鉄とは比較にならない力を秘めている。人間の持つ気配に反応して増幅するという不思議な力があり、これに着目した人々によって鬼鉄刀が作り上げられ、やがて鬼を退治する武士の誕生をうながす。また、鬼鉄騎や移動城塞の動力としても用いられている。現在の日ノ本の国では通貨として広く用いられており、鬼を倒すことで大量の鬼鉄が得られることから、一攫千金を夢見て武士になろうとする人も少なくない。

魂色 (こんしょく)

人間が生まれ持っているという魂の色。鬼鉄刀に初めて触れて刀の試しに成功させると、肩から翼のような魂石が出現し、その色によって持ち主の魂色が判断される。魂色には赤、青、緑、黄、白の五種類があり、途中で変えることは基本的にかなわない。だが、白の魂色に生まれた武士や黒曜の女神の器に選ばれた武士は、黒刀を用いることでほかの魂色の力を使用することができる。なお、鬼鉄刀自体に対応する魂色があるわけではない。そのため、島津秋弘とその兄弟たちは魂色が異なりつつも、同じ天狼鉄脚を扱える。

書誌情報

オリエント 16巻 講談社〈講談社コミックス〉

第1巻

(2018-08-17発行、 978-4065127254)

第2巻

(2018-10-17発行、 978-4065130704)

第3巻

(2018-12-17発行、 978-4065134870)

第4巻

(2019-03-15発行、 978-4065144442)

第5巻

(2019-06-17発行、 978-4065150856)

第6巻

(2019-08-16発行、 978-4065156964)

第7巻

(2019-11-15発行、 978-4065171608)

第8巻

(2020-02-17発行、 978-4065178881)

第9巻

(2020-05-15発行、 978-4065186862)

第10巻

(2020-08-17発行、 978-4065193075)

第11巻

(2020-11-17発行、 978-4065205990)

第12巻

(2021-03-17発行、 978-4065216361)

第13巻

(2021-08-06発行、 978-4065244685)

第14巻

(2022-01-07発行、 978-4065265871)

第15巻

(2022-03-09発行、 978-4065272671)

第16巻

(2022-07-08発行、 978-4065283806)

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