あらすじ
蛇喰夢子
私立百花王学園に通う鈴井涼太は、校内ギャンブルで多額の負債を背負い、家畜となって奴隷のような最下層の学園生活を送っていた。そんなある日、鈴井は転校生としてやって来た蛇喰夢子に校内案内したことをきっかけになかよくなるが、彼女もいずれ自分と同じような境遇に置かれはしないかと心配する。しかし夢子は、神がかったギャンブルの達人であり、ギャンブルに快感を覚える「賭ケグルイ」だった。2年華組に在籍することとなった夢子は、クラスの主のように振る舞っている早乙女芽亜里に目をつけられ、歓迎のための親善試合と称して、ギャンブル「投票ジャンケン」を持ち掛けられる。芽亜里は事前に、自分に有利な手札をクラスメートに投票させると同時に、鈴井を利用して夢子が負けるように仕向けていた。だが、夢子はあらかじめ芽亜里のイカサマを見抜いており、逆にそれを利用した運勝負に持ち込む。その結果、みごとに勝ちをおさめて芽亜里から多額の賞金を手にするのだった。鈴井は芽亜里のイカサマに加担したことを夢子に謝罪するが、夢子は楽しいギャンブルをさせてもらったと告げ、その礼として勝ち分から500万円を手渡し、鈴井を家畜の身分から解放する。
私立百花王学園生徒会
蛇喰夢子が早乙女芽亜里に勝利した噂は瞬く間に校内に広がり、私立百花王学園の生徒会の知るところとなった。学園内にさらなるギャンブルの場を求めていた夢子は、生徒会役員の皇伊月から「ダブル神経衰弱」を挑まれるが、伊月のイカサマを見抜いてみごとに勝利する。それとともにギャンブルへの異常な愛を見せつけ、伊月に強い恐怖心を植えつける。さまざまなギャンブルが横行する私立百花王学園をすっかり気に入った夢子は、鈴井涼太の案内で伝統文化研究会の部室を訪ねるが、そこでは夢子に負けて再起をかける芽亜里が生徒会の西洞院百合子に打ちのめされていた。そして夢子は、百合子が主催する「生か死か」に挑戦することになるが、百合子は自分の資金力をバックに「確実に勝てるわけではないイカサマ」を仕組んでいた。しかし、イカサマは初めから夢子に見破られており、百合子は窮地に陥るが、百合子本人も知らないうちに生徒会会長の桃喰綺羅莉が仕掛けていたイカサマにより、勝利をおさめることとなる。これによって夢子は3億1千万円の負債を背負い、家畜へと転落するが、彼女は悲嘆するどころか、綺羅莉とのギャンブルを切望するのだった。
家畜
西洞院百合子とのギャンブルに敗れ、多額の負債を抱えた蛇喰夢子と早乙女芽亜里の二人は、そのまま家畜の地位へと転落してしまう。そして、先日まで二人を慕っていた三人組からも露骨に馬鹿にされるようになるなど、すべての人から見下された学校生活を送ることを余儀なくされる。しかし夢子自身は、家畜だからこそできるギャンブルもあるはずと、そのことだけに強い興味を持ち続けており、周りの人々からの嫌がらせをまったく気にすることなく、次なるギャンブルの機会を淡々と待ち望んでいた。そんな中、夢子は木渡潤とその取りまきから裸になるように要求され、ストリップという辱めを受けそうになるが、たまたまその場に通りがかった美化委員の生志摩妄によって助けられる。一方、夢子の身を案じる鈴井涼太は、できるだけ早いうちに家畜の地位から抜け出すために、多額の資金を稼ぐことができる、高額ギャンブルを行う賭場を探していた。するとその時、夢子と芽亜里のもとに、今の地位から抜け出すことができる絶好の機会である、債務整理大集会が開催されるという知らせが舞い込んでくる。
債務整理大集会
蛇喰夢子と早乙女芽亜里は債務整理大集会に参加し、生徒会書記の五十嵐清華主催の借金付け替えゲームに挑む。そして、より高額な稼ぎを目指す木渡潤と彼の従者の蕾菜々美を交えて、四人一組のギャンブル「二枚インディアンポーカー」を開始。1ターン目、2ターン目に勝利した木渡が慎重になった3ターン目、夢子は木渡を大金を賭けた大勝負に誘い、みごとに勝利。さらには四ターン目、芽亜里も大金を賭けて勝負に出ると、夢子と芽亜里が組んでいることを疑う木渡は勝負を降りる。だが、これはブタの手札を持たされた芽亜里によるブラフだった。ここに至って木渡は、菜々美と共謀したイカサマがばれていることに気づくが、夢子は自らのイカサマを明かし、戦いはブラフ合戦となる。夢子と芽亜里のペースにはまって3位にまで転落した木渡は、菜々美を脅して自分が勝つ手助けをさせようとするが、夢子は菜々美に対し、虐げられることに慣れてしまっては一生変わらないままだと叱咤する。これに奮起した菜々美は木渡の手を離れ、独自の勝負に出て最終ターンでみごとに勝利する。さらには夢子と芽亜里が、あらかじめ互いの借金額を偽っていたことで木渡の最下位が決定し、木渡は夢子が背負っていた3億1千万円の負債を抱えて家畜へと転落する。そして夢子と芽亜里はこの勝負を通して、晴れて本当の友人になるのだった。
桃喰綺羅莉
債務整理大集会が終わり、蛇喰夢子と早乙女芽亜里は借金額を偽ることで2億6千万円を得た。その中から芽亜里は1000万円を支払い、借金を返済して家畜の座を返上する。そして芽亜里は夢子に対して、1000万円を差し引いた2億5千万をゆずり渡すが、公式戦に参加することを強く望む夢子はその金を隠して、家畜の立場のままでいることを選ぶ。一方、生徒会は夢子が金を隠した事実を把握していたが、生徒会長である桃喰綺羅莉の意向によって、夢子から借金を取り立てないことを決定する。そんな中、芽亜里は会長の綺羅莉から呼び出しを受ける。綺羅莉は芽亜里に対して、彼女の人生計画表の廃棄を宣言したうえで、債務整理大集会の隙間を突いて「二枚インディアンポーカー」に勝利し、大儲けを果たした手腕を高く評価する。さらに、芽亜里に対して大いに興味を抱き、生徒会に入るように誘いかけるが、芽亜里は綺羅莉が他者を気づかうことなく、自然と見下す態度を取ることに我慢ができず、生徒会入会の申し出を一蹴してしまう。
私立百花王学園のアイドル
蛇喰夢子の活躍は、私立百花王学園の生徒会にとっても無視できないものとなっていた。夢子に敗れた皇伊月は生徒会役員を解任され、会長のイカサマでようやく勝利を拾った西洞院百合子や、最終的には夢子の思いどおりに動かされた生志摩妄も、生徒会会計の豆生田楓から、その進退を問われてしまう。そんな中、会長の桃喰綺羅莉が不意に学園を離れたことから、生徒会内部では徐々に内紛の兆しが現れ始める。生徒会の広報にして、有名なアイドルでもある夢見弖ユメミは、生徒会会長の綺羅莉が不在にもかかわらず、独断で夢子にギャンブルで勝負を挑むことを宣言。また、生徒会の実権を握ろうとする豆生田もそれに便乗して、校内衛星放送を用いた二人の対決のライブ中継をもくろむ。一方、夢子は再起を図るために共闘を申し込んできた伊月を受け入れるが、そこに現れたユメミは、夢子が勝負に負けたら自分とアイドルユニットを組むように、人生計画表に記載することを要求する。夢子はこれを受け入れるが、もし自分が勝った場合は、ユメミがファンを蔑ろにした発言を録音したテープを公開することを条件付ける。
バトっていいとも!
夢見弖ユメミの多数のファンと、皇伊月や彼女からチケットを提供された鈴井涼太、早乙女芽亜里が観客として見守る中、蛇喰夢子とユメミのアイドル対決「バトっていいとも!」が開催される。夢子とユメミは「ガチンコ歌唱力対決」や「心肺機能チェック」などの演目を争い、一進一退の攻防を繰り広げるが、これは会場を盛り上げるためのユメミの策略だった。やがてユメミは、あと一勝で勝利となる状態に持ち込み、続く対決「極限ババ抜き」ではイカサマを仕込んでわざと夢子を勝たせる。これを夢子は、ユメミが故意に勝敗を調節して場を盛り上げようとしていると見破るが、ギャンブルを楽しむことを何よりの目的とする夢子は、ユメミのこの行動を肯定する。そして、最終勝負である「利きファンゲーム」でユメミを下して勝利をおさめる。勝負に負けたユメミは、約束どおりにファンを罵倒した録音を公開するが、ファンは誰一人として彼女を見捨てず、さらなる活躍を期待する声で満ちあふれる。自分の一人よがりを思い知ったユメミは、ファンに本心からの感謝を示し、夢子と共にステージに上がって即席のデュエットを披露するのだった。
公式戦
蛇喰夢子と夢見弖ユメミのアイドル対決「バトっていいとも!」は、みごとに夢子の勝利に終わる。その戦いを通して、夢子はギャンブルを大いに楽しみ、ユメミも結果的にアイドルとしての知名度を上げることに成功し、二人はお互いに得をしたかのように見えた。そんな中、夢子は先ほどのユメミのファンに、暴言が録音されるように仕向けられていたことを全校生徒に明かす。ユメミは、はっきりとした証拠はないものの豆生田楓を怪しむ素振りを見せ、彼にその真意を問いただす。豆生田は、夢子とユメミの主張を一笑に付し、夢子から持ち掛けられたギャンブルも拒否する。しかし、そこで夢子から公式戦を仕掛けることが宣言されると、豆生田はそれを受けざるを得ない状況へと追い込まれてしまう。
選択ポーカー
生徒会副会長である桃喰リリカは、蛇喰夢子と豆生田楓が争う公式戦の種目に「選択ポーカー」を採用し、自らディーラーになることを宣言する。豆生田は「選択ポーカー」が、最初の所有チップが多いほど有利であることを見抜き、31枚のチップを所有する夢子に対し、100枚のチップで応戦する。さらに夢子のギャンブル狂の性質を利用し、高額のチップを賭けるように仕向け、3ターン目に彼女のチップすべてを奪うことに成功する。しかし、夢子は皇伊月に協力の証として、伊月の実家のトイメーカーから10億円を提供するように求め、100枚のチップを得て試合を続行する。続く4ターン目に豆生田は、夢子がQのツーペアをチェンジしたことから、弱い役で勝とうとしていると推測する。そして、すべての財産をチップとして賭けて、確実に選択権を取ろうとするが、夢子は伊月の人生計画表を賭けることを提案し、伊月もそれに同意する。豆生田は、そんなレイズは無効であると主張するが、リリカと思われていた仮面の女性が、実は生徒会長の桃喰綺羅莉であることが判明し、彼女から正当なレイズとして認められる。追い詰められた豆生田は、自分の人生計画表もチップとして扱うように求め、勝者が敗者の人生を自由にできることを生徒会に認めさせ、選択権を手にする。そのうえで、強い順での勝負に持ち込むが、夢子のJのスリーカードにあえなく敗北する。その結果、豆生田は夢子に人生計画表を握られたあげく、綺羅莉から生徒会除名の宣言を受けることとなる。
五十嵐清華の挑戦
夢見弖ユメミに続いて、豆生田楓にも勝利した蛇喰夢子は、先のギャンブルでディーラーを務めた桃喰綺羅莉から興味を抱かれる。一方、綺羅莉を支持するが故に生徒会の分裂を懸念していた五十嵐清華は、生徒会を脅かす夢子に敵意を募らせるとともに、彼女が綺羅莉から特別視されていることに嫉妬を覚える。そして、自らが引導を渡すことを決意し、夢子にお互いの命を賭けたギャンブルを申し込む。しかし、命をギャンブルの賭けの対象とすることに面白みを見いだせない夢子は、命以外にお互い一番大切なものを賭け合うことを提案。もし夢子が負けた場合は、二度とギャンブルができなくなり、逆に清華が負けた場合は綺羅莉とのいっさいの関係を断ち切り、赤の他人となるという条件が課せられる。そして二人は綺羅莉の提案により、扉の塔の攻略を行うことになる。そのうえで綺羅莉は、失ったものを再び得られないようにすると称して、敗北した場合は塔の五階の窓から飛び降りるという追加条件を提示し、夢子も清華もこの条件を受け入れる。さらに綺羅莉は「正答は必ずしも正解とは限らない」というヒントを出して、二人を困惑させるのだった。
扉の塔
類いまれなる頭脳と勝負運を誇る蛇喰夢子と、中学時代から学業が優秀で合理的な考えを得意とする五十嵐清華。扉の塔に挑戦した両者は、お互いに塔の扉やはしごに据えられているパスワードの数字を難なく解き明かす。しかし清華は進むにつれ、正解にもかかわらず、扉の先が行き止まりになっていることを知り、桃喰綺羅莉が告げたヒントの意味を解明しようとする。その結果、下の階に続く扉は、一階もしくは二階分下りることができ、さらにそのパスワードが階数の数字になっていることを見抜き、答えが「二」になるパスワードを選べば、最速で往復できると推測する。そして折り返し地点となる一階で、夢子に先んじたことから、清華は一気に突き放そうともくろむ。こうして清華は二階ずつ進んでいくが、ゴール地点には先にクリアしていた夢子が待っていた。実は扉の塔には特定のターンにだけ、一階から五階につながる隠し階段が開通するようになっており、夢子はそれを解き明かしていたのである。清華は綺羅莉と他人となって別れることを悲しみながらも、約束どおりに塔の五階の窓から身を投げる。その時、綺羅莉が清華に組み付き、いっしょに落下してしまうが、中庭にはセーフティマットがしかれていた。綺羅莉は驚く清華に対して、飛び降りても大丈夫な窓が五階に1か所だけあり、清華がそれを無意識に選び取ったことを告げ、再び自分の秘書になるように誘いかける。こうして、綺羅莉と清華の絆はいっそう深まるのだった。
生徒会長選挙
蛇喰夢子は、公式戦を含めた三回のギャンブルにすべて勝利し、30億円もの報酬を獲得していた。公式戦を終えたことで、家畜として存在する理由もなくなった夢子は、その報酬の中から3億1千万円を生徒会への借金返済に充て、家畜の地位を返上する。一方、桃喰綺羅莉は生徒会役員たちに対して、生徒会を一度解散して新しい生徒会長を選出するために、生徒会長選挙の開催を宣言する。綺羅莉の突然の発言に生徒会役員たちは騒然とするが、そこに百喰一族の当主を含めた10人の転校生が現れる。そして、もしも彼らがその選挙に勝利した場合は、私立百花王学園の生徒会長の座に加えて、綺羅莉に代わって百喰一族そのものの当主になれることが明かされる。転入してきた百喰一族の分家の後継者たちのほとんどが綺羅莉を敵視していたことから、その中でもひときわ強い憎悪を向ける等々喰定楽乃の提案により、まずは協力して綺羅莉を落選させ、そのあとに分家の当主たちの中から、新たに会長を選ぶ方針が定められる。
指切りギロチン
蟲喰家当主の蟲喰恵利美は、百喰一族の分家にあたる蛇喰夢子に興味を抱き、お互いの票を賭けたギャンブルを申し込む。夢子が同意すると、恵利美は選挙管理委員会から大和イナホを呼び出し、彼女や鈴井涼太を伴って、ギャンブル会場である第一図書準備室に向かう。そこには許可なく入室していた生志摩妄が待っており、夢子を見るや否やギャンブルを誘いかける。妄とのギャンブルに面白みを見いだせない夢子は不快な表情を浮かべるが、恵利美は三人でギャンブル「指切りギロチン」を行うことを提案。その恐ろしいルールを夢子と妄に説明すると、二人は怖がることなく興味津々の様子を見せる。百喰一族の夢子はともかく、妄までが恐怖を感じないことに苛立ちながらも、恵利美はさっそくゲームを始める。恵利美は装置内部に仕掛けられている鉄板の存在から、勝利を確信しながらゲームを進めていくが、夢子がイナホに告げた一言から、すでに鉄板が外されている可能性を危惧する。余裕をなくした恵利美は、指を失うかもしれないスリルを楽しむ夢子や、自傷に快感を覚える妄の前にはまったく歯が立たなかった。しかし、ギロチンを支えるヒモが二本になった時、蟲喰家の誇りに懸けて、最後の一本になるまで戦い抜く決意を固める。その直後、妄が二本の紐を切ってしまうが、ギロチンは鉄板に阻まれ、二人の指が切断されることはなかった。恵利美は自らの疑念が杞憂だったと自覚して敗北を認めるものの、その信念を夢子から称賛される。一方、よけいな行動を取った妄は、夢子からさらに嫌われてしまうのだった。
ニム零式
桃喰リリカにより、蛇喰夢子や陰喰三欲、陽喰三理による選挙戦の舞台が整えられる。ギャンブルの舞台として用意された第七談話室には、選挙管理委員長の黄泉月るなが待ち構えており、彼女のディーラーによる「ニム零式」が執り行われる。さらに、三欲と三理が結託しているのではないかと疑う鈴井涼太も参加を希望し、事実上二対二の対決にもつれ込む。一方、リリカから呼び出された早乙女芽亜里は突然、ギャンブルをするように持ち掛けられる。リリカは、芽亜里が勝てば100票を提供し、負けた場合は芽亜里の持つ1票をもらったうえで、いずれの結果になっても選挙戦を共に戦うように要求する。しかし芽亜里は、人前でつねに仮面をつけているリリカを信用できずに申し出を断り、その場から去ろうとする。その時、鈴井から連絡が入り、一回戦に勝利した夢子が突然、ギャンブルの最中に倒れたことを聞かされる。夢子は三欲の仕掛けた毒によって倒れてしまったが、それがギャンブルの始まる前に発生したことから、選挙管理委員長のるなも反則と断言できない状況であることが判明する。この事態がリリカの差し金と疑う芽亜里は彼女に激昂しつつも、夢子を救うために第七談話室へと向かい、夢子に代わって「ニム零式」に参戦する。
早乙女芽亜里VS陰喰三欲・陽喰三理
陰喰三欲は、蛇喰夢子に代わって「ニム零式」に参加した早乙女芽亜里に対して、自らが毒を使ったことを隠そうともせず、血清を100票として扱うことや勝負をやめたり、バーストしたりした場合は夢子と同じ毒を与えられるというルールを追加する。そのルールは、芽亜里や鈴井涼太にとって圧倒的に不利なものとなるが、二人は夢子のために迷わずその条件を飲む。ゲーム開始直後、芽亜里は鈴井に対し、手札を全員に見せるように求める。自殺行為としか思えないその行為に鈴井はとまどうが、夢子から芽亜里からの指示に従うように言われていたこともあり、芽亜里の策を信じて、鈴井は自らの手札をさらす。三欲はその行為をあざ笑うが、芽亜里は桃喰リリカから提供された100票を惜しまず賭けて、勝利をおさめる。さらに次の試合でも鈴井にカードをさらさせ、芽亜里の思いどおりにゲームを進める。三欲たちは優位な立場にいながらも、芽亜里が少しも動じていないことに疑いを持つ。すると芽亜里は、黄泉月るながギルブレス・シャッフルを使っていることから、鈴井の手札さえわかれば、必勝法が確立できることを明かしつつ、三回戦もみごとに勝利する。陽喰三理はルールどおり毒を受け入れ、三欲は再戦したときには、勝負師として必ず芽亜里を葬ることを宣言。そして、鈴井と共に血清を手に入れた芽亜里は、回復しながらも眠ったままの夢子に対して、生徒会長になることを宣言するのだった。
公共財ゲーム
生徒会長選挙に意欲を燃やす皇伊月は、実家の財産を使って50票を買い上げる。さらに、以前「選択ポーカー」で負かした豆生田楓に、彼の人生計画表を破棄するなどして奮起させようとするが、心を折られてしまった豆生田には、以前のような覇気が少しも見られなかった。そんな中、伊月は蛇喰夢子に誘われて、等々喰定楽乃の主催するギャンブル「公共財ゲーム」に挑むことになる。ゲームには二人のほかに、骨喰ミラスラーヴァや尾喰茨、さらに伊月のために夢子が誘った豆生田も参加する。伊月は選挙にまったく興味を示さない豆生田に不快感を示すが、自分だけでなく豆生田まで定楽乃や百喰一族に利用されていることに我慢できず、実力で勝ち上がることを決意する。同時に夢子のブラフによって、「公共財ゲーム」が自分の負けない程度に全員の足を引っ張る、裏切りのゲームであることを知る。そんな中、さっそく1ターン目から納税を怠った裏切り者の存在が発覚し、参加者たちはたちまち疑心暗鬼となる。夢子の提案によって裏切り者を特定する前に、裏切りそのものを防ぐ策が講じられるが、逆に裏切り者が二人に増えてしまう。そんな中、負けを覚悟した夢子と豆生田は裏切り者を道連れにしようと、すべてを私財BOXに入れると宣言し、茨もそれに便乗する。彼らの言動を伊月は、裏切り者をけん制するための演技と考え、全員が五枚とも納税する結果に導く。さらに豆生田によって、伊月とミラスラーヴァが裏切り者であることが暴露され、多くの私財を獲得したミラスラーヴァが追放されたのち、続くターンで全員が納税したことで伊月の勝利が確定する。ミラスラーヴァは、伊月に乗せられてしまったことを自覚するが、むしろ彼女の手ぎわを称賛するとともに、伊月が豆生田に対して特別な思いを抱いていることを察するのだった。
ACTIVE STATION
ファンから八百長によって100近くの票を集めた夢見弖ユメミは、さらに票を集めようと、蛇喰夢子にデュエットのライブを持ち掛けて、ファンと大規模なギャンブルをしようと考える。そこに、ユメミのあこがれる日本人ハリウッド女優「名足カワル」が現れる。カワルは、自分は百喰一族の和楽喰淑光であることを明かし、夢子に対して票を賭けたギャンブルを挑む。ユメミは自分を無視する淑光に対して自らを認めさせようと、自分もギャンブルに混ぜるように要求する。そして淑光の意向により、夢子とユメミは「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」を組み、淑光とギャンブル「ACTIVE STATION」を戦うことが決まる。一回戦の「歌唱力対決」では、歌が得意のユメミと「バトっていいとも!」で歌声を披露した夢子は、みごとな重唱を披露する。さらに、事前にユメミが観客を買収していたことから、二人の勝利は確定的と思われたが、結果は淑光の圧勝に終わる。ユメミは淑光が観客を再買収していたことに気づき、女優としてだけではなく、勝負師としても優れていることを実感する。続く二回戦の「デスマカロン対決」では、ユメミが生理現象を制御すべく自らの指を折って見せるものの、淑光はそれすらも想定しており、正解を当てられてしまう。夢子も正解を当てたために勝負は引き分けに終わるが、ユメミは淑光の行いに感動するとともに、淑光に演技への思いを認められたことによって戦意を喪失する。そんなユメミに怒りを覚えた夢子は、三回戦の「スワサント・トロワ」を一人で戦うことを決める。淑光もまた、二人が分裂したことを感じ、夢子一人に注目して合計値の宣言を続けて王手をかける。しかし土壇場で、ユメミのアイドルへの思いが燃え上がり、勝利の先にあるものを確かめたいという感情に淑光の勝負の読みが大きくずらされ、夢子とユメミは勝利をおさめるのだった。淑光は敗北したものの、ユメミのような存在を知り得たことに強い充実感を覚え、あらためてユメミを認めると同時に女優として大成するようにエールを送る。
スカムコイン
早乙女芽亜里との共闘を望む桃喰リリカは、芽亜里と釣り合うだけの力があることを証明するために、狛喰希とギャンブル「ジン・ラミー」で勝負を行い、15戦14勝と大きく勝ち越す。リリカは勝ち分を生徒会長選挙の票で支払うように要求するが、希はすでに票を手放しており、その代わりに入手したという「スカムコイン」と呼ばれる通貨で支払おうともくろむ。さらに希は、やがてスカムコインが現金や票を上回る価値を生み出すことだろうと豪語するが、芽亜里はスカムコインが詐欺のために発行された通貨に過ぎないことを即座に見破る。リリカもまた、スカムコインの発行主が尾喰凛であることを瞬時につき止めると、ジン・ラミーでの勝ち分を免除する代わりに凛との勝負をあっせんするように要請する。さらに、これに勝利したときには、正式に同盟を組むことを芽亜里に承諾させる。リリカのことを桃喰綺羅莉と同じように憎んでいた凛も、渡りに船とばかりにリリカとの勝負を受けることを決め、尾喰茨や、蛇喰夢子や芽亜里のクラスメートである三人組を交えて、ギャンブル「戦争」で決着をつけようと持ち掛ける。
戦争
早乙女芽亜里と狛喰希が見守る中、いよいよ「戦争」が始まる。第一ラウンド、第二ラウンドと桃喰リリカ一人だけが負けたことから、芽亜里はリリカ以外の全員が共謀していると疑う。しかし尾喰凛とリリカから、ゲームの性質や嘘をつけない尾喰茨の存在によって完全な共謀は不可能であると聞かされると、自分のやり方で勝とうとしているリリカを元気づける。凛もまた、尾喰直伝の人身掌握術を駆使して、三人組を上手に使って反撃を加えるなど、勝負は一進一退の状態が続く。3倍、30倍と互いにレートをアップさせて相手の動揺を誘うが、「戦争」の権利の一つであるギブアップをさせようとする芽亜里の心配をよそに、リリカは凛の真の作戦を見抜き、最終的に彼に大きな負債を負わせることに成功する。凛はあらかじめ、審判の黒鞍蔵良を偽者にすり替えており、土壇場で勝負の不成立を狙うが、このギャンブルの一部始終を確認していた黄泉月るなが現れ、「戦争」の結果が有効であることを認める。こうして、凛は生徒会長選挙をリタイアするとともにスカムコインの運用も停止せざるを得なくなり、芽亜里もあらためてリリカとの共闘を受け入れるのだった。
大集約
生徒会長選挙は佳境を迎え、候補者もしぼられてきた。桃喰綺羅莉の再選を望む五十嵐清華は、綺羅莉を超える票を集めた等々喰定楽乃を警戒し、複数票を持っている八人の生徒を招集し、トーナメントで優勝した者に累計の500票を集約する大集約を開催し、そこで用いられるギャンブルの種目として「じゃんけんポーカー」の採用を宣言する。会場には、蛇喰夢子や早乙女芽亜里のほか、西洞院百合子、蟲喰恵利美、生志摩妄、夢見弖ユメミ、陰喰三欲、尾喰茨など、そうそうたるメンバーがそろう。一回戦では夢子が恵利美に、芽亜里はユメミに完勝する。妄は百合子を、三欲は茨を相手に戦い、二人ともイカサマを使って勝利をおさめる。第二試合に入ると、夢子が妄のイカサマを逆にやり返して叩きのめしたあと、芽亜里は三欲と戦う。三欲はイカサマを使って、第3ターンまで連続で勝利するが、そのイカサマが見破られた第4ターンは敗北し、第5ターンでも不利を強いられる。進退窮まった三欲は自ら毒を飲み、人が死ぬのを見たくなければギブアップするように芽亜里にせまるが、桃喰リリカからその状況をリークされた陽喰三理が三欲の命を救ったことから、芽亜里の勝利が確定する。かくして夢子と芽亜里の二人は、大集約の決勝という最高の舞台で夢子の転入初日以来となる、直接対決に及ぶのだった。
蛇喰夢子VS早乙女芽亜里
蛇喰夢子との直接対決を迎えた早乙女芽亜里は、出会いから現在までの出来事を思い返していた。夢子もまた、今までにないほどの強い興奮を覚える中で、大集約決勝戦が始まった。芽亜里は過去の敗北を振り払うかのように、凄まじい気迫を見せ、一回戦、二回戦と立て続けに勝利する。一方、会場の外ではどちらが勝利するか、その勝者を当てる賭けが白熱していたが、実は等々喰定楽乃が、学園の生徒たちが持っている票を担保にした大がかりなギャンブルを仕組んでいた。三回戦を勝利した夢子は、四回戦において半端な額のレイズで芽亜里をとまどわせるが、やがて芽亜里は、わざと引き分けにすることで、場外ギャンブルの仕掛け人の思惑を外すことに気づく。そして、それを承知したうえで自分にとって最善の手段を尽くし、勝負は250票対250票の引き分けに終わる。この結果によって、裏工作の仕掛け人である定楽乃の独走態勢が崩れると、彼女は夢子とのギャンブルで決着をつけなければならないと認識する。また、芽亜里は今回の戦いを通して自信を取り戻し、あらためて生徒会長を目指す決意を固める。そして二人の戦いを見届けていた桃喰リリカに、桃喰綺羅莉との直接対決をうながすのだった。
スピンオフ
漫画
本作『賭ケグルイ』のスピンオフ作品に、斎木桂の『賭ケグルイ双(ツイン)』と柊裕一の『賭ケグルイ妄(ミダリ)』、『川村拓』の『賭ケグルイ(仮)』がある。『賭ケグルイ双(ツイン)』は、蛇喰夢子のライバルである早乙女芽亜里を主役にした作品で、本作より1年前の私立百花王学園が舞台となる。また「花手毬つづら(はなてまりつづら)」や「聚楽幸子(じゅらくさちこ)」など、当作品のオリジナルキャラクターも多数登場する。『賭ケグルイ妄(ミダリ)』は、生志摩妄の活躍を主軸に描かれており、彼女の狂気に満ちた本性がいっそう強調されている。『賭ケグルイ(仮)』は、デフォルメされた本作のキャラクターがゆるいギャグを繰り広げる4コマ漫画で、天然ボケで周囲を翻弄する夢子や、頻繁にツッコミを入れる鈴井涼太などの活躍を楽しめる。
小説
本作『賭ケグルイ』を原作としたスピンオフ小説に、武野光の『賭ケグルイ悦(トリップ)』と『賭ケグルイ戯(ジョーカー)』がある。『賭ケグルイ悦(トリップ)』は、私立百花王学園が所有する南国のカジノリゾート「繚乱島」を舞台にした臨海学校に、蛇喰夢子や鈴井涼太、早乙女芽亜里が参加するという内容。『賭ケグルイ戯(ジョーカー)』は、劇場版実写ドラマ『賭ケグルイ』のノベライズ版で、ギャンブルを否定する組織「ビレッジ」の台頭と、それに伴って開催された生徒代表指名総会に夢子や、芽亜里たちが挑むという内容になっている。
アンソロジー
本作『賭ケグルイ』のアンソロジーコミックに、『賭ケグルイ万(ヨロズ) 賭ケグルイ公式アンソロジー』がある。藤原ここあ、望月淳、葉月抹茶によるイラストや、よしむらかなやワザワキリ、あいだいろによる書き下ろし漫画など、32人にも及ぶ作家たちの作品が収録されている。
ファンブック
本作『賭ケグルイ』のファンブックに、『賭ケグルイ愛(ラブ)』がある。蛇喰夢子をはじめ、鈴井涼太や早乙女芽亜里といった友人や、生志摩妄、豆生田楓、夢見弖ユメミなどの彼女と争ってきた百花王学園生徒会のメンバー、そして等々喰定楽乃や尾喰凛などの百喰一族の詳細なデータや、各キャラの名前の由来や裏話、物語の制作秘話などにせまる河本ほむらや尚村透へのインタビュー、2017年に開催された「賭ケグルイ」初のキャラクター人気コンテスト「賭ケグルイ頂上戦」で集計した、「好きなキャラ」「好きなコンビ」「好きなエピソード」のランキング詳細発表などが収録されている。また巻末には、河本ほむらが書き下ろした小説「日替わりランチの女」「酸っぱい女」が掲載されている。
メディアミックス
TVアニメ
本作『賭ケグルイ』のTVアニメ版第一期『賭ケグルイ』が2017年7月から9 月にかけて、第二期『賭ケグルイ××』が2019年1月から3月にかけて、それぞれMBS、TOKYOMX、テレビ愛知、RKB 毎日放送、BS11、BS 日テレで放送されたほか、Netflix でも配信された。『賭ケグルイ』は、原作コミックスの第1巻から第5巻までの内容が描かれ、最終話では蛇喰夢子と桃喰綺羅莉が直接対決するオリジナルストーリー「運命のタロットカード」が展開された。制作会社はMAPPAが担当し、監督は林祐一郎、シリーズ構成は小林靖子が務めた。キャストは、夢子を早見沙織、鈴井涼太を徳武竜也、早乙女芽亜里を田中美海が演じている。『賭ケグルイ××』は、生徒会長選挙を主に扱っているほか、扉の塔でのギャンブルも描かれる。またオリジナルキャラクターとして、百喰一族の異端児である「×喰零(ばつばみれい)」が登場する。制作会社はMAPPAが担当し、監督は林祐一郎と松田清、シリーズ構成は小林靖子が務めた。キャストは前作と同様だが、新たに登場した等々喰定楽乃を潘めぐみ、尾喰凛を石田彰、×喰零を朴璐美が演じている。
TVドラマ
本作『賭ケグルイ』のTV ドラマ版第一期『賭ケグルイ』が2018年1月から3月にかけて、第二期『賭ケグルイ season2』が2019年4月に、それぞれ毎日放送、TBS テレビ、IBC 岩手放送、あいテレビほか、系列局で放送された。『賭ケグルイ』は、原作コミックスの第1巻から第3巻までの内容が描かれ、『賭ケグルイ season2』では、原作コミックスの第4巻から第5巻までの内容が描かれている。キャスト、スタッフは共通しており、制作会社はダブが担当し、監督を英勉と茂木克仁、深迫康之、脚本を英勉と高野水登が務めた。キャストは、蛇喰夢子を浜辺美波、鈴井涼太を高杉真宙、早乙女芽亜里を森川葵が演じている。
劇場版実写ドラマ
2019年5月3日から、本作『賭ケグルイ』を原作とした劇場版実写ドラマ『賭ケグルイ』が公開された。TVドラマ『賭ケグルイ season2』の続編に位置付けられているが、ストーリーは河本ほむらが原案を担当したオリジナルで、ギャンブルを否定するオリジナル組織「ビレッジ」と、そこに所属するオリジナルキャラクターとして「村雨天音(むらさめあまね)」「歩火樹絵里(あるきびじゅえり)」「犬八十夢(いぬはちとむ)」が登場する。制作会社はダブ、ギャガ、S・D・P、映画賭ケグルイ製作委員会が担当し、監督は英勉、脚本は英勉と高野水登が務めた。キャストは、蛇喰夢子を浜辺美波、鈴井涼太を高杉真宙、早乙女芽亜里を森川葵が演じている。
登場人物・キャラクター
蛇喰 夢子 (じゃばみ ゆめこ)
私立百花王学園の2年華組に転校してきた女子。誰に対しても敬語で話す。生徒会の身辺調査によると、両親はすでに他界し、入院している姉に代わって百喰一族の分家にあたる蛇喰家の当主となっている。転校早々、華組を仕切っていた早乙女芽亜里をギャンブルで負かし、注目を浴びる存在となる。勝利よりもギャンブルのスリルそのものに快感を覚えるタイプで、勝つか負けるかのギリギリの位置に身を置くことを何よりも好む点から、絶対に勝てる勝負や不公平なギャンブルを嫌悪している。さらに、自らの才覚を必ずしも勝利のために発揮するわけではないことから、他者から思考を理解されない場合も多く、「賭ケグルイ」と揶揄されるときもある。また、ギャンブルが持つスリルを台なしにしようとしたり、心を折られたりするなどの理由でギャンブルに対する戦意を失った相手に対しては、極めて冷酷に接する。その反面、不屈の精神を持つ者や、立ち向かう確固たる意志を持つ相手には敬意を払う傾向にあり、ギャンブルに対する強い信念を持つ者が多い私立百花王学園を気に入っている。勝負に引き分けたり、穏当な結果に終わったりすることもあまり好ましく思っていないが、相手や第三者の思いどおりにする展開を防ぐために、あえて引き分けを狙う場合もある。記憶力と洞察力に優れ、イカサマを見抜く力にも長けており、見抜いたイカサマを逆に利用して相手を追い詰めることも多い。それに加えて、スリルを求めるゆえの並はずれた度胸によって、幾度も勝機を呼び込む。ただし体力は人並みで、桃喰綺羅莉や五十嵐清華と共に扉の塔の螺旋階段をのぼる際、ただ一人息を切らしていた。転入して早々に出会った鈴井涼太や芽亜里に強い興味と信頼を向けており、彼らと共に行動することを好む。また、強い相手とギャンブルをすることを何より楽しみにしているため、主に生徒会の役員たちに対して勝負を挑む傾向にある。その結果、皇伊月や生志摩妄、夢見弖ユメミ、豆生田楓などを次々と下し、やがて生徒会自体をゆるがしかねない存在として認識される。生徒会長選挙には、生徒会長の座には興味がないものの、百喰一族を含めた強力なプレイヤーたちとのギャンブルを楽しむ絶好のチャンスという理由で積極的に参加する。
鈴井 涼太 (すずい りょうた)
私立百花王学園の2年華組に在籍している男子。学級委員を務めており、転校してきた蛇喰夢子に学校を案内する。よくも悪くも常識的な性格で、他者を欺いたり陥れたりするのが苦手なため、鈴井涼太自身もギャンブルに向いていないことを自覚している。また、ギャンブルに関する知識も一般生徒とそう変わらないが、与えられた環境の中で最善の手を考え、仲間たちの窮地を救うこともあるなど、状況を把握する能力は高い。かつて早乙女芽亜里とのギャンブルに敗れ、家畜に身分を落としていたが、夢子によって助けられ、その地位を返上することに成功する。そして彼女に強い恩と興味を抱き、何かと協力するようになる。また、かつていじめられていた芽亜里に対してもまったく根に持つことはなく、彼女が夢子となかよくなったことを機に、友人として接する。「ESPゲーム」では、ディーラーとして参加しつつもひそかなアシストで夢子を助け、生徒会長選挙では陰喰三欲の毒に倒れた夢子を救うために、芽亜里とタッグを組んで「ニム零式」を戦い、みごと勝利する。その後も夢子や芽亜里、桃喰リリカとつるんで行動するが、生徒会役員になるつもりはないため、夢子たちが助力を必要としない限りは参加していない。夢子と行動を共にしたり、彼女に協力を惜しまないのは、かつて助けられた恩のほかに、彼女の行うギャンブルの先の見えない展開に魅了されているという理由がある。そのため、仮に彼女に危険が伴いかねないギャンブルも、積極的に止めようとすることはない。
早乙女 芽亜里 (さおとめ めあり)
私立百花王学園の2年華組に在籍している女子。かつて鈴井涼太をポーカーで負かし、家畜とした張本人。ギャンブルの技量は高く、特に洞察力やここぞというときの勝負強さは蛇喰夢子にも匹敵する。ただし、夢子が勝負へのスリルに夢中になっているのに対し、早乙女芽亜里自身は、勝利への渇望がギャンブルを制するための原動力となっている。人をあやつる術に長けており、クラスメートたちの弱みを握っては、自分に有利なギャンブルが行われるように仕向けていき、やがて華組のボス的存在にのし上がる。だが、夢子に対して仕掛けた「投票ジャンケン」に大敗して880万もの借金を背負い、家畜に転落する。その借金を返すために生徒会役員の西洞院百合子との公式戦に挑むが、ギャンブル「生か死か」で敗北し、さらなる借金を抱えてしまう。 しかし、その後の債務整理大集会の「二枚インディアンポーカー」で、夢子と組んで木渡潤と蕾菜々美と戦って大勝をおさめた結果、借金を返済し、同時に家畜の地位も返上する。さらに、桃喰綺羅莉から直々に生徒会に入るようにうながされるが、彼女に屈することをよしとせず、これを断る。最初は夢子のことを嫌っていたが、ギャンブルの才能を認め、現在は協力関係にある。その中で、夢子から過剰に慕われるようになり、それに対してまんざらでもない様子を見せる。さらに、奴隷のように扱っていた鈴井からも恨まれることなく、夢子の協力者として頼られる。のちに生徒会長選挙を通じて桃喰リリカと知り合い、彼女がギャンブル「戦争」で尾喰凛を下したことによって彼女を仲間として認める。会長選挙の山場となる大集約で行われた「じゃんけんポーカー」では、夢見弖ユメミに勝利し、復讐に燃える陰喰三欲との再戦を制することで決勝まで勝ち残り、ついに夢子との再戦を実現させる。そしてその中で、あらためて夢子と芽亜里自身の関係について思い返すとともに、彼女に勝ちたいという欲求を胸に戦う。その結果、互いに実力を出し尽くして引き分けに持ち込み、互いに250票を獲得したうえで、その裏で進められていた等々喰定楽乃の企みを阻止する。さらにリリカに対して、綺羅莉との直接対決をうながす。
桃喰 綺羅莉 (ももばみ きらり)
私立百花王学園に通う3年生の女子で、生徒会の会長を務めている。百喰一族の本家である桃喰家および百喰一族そのものの当主で、桃喰リリカの双子の妹にあたる。1年生の時、前生徒会長とのギャンブルに勝利し、会長に就任する。その後、生徒会への上納金制度や借金を背負った生徒を対象にした家畜制度の制定などの改革を行い、私立百花王学園の空気をギャンブル一色に変えた。私立百花王学園をしばしばアクアリウムに例えることがある。理解できないことを何よりも好んでおり、秩序の上に自らが君臨するより、予想外の事態によって大きな騒動が起こることを期待している。ギャンブルに関しては底知れぬ実力を持ち、幼い頃に尾喰凛とババ抜きを行った際には、彼がイカサマをしていることを承知のうえでそれを受け入れ、彼に強い屈辱を植えつける。自他共に快楽を追及するほか、安定より混乱を好む性格や自然と人を見下す態度、そしてその途方のない能力から、百喰一族の大半から嫌われている。特に凛や等々喰定楽乃からは強く憎悪されており、彼らが生徒会長選挙に参加したのは、百喰一族の当主になるためだけではなく、綺羅莉に対する敵対心も大きく影響している。
皇 伊月 (すめらぎ いつき)
私立百花王学園に通う1年生の女子で、生徒会に所属している。実家が日本でも有数の玩具メーカーで、金に物を言わせて生徒会入りした。上昇志向が強く、生徒会を利用してより多くの富と名声を獲得しようともくろむ。その一環として、実家で作らせたイカサマのカードを使ってギャンブルに勝ち、相手の生爪を奪ってコレクションしていた。蛇喰夢子と生爪を賭けて「ダブル神経衰弱」で勝負するものの、イカサマを見抜いて逆にそれを利用した夢子に敗北する。これをきっかけに、生徒会会長の桃喰綺羅莉から生徒会からの除名を言い渡され、一気に窮地に陥る。そこで、再起を果たすべく夢子に近づき、彼女のギャンブルに対する欲望をあおり、生徒会を転覆させるようにそそのかす。しかし豆生田楓と公式戦の最中に、戦う夢子から高額の賭け金を提供するように要求される。予想外の展開に一度は面食らうが、豆生田から挑発を受けたことで、成功をつかむためには相応の対価を払う必要があることを認識すると、夢子の申し出を受け入れる。その結果、夢子は公式戦に勝利し、その報酬として夢子から豆生田の人生計画表をゆずられる。それからしばらくのあいだ、敗北した豆生田と共にいたが、その中で彼の上昇志向が自分と似ていることにあらためて気づき、やがて心惹かれていく。生徒会長選挙に対する意欲が高く、もともと興味のない生徒たちから票を買い集めて、50票近くを獲得する。一方で、公式戦に敗北して心が折れた豆生田の再起を願っており、そのための舞台として、夢子や等々喰定楽乃の企画した「公共財ゲーム」に参加する。ゲーム内では、骨喰ミラスラーヴァに対してブラフを仕掛けることでトップに輝き、さらにその過程で豆生田の復活もうながす。その裏で、定楽乃と「豆生田が40枚の私財を集められるか」というギャンブルを行っており、集められない方に300票を賭けていたことから、勝ち分も含めたすべての票を失ってしまう。この結果を見た豆生田からは、どうして自分を助けたのかと詰め寄られるが、豆生田が勝てば、自分の見立てはまちがっていなかったことが証明され、負ければ300票を得られるのだから、どちらにしても自分にとっては得が生じると主張。そして晴れ晴れした気分のまま、生徒会長選挙のリタイアを宣言する。
西洞院 百合子 (にしのとういん ゆりこ)
私立百花王学園に通う三年生の女子で、生徒会役員および伝統文化研究会会長を務めている。つねに和服を着ており、研究会の部室で公式戦を執り行っている。資金力に物を言わせたギャンブルが得意で、イカサマはするものの、あくまで補助的なために気づかれることはない。「生か死か」では、蛇喰夢子にイカサマを見抜かれて危機に陥るものの、生徒会長の桃喰綺羅莉の介入で勝利を収める。生徒会役員の座にこだわるのは、伝統文化研究会の会員が家畜になることを防ぐためである。芽亜里や夢子に対して結果的に勝利をおさめるなど、生徒会に名を連ねるだけあってギャンブルの腕は確かだが、その責任感の強さが自らの足を引っ張ることもある。また、よくも悪くも常識的な性格で、混乱を望む綺羅莉の考えについていけない素振りを見せることも多い。生徒会長選挙では、陰喰三欲の仕掛けた毒によって敗退したり、大集約の「じゃんけんポーカー」で生志摩妄のイカサマを読み切れず敗退したりするなど、ここぞというときに限って勝利できない傾向が見られた。
生志摩 妄 (いきしま みだり)
私立百花王学園に通う3年生の女子で、生徒会役員および美化委員長を務めている。かつて生徒会長である桃喰綺羅莉とのギャンブルで左目を失い、眼帯をしている。その時の体験から、ギャンブルの負けの対価としての「痛み」を強く欲するようになる。美化委員の取り調べの名目で蛇喰夢子に生死を賭けたギャンブル「ESPゲーム」で勝負を持ち掛けるが、その中でイカサマによって自分が必ず負ける、すなわち死ぬように仕組んでいた。しかし夢子にそのことを見破られ、引き分けに持ち込まれたうえに、「ムカつく死にたがり」として一蹴される。さらに生徒会長選挙では、夢子や蟲喰恵利美と「指切りギロチン」で対決するが、その時も、ギャンブルのスリル以上に自分が傷つくことを優先したために夢子からさらなる怒りを買い、「あなたとは二度とギャンブルをしたくない」とまで言い放たれる。その後も夢子からは辛辣な評価を下されたり、会うなり嫌な顔をされたりするなど、基本的に他者に対して好意的な様子を見せる彼女から嫌われるという、ある意味稀有なタイプの人間となる。その一方で、生志摩妄自身は夢子を強く慕うようになり、マゾヒストなこともあって、いくら彼女に邪険に扱われてもかかわることを止めようとすることはない。大集約の「じゃんけんポーカー」では、一回戦でカードの裏にイカサマを仕込むことで西洞院百合子を負かすことに成功する。しかし続く二回戦では、捨て札を抜くためのイカサマを夢子に見抜かれ、三度目の敗北を喫する。その際も、ギャンブルを手段として利用する浅はかさを糾弾されるが、それでもへこたれない面を見せつけ、わずかながら彼女からの心証をよくすることに成功する。
木渡 潤 (きわたり じゅん)
私立百花王学園の2年椿組に在籍している男子。県知事の息子で差別意識が非常に強く、負債者に対しては容赦のないいじめを行う。債務者を装って債務処理大集会に出場し、金儲けを企む。そして、「二枚インディアンポーカー」で家畜の一人である蕾菜々美に命じてイカサマを企むが、蛇喰夢子と早乙女芽亜里のコンビにあっさりと見破られ、かつ今まで虐げてきた蕾の反抗もあって大敗北。3億1千万円もの負債を抱えて家畜に転落する。それからは、かつてとは真逆と言えるみじめな学園生活を過ごすことになったが、生徒会長選挙の最中に夢子から申し込まれたギャンブルによって家畜を返上するだけの資金を獲得し、家畜の座を返上した。そのうえで、二度とギャンブルをしないことを宣言する。
蕾 菜々美 (つぼみ ななみ)
私立百花王学園の2年椿組に在籍している女子。実家が裕福でなかったため、入学後すぐに家畜となってしまう。さらに木渡潤によって、お気に入りだった長い髪を切られたことで抵抗する気力を失い、その後も木渡に虐げられていた。木渡の命令で債務整理大集会に出場するものの、勝負の最中に蛇喰夢子の「虐げられたままでいいのか」という言葉に、自分は家畜ではなく人間であることに目覚め、結果的に木渡を最下位に落とすこととなった。それからも家畜として長らく扱われており、生徒会長選挙が始まってもその境遇に変わりはなかったが、通りかかった夢子から勇気づけられ、リスクを負ってでも今の状況を抜け出すことを決意する。さらに、等々喰定楽乃が夢子に対してギャンブルを仕掛けた際、数合わせのNPCとして参加するように要請されると、これを受けつつも鈴井涼太と共に夢子が有利になるように立ち回ろうとする。
黒鞍 蔵良 (くろくら くらら)
私立百花王学園に通う女子。選挙管理委員会の一人。ほかの選挙管理委員会の役員と同様に着ぐるみをまとっているが、フードを深くかぶっているため、他者からは目元を確認されづらい。桃喰リリカや尾喰凛、尾喰茨、2年華組の三人組が参加したギャンブル「戦争」の審判を務めたとされているが、この時の彼女は凛が用意した偽物だったことが、のちに発覚する。そのため、知らないうちに黒鞍蔵良自身の替え玉を用意されていたことに憤り、同じく選挙管理委員会のメンツを潰されたことに腹を立てた黄泉月るなと共に偽物を糾弾し、彼女を選挙管理委員会に無理やり引き入れる。のちに、大集約の中で行われた「じゃんけんポーカー」の審判を務めるが、偽物の騒動に対する不満や警戒心から「私は本物」と書かれたタスキをつけて登壇し、参加者の一人である茨をいたたまれない気分にさせる。
三人組 (さんにんぐみ)
私立百花王学園の2年華組に在籍している女子たち。つねに三人でつるんでいる。三人共に身勝手な性格で、かつてはクラスの代表的な存在であった早乙女芽亜里に媚(こび)を売っていたが、彼女が家畜に転落した瞬間に傲慢な態度を取り始める。蛇喰夢子に対しても例外ではなく、芽亜里に勝利した彼女を讃えておきながら、家畜になるや否や罵声を浴びせていた。このような性格から、基本的に他者から信頼されることはなく、芽亜里が家畜から復帰してきた時にかつてのことを忘れたかのようにすり寄った時は、呆(あき)れ半分に接されていた。ギャンブルに関してもほぼ興味はなかったが、生徒会長選挙では尾喰凛の詐欺に引っかかってギャンブル「戦争」に参加し、彼が桃喰リリカを打倒するための道具として利用される。
大和 イナホ (やまと いなほ)
私立百花王学園に通う女子。選挙管理委員会の一人で、語尾に「で、あります」と付ける癖を持つ。選挙管理委員会としての役割に誇りを持っており、蟲喰恵利美から不正も可能なのではないかとからかわれた時は、黄泉月るなにも劣らない迫力で絶対中立を宣言する。恵利美と蛇喰夢子、生志摩妄が挑んだ「指切りギロチン」ではディーラーを務めるが、夢子と交わした何気ない会話が、恵利美を恐怖に陥れることになる。
尾喰 茨 (おばみ いばら)
尾喰凛に付き従っている少年。大柄な体型で、言動がやや粗暴であるため怖い印象を与えがちだが、実際は人当たりがよく社交的な性格の持ち主。従者ということもあり、百喰一族以外の人間に対しても友好的に接することが多いが、いざという時は一族の人間相手でも容赦をしない。子供の頃から噓をつくことができない体質で、詐欺を稼業とする尾喰家では役に立たないのではないかというコンプレックスに苦しみ続けてきた。しかし、凛から噓をつかなくても大丈夫なような立場を保証されつつ、彼の従者として仕えるようになる。このことから、凛に対しては恩義と信頼をつねに感じているが、彼が尾喰家の当主としての立場に囚われていることを知っており、苦悩することもある。ほかの親族と共に桃喰綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。基本的には凛のために動いているが、等々喰ユミとは異なり、率先してギャンブルに参加しようとする傾向にある。「公共財ゲーム」に参加した時は、裏切り者の存在が発覚したことで苛立ちを募らせる。さらには、同席した骨喰ミラスラーヴァに疑いをかけるが、蛇喰夢子と豆生田楓の演技に便乗する形で参加者たちを煽(あお)り、41枚の私財を獲得して夢子と同率の2位となる。のちに、凛と共に「戦争」に参加し、あと一歩で勝利を収めるところまでこぎつけるが、リリカの策によってわずかながら凛に疑いをかけたことで、彼を選挙戦リタイアに追いやってしまう。このことから凛によって尾喰家から追放されかけるが、リリカから凛は茨を思いやるが故に噓をつき続けてきたことを伝えられ、凛の分まで選挙戦を戦い抜くことを決意する。このギャンブルを通じて、噓をつけないことへのコンプレックスを克服したうえに、凛や等々喰定楽乃が舌を巻くほどの洞察力を身につけるに至った。そして、大集約の「じゃんけんポーカー」の1回戦で陰喰三欲を一時は圧倒するが、彼女が蟲喰恵利美と共謀して仕掛けたイカサマにより勝利を逃す。
蟲喰 恵利美 (むしばみ えりみ)
百喰一族の分家にあたる蟲喰家の当主を務めている少女。見た目はやや幼いが、誰に対しても高圧的な態度を崩そうとしない。その一方で裏表のない性格で、親族である百喰一族に対しては友好的に接することが多い。特に和楽喰淑光とは仲がよく、彼女の用意した衣装を次々と着せられるなど、妹のようにかわいがられている。蟲喰家の出身であることに誇りを持っており、稼業である拷問の腕は誰にも負けないと自負している。ほかの親族と共に桃喰綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。百喰一族の一人である蛇喰夢子に興味を持ち、彼女に対してギャンブル「指切りギロチン」を仕掛けるが、偶然居合わせた生志摩妄も参加を要請したことから、三人で勝負を行うことになる。当初は、ギャンブルのために使う機械に鉄板が仕込まれ、刃が落ちても平気だと唯一知っていることから、自分が確実に勝利すると余裕を見せていた。しかし、夢子と大和イナホの会話から、鉄板を外されたのではないかと疑念を抱く。恐怖に苛まれながらも勝負を続行し、紐の数が減っていくにつれて、稼業への誇りと使命感が恐怖をねじ伏せ、最後の1本になるまで指を抜かないことを決意する。しかし、妄が紐を同時に2本切ったことで反射的に指を抜いてしまい、敗北する。このギャンブルを通じて、私立百花王学園が途方もない化け物揃いであることを認識するが、最後に見せた信念から、夢子からは高い評価を受けるようになる。また、この一戦から妄に対して苦手意識を抱くが、彼女があまりにも夢子から邪険に扱われていることを不憫(ふびん)に思い、やがてなかよくなる。大集約にも参加し、「じゃんけんポーカー」の1回戦で夢子と対決する。そして、互いにイカサマに頼らない実力勝負を展開するが、力及ばず敗退する。ただし、勝負の最中にカードの裏に印を付けており、それを陰喰三欲に伝えたことで、彼女が尾喰茨に勝利するきっかけを作る。なお、三欲と組んだのは彼女に持ち掛けられたためであり、内心では茨に罪悪感を抱いていた。
和楽喰 淑光 (わらくばみ すみか)
百喰一族の分家にあたる和楽喰家の当主を務めている少女。ほかの親族と共に桃喰綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。ふだんは大きなマスクで顔の前面を覆っており、素顔を見せることはない。その正体は日本で唯一のハリウッド女優である「名足カワル」で、マスクをつけているのは学園の生徒たちに名足であることを隠すためである。可憐な容姿の蟲喰恵利美をかわいがっており、時おり特注の衣装を着せようとする。未知のものに興味を示す傾向にあり、生徒会長選挙に参加したのは、自らが百喰一族の当主になるためでも、綺羅莉を当主から外すためでもなく、私立百花王学園の中で自分が興味を持てるものを見つけるためである。綺羅莉を見極ようとする尾喰凛に同行し、共に彼女にポーカーの勝負を挑むが、手ごたえのなさから綺羅莉が本気を出していないことを察し、勝負を切り上げる。そして百喰一族でありながら、綺羅莉とも親族たちとも異なる立場にいる蛇喰夢子に興味を持ち、正体を明かしたうえで勝負を挑もうとするが、その場に居合わせていた夢見弖ユメミから挑戦を受ける。ユメミからは、女優としての目標として強く慕われていたが、彼女のことはもともと眼中になかったため、夢子とユメミの二人のコンビとして挑戦してくるなら受け入れる意志を示す。その結果、二人の即席ユニットである「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」と、ギャンブル3本勝負である「ACTIVE STATION」を争う。女優としての演技のみならず、買収などの工作にも長けており、1回戦の「生歌唱対決」では圧倒的な歌唱力と事前に観客を買収したことで勝利し、2回戦の「デスマカロン対決」も、自らの指を折ってまで対抗したユメミを圧倒して引き分けに持ち込み、ユメミの心を折る。しかし、3回戦の「スワサント・トロワ」では、アイドルとしての誇りを胸に再起したユメミの活躍によって敗れ、彼女に対する認識を改める。
沙織 (さおり)
私立百花王学園に通う2年生の女子。大物プロデューサーの娘。夢見弖ユメミとは中学時代からの付き合いで、彼女にアイドルになることを勧めた。当初は女優になりたいと一蹴されていたが、やがて彼女から受け入れられる。アイドルになったユメミといっしょなら、見たことのない景色が見られると意気込み、彼女が世界に通じる資質を持つアイドルに違いないと信じて、つねに親身になって支えている。ユメミの奔放な態度や、リスクを省みない行動にひやひやさせられることが多く、彼女が蛇喰夢子に勝負を挑んだ際にユメミのファンへの暴言を録音した音声を提示された時は、当のユメミ以上に狼狽する。さらに「バトっていいとも!」でユメミが敗退し、ファンの前で録音の公開をせまられた時は、必死になって止めようとした。しかしユメミ自らの意思で公開し、さらにファンである真能寺たちがユメミを支持し続けると表明したことで、安堵する。その後の生徒会長選挙でも、変わらずユメミを支え続け、ユメミと夢子の即席デュエットである「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」と、ハリウッド女優である「名足カワル」こと和楽喰淑光の戦いの場である「ACTIVE STATION」でも、鈴井涼太らと共に応援席で勝負を見守る。ユメミが第2回戦の「デスマカロン対決」で、生理現象を制するために自らの指を折った時は、今までにないほどに焦るが、それでも彼女を信じて勝利を願い続ける。そして、最終対決となる「スワサント・トロワ」での逆転勝利を見た際は、涙を流して喜んだ。
宇留瑠 美亜 (うるる みあ)
私立百花王学園に通う女子。選挙管理委員会の一人。おっとりとした性格で、語尾を伸ばして喋る癖を持つ。尾喰茨からは「イラつく喋り方」と苦言を呈されており、宇留瑠美亜自身もそれを自覚しているが、改める様子はない。等々喰定楽乃の企画した「公共財ゲーム」の審判を務め、その裏で定楽乃と皇伊月によるギャンブルにも携わる。「公共財ゲーム」のルールを解説する時は、人の心の中にある闇を指摘したうえで、実際にゲームが始まるや否や、実際に参加者全員が他者を疑う状況を見てほくそ笑む。しかし実際は、疑心暗鬼に囚われながらも、本当に大切なもののために団結する様子を見ることこそが目的で、終盤でそれがほぼ果たされたことで満足そうな表情を浮かべる。
陽喰 三理 (ようばみ みり)
百喰一族の分家にあたる陽喰家の当主を務めている少女。陰喰三欲の妹にあたるが、幼い頃に別々の家に引き取られる。三欲とは容姿が似ており、冷静な様子を見せやすい点も同様だが、彼女ほど露悪的な振る舞いをすることはなく、成すべきことを淡々と果たすことを信条としている。また三欲からは、ある意味捨て駒として扱われることが多いが、そのことは陽喰三理自身も納得ずくであり、不満を示すことはない。三欲を含めた親族と共に桃喰綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。そして、三欲が多数の票を集めるためのサポート役にまわり、まずは自分の持つ票を彼女に渡すと、幼い頃から行っていた二人だけに通じるサインを利用すべく同行する。そして、桃喰リリカの誘いに応じて、蛇喰夢子や鈴井涼太を相手に「ニム零式」で勝負する。三欲の策略で夢子が倒れたあとは、彼女に代わって参戦した早乙女芽亜里と対決するが、審判の黄泉月るなが行っていたギルブレス・シャッフルを見抜いた彼女に姉妹揃って敗北し、さらに三欲の意向から三理のみが票を奪われる事態となる。そして、すべての票をすでに三欲に譲渡していたことから、選挙戦そのものをリタイアするという扱いを受ける。それからは三欲と離れ、大集約が開催された際も会場に現れなかった。しかし、三欲が芽亜里との対決の中で自ら毒を飲んだことをリリカからリークされ、半ば強制的に解毒剤を飲ませてしまう。
桃喰 リリカ (ももばみ りりか)
私立百花王学園に通う3年生の女子。生徒会の会長を務めている。百喰一族の本家に連なる桃喰家の出身で、桃喰綺羅莉の双子の姉にあたる。見た目から声まで綺羅莉と瓜二つで、同じ格好をすると、どちらがどちらか見分けがつかなくなるほど。その外見から主に綺羅莉の影武者を演じており、彼女に成り代わって百喰一族の当主たちと交渉し、多くの当主たちからその正体を疑われないまま、私立百花王学園に招いたこともある。ただし、のちに等々喰定楽乃から、現在も綺羅莉の影武者を務めていることを揶揄されるなど、すべての一族を完全に欺けるわけではない。また、私立百花王学園の中ではつねに仮面をかぶっており、苗字から綺羅莉の親族であることは周知されているものの、顔が瓜二つであることはあまり知られていない。また綺羅莉との関係を隠すため、言葉を発することも少ない。ふだんはつねに綺羅莉のそばに控えているが、生徒会長選挙では綺羅莉から早乙女芽亜里と組むことを指示されたことで、彼女に近づく。しかし、昔から綺羅莉の影武者以外の役割を果たしてこなかったことから、自分の意志を表現することが極端に苦手になっており、当初はこのことから芽亜里に手を組むことを拒まれてしまう。そこで、自分が手を組むに値する能力を持っていることを示すため、狛喰希とギャンブル「ジン・ラミー」で対決し、15戦中14勝と好成績を叩き出す。そして、希にスカムコインを融通した尾喰凛を「戦争」で下し、さらに彼を縛っていた使命感から解放することに成功する。これらの実績から、芽亜里から仲間として認められ、彼女や蛇喰夢子、鈴井涼太と行動を共にするようになる。大集約には参加せず、夢子と芽亜里が定楽乃の仕掛けたギャンブルによる票の獲得を阻止する様子を見届ける。そして、芽亜里から綺羅莉との直接対決をうながされる。
等々喰 ユミ (ととばみ ゆみ)
等々喰定楽乃に付き従っている少女。天真爛漫な性格で、癖のある桃喰綺羅莉や尾喰凛に対しても屈託なく接する。尾喰茨とは、似たような立場で仲がいい。足が不自由な定楽乃の世話を一手に引き受けており、彼女の役に立つことを喜びとしている。また、定楽乃の仲裁が関係者の利になることを誰より理解しているが、その関係者に定楽乃自身も入って欲しいと個人的に願っている。綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入したが、ほかの一族とは異なり生徒会長選挙には参加しておらず、定楽乃のサポートに終始している。そして、大集約が始まった直後、家畜に落とされた生徒たちに協力を仰ぎ、定楽乃が計画していた「大集約の優勝者を予想するギャンブル」を大々的に開催する。
豆生田 楓 (まにゅうだ かえで)
私立百花王学園に通う2年生の男子。生徒会会計を務めている。王道を往(ゆ)くことを信条としており、確実な手段で勝利を求める傾向がある。そのため、私立百花王学園の生徒としては珍しく、つねに最善の手を考えることで、できるだけ安全に場を動かそうとする。子供の頃は飛行機が好きで、航空関連の仕事に就きたいと考えていた。しかし父親から、できるだけ安定した生活を保障できる人生を歩むよう言い渡され、やや不本意ながら官僚になるべく勉強を始め、その一環として私立百花王学園に入学する。皇伊月と同じく上昇志向が強く、ゆくゆくは桃喰綺羅莉に代わって生徒会の会長になろうと目論んでいる。蛇喰夢子が生徒会役員相手に善戦して生徒会の威信が低下すると、夢見弖ユメミを焚き付けて、夢子を撃破することで豆生田楓自身の発言力を増そうとする。そのうえで、ユメミが敗れた際は、彼女のアイドル声明を揺らがしかねないスキャンダルを公表させるよう裏で仕向ける。その結果、「バトっていいとも!」で夢子が勝ちを収めるが、スキャンダルが公表されてもユメミの評価が落ちることはなく、それどころか、ユメミから黒幕として告発された挙句、夢子から公式戦を挑まれてしまう。そして、「選択ポーカー」で自らの財力を活かした戦術で夢子を苦戦させるが、伊月を挑発したことで彼女から夢子に賭け金を提供され、逆転負けを喫する。さらに綺羅莉から生徒会からの除名を言い渡されたうえに、豆生田自身の人生計画表を伊月に握られる。これによって精神に大きな痛手を負い、髪の毛がすべて白髪になってしまう。それからは別人のように権力への興味を示さなくなり、ギャンブルもやろうとしなくなる。さらに、発破をかける目的の伊月から苦言を呈されても、関心を向けようとしなくなる。生徒会長選挙でも、率先して行動を起こすことはなかったが、等々喰定楽乃が企画した「公共財ゲーム」に参加を求められ、渋々ながら応じる。その場でも中盤までは投げやりな様子を隠そうとせず、伊月から失望されかける。しかし、失うものがなくなったことに気づくと自らに正直となり、終盤では本性を現したかのように夢子と共にブラフを弄して場をひっかき回し、40枚の私財を獲得する。伊月から好意を寄せられていたが、豆生田自身はそのことにまったく気づいておらず、夢子からは人の気持ちに鈍感だと揶揄(やゆ)されてしまう。
真能寺 (しんのうじ)
私立百花王学園に通う男子。夢見弖ユメミの大ファンで、彼女の活動を追いかけることを生きがいとしている。「バトっていいとも!」では、仲間のファンと共にユメミの応援に駆け付け、彼女と蛇喰夢子の勝負を見届ける。そして彼女が負けたことで、ファンへの暴言を録音した音声を暴露された時も、ユメミに好かれるためではなく、自分たちがユメミを好きだからファンをしていると言い切り、彼女に対する熱意を再燃させた。生徒会長選挙でも、ファンの仲間と共にユメミを支持する立場に回り、彼女とのジャンケンに故意に負けて票を差し出す。さらに、ユメミと夢子が即席で結成したデュエット「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」と、ハリウッド女優である「名足カワル」こと和楽喰淑光の戦いの場である「ACTIVE STATION」にも応援に駆け付け、二人が淑光を下す瞬間を目の当たりにして歓声をあげた。
狛喰 希 (こまばみ のぞみ)
百喰一族の分家にあたる狛喰家の当主を務めている少女。つねに傍らに大きな犬を連れている。ほかの親族と共に桃喰綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。やや調子に乗りやすいうえに、尾喰凛の発行したスカムコインが詐欺だと知らずに飛びつくなど、うかつな面を見せることが多いため、凛からは見下されている。早乙女芽亜里の見立てでは、ギャンブルの腕は決して低くないが、桃喰リリカとギャンブル「ジン・ラミー」で対決した際には、15戦14敗と大きく負け越してしまう。さらに、彼女にうまく丸め込まれて、凛とのギャンブルを斡旋させられる。
尾喰 凛 (おばみ りん)
百喰一族の分家にあたる尾喰家の当主を務めている少年。ふだんは温和で物腰が柔らかく、人当たりのよさそうな振る舞いを見せる。これは相手を自らの役に立てるための打算によるところが大きく、役に立たなくなった相手に対しては冷酷に接する。ただしこれは、尾喰家の頂点に立つ者は弱者を糧にして、さらなる利を得ることを求められているという理由が大きく、必ずしも尾喰凛自身にとって本意ではない。また、幼い頃から尾喰の稼業である詐欺の必要性を強いられてきたことから、相手に侮られてはならないと教育され、このことが歪んだ人格が形成されるきっかけの一つとなっている。従者である尾喰茨とは互いに信頼し合っており、彼がウソをつけないという致命的な弱点を持っているにもかかわらず厚遇しているが、いざとなったら切り捨てる非情さを持ち、茨からもそれを承知されている。かつて百喰一族の当主たちが一堂に会した時、遊戯の一環として桃喰綺羅莉とババ抜きの勝負を行ったことがある。その中で、ジョーカーを2枚用意するというイカサマを弄するが、最初からそれを見抜かれていたことを思い知り、強い屈辱を味わうと同時に、いつか彼女を打倒する決意を固める。また、綺羅莉の妹である桃喰リリカに対しても、桃喰家の出身であることから敵対心を抱いている。ほかの親族と共に綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。そして手始めに、和楽喰淑光と共に綺羅莉に対してポーカーの勝負を挑むが、手ごたえを感じなかったことから彼女が本気ではないと考え、途中で手を引いてしまう。のちにリリカからギャンブルを挑まれ、「戦争」での勝負を行う。そして三人組に対する根回しや、茨が噓をつけないことを逆に利用した戦術でリリカを苦戦させるが、最終的には彼女に戦術を読まれ、疑心暗鬼を引き起こされたことで敗北する。さらに、審判として立ち会った黒鞍蔵良が先んじて用意した偽物であることを明かし、無効試合であることを主張するが、前もってリリカが黄泉月るなにリークしていたことでその作戦も潰(つい)えて、選挙戦のリタイアを余儀なくされる。しかしこの敗北によって、凛自身を縛り付けていた使命感や桃喰家への憎しみから解放される。大集約では、等々喰定楽乃と共に観戦にまわるが、茨が陰喰三欲を相手に善戦するところを目の当たりにし、彼の成長を喜ぶ。
陰喰 三欲 (いんばみ みよ)
百喰一族の分家にあたる陰喰家の当主を務めている少女。陽喰三理の姉にあたるが、別々の家に引き取られたため苗字は異なる。陰喰家の家業が製薬であることから、さまざまな薬や毒物の扱いに精通している。一見すると物腰柔らかで、つねに落ち着き払っているようにとらえられがちだが、実際は冷酷な性格の持ち主。しかし、想定外のことが起こると心を乱すこともある。尾喰凛が陰喰三欲自身の会社に詐欺を仕掛けてきた時は怒りをあらわにし、一族内で諍(いさか)いを起こすことも辞さない態度を取るなど、出世欲や成功することへの渇望が強い。毒を使って敵プレイヤーの身体の自由を奪ったり、昏睡状態に陥れたうえで、解毒剤の存在をちらつかせて人質に取り、相手に断れない状況を作り上げて自分たちに有利なルールを強要するなどの卑劣な戦法を好んで使用する。また幼い頃の遊びとして、三理と二人だけがわかるさまざまなサインを考案しており、それを利用したコンビプレイも得意。リスクを負わずに勝利する方法に長(た)けていることからギャンブルを見下しているが、その慢心から窮地に追い込まれることも少なくない。彼女に対して必要とあれば切り捨てることも辞さない非情さを見せるが、内心では愛情を抱いている。ほかの親族と共に桃喰綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。選挙戦では三理と組んだうえで、蛇喰夢子を毒で行動不能にすることで早乙女芽亜里を引きずり出し、彼女と鈴井涼太を相手にギャンブル「ニム零式」で勝負を行う。その中で、芽亜里が鈴井に持ち札を公開するように指示すると、彼女が負ける際に鈴井を切り捨てようとしていると思い込む。しかし実際は、芽亜里が黄泉月るなのギルブレス・シャッフルを見抜いていたためで、これが原因で完全敗北を喫する。三理を切り捨てることで票を失うことはなかったが、この一件から芽亜里を強く敵視するようになる。大集約にも参加し、「じゃんけんポーカー」の1回戦では尾喰茨と対決する。彼の噓がつけないという弱点を逆に利用した戦術で一時は圧倒されるが、開始前から内通していた蟲喰恵利美が仕込んだイカサマを利用して勝利する。2回戦では芽亜里と対決し、指に仕込んだ針を使ってカードに細工を行う。しかし途中でそれを見破られ、さらにカードのカウンティングを行っていた芽亜里の前になす術もなくなる。
等々喰 定楽乃 (ととばみ てらの)
百喰一族の分家にあたる等々喰家の当主を務めている少女。幼い頃から足が不自由で、車いす生活を余儀なくされている。身の回りの世話は従者の等々喰ユミに任せており、嬉々としてそれを引き受ける彼女に対して内心で感謝している。百喰一族の頂点に立っている桃喰綺羅莉のことを強く憎んでおり、彼女が奔放な面を見せた時は殺意をあらわにしたことすらある。ただし、彼女を恐れていないにもかかわらず、直接的な対決を避けようとする。等々喰家が稼業としている仲裁が得意で、尾喰凛と陰喰三欲のあいだに発生したトラブルを、二人の得になるよう調整したこともある。冷徹な性格でありながら、他者の心境を慮(おもんぱか)ることが得意。また用心深い性格で、人が持つ欲望を何より危険視している。人の上に立つ資質は十分で責任感も強いため、多くの親族たちから綺羅莉に代わって百喰家を治めて欲しいと思われている。ほかの親族と共に綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。そして、蛇喰夢子と共にギャンブル「公共財ゲーム」を企画したり、買収工作やほかのプレイヤーの勝敗を賭けたギャンブルで皇伊月に勝利して1000票近くを獲得し、終盤の中間発表では綺羅莉を上回る得票数で1位となった。その圧倒的な得票数から、大集約に参加することはなかったが、大集約の優勝者を予想するというギャンブルを私立百花王学園の生徒に向けて行い、それに乗じてさらなる票と資金を得ようと目論む。しかし、それを見越していた夢子の策略によって、彼女と早乙女芽亜里の両方が優勝するという結果になり、大損してしまう。この結果から、等々喰定楽乃の自身がギャンブルをする必要があることを認識する。そして、夢子からのギャンブルの誘いに応じて、自ら彼女と決着をつけることを望む。
黄泉月 るな (よもつき るな)
私立百花王学園に通う3年生の女子。生徒会役員を務めている。小柄な体型で、制服の上から着ぐるみのようなパーカーを身につけている。ゲームやお菓子が大好きで、生徒会室に携帯ゲーム機やキャンディーを持ち込んでいる。ふだんは明るくイタズラ好きな性格だが、時おり冷酷とすらいえるほどの冷たい表情や言動を見せることもある。自らが表立ってギャンブルをしたことはなく、その実力も未知数とされている。一方で、ギルブレス・シャッフルを容易(たやす)くやってのけたり、いかなる時もプレイヤーに有利不利が生じないよう立ち回れるなど、ディーラーや審判としては超一流の腕を持つ。生徒会に忠実というわけではなく、会長である桃喰綺羅莉とも対等に接することができるほか、蛇喰夢子の暗躍により生徒会の威信が低下した際も、まったく懸念することなく、むしろ楽しむような素振りを見せる。生徒会長選挙では選挙管理委員会の委員長になり、委員会の仲間である大和イナホや宇留瑠美亜、黒鞍蔵良と共に選挙戦の審判を務めたり、票の推移の管理や定期的な集計発表など、さまざまな仕事を的確にこなしていく。「ニム零式」の審判を務めた時は、陰喰三欲からギルブレス・シャッフルが不公平であるとクレームを受けるが、ふだんの黄泉月るなからは考えられないような迫力で凄み、ギャンブルは暴力では絶対に覆すことができないことを思い知らせる。また「戦争」では、尾喰凛が蔵良の偽物を用意されたが、桃喰リリカによって前もってリークされていたため、すんでのところで有効試合として認めることに成功する。替え玉を用意されたことは選挙管理委員会の数少ない汚点の一つとなり、凛のことは選挙戦をリタイアしてからも迷惑な存在として嫌っている。
夢見弖 ユメミ (ゆめみて ゆめみ)
私立百花王学園に通う2年生の女子。生徒会広報を務めている。私立百花王学園では知らぬ者がいないほどの人気アイドルで、真能寺などのファンから熱狂的な支持を受けているほか、マネージャーの沙織からも慕われてい... 関連ページ:夢見弖 ユメミ
城丸 穂露 (じょうまる ほろ)
私立百花王学園に通う男子。学園屈指の美形と評判で、生徒会長選挙では中間発表で9位にまで上り詰めたことが明かされる。しかし、もとから生徒会長になる気はなく、桃喰綺羅莉とのギャンブルであっさりと敗北し、手持ちの14票をすべて渡す結果となる。綺羅莉が再選した際には、便宜を図ってもらうよう目論んでいたが、当の綺羅莉からはまったく相手にされなかった。
骨喰 ミラスラーヴァ (ほねばみ みらすらーゔぁ)
百喰一族の分家にあたる骨喰家の当主を務めている少女。親族からは「ミラ」の愛称で呼ばれている。骨喰家が暴力での解決を家業としていることから、一族の中でも抜きんでた身体能力を持つ。多くの親族と同様に桃喰綺羅莉を快く思っておらず、百喰一族の当主を別の誰かに務めて欲しいと考えている。ほかの親族と共に綺羅莉から呼び出されて私立百花王学園に転入し、生徒会長選挙に参加する。そして、尾喰茨と共に等々喰定楽乃が主催する「公共財ゲーム」に挑戦。その最中に裏切り者の存在が発覚すると、自らの暴力を用いて誰が裏切り者かを吐かせようと考えるが、骨喰ミラスラーヴァ自身が裏切り者でない保証などどこにもないと茨に訴えられたことで断念する。終盤に差し掛かったところで、最初の裏切り者だった皇伊月から匿名で私財を提供され、その相手が誰かわからないまま裏切りの片棒を担ぐ。しかし、そのことを豆生田楓に指摘されたことで追放されることが決まり、敗退する。リタイアする際、定楽乃こそが百喰一族の次期当主になるべきと伝え、彼女の活躍に一族の未来を託す。また、伊月が豆生田に思いを寄せていることを看破し、密かに応援する意志を伝える。
五十嵐 清華 (いがらし さやか)
私立百花王学園に通う2年生の女子。生徒会書記および会長秘書を務めている。中学時代は勉強ばかりしており、つねに成績は学園トップで、特に数学を得意としている。ギャンブルこそが正義といえる私立百花王学園では地味な存在で、自分に自信を持てずにいた。そんなある日、桃喰綺羅莉が前の生徒会長を相手にギャンブルを行っている場面を目の当たりにし、一目で彼女の虜(とりこ)となる。そして、自ら秘書にさせてもらうように願い出るが、その時思わず、本当に綺羅莉自身の実力で生徒会長に勝利したのかと尋ねてしまう。しかし、この行動が綺羅莉の興味を引き、生徒会へと誘われる結果となる。当の綺羅莉から「私のために行動しているのか」と問われた際には、「綺羅莉に忠実な自分自身のために行動している」と答えるなど、確固たる意志を持って彼女に仕えていることを示すことも少なくない。蛇喰夢子が次々と生徒会役員を下していくと、ほかの役員と同様に彼女を警戒するようになるが、それ以上に綺羅莉なら彼女を排除することなど造作もないという安心感があったため、危険視するまでには至らなかった。だが、公式戦の直後に夢子と綺羅莉がすぐさま意気投合し、さらに五十嵐清華自身がおよそ理解できない会話を楽しんでいるところを目の当たりにし、焦燥感と夢子に対する強い嫉妬心に苛(さいな)まれる。そして、半ば衝動的にギャンブルを申し込み、負けたら綺羅莉とのかかわりをいっさい断つという条件を受け入れ、扉の塔で勝負を行う。その結果、夢子に敗北し、赤の他人になったうえで扉の塔の屋上から飛び降りることを受け入れるが、綺羅莉に助けられた挙句、再度秘書になるように求められる。生徒会総選挙では、綺羅莉が会長を辞めること自体は、綺羅莉の意志によるものであることを理解していることから、反対しなかった。ただし、清華自身が生徒会長になろうとする気はまったくなく、等々喰定楽乃の買収工作に対抗するために大集約を企画するなど、綺羅莉が選挙で有利になるように立ち回る。
集団・組織
私立百花王学園 (しりつひゃっかおうがくえん)
創立122年を迎える名門校で、政財界の有力者の子女が多く通っている。生徒数は3000人。ギャンブルの勝敗による階級制度によって支配されている。生徒会への上納金が下位100位以内に入ったり、生徒会に対して大きな負債を抱えたりすると、「非協力傾向生徒」と見なされ、家畜という蔑称で呼ばれて学園内で差別的な扱いを受けるようになる。家畜になると、男子生徒なら「ポチ」、女子生徒なら「ミケ」という名札を下げなければならない。また、卒業までに家畜の地位を返上できない場合は「人生計画表」と呼ばれる書類を発行され、そのとおりに人生を送ることを強要される。ただし、100万円の「特別上納金」を払えば、家畜から脱することができる。また、生徒会の意向によって表立った暴力は非推奨となっており、ギャンブル中に暴行しようとした場合は制裁を受ける羽目になり、それ以外の場合も生徒会に見つかった場合は阻止されることが多い。そのため、ギャンブルで負けた腹いせに闇討ちを仕掛けるような生徒はほとんど存在しない。なお、創立当初からこういった制度がまかり通っていたわけではなく、ギャンブルの過度な推進や家畜の制度などは、現生徒会長の桃喰綺羅莉によって定められたものである。さらに綺羅莉は、卒業生の人間関係や貸金、借金のしがらみを一元化して把握することで、政財界への影響力を絶大なものとし、当初はまるで興味を示していなかった百喰一族の当主たちが注目するほどにまで発展する。
選挙管理委員会 (せんきょかんりいいんかい)
生徒会長選挙の管理および運営を担う委員会。元生徒会の黄泉月るなが会長を務めており、委員に大和イナホや宇留瑠美亜、黒鞍蔵良が名を連ねている。全員が動物の姿を象(かたど)った着ぐるみを着ていることから、容易に判別が可能となっている。生徒会長選挙の票の推移は、選挙管理委員会が見ている中で、ギャンブルを介して行うことが条件となっている。ただし、選挙管理委員会が見ている場所なら、わざと勝ったり負けたりして票を譲渡することも認められている。その性質上、ギャンブルの審判やディーラーを任されることも多い。「絶対中立」をスローガンとしており、特定のプレイヤーが有利になるような状況を極力作らないよう心がけている。また、あからさまでなければイカサマも認められるが、それをほかのプレイヤーに指摘された場合は禁止することもある。
百喰一族 (ももばみいちぞく)
政財界を牛耳っているといわれる一族。本家である桃喰家を筆頭に尾喰家、骨喰家、等々喰家、蟲喰家、陰喰家など、多数の分家が存在する。また、蛇喰夢子も百喰一族に連なる家系の出身だが、ほかの親族とのつながりはない。当初は、私立百花王学園のことを、ただの名門学校に過ぎないと考えていたが、桃喰綺羅莉が生徒会長になってからは、多くの生徒が政財界で活躍するようになると予想し、無視できない存在と考えを改める。高い能力を持ちながら、奔放かつ気まぐれな綺羅利を嫌っている親族も多く、彼女が生徒会長選挙を企画したうえで、会長に当選した場合は桃喰家に代わって百喰一族を統べる権利を譲ると宣言すると、彼女に代わって当主となるため、多くの当主が名乗りを挙げる。
イベント・出来事
債務整理大集会 (さいむせいりだいしゅうかい)
ギャンブルで負けが込んで借金返済の目途が立たなくなった人を対象に、私立百花王学園で定期的に開催されている集会。「大集会」「借金付け替えゲーム」とも呼称される。四人1組でギャンブルを行い、その成績に応じて四人の借金が入れ替わる。また、四人の中で最も借金の少ないプレイヤーが勝った場合は、生徒会の権限により借金が全額免除となる。このことから、公式戦と並んで、家畜の地位を返上する絶好のチャンスとなる。この集会は、一見すると生徒会にとっては利がなく、慈善事業としてとらえられることが多い。しかし実際は、さまざまな相手からの借金を生徒会からの借金に変換することが目的で、これを見抜いた早乙女芽亜里は、勝利して家畜の地位を返上するものの、生徒会に対して強い不信感を抱くようになる。なお、蛇喰夢子や芽亜里が参加した債務整理大集会では、「二枚インディアンポーカー」が勝負に使用された。
生徒会長選挙 (せいとかいちょうせんきょ)
桃喰綺羅莉に代わる、私立百花王学園の新しい生徒会長を選出するための選挙。蛇喰夢子の暗躍によって生徒会の威信が低下したという理由から、綺羅莉本人の主導によって開催された。立候補制ではなく、すべての生徒が有権者、かつ投票者となる。選挙開始時は、すべての生徒が一票を持っており、ギャンブルによってのみ票が移行するというルールとなっている。票を賭けたギャンブルは選挙管理委員会の立ち会う場面でのみ有効となり、手持ちの票がすべてなくなった場合はリタイアとなる。30日のあいだに最も多くの票を持っていた生徒が勝者となり、次の生徒会長として生徒会から認められる。また、私立百花王学園の生徒のほかに、綺羅莉によって招集された百喰一族のメンバーも参加し、彼らが勝利した場合は百喰一族の当主の座が綺羅莉から譲られる。なお、夢子も百喰一族の一人だが、綺羅莉から招集されているわけではないことから、仮に彼女が勝った場合は当主の座が譲られるかは明らかにされていない。
大集約 (だいしゅうやく)
生徒会長選挙の終盤に、五十嵐清華によって企画されたイベント。多くの票を持つ八人が集ってトーナメントを争い、その優勝者が八人の持っている票をすべて獲得できる。勝負に使用されるギャンブルは「じゃんけんポーカー」で、参加者は蛇喰夢子、早乙女芽亜里、夢見弖ユメミ、生志摩妄、陰喰三欲、蟲喰恵利美、西洞院百合子、尾喰茨の8名で、飛びぬけて多くの票を持っている等々喰定楽乃と桃喰綺羅莉は対象外となっている。ただし、定楽乃はこの大集約の優勝者を当てるというギャンブルを、等々喰ユミを通じて私立百花王学園の生徒に斡旋しており、それを活かしてより多くの票を集めようとしている。
場所
扉の塔 (とびらのとう)
私立百花王学園の敷地内にある建築物。桃喰綺羅莉によって構想され、蛇喰夢子と五十嵐清華がギャンブルを行う際に使用された。円柱の形状をした5階建ての塔で、階層の移動は中央部にある螺旋階段と各階に備え付けられているはしごによってのみ行うことができる。また、螺旋階段は1階と5階にのみつながっており、2階から4階まで移動するには梯子を利用する必要がある。ギャンブルが開始されると、窓やほかの階層につながる扉がいっせいに閉まり、そこに記載されている問題を正解することで初めて扉を開けられるようになる。プレイヤーは、それぞれ1ターンごとに5分間の持ち時間が与えられ、そのあいだに1回だけ扉の問題の解答が行える。しかし扉を開いても、その先に壁が存在することもあるため、必ずしも先に進めるとは限らない。二人のターンが終了すると5分間のインターバルが発生し、それが経過したら再びプレイヤーのターンが回ってくる。5階をスタート地点として、1階にある白百合を確保し、それを5階まで持ち帰ればゲームクリアとなる。実は、5階と1階を結ぶ螺旋階段が5ターンに1回開くようになっており、これに気づいたプレイヤーが非常に有利になる。
その他キーワード
ギャンブル
『賭ケグルイ』に登場する勝負全般。私立百花王学園においては非常に重要な役割を持ち、その勝敗によって学園内の身分が決まり、敗者は家畜扱いされる。ギャンブルの内容は、ポーカーなどの一般的なものから、「投票ジャンケン」「ダブル神経衰弱」「生か死か」「2枚インディアンポーカー」「ESPゲーム」といった、特殊な形態、ルールのものまで多種多様。 生徒同士で行われるほか、生徒会が主催する公式戦もある。また、「債務整理大集会」と呼ばれる、債務者を集めて行われるギャンブルもあり、獲得したチップの額面によって順位が決まり、それに応じて債務が変動(上位なら減額か免除、下位だと増額)する。また、上位の場合、獲得した額面が債務より多ければ差額は生徒会から支払われる仕組みになっている。
指切りギロチン (ゆびきりぎろちん)
蟲喰家に伝わるギャンブルの一つ。蟲喰恵利美や蛇喰夢子、生志摩妄が生徒会長選挙の中で挑戦したゲーム。三人のプレイヤーが穴の中に任意の指を差し込み、20本中1本だけ当たりのある紐を順番に切っていく。当たりの紐が切られると、上から指を切断するほど鋭いギロチンが落下する仕組みになっている。当たりの紐を引いても敗北にはならないが、ほかの二人より先に穴の中から指を引き抜くか、2本以上の紐を一気に切断した場合は負けとなる。実はギロチン装置の中に、見えないように鉄板が仕込まれており、ギロチンは指の上で留まる仕掛けになっている。これを知っているのは恵利美のみであることから、彼女がほぼ確実に勝利できるはずだった。しかし、夢子が選挙管理委員会の大和イナホに対して放った何気ない一言が、恵利美を大いに焦らせることになる。
家畜 (かちく)
私立百花王学園の生徒のうち、生徒会に納める上納金が下位100位にあたる者たち。「家畜」は俗称で、正式名称は「非協力傾向生徒」。被差別階級と見なされていることから人間扱いされないことがほとんどで、一般生徒からは憂さを晴らすために日常的にイジメを受けている。男子は「ポチ」、女子は「ミケ」と書かれた家畜標が支給されて着用が義務付けられ、名前で呼ばれることもない。さらに、卒業までに家畜を返上できなかった場合は生徒会から人生計画表が発行され、その表通りの人生を送ることを強制される。ちなみに家畜堕ちするのは、ギャンブルで負けが込み、借金を背負ったことで上納金を納められないというパターンがほとんどである。「特別上納金」として100万円を生徒会に納めれば家畜を返上することはできるが、種銭もない状態になるため、通常の方法では不可能とされている。一方、債務整理大集会や公式戦などの一発逆転のチャンスや、なんらかの見返りを供給することで家畜の地位を返上する生徒もおり、蛇喰夢子や早乙女芽亜里も、一度家畜となりながらものちに復活する。生徒会長選挙が始まってからはこの傾向に拍車がかかり、特に百喰一族の買収や裏工作に協力する形で、多数の家畜が再起する結果となる。
投票ジャンケン (とうひょうじゃんけん)
私立百花王学園で行われているギャンブルの一つ。2年華組に転入して来た蛇喰夢子に対して早乙女芽亜里が仕掛けたゲーム。2年華組のクラスメイト三〇人が、一人1枚ずつ、グー、チョキ、パーのいずれかをカードに記載し、プレイヤーが見えないように投票箱に入れる。そして、プレイヤーの二人が投票箱から3枚のカードを取り、その中から1枚を選んでジャンケンを行う。あいこの場合は残り2枚から1枚を選んで再勝負を行い、3回ともあいこだった場合は引き分けとなる。ふつうのジャンケンとの相違点として、引き当てたカード次第では、すべて同じ手で勝負せざるを得ない場合もあるなど、不平等な読み合いを楽しめるというものがある。芽亜里は、彼女の言いなりになっている二〇人の生徒たちに対して意図的にグーとパーのどちらかを書くように強制していた。さらに、家畜に貶められた鈴井涼太を夢子の背後に立たせて彼女がどの札を出すか合図させるなど、幾重にもイカサマを張り巡らせつつ、万全の状態で夢子に臨んだ。
ダブル神経衰弱 (だぶるしんけいすいじゃく)
私立百花王学園で行われているギャンブルの一つ。早乙女芽亜里を下して有名になった蛇喰夢子に対して、皇伊月が仕掛けたゲーム。2組のトランプのデッキを利用して行う神経衰弱で、数字だけでなく、マークも同じでなければ当たりとは認められない。つまり、正解の組み合わせは一通りしかないため、104枚のカードの位置をすべて覚えるか、104分の一の運で当たりを引くことが求められる。ゲームに使われたカードは、伊月の父親が経営するメーカーが開発したものだが、実は1組だけ伊月が私的に作らせたトランプで、一定以上の温度で模様が浮き上がる仕組みになっていた。伊月はカードの数字とマークに対応した模様を記憶したうえで、カバンにカイロを仕込むイカサマを利用して勝ち続けてきた。ふつうの神経衰弱ではなく「ダブル神経衰弱」という形式をわざわざ取ったのも、難度を上げることで運に左右される要素を減らすための仕込みに過ぎない。
戦争 (せんそう)
尾喰凛が考案したギャンブルの一つ。凛と桃喰リリカ、尾喰茨、そして早乙女芽亜里のクラスメイトである三人組が生徒会長選挙の一戦として行ったゲーム。参加者と選挙管理委員会の黒鞍蔵良のほか、リリカの付き添いとして芽亜里と狛喰希も観戦のために同席した。六人同時対戦のゲームで、形式上は六人全員が敵同士となる。プレイヤーはそれぞれ、AからFまでの六つの国の一つを担当し、文字どおりの「戦争」を行うことになる。六人は、まずターンの初めに「攻撃」か「守備」を選択する。攻撃を選んだ場合は、対象となる国を選択することになるが、攻撃先は何か国指定しても構わない。全員が行動選択を終えたら「交戦」フェーズに入り、攻撃を選んだプレイヤーの国を攻撃した場合は「攻撃成立」となり、攻撃した側に10ポイントが与えられ、攻撃された側は10ポイント減らされる。逆に守備を選んだプレイヤーの国を攻撃してしまった場合は「攻撃不成立」となり、攻撃された側が10ポイント獲得し、攻撃した側が10ポイントを失う。また、守備を選んだうえで誰からも攻撃されなかった場合は、5ポイントを失い、ほかのプレイヤー全員が1ポイントずつ獲得する。交戦フェーズに入る前に、「特定の国を攻撃して欲しい」「守備をして欲しい」など、ほかのプレイヤーに特定の行動を要請する「外交戦略」というシステムが存在する。要請を受けたプレイヤーは、与えたプレイヤーに「承諾」「拒否」「無回答」の返答を行えるが、要請を受け入れたふりをして、別な行動を取ったとしてもペナルティを受けることはない。そのため、要請を受けるふりをして奇襲をかけたり、2か国、3か国に異なる要請をする二枚舌外交なども問題なく行える。10ターン経過するか、プレイヤーの一人がギブアップした時点で終了となり、ポイントがプラスのプレイヤーは、マイナスのプレイヤーから賭け代を徴収できる。芽亜里はこのルールを聞いて、リリカ以外の五人が共謀していると疑っていたが、凛と、ほかならぬリリカ自身によってその可能性がないことを示す二つの根拠を明かされる。なお、このギャンブルの審判を行った黒鞍は凛が用意した偽物で、凛は勝とうが負けようが影響はないと高をくくっていた。ただし、純粋な騙し合いでリリカを下したいと考えていたため、タブレットなどの機材にイカサマを仕込むことはしていない。
デスマカロン対決 (ですまかろんたいけつ)
「ACTIVE STATION」の2回戦で行われた演目。三つの見た目が同じマカロンを用意し、プレイヤーがそれを順番に完食する。そして、三つすべてを食べ終えたのちに、相手がハバネロソースが大量に含まれるデスマカロンを何番目に食べたのかを当てた方が勝者となり、両者とも正解、あるいは間違えた場合は引き分けとなる。この演目は、非常に辛い物を食べた先に発生する生理現象を、いかに演技で抑えられるかという点が重要になる。そのためイカサマの入る余地のない、純然たる演技力の勝負を行いたいという理由から、「名足カワル」こと和楽喰淑光に提案された。「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」側は、淑光に芸能人としての実力を示そうと励むユメミが三つのマカロンを食べ、夢子が淑光がデスマカロンを食べた順番を当てることが決まる。なお、黄泉月るなは説明のために自らデスマカロンを食べて見せたが、その辛さに悶絶してしまい、しばらくのあいだ実況しながら水を飲み続けるほどだった。
生歌唱対決 (なまかしょうたいけつ)
「ACTIVE STATION」の1回戦で行われた演目。その名前のとおりに、蛇喰夢子と夢見弖ユメミの即席デュエット「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」と、「名足カワル」こと和楽喰淑光がそれぞれ1曲の歌を披露する。そして、観戦している一〇〇人の観客からどちらの歌がよかったかを投票してもらい、投票数の多い方が勝者となる。この演目は、歌ならばアイドルが女優を超えられる可能性もあるという理由から、どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~zが提案したものであった。しかし、淑光は歌唱力すらもユメミたちをはるかに上回っており、ユメミは淑光から「女優を舐(な)めすぎている」と凄まれてしまう。
選択ポーカー (ちょいすぽーかー)
桃喰綺羅莉が考案したギャンブルの一つ。蛇喰夢子と豆生田楓の公式戦で行われた変則型のトランプゲーム。基本的なルールは、一般的なポーカーとほぼ変わらないが、フォールドやコールが不可能となっており、プレイヤーに与えられた権利はベットおよびレイズのみとなっている。ただし、掛け金は所有している限りは無制限で積み上げることができ、さらに相手より多くの掛け金をレイズした場合は、「選択(チョイス)」の権利が与えられる。権利者は、強い役が勝つか、弱い役が勝つかを選ぶことが可能で、金さえ積めばブタでも勝てるチャンスが生まれる。つまり、もともと高額の資金を持っているプレイヤーなら、つねに選択の権利が与えられるため、ふつうのポーカー以上に有利に立ち回ることができる。豆生田は、夢子を圧倒するほどの資金力を持っていることから、このギャンブルでは圧倒的に有利であると思われ、事実夢子は2ターンで賭けた31枚のチップをすべて奪われてしまう。しかし、彼女に助力する皇伊月の意地を賭けた融資によって、勝負が続行されることとなる。
生か死か (せいかしか)
私立百花王学園で行われているギャンブルの一つ。生徒会が独自に考案したゲーム。まず、複数の穴が開いた壺に剣を模した形の駒を10本入れて、30箇所の穴が開いた盤に振る。そして、どの穴に駒が刺さったかを予想するという、ルーレットや丁半博打に近いシステムとなっている。また、剣が上向きに刺さった場合は、掛け金が30倍となって帰ってくるが、剣が下向きに刺さった場合は掛け金の30倍を胴元に支払うことになる。西洞院百合子がもっとも得意としているギャンブルで、蛇喰夢子と早乙女芽亜里の両名を負かすことに成功する。ただし夢子に勝利したのは、百合子の実力ではなく、桃喰綺羅莉の横やりによる結果である。
バトっていいとも!
アイドル同士の格付けに行われるギャンブルの一つ。夢見弖ユメミが蛇喰夢子に挑んだ際に行われたゲーム。対戦者の二人が、「心肺機能チェック」「スイーツ女子は誰だ?」「アイドルソングイントロクイズ」「ガチンコ歌唱力対決!」「利きファン!」「グローバルアイドルを目指せ!」「ポーカーフェイスを保て!」「Let's dance!」「極限ババ抜き」の九つのゲームに挑戦し、その勝者が3×3の枠にマークを一つ記入する。いずれかのプレイヤーの付けたマークが、縦、横、斜めのうちいずれかが揃った時点で勝利となる。夢子とユメミの勝負では、夢子が勝った場合は夢見から5000万円が賞金として与えられ、さらにユメミ負けた場合はユメミに所持金をすべて奪われたうえで人生計画表を改ざんされ、彼女とアイドルユニット「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」を組まされ、一生をアイドル活動に費やすことになる。ルール上、夢子に著しく不利な内容のゲームだが、夢子自身はそれを承知のうえでユメミとの勝負を了承する。また、ユメミの方も勝つことだけでなく、アイドルとしての力量を見せつける目的もあったため、わざと勝負を長引かせるよう目論んでいる。
ギルブレス・シャッフル
「ニム零式」で審判を担当した黄泉月るなが使用した特殊なシャッフル。スペード、ハート、クラブ、ダイヤと絵柄を繰り返すように並べたワンセットのトランプカードを用意し、これを無作為にカットする。そして、好きな枚数だけ裏向きに重ねて、二つの山札のパケットの端をはじいて端同士を嚙み合わせそのまま一つに揃える。以上の工程を経ることで、一見ランダムでありながら、実際は4枚ごとに必ず四つの絵柄を含む並びとなる。「ニム零式」では、絵柄が数字に置き換わっているため、毎回必ず0から3までの4種類が4枚ずつランダムに配られていたのである。この手法を用いたのは数字が偏ることを避けるためであり、誰かが一方的に不利になるものではない。ただし、気づかないと圧倒的に不利になることはるな自身も認めており、ただ一人ギルブレス・シャッフルに気づいた早乙女芽亜里は、それを活かすことで逆転のチャンスを呼び込む。
公式戦 (こうしきせん)
私立百花王学園で定められている、家畜に認められた数少ない権利の一つ。賭け代なしで生徒会役員とギャンブルを行い、勝利した場合は家畜の地位を返上するに十分な賞金を得られるというもの。ただし、一度きりしか行えないうえに、負けた場合はさらなる借金を抱えることになるため、家畜の返上がより困難になってしまう。生徒会役員相手であれば誰に対しても仕掛けることが可能で、申し込まれた役員はこれを拒むことができない。生徒会長である桃喰綺羅莉も例外ではなく、綺羅莉に興味を持った蛇喰夢子は、彼女に公式戦を仕掛けるために故意に家畜になることを選んだほど。しかし、「バトっていいとも!」が終了したあとに豆生田楓に対して公式戦を仕掛けたことで、綺羅莉とのギャンブルの機会は失われた。
ACTIVE STATION (あくてぃぶすてーしょん)
夢見弖ユメミが、「名足カワル」こと和楽喰淑光に対抗するために、蛇喰夢子と共に挑んだギャンブル。略称は「Aステ」。黄泉月るなからは「演技力三番勝負」と称されており、その名のとおり、演技力にまつわる3本の勝負が行われる。ギャンブルの演目は、即席デュエットとして「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」を結成した夢子とユメミが提案した「生歌唱対決」、その相手となる淑光が提案した「デスマカロン対決」、そして選挙管理委員会が提案した「スワサント・トロワ」の三つで構成される。ただし、三つの勝利数が多い方が勝ちというわけではなく、生徒会長選挙の一環として、それぞれの対決で票が移動するシステムになっている。そのため、最終的には最も多くの票を獲得した方が勝者となる。
ニム零式 (にむぜろしき)
生徒会長選挙の選挙管理委員長となった黄泉月るなが考案したギャンブルの一つ。0から3までの4枚のカードを一人に4枚ずつ手札として配られる。プレイヤーは一人1枚ずつ手札を場に順番に出していき、その合計数が9になった時点で敗北となる。ポーカーと同様にプレイヤーにはベット、コール、レイズ、フォールドの権利が与えられ、本来は3ターン終了後のそれぞれのチップの枚数で勝敗が決まるが、生徒会長選挙では票をチップとして賭けることになり、3ターンで移動した票が、そのままプレイヤーたちの持ち票として移行される。桃喰リリカの意向により、蛇喰夢子、陰喰三欲、陽喰三理の三人が生徒会長選挙として参加することになっていたが、夢子に同行していた鈴井涼太が新たに参加を表明したことから、四人の選挙戦として認められる。実は勝負の前に、夢子が三欲から毒を盛られており、1ターン目を勝利したものの、その場で倒れてしまう。そのため、早乙女芽亜里が夢子の代役として、鈴井と共に三欲および三理の相手を務めることになる。
ESPゲーム
私立百花王学園で行われているギャンブルの一つ。生志摩妄が蛇喰夢子に対して仕掛けたゲーム。カメラとモニターのみでつなげられた二つの密室と、独自の模様を持つ5枚のカードを使用する。まず、ディーラーがカードを好きな順に並べて、プレイヤーの二人がモニターに映る手先を見て、並べるところを見届ける。ディーラーが並べ終えたあとにプレイヤーの二人が、ディーラーと同じように5枚のカードをそれぞれ並べて、ディーラーの並べた順番により近い方が勝者となり、合致した枚数分だけポイントが加算される。このギャンブルでは、妄の嗜好から金のやり取りは行われず、ディーラーがカードを並べる前に、お互いに装填数6発の銃を1挺ずつ持って、好きな数だけ弾丸を込めて弾倉を回す。なお、この際に一発も込めなくても問題はない。作業を終えたら、箱に二人の銃を入れて区別がつかないようにする。その後に勝負を行い、勝った方が箱から銃を1挺取り出し、相手に向けて勝ち点の数だけ引き金を引く。弾が出なかったり、故意に外すなどして相手に命中しなかった場合は次のラウンドに移行し、弾がいずれかのプレイヤーに命中した時点で終了となる。夢子はゲームを受ける条件として、これらの基本ルールに加えて、ゲームを最大3セットまでにすることと、ディーラーを鈴井涼太が務めること、そして敗者は勝者に10億円を支払うことを追加させる。しかし、妄は3セットまでという点から引き分け狙いを疑い、弾を外した場合は、その回数分だけ相手に撃たれるというルールを追加してしまう。
スカムコイン
生徒会長選挙で、尾喰凛が作り出した疑似通貨。票、もしくは現金と交換することが可能で、交換レートは票なら1票、現金なら「発行主の持つ票×1万円」となっている。つまり、発行主に票が集まれば集まるほど、コインの価値が上がるため、生徒会長選挙に興味のない私立百花王学園の一般生徒は、進んで凛に票を渡し、その見返りとしてスカムコインを受け取る者が多い。しかし凛は、もとからスカムコインを換金しようとする意思はなく、まとまった票と現金が集まれば、それを持ち逃げしようと考えている。凛の従者である尾喰茨もスカムコインの計画に関与しており、凛に代わって一般生徒に対して票とスカムコインを交換するように持ち掛ける。狛喰希もまた、まんまと凛の口車に乗せられ、自らの持つ票や50万円の現金をスカムコインと交換してしまう。のちに、凛が「戦争」で桃喰リリカに大敗したことで生徒会長選挙をリタイアさせられ、これに伴いスカムコインは紙屑同然となる。
人生計画表 (じんせいけいかくひょう)
多額の借金を負い家畜になったうえで、私立百花王学園を卒業するまでに返済できる見込みがないと判断された生徒に対して発行される計画表。これを発行されたまま卒業した場合は、一生を計画表どおりに生きるように百喰一族によってほぼ強制的に調整されることとなる。人生計画表の内容は、私立百花王学園や百喰一族にとって都合がよいものになるが、必ずしも悲惨な人生を強制されるとは限らず、流されるままに生きることを望む場合は、悪いものではない可能性がある。ただし、自由はいっさいなくなるため、早乙女芽亜里が発行されかけた際は激しく反発し、彼女が桃喰綺羅莉に対する不信感を強める一因となる。また、特定の誰かによって返済不可能な借金を背負わされた場合は、その相手に対して白紙の人生計画表が譲渡される。そして、譲渡された相手が好き勝手に相手の人生を決められるため、生徒会から発行された場合より悲惨な結果に陥る可能性が高くなる。
二枚インディアンポーカー (にまいいんでぃあんぽーかー)
私立百花王学園で行われているギャンブルの一つ。西洞院百合子に負けて多額の借金を背負った蛇喰夢子と早乙女芽亜里が、債務整理大集会の中で行ったゲーム。四人1組で行われ、ジョーカーと絵札を除いた40枚のトランプを使用する。まずディーラーが1枚目の「非公開カード」を配り、ほかの人に見せずに確認する。次にディーラーが2枚目の「公開カード」を配るので、それを自分で見ずに頭の上に掲げてほかの参加者に見せる。この2枚の組み合わせで勝負を行い、2枚の数字が一致する「ペア」が最も強く、2枚の絵柄が同じ「マーク」が次点、数字も絵柄も揃わない「ブタ」が最弱となり、同じ役同士なら数値の合計が最も大きいプレイヤーが勝利となる。公開カードと非公開カードをもとに、賭けるか降りるかを決断することから、運と駆け引きが重要となる。また、ゲームの中では一人10枚のチップが使われるが、チップの価値は同一ではなく参加者が自己申告した借金の額の10分の1となり、10ターンの勝負ののちに獲得したチップの合計額によって順位が決められる。ただし、借金額の多いプレイヤーが有利にならないよう、ターンごとに自分のチップ1枚を参加費として支払う必要がある。自分のチップを持っていない場合はこの限りではなく、ほかのプレイヤーのチップを支払うことでゲームを続行することもできる。また短期決着を防ぐために、一度に賭けられるチップは5枚までで、チップが足りなくても、コール、レイズ、ベットが可能となっている。夢子と芽亜里は、木渡潤および蕾菜々美と対戦し、互いの借金額を入れ替えて申告することで木渡を最下位に落とすことに成功する。しかし夢子は、家畜の権利である公式戦を行うことを目的に、最後のターンでわざと菜々美に勝ちを拾わせ、借金をギリギリ返済できない額の賞金を獲得する。
じゃんけんポーカー
大集約のトーナメントで戦うゲームとして、採用されたギャンブル。その名前のとおり、じゃんけんとポーカーの要素を折衷した内容となっており、グー、チョキ、パーの絵柄が各21枚封入されている「じゃんけんカード」を使用する。ゲーム開始時に、両方のプレイヤーに対してそれぞれ5枚のじゃんけんカードが配られる。チェンジは1回までで、手札が確定したら、その中の1枚から「頭(ヘッド)」と呼ばれるカードを選択して伏せたまま場に出す。頭を出したら互いにベッティングを行う。ベッティングの内容はポーカーと同じで、ベット、コール、レイズ、フォールドを自由に選択できる。ベッティングが終了したら、互いの頭を開示し、ジャンケンのルールに従って勝敗を決める。また、あいこだった場合は、頭と同じカードをより多く持っていたプレイヤーが勝利となる。これを5ターン繰り返すことになるが、1ターン目に10票、2ターン目に20票、3ターン目に40票、4ターン目に80票、5ターン目に160票の参加費を支払わなければならない。ただし、足りない場合でも、現在所持している票をすべて賭けることで勝負を続行できる。また、5ターン経過して互いに票が残っている場合は、終了時に持っている票が多い方が勝利となる。このギャンブルの最大の特徴は、専用のカードパックが世界で一つしか存在しないため、大集約の初戦から決勝までカードの替えが利かないことにある。さらに、イカサマはゲームが終わるまでに露見したことが明かされなかった場合は、あとになって咎(とが)められることもない。つまり、先の試合でイカサマを仕込まれた場合は、のちの試合でもイカサマは仕込まれたままとなり、そのことが勝負に影響する可能性も大いにあり得る。
スワサント・トロワ
「ACTIVE STATION」の3回戦で行われた演目。ジョーカーを除いた52枚のトランプを使用し、合計値が「63」に近くなるように、順番に配置していくゲーム。プレイヤーが山札からカードを1枚引き、その数値を自分だけが確認する。なお、絵札はすべて「10」としてカウントされる。確認したのちにカードの絵柄と数値を読み上げて場にセットするが、この際、本当のことを言ってもいいし、カードの数値を偽って公表してもいい。それぞれのプレイヤーが申告した数値は、ステージ中央のモニターに合計値としてカウントされていく。ただし、噓をついた場合もその数値がカウントされるため、モニターに記載されている合計値と実際の合計値が同じとは限らない。63を超えそうだと判断した場合に「パス」を宣言することでゲーム終了となり、それ以降はカードのドローおよびセットが不可能となる。プレイヤーが最後の一人になったらショウダウンが行われ、場の本当の合計値が63以下なら最後の一人の勝利となり、ほかのプレイヤーたちからそれぞれ100票ずつ支払われる。逆に63を上回っていた場合は敗北となり、最後の一人はほかのプレイヤーに対して100票を分配することとなる。ルール上、噓をついた方が有利にはなるものの、先に申告したカードを別のプレイヤーが引いた場合は、噓がバレてしまうというリスクが存在する。この演目は、演技力が問われる本格的なギャンブルを演出したいという理由から、選挙管理委員会の黄泉月るなに提案された。また、本来は「どり~みぃng☆くり~みぃng☆しすた~z」側は、互いのカードを密かに示し合わせるなどのイカサマが計画されていたが、夢見弖ユメミが和楽喰淑光の威光に屈することで勝利への渇望を失ったため、それに失望した蛇喰夢子と分裂状態になってしまう。
公共財ゲーム (こうきょうざいげーむ)
等々喰定楽乃が考案したギャンブルの一つ。蛇喰夢子、皇伊月、豆生田楓、骨喰ミラスラーヴァ、尾喰茨が生徒会長選挙の一戦として行ったゲーム。ターン開始時に、ディーラーからプレイヤーの全員に5枚の銀貨が支給される。銀貨を受け取ったプレイヤーたちは、一人ずつ別室に移動して、全員が銀貨を入れることができる「税金BOX」と、本人だけが銀貨を入れられる「私財BOX」のいずれかに銀貨を投入する。投入する銀貨の数は自由で、5枚すべてを片方の箱に入れることも、両方の箱に分配することもできる。また、ほかのプレイヤーがどちらのBOXに入れたかは、結果が出るまでわからないようになっている。全員の投入が終わったのちに、選挙管理委員の宇留瑠美亜がそれぞれの箱の中にある銀貨をカウントし、私財BOXに入れられた銀貨をそのまま入れたプレイヤーに与えられる。さらに、税金BOXに入れられた銀貨は、すべてのプレイヤーに対して2倍にしたうえで、全員に等分に私財として振り分けられ、ターン終了となる。つまり、5枚すべてを私財BOXに入れた場合は、その5枚に加えて、税金BOXに投入された銀貨の平均を2倍した枚数の銀貨を入手できることになる。そのため、私財BOXに多くの銀貨を入れたプレイヤーが有利となるが、2ターン目から5ターン目の開始前に合議の時間が取られ、私腹を肥やしていると思しきプレイヤーを一人だけ追放することができる。追放されたプレイヤーはゲームに参加できなくなり、それまで貯めた私財もすべて没収されてしまう。5ターンが終了するまでに40枚以上の私財を得た場合は、枚数の多い順に定楽乃から順位に応じた票を提供される。逆に、40枚に満たなかった場合は、定楽乃に対して100票を支払うことを義務付けられる。このゲームの本質は、不公平感を突き付けられたプレイヤーたちが、自らの利権を守るために他者を疑う部分にあり、ディーラーとなった美亜はプレイヤーたちの侃侃諤諤(かんかんがくがく)のやり取りを見て、一人ほくそ笑んでいた。しかし、夢子と豆生田の意外な行動が、彼女が本当に望んでいた場面の演出を実現させることになる。
クレジット
- 原作
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書誌情報
賭ケグルイ 18巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスJOKER〉
第1巻
(2014-10-22発行、 978-4757544499)
第16巻
(2022-09-22発行、 978-4757581470)
第17巻
(2023-07-22発行、 978-4757586741)
第18巻
(2024-07-22発行、 978-4757593084)