赤×黒

赤×黒

ストリートファイトではもはや敵なしの強さを誇る高校生の柴蓮司は、能面をかぶった男の一撃必殺の蹴りを受け、失いかけていた闘争心を取り戻す。「蹴り」に憑りつかれた男たちのスタイリッシュな戦いを描く挌闘漫画で、能楽の解釈も盛り込まれている。物語は本編に加えて外伝Ⅰ~Ⅲで構成されており、外伝では柴がキックボクサーとなるきっかけとなった後日談が描かれている。「ヤングサンデー」1995年2号から22号にかけてと、「週刊ヤングサンデー 大漫王」1996年7月増刊号から1997年1月増刊号にかけて掲載された作品で、コミックス刊行にあたり、大幅に加筆修正がされている。

正式名称
赤×黒
ふりがな
あかくろ
作者
ジャンル
バトル
 
歌舞伎・能・狂言
レーベル
その他(小学館クリエイティブ)
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あらすじ

第1巻

路上でのケンカに満足できなくなり、ボクシングジムに通うようになった流星学園高校2年生の柴蓮司は、ある晩、能面をかぶった男の一撃の蹴りで倒される。その男は蹴りしか使わず、辻斬りのごとく一撃必殺で相手を倒すと噂される人物だった。その能面の男の正体は流星学園高校3年生で、能楽師でもある大石紫だった。そんなある日、辻斬りの復讐にやって来た不良たちに紫は蹴りを入れるが、繰り出したのはその一発のみで、その後は不良たちにあっさりやられてしまう。その話に納得がいかない柴は、不良たちを探し出してストリートファイトを挑む。

第2巻

校庭で邂逅した柴蓮司大石紫は、暗黙の了解のもとに勝負を開始する。柴は紫に一撃で倒されるが、そこに現れた犬飼サキは柴に、一年前の約束を思い出せと声を掛ける。ストリートファイトに明け暮れていた柴を逆恨みするある男のせいで、サキは足に大ケガを負い、そんなサキに柴はケンカでは絶対負けないと約束していたのだ。思いを新たに立ち上がる柴だったが、紫の独特な動きに翻弄され、なかなかペースをつかめない。そんな中、柴は紫には挌闘経験がなく、一撃必殺の蹴りしか使えないことを見抜く。さらに紫は、かつて柴の蹴りを見て、能楽では得られない美しさを感じて魅せられていたのである。実は紫は心臓に持病があり、舞台に戻るために、蹴りに取り憑かれた自分を誰かに止めてほしいとの思いがあった。二人の対決は、タイミングをつかんだ柴が紫を蹴り倒すことで決着し、紫は無事、能楽の舞台に戻ることとなった。2週間後、柴は拳を封印していた空手二段の佐藤秀樹から呼び出される。

登場人物・キャラクター

柴 蓮司 (しば れんじ)

流星学園高校に通う2年生の男子。ラフな短髪で、背が高い。ストリートファイトに明け暮れていたが、ケンカが強くてもなんの意味もないという、ジレンマに陥っている。プロになるつもりはないものの、ボクシングジム「S・S・G」に通っている。自分より弱い相手とケンカすることは、いじめているのと同じだと考えている。そんな時、能面をかぶった男から、一撃必殺の蹴りを受けて失神する。その男が同じ高校の一学年上の大石紫だと知るが、その紫が不良相手に一発蹴りを入れただけで、倒されたことに納得のいかない思いを抱えながら、紫との対戦を心待ちにしている。同じジムに通うOLの吉田竜とは、何か通じ合うものがあり、ファストフード店で食事をする間柄となる。つねにからしとマヨネーズを持ち歩いている。ケンカの際には、最初の一発をわざともらう癖がある。また、本気になると虹彩の色素の変化で目が赤くなるため「ウサギ」と呼ばれ、恐れられている。学校では佐藤秀樹、剛、ウナ、犬飼サキらとつるんでいることが多く、彼らからは「シバ」と呼ばれている。

大石 紫 (おおいし ゆかり)

流星学園に通う3年生の男子で、大石翠の弟。能楽の傀世流の宗家で、シテ方(主役)を嗣ぐ能楽師でもある。能楽師としての名は「傀世紫」。耳が隠れる長さのサラサラの短髪で、目は切れ長。夜な夜な能面をかぶった姿で、相手に一撃必殺の蹴りを入れるという、辻斬り紛いの凶行に及んでいる。ある晩、柴蓮司に蹴りを入れて失神させ、柴と再戦する機会を待っていた。もともと不整脈が出やすく、半年前に稽古中に倒れ、特発性肥大型心筋症と診断される。日常生活を送るうえでの支障はないが、決定的な治療法もなく、最悪の場合は死に至る病である。だが、病気のことで自暴自棄になって辻斬り紛いの行いをしていたわけでなく、ある時柴の蹴りを見て、稽古だけでは得られない美しさと情念を「蹴り」に感じてしまい、能楽の舞台に戻れなくなった自分を、誰かに止めてほしいとの思いから凶行に及んでいる。柴との戦いで、実は格闘技の経験がなく、コンビネーションや防御もできず「蹴り」しか使えないことが露呈する。能楽の才能はあるが、意外と大根役者な一面がある。柴からは「ユカリちゃん」と呼ばれている。

犬飼 サキ (いぬかい さき)

流星学園高校に通う2年生の女子。肩位の長さのミディアムヘアで、目がクリッとしている。1年生の頃は「ウサギ」こと柴蓮司と同じクラスで、女子の中で孤立していた。しかし、柴と佐藤秀樹に声を掛けられて仲よくなり、以降、彼らの仲間ともつるむようになる。一年前、柴に恨みを持つ男からウサギを守ろうとして、太ももをナイフで切られる被害に遭った。その後、犬飼の傷はウサギを助けた勲章だと慰めた柴に、柴のすべての傷を勲章にするつもりならケンカに勝ち続けてほしいと懇願し、柴は絶対負けないと約束している。

佐藤 秀樹 (さとう ひでき)

流星学園高校に通う2年生の男子。短髪で口ヒゲを生やしている。留年してからめっきり老けたが、年は柴蓮司の一つ上。柴、剛、ウナ、犬飼サキとつるんでいる。大石紫とは留年する前に同じクラスだったことがあり、ケンカする柴の姿を見た紫から、柴は強いのかと質問されている。当時は空手二段の黒帯で、地区大会ベスト4相当の実力があり、蓮司と共にストリートファイトに明け暮れていた。そんな中、仲間であるサキが柴に恨みを持つ男にナイフで足を切られ、相手に正拳を入れて眼底骨折させてしまう。その傷害事件で留年することになり、もうケンカはしないと拳を封印した。その理由は、サキに対して責任を感じていたところもあるが、空手家は意外と顔を殴り慣れておらず、相手の顔面を強く殴る際に恐怖を感じてしまったため。しかし柴と紫の対決後、もう一度自分の実力を試してみたくなり、柴を呼び出した。愛称は「だんな」。

(ごう)

流星学園高校に通う2年生の男子。少し長めのセンターパートの髪形をしている。周りを明るくするムードメーカー的な存在で、柴蓮司、佐藤秀樹、ウナ、犬飼サキとつるんでいる。2年生の時に転校してきたため、一年前にサキに起こった悲劇を知らない。柴のストリートファイトの観戦と、缶コーヒーが大好き。

ウナ

流星学園高校に通う2年生の男子。短髪で黒縁の眼鏡をかけており、いつも敬語で話す。柴蓮司、佐藤秀樹、剛、犬飼サキとつるんでいる。博識なことから解説したり、調べたりするのが得意ながら、つねに二、三言多い。秀樹に大石紫を調べるように頼まれ、大石家に行った際、紫の異変を察知した紫の姉の大石翠を学校に連れてくることになる。

城島 勝也 (じょうじま かつや)

ボクシングジム「S・S・G」に所属するプロボクサーの若い男性。黒髪を肩まで伸ばしたキツネ顔で、ふだんは黒いニット帽をかぶっている。日本ウェルター級1位で、プロデビューからたった5戦で日本ランキング1位となった。天才肌に見えるが、人知れず努力するタイプで、それを表に決して出さない。防衛戦前に柴蓮司とスパーリングを行い、柴にケンカと格闘技の違いを教えた。しかし柴の飛び蹴りを受け、そのダメージが残ったまま挑んだ初防衛戦で敗れてしまう。当初から、危なっかしいところのある柴を気に掛けており、自分たちのような人間が生きていける世界は限られていると、キックボクシングジムを紹介した。のちに、WBA世界ウェルター級王者となる。

吉田 竜 (よしだ りゅう)

ボクシングジム「S・S・G」に通う、謎めいたロングヘアの美人。年齢は24歳。赤坂グランド・ホテルでコンシェルジュとして働いている。柴蓮司に何か感じるものがあり、柴がジムにボクシングを学びに来ているのではないと見抜いている。柴とはジムの帰りに、ファーストフード店でよく食事する間柄となる。トレーナーの桃の長い話が大嫌い。

ユアン・チャン

ロシア系中国人の少年で、キャップをかぶっている。年齢は13歳。大石紫が通う流星学園高校に殴り込みをかけた不良グループの一人。小柄でスリムな体形ながら、素早い関節技を使いこなす。ケンカは自分より強い者とやらなければ強くなれないという考えの持ち主で、あこがれの柴蓮司に勝負を挑む。のちに、柴の宿敵になることが示唆されている。

オサム

坊主頭の男性で、大石紫が通う流星学園高校に殴り込みをかけた不良グループの一人。能面野郎は自分が潰したと調子に乗っており、柴蓮司と対決することになる。馬鹿力でパンチは強いが、致命的に動きが遅い。

大石 翠 (おおいし みどり)

大石紫の姉で、ショートヘアの美人。佐藤秀樹に大石家の調査を頼まれたウナに連れられ、流星学園高校にやって来た。そこで、柴蓮司と紫の対決を観戦することになる。能楽師として舞台に戻れないほど「蹴り」に魅せられた紫の心情を理解しており、心臓病を患っている紫がどういう決断を下すかを見届けようとしている。

(もも)

ボクシングジム「S・S・G」のトレーナーを務める男性。スキンヘッドで、丸いサングラスをかけている。やる気があるのかないのかわからない柴蓮司に発破をかけるため、タイトルマッチを控えた城島勝也が人一倍練習する選手であると紹介した。ケンカというのは先に感情があり、出合い頭の一、二発は決まるが、ボクシングは駆け引きが重要で先に感情的になったら負けだとの持論を有する。柴の実力を測るため、また接近戦やチャンスでいかに連打を打てるかを教え込むため、柴を城島のスパーリング相手に抜擢する。

エア・マックスの少年 (えあまっくすのしょうねん)

「マックス狩り」をする人間を逆に狩っている少年。値が高騰している蛍光イエローのエア・マックスというスニーカーをこれ見よがしにはいている。マッシュ系の短髪で、背が低い。「マックス狩り」の噂を聞きつけた柴蓮司と対決することになる。ローキックが得意で、ローを制する者が実践を制するとの絶対の自信を持つ。エア・マックスの少年自身がはいているスニーカーも戦利品。

場所

S・S・G (さみーすぽーつじむ)

柴蓮司や吉田竜が通うボクシングジム。プロボクサーを目指す者だけでなく、プロライセンスを取るためだったり、ダイエットやストレス解消に来ている者などさまざま。S・S・Gには2000人以上の会員がおり、一日だけで200~500人が出入りする。トレーナーは桃が務め、次期チャンピオンと期待されている城島勝也が所属している。

その他キーワード

エア・マックス

ナイキのスニーカーの名称。1996年当時、別注カラーを含めると全部で8色のモデルがあり、どれも人気が高かったが、特に初期カラーの蛍光イエローの希少価値が高かった。定価の4~5倍で取り引きされ、ショップでエア・マックスを買うことも至難の業であることから、エア・マックスをはいている人たちを襲って強奪する「マックス狩り」が社会問題となった。最近、狩る者が逆に狩られているという噂をウナから聞いた柴蓮司は、俄然興味を示して「マックス狩り」を狩る者との対決を求め、街をさまよっていた。

書誌情報

赤×黒 小学館クリエイティブ〈その他〉

(2009-10-01発行、 978-4778060183)

(2009-10-01発行、 978-4778060190)

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