概要・あらすじ
重い心臓病を患う黄金原こすもは、普通の日常生活を送ることを夢見る17歳の女の子。生き続けるためには、心臓移植を受ける必要があった。しかし、特殊な血液型を持つ彼女にとって、ドナーを見つけることは奇跡を起こすに等しい確率だった。そんなある日、自らの命を犠牲に、車に轢かれそうになっていた少女を助けた99代目日巫子の死によって、こすもは幸運にも、心臓の移植手術を受けられることになる。
念願の健康な体を手に入れ、新たな人生をスタートさせたこすもは、自分が受け継いだ心臓が、日本で最も強い力を持つ巫子のものだったことを知り、日本を支える存在「日巫子」となる。それを機に、こすもの周辺では、次々と不可解な出来事が起こり始める。日巫子となったこすもを我が物にしようと、さまざまな敵が襲い来る。
登場人物・キャラクター
黄金原 こすも (こがねはら こすも)
命の尊さを重んじる17歳の女子高生。生まれたときから重い心臓病を患い、入院生活を余儀なくされた。心臓移植を受けるため両親と共にニューヨークへ渡り、ドナーが現れるのを待っていた。血液型が特殊なRH-AB型だったため、ドナーが現れる確率は奇跡に等しいと言われていたなか、99代目日巫子から心臓の提供を受けることになる。 これにより99代目日巫子の力を受け継いだ。後に、彼女自身が三貴神である「ツクヨミ」の血を引く者であることが判明し、100代目日巫子としての任に就くことになる。
日嗣 (ひつぎ)
99代目日巫子の巫子守の青年。三貴神である「スサノオ」の血筋を最も強く継ぐ者。役割を果たすためなら、命をも捨てる覚悟を持っている。幼い頃に養護院で生活していたところを、99代目日巫子により見出され、幽宮で巫子守として、日巫子の傍で共に過ごすこととなる。その後99代目日巫子が亡くなり、その心臓を受け継いだ黄金原こすもの巫子守として、彼女との生活を始める。 どんな命をも大切にするこすもに、次第に惹かれていき、99代目日巫子への想いとの間で揺れる日々を過ごす。
99代目日巫子 (きゅうじゅうきゅうだいめひみこ)
「日巫女」と呼ばれる女性。三貴神である「アマテラス」の血を代々継いでいる。神を呼ぶ力を持っており、日本で最も強力な力を持つとされる。99代目日巫子は、そのなかでも初代に匹敵する強力な力を持っており、その力は幼少期よりすでに発現していた。日嗣と共にニューヨークへ渡った際、車に轢かれそうになっていた少女を助け、脳死状態に。 それにより心臓が黄金原こすもの体内に移植され、力が受け継がれることとなる。亡骸は横浜ランドマークタワーの幽宮に安置されていた。その後、日吉による「足玉」の力を使った儀式で蘇る。その際、自分亡き後に日嗣がこすもに惹かれていることを知って逆上。無関係な人々を巻き込んで、こすもの殺害を目論む。
日吉 (ひよし)
幽宮の巫子守の女性。99代目日巫子に忠誠を尽くしていたため、黄金原こすもの存在を容認できずにいる。その忠誠心から、十種の神宝の1つ「足玉」を使い、亡き99代目日巫子を死の国から蘇らせる。だが、「足玉」のみでは役割を正しく果たすことができず、99代目日巫子は不完全な形で蘇ってしまう。
黄金原 みらい (こがねはら みらい)
黄金原こすもの妹。姉が病気だったため、両親はいつもこすもの傍におり、寂しい子供時代を送った。しかし姉の回復を心から喜び、帰宅を歓迎した心優しい少女。こすもと日嗣の恋を応援している。
蝶名林 正乃 (ちょうなばやし しょうの)
学校で生徒会長を務める男子高校生。大臣の息子で、99代目日巫子が存命のとき、よくプレゼントを贈るなどして言い寄っていた。新たに黄金林こすもが日巫子となったことを知り、彼女を自分のものにしようと画策する。その後、常世神のご神体である蟲に取り憑かれ、こすもの命を狙う。
倉端 みずき (くらはし みずき)
高校1年の男子生徒。蚕を祀った天蚕神社の息子で、神和(かむなぎ)を務める。巫女であった母親は亡くなり、父親はアルコール中毒で24時間監視が必要な状態。妹の倉橋あずみは亡くなったが、その死を受け入れることができず、常世神の力を借り蘇らせた。幼少の頃、病院に入院していた黄金林こすもと知り合っており、彼女にとってはファーストキスをした相手である。
倉端 あずみ (くらはし あずみ)
倉端 みずきの妹。幼い頃から体が弱く、一度絶命している。だが、妹の死を受け入れられなかった兄みずきの願いで、常世神を降臨させたことにより蘇った。「スサノオ」の血筋を受け継ぐ日嗣を、自分の支配下に置いて操ろうとする。
美雪 (みゆき)
黄金原家の家政婦として働く女性。いつも優しく明るい性格で、おいしい料理を作ってくれていたが、常世神のご神体である蟲に取り憑かれてしまう。その後、黄金原こすもに食べさせる食事に蟲を仕込み、こすもに寄生させようとする。
美也 (みや)
祖父と共に暮らしている少女。祖父は真珠湖の湖畔で炭焼きをしている。入院中の母親を看病するため、父親が町の病院に行っており、寂しい毎日を過ごしている。母親の病気が治るようにと、樹齢1000年を超える大木「アベマキ様」にお願いしている。
梶浦 (かじうら)
宮前総合病院の男性医師。蘇った99代目日巫子の力により悪鬼に取り憑かれる。「イザナミ」の呪いの言葉「一日千人殺しましょう」をつぶやきながら、病院内の患者や看護師に襲いかかり、メスや注射器を使って殺害を繰り返した。
柊 竜香 (ひいらぎ りゅうか)
長虫神社の巫女。いつも「雷」という名の巫女守と行動を共にしている気の強い少女。99代目日巫子に忠誠を尽くしていたため、黄金原こすもの存在を容認できず、蛇を操ってこすもを襲う。
天狼 景正 (てんろう かげまさ)
狼の神「大口の真神」を祀った真神神社の神和を務める青年。右頬に傷がある。99代目日巫子を慕っていたため、黄金原こすもの存在を容認できず、こすもを守る日嗣に対して、裏切られたとの思いを抱いている。
日照 (ひしょう)
97代目日巫子と、98代目日巫子の巫子守を務めた青年。金沢の「雪の宮」で、97代目日巫子が100代目日巫子を守るように、と遺言を残し亡くなったため、日嗣と共に黄金原こすもを守ることとなる。次第にこすもに対して想いを強めていく。「氷雪神」という名の神を呼び、その力を借りることができる。しかし、氷雪神は嫉妬深く、日照が想いを寄せる相手に危害を加えてしまう。 そのため、日照は98代目日巫子と密かに想い合う仲だったが、愛し合うことが許されたのは、彼女が癌で亡くなるまでの2日間だけだった。どこからともなく雪ウサギを出すことができる。
咲美 (さくみ)
咲子の双子の姉。伊豆雲見浅間神社の岩長姫のための巫女。実際は木花開耶姫のための巫女だった。しかし、木花開耶姫の巫女は岩長姫の巫女よりも美しくなければならない、という言い伝えを信じた両親が、顔に火傷を負った咲美を醜いと判断し、姉妹の役割を入れ替えた。悲しみに暮れる心の闇につけこまれ、常世神に取り込まれてしまう。
咲子 (さきこ)
咲美の双子の妹。富士浅間神社の木花開耶姫のための巫女。実際は岩長姫のための巫女だったが、姉が火傷を負ったため、その醜さから両親が姉妹の役割を入れ替えた。そのため、木花開耶姫の声を聞くことはできない。
98代目日巫子 (きゅうじゅうはちだいめひみこ)
日照が15歳の頃から巫子守として仕えていた日巫子。歴代の日巫子のなかでも力は弱い方だった。日照を想っていたが氷雪神からの嫉妬を受け、結ばれることはないまま癌に蝕まれ若くして亡くなった。
倉稲魂神 (うかのみたまのかみ)
日本各地に点在する稲荷神社の稲荷神の1人。生き返った99代目日巫子の命により、すべての稲荷神が人間に刃を向けていた。そのなかで、彼だけは黄金原こすもと直接接したため、彼女に興味を持ち、ことあるごとに現れては手助けをするようになる。こすもからは、親しみを込めて「狐さん」と呼ばれている。
犬神 (いぬがみ)
人に取り憑き害をなす、ねずみくらいの大きさの丸いもの。人がもともと持っている「悪意」を食べて増殖し、取り憑いた人間の精神まで食い尽くしてしまう場合もある。多数いるなかで、1匹だけが黄金原こすもの優しさに触れて懐き、一緒に行動している。のちにこすもを守ろるため、犬の形に成長する。
アベマキ
樹齢1000年を超える山神様の宿り木。「炭焼きの神様」とも言われ、その枝を炭にするために人間に差し出して、長い間人と共に生きてきた心優しい大木。山火事により倒れる間際に、黄金原こすもに敵の正体を明かす。
三貴神 (さんきしん)
日本神話の中で、「イザナギ」と「イザナミ」が生んだ子のなかで、太陽の「アマテラス」、月の「ツクヨミ」、海と嵐の荒ぶる神「スサノオ」が、三貴神と呼ばれている。日巫子は「アマテラス」の血を継ぐ者、また、黄金原こすもは「ツクヨミ」の血を継ぐ者、日嗣は「スサノオ」の血を継ぐ者である。
場所
幽宮 (かくれのみや)
代々の日巫子と、彼女を守る巫子守が住む場所。横浜ランドマークタワーにある「天の宮」、金沢にある「雪の宮」の他に、「京の宮」「華の宮」「水の宮」など複数あり、日本各地に点在している。横浜ランドマークタワーについては、建物全体が大きな人造の岩倉で、神の御座所となっており、他の幽宮とは一線を画す。
その他キーワード
日巫子 (ひみこ)
「アマテラス」の血を継ぐ日の巫女。神を呼ぶ力を持っており、日本で最も強力な力を持つとされている。日巫子の力は、冬至の日には最小となり、また、夜や雨天など、太陽の恩恵が少ない場合も小さくなるとされている。初代の日巫子である卑弥呼が暗殺されて以降、表舞台に出ることはなく幽宮で暮らし、その存在は一般には知らされていない。 時の為政者は、決断に困ると神の力に頼っていたため、日巫子は日本を守る要の存在と言える。また、代替わりするため、次の代が決まっていれば、結婚などにより引退することもできる。実際、巫子守と関係を持ち、結婚した日巫子もいる。
常世神 (とこよのかみ)
「日本書紀」に書かれている神。貧しい者は富み、老いたものは若返ると謳って大化の改新の頃に流行ったが、邪教として根絶やしにされた。ご神体は蟲で、蛾や蝶がさなぎになるとき、一度死んで蘇るものとして不死の象徴にしていた。冥界から復活を遂げ、蟲を操り世界を破滅に導こうとする。
十種の神宝 (とくさのかんだから)
「旧事本紀」に書かれている10種の宝。伝説のみで、実際はどこにあるかわからないままとなっている物が多い。蟲を寄せ付けない「蜂の比礼(はちのひれ)」、日嗣が日巫子を守るために使っている「八握の剣(やつかのけん)」、怪我などの回復を促進する効果がある「生玉(いくたま)」、欠けたものを補う力を持つ「足玉(たるたま)」、真実の姿を映す力を持つ「澳津鏡(おきつかがみ)」、死者を蘇らせる力を持つ「死返玉(まかるがえしのたま)」、魂を鎮める力を持つ「道返玉(ちがえしのたま)」が登場する。 ちなみに、あと3種は、「品物比礼(くさぐさのもののひれ)」「蛇比礼(おろちのひれ)」「辺津鏡(へつかがみ)」だが、これらは名前しか登場しない。
三種の神器 (さんしゅのじんぎ)
「旧事本紀」に書かれている3つの神器。 太陽の力を持つ日本最強の鏡。「アマテラス」を祀る伊勢神宮に奉納されている「八咫鏡(やたのかがみ)」「スサノオ」の力を宿す剣で、熱田神宮に奉納されている「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」がある。三種の神器とされているが、作中にはこの2つしか登場しない。
書誌情報
永遠かもしれない 4巻 小学館〈コミック文庫(女性)〉
第1巻
(2003-06-13発行、 978-4091914170)
第2巻
(2003-06-13発行、 978-4091914187)
第3巻
(2003-07-15発行、 978-4091914194)
第4巻
(2003-07-15発行、 978-4091914200)