あらすじ
第1巻
聖都非公式の諜報少年部隊に所属していた藤光夜空良は、ノースゲイト士官学校に入学し、行方不明となった弟の泉水を探すため、学校の編入試験を受け、特待生として入学する。藤光は自分と似た顔の人間はいないかと、自身が所属する9寮棟長補佐の桐原鷹哉に聞いたり、あらゆる場所に顔を出して泉水の手がかりを探すが、心当たりのある人間が現れない。そんな中、ほかの生徒からいじめを受けていたルームメイトの鏡原亜理寿を助けた藤光は、3年生の四賀と京堂という二人の指導部員に目をつけられるようになる。そして、過去に鏡原の指導を担当をしていた四賀からは、劣等生の鏡原とあまり仲を深めないようにとうながされる。一方の鏡原は、藤光の持ち物の中に手紙と泉水の写真を見つけ、藤光がただの転入生ではないと考え、彼の行動を追い始める。
その日の晩、過去に泉水と親しくしていた生徒の白川が藤光のもとを訪れる。藤光が泉水の兄だと気づいた白川は、泉水の身に何があったのかを語ろうとするが、途中でパニックを起こして部屋を飛び出してしまう。藤光が白川のあとを追いかけると、辿り着いたのは学校の旧棟であった。そこに巡回していた四賀と京堂が現れて白川を見つけ、校則違反として制裁を加え始める。藤光は、あとを追って来た鏡原のおかげで彼らに見つかる事はなかったが、白川は四賀に独房へと連れていかれ、藤光は泉水に関する情報を手に入れる術をなくしてしまう。
第2巻
旧棟から戻った藤光夜空良は、ノースゲイト士官学校の教師であり、藤光が属する9寮棟長である安佐隈から、泉水について聞かされる事となった。泉水は、この学校の在籍者で皇帝の息子でもある西薗寺空雅を暗殺する任務を受けて入学したが、1か月前に殺されていた。そして西薗寺は自分を守るために、泉水の事を知る生徒達の記憶を操作し、泉水の存在を消去をしているのだという。その後、泉水の事を思い出した白川は、時計台から飛び降りて死亡。そして、このシーンを目撃した鏡原亜理寿にも、泉水の記憶が甦り始める。これらの事実を知った鏡原は、消された泉水との記憶を取り戻すため、藤光と共に泉水が所属していた0寮棟に編入されようと計画する。
年に2度ある0寮棟への編入試験に合格した藤光と鏡原は、晴れて0寮棟に在籍する事が叶った。そこで、藤光と鏡原は西薗寺を探し出すため、藤光の顔を見て泉水を連想する人間がいないかどうかを注意深く観察するが、ハッキリとした手がかりが見つからない。一方、0寮棟の生徒である月村隆之介や高弥澤凛人達は、戦闘術訓練の際、容赦なく相手を殺そうとする藤光の姿を目の当たりにした事から、藤光の本性を暴こうと調べ始める。
第3巻
0寮棟への潜入に成功した藤光夜空良は、安佐隈の指示により、西薗寺空雅が遊び場にしている、ノースゲイト士官学校の地下にある植物園へと足を運ぶ。しかし藤光を呼び出した安佐隈は、何者かの手によって気絶させられていた。藤光が安佐隈に近づくと、その背後から西薗寺と思しき人物が襲い掛かる。攻防の末、藤光は相手の肩を負傷させる事に成功するが、警報が鳴ったため、目を覚ました安佐隈と共にその場を離れる。安佐隈が藤光を呼び出した理由は、0寮棟長である影山星悟と、その補佐であり兄の影山光輝が、藤光の本性を知っている可能性があるため、警戒が必要だという事と、1か月後に行われる学校の創立記念式典に皇帝陛下が訪れるという事実を伝えるためであった。
一方、鏡原亜理寿は、自分に好意を寄せている藤白雪から情報を聞き出し始める。翌日になり、藤光は自分がケガを負わせた人物が高弥澤凛人である事を突き止めると、彼のあとをつけていく。そして、辿り着いたのは星悟がいる教員室。藤光は、背後から迫る光輝に気づけず捕らえられるが、高弥澤や星悟、光輝が藤光と同じ人物を追っている事を告白される。そんな中、藤光は三人に連れられ、彼らの秘密基地へと招かれる。そこには桐原鷹哉、氏家暁、藤と、動きを封じられた鏡原がいた。彼らは西薗寺が誰なのか、そして泉水の死の真実を、鏡原の記憶を呼び起こす事で解き明かしていく。
登場人物・キャラクター
藤光 夜空良 (ふじみつ よそら)
ノースゲイト士官学校の高等部1年に在籍する男子。ショートヘアで、両目の下にほくろが一つずつある。孤児院育ちで、行方不明となった弟の泉水を探すために学校に編入し、9寮棟に属したのち、編入試験に合格して0寮棟に入る。元は聖都非公式諜報少年部隊に所属し、部隊でも優秀な功績を収めていた。しかし、血を見ると我を失い、ためらいなく人を殺す事から「聖都の冷血」と呼ばれる。
鏡原 亜理寿 (かがみはら ありす)
ノースゲイト士官学校の高等部1年に在籍する男子。黄色く癖のある髪をしている。指導係の四賀をはじめ、周囲の生徒からイジメられている気弱な劣等生であったが、ルームメイトの藤光夜空良と出会ってからは、少しずつ自信を取り戻し始める。また、白川の死を目の前にした事で、鏡原亜理寿自身の中にも泉水との記憶があり、それを操作されている事に気づく瞬間が度々ある。
泉水 (いずみ)
藤光夜空良の弟。藤光と瓜二つで、ショートヘアで、目を前髪で隠している。西園寺空雅を暗殺する任務を遂行するために、中等部よりノースゲイト士官学校に生徒として潜入し、高等部では0寮棟の生徒となった。1か月前に殺されており、白川や鏡原亜理寿など、生前交流があった生徒の記憶から、存在を抹消されている。
桐原 鷹哉 (きりはら たかや)
ノースゲイト士官学校の高等部2年に在籍する男子。短髪で、右目の下に泣きぼくろがある。第9寮棟長補佐を務め、編入して来た藤光夜空良に学内を案内する。中等部1年から高等部1年後半までは0寮棟に在籍し、泉水とは同窓生であったが、泉水の事は知らないと語る。
四賀 (しが)
ノースゲイト士官学校の高等部3年に在籍する男子。切れ長の目をした青年。京堂と共に指導部の称号を与えられているため、校則を破った生徒に対し暴力を振るう。弱い者に対して強く、鏡原亜理寿に対して辛辣な態度を示す一方、西薗寺空雅のような強い者に対しては、いっさい逆らう事ができない。
京堂 (きょうどう)
ノースゲイト士官学校の高等部3年に在籍する男子。七三分けで、眼鏡をかけた青年。四賀と同じく指導部の称号を与えられている。四賀と共に行動する事が多い。
白川 (しらかわ)
ノースゲイト士官学校の高等部2年に在籍する男子。太く垂れ下がった眉が特徴。泉水とは中等部の時にルームメイトであり、泉水の死の真相を知る人物であったが、西薗寺空雅によって記憶を消されてしまう。藤光夜空良と出会った事で記憶が甦りかけるが、四賀や西薗寺からの制裁や圧力に耐えられず、時計台から飛び降り自殺をする。
安佐隈 (あさくま)
ノースゲイト士官学校で教員。壮年の男性で、顎に髭がある。9寮棟長でもあるが、本来は西薗寺空雅暗殺計画をサポートしている。泉水が殺されたあとは、兄である藤光夜空良に対し、既にわかっている情報を伝えるなどしてサポートをする。
月村 隆之介 (つきむら りゅうのすけ)
ノースゲイト士官学校の高等部に在籍する男子。ショートヘアで、眼鏡をかけた青年。中等部より0寮棟に在籍している。学年トップの成績を維持し続ける総寮棟長であり、倫理委員会の委員長も務める優等生。「Mr.ノースゲイト」と呼ばれる。藤光夜空良が0寮棟に編入して来た時、泉水の面影を感じて動揺をする。
比呂 友永 (ひろ ともなが)
ノースゲイト士官学校の高等部2年に在籍する男子。童顔で、前髪は短くしている。0寮棟長代理をしながら、月村隆之介の片腕を務める。中流家庭出身で、中等部2年から0寮棟に在籍している。気さくな性格で、編入試験に合格して0寮棟入りした藤光夜空良や鏡原亜理寿にも親しげに接する。
高弥澤 凛人 (たかやさわ りんと)
ノースゲイト士官学校の高等部1年に在籍する男子。長い前髪で、左目を隠し、後ろ髪を首のあたりでまとめている。家は代々聖都の外交官を務めており、中等部2年から0寮棟に在籍している。あまり人を寄せつけない性格で、編入して来た鏡原亜理寿に冷たい態度を取る。体術に優れてはいるものの、戦闘術訓練中に藤光夜空良に力の差を見せつけられた事により、藤光を敵視し始める。
天隥 八代衣 (あまさか やよい)
ノースゲイト士官学校の高等部1年に在籍する男子。ショートヘアで、前髪は真ん中で分けられ、時々メガネをかけている。中流家庭の出身で、中等部3年から0寮棟に在籍している。藤光夜空良が高弥澤凛人に戦闘術訓練で負けた事をきっかけに、藤光の素性を探り始める。
氏家 暁 (うじいえ あき)
ノースゲイト士官学校の高等部に在籍する男子。垂れ目で、長い髪を頭の後ろで結っている軟派な人物。旧聖都時代からの政治家一族の次男坊で、中等部1年より0寮棟に在籍している。そのため、泉水の存在を知るはずだが、藤光夜空良を見ても不審な動きを見せる事がない。
藤 白雪 (ふじ しらゆき)
ノースゲイト士官学校の高等部1年に在籍する女子。セミロングの髪型で、頭にはリボンのカチューシャを付けている。中等部3年から0寮棟に在籍している。聖都一の鉄鋼メーカーを創設した一族の令嬢である。鏡原亜理寿に一目ぼれをして以来、鏡原が何か困っていると、助けようと奮闘する。
宮胡 澄明 (みやこ きよはる)
ノースゲイト士官学校の高等部1年に在籍する男子。おかっぱ頭の青年。氏家暁同様に、聖都の名士一族の跡取り息子で、中等部1年より0寮棟に在籍している。泉水の存在を知っているはずだが、藤光夜空良を見ても、不審な動きを見せる事がない。
影山 星悟 (かげやま せいご)
ノースゲイト士官学校の教員。眼鏡をかけている壮年の男性。時々煙草を吸っている。0寮棟の担当教官であると同時に0寮棟長も務めている。影山光輝の双子の弟で、兄弟共々藤光夜空良の正体に心当たりのある人物である事から、安佐隈に警戒をされる。
影山 光輝 (かげやま こうき)
影山星悟の双子の兄。ノースゲイト士官学校の教員を務めている。壮年の男性でサングラスをかけている。0寮棟の戦闘術担当教官であり、0寮棟長補佐を務める。過去の戦争で、「聖都の冷血」と呼ばれた藤光夜空良に片目を負傷させられた事があり、編入して来た藤光が同一人物ではないかと勘繰る。
西薗寺 空雅 (さいおんじ くうが)
ノースゲイト士官学校に在籍するといわれる男子。皇帝陛下の息子で、次期国王。学校を影で支配し、学内で校則を破る者に対し、制裁と称して、玩具のように命を扱う残忍さを秘めている。藤光夜空良や泉水の暗殺のターゲットになっているため、一般生徒になりすまして身を隠している。
場所
ノースゲイト士官学校 (のーすげいとしかんがっこう)
聖都帝国一の士官学校。13~18歳の少年少女が在籍している。年齢や学力、専攻内容によって0寮棟から9寮棟に分けられ、制服や制服の襟の記章によってわかるようになっている。敷地内には寮や礼拝堂もあり、旧棟は立ち入り禁止区域となっている。また地下には西薗寺空雅が遊び場としている遺体安置所や植物園がある。0寮棟に所属する生徒は、学年を問わず文武共に優れた者だけが入る事が許され、その証として特別なローブが支給される。 藤光夜空良の手元に残されていた写真で、泉水が着ていた事から、泉水を探す一つの手がかりになっている。