あらすじ
紅イ夜
下半身が魚の姿をした人魚姫は、海の中から海辺の城の窓に映る王子様の姿を見上げて憧れを抱いていた。想いを募らせ人間になりたいと願う人魚姫を、魔女は姫の美しい声と引き換えに、魔法で人間に変える。しかし、その魔法は、王子と結ばれなかった時は、彼女がただの水になってしまうというものだった。願い通りに人間の姿になって王子に謁見できた人魚姫だったが、彼女は王子にスパイ疑惑をかけられてしまう。
カーミラ
転入生の美雪は、若い女教師の羅美夜先生から放課後に呼び出された。同級生から「先生は実は吸血鬼だから気を付けた方がいい」との忠告を受けた美雪が、疑い怯えながらも、学園内にある羅美夜先生の自室に向かうと、扉は勝手に開いて美雪を迎え入れるのだった。
魔女っ子レミちゃんⅠ
まだ幼さの残る魔女っ子のレミちゃんは、雲の上にある魔法の国で暮らしている。魔法が使える姉たちに憧れを抱くレミちゃんは、勝手に姉たちの持つ魔法のステッキや魔法のペンダントに触ってしまう。しかし、「あなたにはまだ早すぎる」と怒られたレミちゃんは、反抗して乗れもしない箒にまたがって、こっそり地上へ行ってしまう。レミちゃんはそこで、たま様と名乗る猫のような外見の服を着た生き物に声をかけられ、一人前の魔女になりたいなら力になれるかもしれない、と家に招かれる。
魔女っ子レミちゃんⅡ
まだ幼さの残る魔女っ子のレミちゃんは、恐ろしい魔物が沢山住んでいるから、森に行ってはいけないと母親に忠告されていた。ところが、こうもりから「森には魔法の力を授けてくれる魔王がいる」と聞き、一人前の魔女になりたいレミちゃんは、好奇心に負けて禁じられている森の中に入ってしまう。邪な木々に悪戯され、衣服を破かれた状態で気を失った彼女が目覚めると、そこには森の魔王を名乗る人物が立っていた。森の魔王は2本の角を持ち、長身で黒いマントをまとった青年の姿をしていたが、会話を重ねるうちにレミちゃんは彼に違和感を抱く。
ドグラ・マグラ
鬼ヶ島の女王である魔鏡は髑髏魔人の勧めに従い、何でも望みをかなえるドグラ・マグラを復活させる儀式に力を貸す。ちょうどその頃、魔鏡の妹である妖ちゃんが、同居しているサイボーグ少女のすももちゃんに、いつものエネルギー充電を始めていた。その途中で魔鏡の異変を感じた妖ちゃんは、髑髏魔人のところに向かってしまう。その間、恥ずかしいところに充電機材を長く繋がれたままだったすももちゃんは、身体の一部にとんでもない変化を起こしてしまう。
鏡の夜
夜、帰宅したこずえはお父さまに呼ばれ、初めて父親の研究室に入った。研究のため全裸になるよう要求され、ためらいながらも裸になったこずえの身体を、父親は好き勝手に触り悶えさせる。そんな酷い扱いに泣き伏すこずえに対し、突然現れた自分そっくりの少女が、いたわりの言葉をかける。そっくりの少女は、父親の夢の実現のために作ったアンドロイドだった。
鏡の国のちづる
第三無限帝国に捕らわれた少女型ロボットのちづるは、総統ドグラの前に引き据えられる。怯える彼女にドグラは、世界征服のための実験兵器になってもらうと告げ、ちづるの身体の中まで調べ尽くすのだった。それから暫く後に、ちづるはいいものを見せてあげようと、ドグラに呼び出される。
白雪姫
魔法の鏡に、この世で一番美しいのは白雪姫だと告げられた魔鏡は、嫉妬から彼女を殺すようにと、部下の叉宇惨怒に命じる。ところが彼は白雪姫に好意を抱き、彼女の着物を、白雪姫を殺した証拠として持ち帰るに留めて、彼女を見逃した。この事実を知った魔鏡は叉宇惨怒を打ち首とした。次は自らが白雪姫を亡き者にしようと、七人の幽霊のもとに身を寄せている白雪姫のもとに、顔を隠し、毒の柿を持って訪ねる。
怒暗城奇譚
月世界のかがみ姫が、宇宙の支配を企むドグラにさらわれてしまった。かがみ姫の母親であるかぐやから、娘を救い出して欲しいと依頼された千面鬼は、太陽系第三惑星「見世物」の実力者である魔鏡に協力を願い出る。かぐやとは親友という縁もある魔鏡は、その依頼を引き受け、千面鬼とともに宇宙船「空中楼閣」に乗って敵の居城「怒暗城」へ向かう。ところが月世界の財宝を狙ったものと思われた誘拐劇は、ドグラがかがみ姫を娶りたい一心から起こしたものだった。
魔女よ天まで
サウザンド女学園2年生の花園百合の教室では、X美、Y子、Z代の3人がキューピット様占いに興じていた。百合も一緒に遊ばないかと誘われるが、彼女は興味がないと、その誘いを断る。何故なら百合の心を占めているのはピアノだったから。毎晩天からやって来ては、百合にさまざまな曲を教えてくれる立派なグランドピアノに、彼女は心を奪われていたのである。だが、占いに興じていた3人は、今度は魔女の儀式であるサバトに出ようと、百合を強引に誘う。その後、世間では天災や大規模な事故などは魔女の仕業とされ、魔女裁判の時代が始まることとなる。
登場人物・キャラクター
人魚姫 (にんぎょひめ)
エピソード「紅イ夜」に登場する。長い髪で、もっちりした幼女体形の人魚。人魚姫は海辺の城の窓辺に現れる王子様のシルエットに憧れ、彼に会うために人間になりたいと願っていた。その願いを叶える代わりに魔女に舌を抜かれ、言葉を発することができなくなった。
美雪 (みゆき)
エピソード「カーミラ」に登場する。転校して来たばかりの女子。同級生に、羅美夜先生は吸血鬼だから気をつけるよう忠告されたが、誘われるままに、放課後指定された場所へ向かってしまう。
レミちゃん
エピソード「魔女っ子レミちゃんⅠ」「魔女っ子レミちゃんⅡ」に登場する。長く癖のある跳ね毛を束ねた少女。エピソード「魔女っ子レミちゃんⅠ」では、姉たちのような魔女に憧れるあまり、雲の上の魔法の国から飛び出して落下し、帰る方法をなくしてしまった。エピソード「魔女っ子レミちゃんⅡ」でも、一人前の魔女への憧れを抑え切れず、母親の忠告に背いて、禁じられた森に入ってしまう、無鉄砲な性格。
すももちゃん
エピソード「ドグラ・マグラ」に登場する。鬼ヶ島に住むサイボーグの少女。ともに暮らしている妖ちゃんの手で、いつも充電してもらっている。充電方法は恥ずかしい部分にコードを繋ぐというもの。スイッチを入れるたびに怯えた表情を浮かべることから、苦痛も伴っている様子。
こずえ
エピソード「鏡の夜」に登場する。ストレートの長い髪の少女。科学者の父親を持ち、お父さまの研究熱心な姿勢に従順に従う健気な性格。実験のためと言われると断れず、恥ずかしい目に遭っても泣きながら堪えている。
ちづる
エピソード「鏡の国のちづる」に登場する。黒髪の少女型のロボット。世界征服を企む第三無限帝国の総統ドグラに捕らわれて、身体の隅々まで調べ上げられてしまう。
白雪姫 (しらゆきひめ)
エピソード「白雪姫」に登場する。長い豊かな髪にリボンを乗せた、和服姿の美しい少女。母親の魔鏡から美しさを嫉まれ、命を狙われる。殺害を命じられた魔鏡の部下叉宇惨怒は白雪姫に好意を抱き、着物を証拠として持ち帰るため、脱がせただけで見逃した。そんな経緯から、それ以降白雪姫は、言われた通りに裸のままで過ごしている。 素直で適応力の高い性格の持ち主。
かがみ姫 (かがみひめ)
エピソード「怒暗城奇譚」に登場する。月世界の姫で、異種族のドグラまでが妻にしたいと願うほどに若く美しい。結婚目的で誘拐され、ドグラの望みを叶えるために、機械の身体に改造されてしまう。そんな不幸なお姫さまだが、物腰は一貫して穏やかでおっとりしている。
花園 百合 (はなぞの ゆり)
エピソード「魔女よ天まで」に登場する。サウザンド女学園に通う、長い髪の女学生。同級生の間で交わされる、流行りの恋の噂話にも関心を示さない。毎夜、花園百合のもとに天からやって来て曲を教えてくれるピアノに、夢中になっている。
王子様 (おうじさま)
エピソード「紅イ夜」に登場する。青年のように見えるが、その身体は機械でできている。自分のことを第99収容所の所長だと名乗り、収容所の前で倒れていた人魚姫を、スパイではないかと疑って拷問にかける。
魔女 (まじょ)
エピソード「紅イ夜」に登場する。人魚姫の声と引きかえに彼女の望みを叶え、魔法で人間の足に変えてあげた。ただし、その魔法は、人魚姫が王子と結ばれなければ、水になってしまうリスクを伴うものだった。
羅美夜先生 (らみやせんせい)
エピソード「カーミラ」に登場する。若い女性教師で、学園内に自室を持っている。転入して来た美雪に、話がしたいと声をかけ、放課後に、4階北階段を上がった場所にある自室へと招いた。
たま様 (たまさま)
エピソード「魔女っ子レミちゃんⅠ」「ドグラ・マグラ」に登場する。エピソード「魔女っ子レミちゃん」では、猫のような外見で、洋服を着て、人のように腕組みをする。レミちゃんが夜の岩場で泣いているところに声をかけた。レミちゃんが魔女になりたくて、魔法の国から乗れもしない箒に跨って落下してきたと聞き、力になれるかもと家に招く。 またエピソード「ドグラ・マグラ」では、同一登場キャラクターとして登場する。サイボーグ少女のすももちゃんに、読者へのキャラクター解説の目的で、充電の度に恥ずかしい行為をしなければいけない、と分かっていながら質問している。
魔鏡 (まきょう)
エピソード「ドグラ・マグラ」「怒暗城奇譚」「魔女っ子レミちゃんⅠ」「白雪姫」に登場する。4作品とも、2つの角を持ち、長い外はねの黒髪の女性の外見で描かれているが、年齢や性格は、各エピソードで異なる。エピソード「ドグラ・マグラ」では、露出度の高い服を着た、長身のすらりとした大人の女性の姿をしていた。強い魔力を持ち、鬼ヶ島の女王の座に君臨。 妹の妖ちゃんとサイボーグ少女すももちゃんとともに暮らしている。エピソード「怒暗城奇譚」では、長身の落ち着いた大人の女性。月世界の住人であるかぐやの親友にして、太陽系第三惑星「見世物」の実力者。エピソード「魔女っ子レミちゃんⅠ」では、露出度の高い衣装を着た、もっちりした幼女体形の女性として描かれる。 猫のような見た目のたま様と暮らしている。エピソード「白雪姫」では、娘である白雪姫の美しさを妬む、着物姿の大人の女性として登場する。
こうもり
エピソード「魔女っ子レミちゃんⅡ」に登場する。こうもりの羽を持ち、空を飛んでいるが、胴部は、「魔女っ子レミちゃんⅠ」に登場する、立ってしゃべる猫のたま様にそっくり。レミちゃんに魔王の存在を伝え、森へ行って、そこに住んでいる魔王に魔法の力を授けてもらうよう勧める。
妖ちゃん (あやちゃん)
エピソード「ドグラ・マグラ」「怒暗城奇譚」に登場する。2本の長い角を持ち、腿まで届く長い真っ直ぐな黒髪と、露出の多い衣装をまとっている。性格はエピソードごとに違うが同一人物であり、魔鏡の妹。エピソード「ドグラ・マグラ」では、トップレスに局部を露出した衣装をまとう。姉の鬼ヶ島の女王魔鏡を助けるために、姉を傀儡に仕立てようとした髑髏魔人と戦う勇敢な少女として登場する。 エピソード「怒暗城奇譚」では、姉の魔鏡に留守番を命じられ、一緒に行きたいと泣きながらだだをこねる、幼げな性格の少女となっている。
髑髏魔人 (どくろまじん)
エピソード「ドグラ・マグラ」に登場する。年寄りじみた口調の骸骨で、仮面をかぶり服を着ている。鬼ヶ島の女王魔鏡に、彼女の力と自身の機械「超空間発生装置」を合わせれば、望みを叶える悪魔「ドグラ・マグラ」を呼び出す儀式が出来る、と売り込みにやって来た。実はその機械を使って、鬼ヶ島の乗っ取りを企んでいる。
お父さま (おとうさま)
エピソード「鏡の夜」に登場する。壮年の紳士だが、娘のこずえの下着をかぶるなど、破廉恥な振る舞いを平気でしている。夢の実現のため、学会から異端視されても研究を続ける熱意の持ち主。
ドグラ
エピソード「鏡の国のちづる」「怒暗城奇譚」に登場する。エピソード「鏡の国のちづる」では、手足が長く、黒く大柄な機械の身体を持ち、世界征服を企む第三無限帝国の総統として登場する。ちづるを実験兵器として使うために捕えたが、実験の途中でちづるを気遣う発言をするなど、実は彼女のことを気に入っている。エピソード「怒暗城奇譚」でもほぼ同じ姿で登場し、こちらでは「怒暗城」を拠点に、宇宙征服を企む支配者となっている。 機械として生まれながらも成長する「霊長機械人類」だが、月世界のかがみ姫に憧れ、異種族にも関わらず、妻にしようとさらった。
叉宇惨怒 (さうざんど)
エピソード「白雪姫」に登場する。3本の角を持つ鬼面の異形の姿をした青年。白雪姫の母である魔鏡に仕えている。魔界から出して貰った恩があって魔鏡に従っていたが、白雪姫を主命に背いて逃がしたため、さらし首にされた。
7人の幽霊
エピソード「白雪姫」に登場する。いつも連れ立って動いている人魂。卒塔婆の森の小屋に住んでいる。小屋には白雪姫が、魔鏡の差し向けた刺客、叉宇惨怒に呼び出された。幽霊の癖に日夜働いていて、歌いながら動くのを好み、騒がしい。
千面鬼 (せんめんき)
エピソード「怒暗城奇譚」に登場する。和風の衣装をまとい、2本の角と機械の身体を持つ青年。誘拐されたかがみ姫の奪還を、姫の母親であるかぐやから依頼され、太陽系第三惑星「見世物」の有力者である魔鏡に協力を依頼した。魔鏡の協力に感涙したり、敵のドグラにあっさり騙されたりと、単純で感情の起伏が激しい。