赤い野獣

赤い野獣

殺人事件の容疑者にされたボクサーくずれの男が、自身を罠にかけた謎の女を追い詰めていくハードボイルドなサスペンス。勝目梓の小説『闇に光る肌』が原作と思われるが、明言はされていない。

正式名称
赤い野獣
ふりがな
あかいやじゅう
原作者
勝目 梓
作者
ジャンル
裏社会・アングラ
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概要・あらすじ

高級外車ジャガーに追突してしまった元ボクサーの八木秀一は、示談交渉のためジャガーに乗車していた森沢洋子という女のもとを訪ねる。ところが、洋子は「事故の損害は身体で払って」と言ってガウンを脱ぎ、妖艶な肢体を八木に見せつける。突飛な提案に戸惑いながらも洋子との情事に夢中になる八木に、彼女は「今度は他の女を抱いてほしい」と提案する。

八木をコールボーイ(男娼)として女たちに斡旋し、その斡旋料を事故の賠償金にするというのである。女好きの八木は言われるまま指定されたマンションの一室に向かうが、そこには見知らぬ男の死体が転がっていた。殺人の容疑者となった八木は、警察の厳しい取り調べを受けるが、粘り抜いてどうにか釈放される。だが、事件は依然として謎に包まれたままであった。

八木は自分を罠にはめた洋子を追うべく事件の調査を開始する。

登場人物・キャラクター

八木 秀一

元8回戦のミドル級ボクサー。名うてのハードパンチャーで将来を嘱望されていたが、カッとなると見境がなくなる悪い癖があり、対戦相手に過剰な攻撃を加えて廃人寸前にしてしまったため、リングを追われた。その後、勤めていた工場が倒産して無職になり、ぶらぶらしていた時、乗っていた車が森沢洋子のジャガーに追突。示談交渉の場で洋子に誘惑され、彼女と関係を持った。 事故の賠償金を稼ぐため、洋子の指示でコールボーイ(男娼)をすることになるが、斡旋された女の部屋で神山幸治郎の死体に遭遇。殺人事件の容疑者とされたことから、自分を罠にはめた洋子に復讐するべく、元刑事で探偵の鎌田一作と組んで事件の謎を追う。

森沢 洋子

八木秀一が衝突事故を起こしたジャガーに乗っていた妖艶な女性。示談交渉にやって来た八木を誘惑し、コールボーイ(男娼)の仕事を持ちかけて、彼を神山幸治郎殺害事件の犯人に仕立て上げようと目論んだ。目的のためなら手段を選ばない人物で、とある事情から現内閣総理大臣である大岡を憎んでおり、武闘派ヤクザの楠原義行と組んで神山殺害を端緒とする大岡の追い落としを画策。 反大岡派の巨頭である広田甚八郎や、ホテル・オリエンタルの林清明常務らも利用し目的を果たそうとするが、八木と鎌田一作によって徐々に追い詰められていく。

鎌田 一作

森沢洋子を追っている探偵業を営む男性。警視庁の敏腕刑事だったが、代議士の伊吹和久を黒幕とした大規模な恐喝事件を内偵中に洋子の仕掛けた罠にはまり、レイプ犯の容疑をかけられて懲戒免職となった。以来、洋子に復讐するため独自に捜査を続けていたが、神山幸治郎殺害事件に彼女が絡んでいることを知り、自分と同じく洋子にはめられた八木秀一に接近、洋子と彼女の背後にいる大物をあぶり出すべく協力を持ちかける。 非情なリアリストの一匹狼を気取っているが、山口百恵のブロマイドやピンナップを密かに収集しているなど、ロマンチストの一面がある。

藤井 明子

森沢洋子の影武者をしていた女性。グランド・ホテルで秘書として働いていたが、洋子に金で雇われて常務の滝長に接近。滝長の愛人となり、彼が常連だったクラブ「葦」の小笹佳世子や下村多美に「森沢洋子」の名を騙って近づくなど、彼女らを神山幸治郎殺害に利用するための下地作りに一役買った。ただ、洋子に利用されただけであり、藤井明子自身は神山殺害の計画自体は知らなかった模様。 ボクサー時代の八木秀一のファンで、洋子を追う八木との出会いを機に一味を離反。事件の真相を暴こうとする八木と鎌田一作に協力することになる。

楠原 義行

右翼団体「日誠維新会」を率いる男性。表向きは政治団体の代表となっているが、暴力団「浅山組」の元幹部であり、その実体は冷酷無比な武闘派ヤクザである。森沢洋子の大岡総理大臣追い落とし計画に協力しているが、洋子に惚れており、彼女の奔放な行動にやきもきさせられている。

神山 幸治郎

八木秀一が容疑者となった殺人事件の被害者。ホテル・オリエンタルの料理長だった男性だが、愛人である小笹佳代子の部屋で撲殺遺体となって発見された。ホテル・オリエンタルでは、近く総理大臣である大岡の三女と大手銀行頭取の次男の結婚披露宴が行われる予定だったが、この事件によって式が延期されることとなった。

小笹 佳代子

新宿のクラブ「葦」のホステス。撲殺された神山幸治郎の愛人で、彼女の部屋が神山殺害の舞台となった。森沢洋子に利用されていた人物の1人で、事件の後はマンションを引き払い、「葦」の同僚ホステスである下村多美の部屋に潜伏していた。のちに八木秀一に発見され、拷問の末に多美ともども知っていることを洗いざらい話す。

下村 多美

新宿のクラブ「葦」のホステス。神山幸治郎殺害事件に同僚の小笹佳代子とともに関与しており、事件の後は佳代子を自分の部屋に匿っていた。しかし、八木秀一に発見され、拷問の末に佳世子ともども知っていることを洗いざらい話す。

滝長

ホテル・オリエンタルとライバル関係にあるグランド・ホテルで常務を務める男性。かつて自分の秘書だった藤井明子を愛人として囲っていたが、八木秀一に襲われた際に彼女が森沢洋子の命令で自分に近づいたことや、神山幸治郎殺害のための段取り作りに利用されていたことを知る。その後は怒りと恐怖から明子との関係を解消した。

徳山 敬司

暴露記事専門のゴロツキ新聞屋を生業としている男性。神山幸治郎の愛人の1人だった瀬川早苗と男女関係にあり、女を寝取られた腹いせという名目で神山のスキャンダルをばらまいたが、実はそれは森沢洋子の依頼による行動だった。八木秀一と鎌田一作に追いつめられ、洋子に関する情報を漏らしてしまったことから、楠原義行の手の者によって早苗ともども覚せい剤漬けにされてしまう。

瀬川 早苗

新宿のクラブ「葦」のママ。ゴロツキ新聞屋の徳山敬司の情婦だったが、森沢洋子からクラブの資金を融通してもらっており、彼女の命令で神山幸治郎の愛人になった。八木秀一と鎌田一作に追いつめられ、洋子に関する情報を漏らしてしまったことから楠原義行の手の者によって徳山ともども覚せい剤漬けにされてしまう。

木村 幸子

ホテル・オリエンタルのウェイトレス。清楚に見えるが実はかなりの男好きで、八木秀一と関係を持ち、ホテル・オリエンタルのさまざまな内情を彼に話す。八木には情報源として利用されているにすぎないが、木村幸子本人はそのことに気づいておらず、彼女気取りで八木に対してあれこれ世話を焼こうとする。

林 清明

ホテル・オリエンタルで常務を務める男性。ホテル・オリエンタルの現社長派と対立する派閥のトップで、次期社長の座を狙っている。森沢洋子と裏で繋がっており、ゴロツキ新聞屋の徳山敬司に洋子のことを紹介したり、伊豆の稲取に所持している別荘を八木秀一らの監禁場所として楠原義行に提供したりした。

草野 明彦

ホテル・オリエンタルの常務である林清明の部下。鎌田一作が刑事時代に追っていた代議士・伊吹和久の秘書だった男性で、次期総理の座を狙う広田甚八郎を後ろ楯にしての参院選出馬を予定している。素人の女性をいたぶって喜ぶ性癖があり、行きつけのクラブに潜入していた藤井明子を相手に緊縛プレイを楽しむ。

ピエール・シャルマン (ぴえーるしゃるまん)

パリで宝石商を営むフランス人男性。店の経営を代理店長に任せて悠々自適の生活を送っているプレイボーイで、渡仏していた森沢洋子に惚れ込んで彼女とともに来日した。洋子にプロポーズするが、結婚詐欺や宝石の密輸の前科持ちだったことから洋子らの計画に支障をきたすとみなされ、楠原義行の意を受けた松立国男によって抹殺された。

松立 国男

殺し屋を生業としている男性。暴力団「浅山組」の組員だったが、現在は楠原義行の配下で、楠原の命令を受けて森沢洋子に執着するピエール・シャルマンを殺害。さらに、草野明彦の身辺を探る藤井明子を事故に見せかけて消そうとする。

伊吹 和久

かつて鎌田一作が恐喝事件の黒幕として追っていた代議士の男性。次期総理の座を狙う広田甚八郎を領袖とする派閥「八光会」に所属していて、政財界暗部の情報網を握るなど広田の懐刀として暗躍している。森沢洋子が画策した大岡総理大臣の追い落とし計画にも一枚噛んでいる。

広田 甚八郎

次期総理の座を狙う大物代議士。派閥「八光会」の領袖であり、懐刀の伊吹和久らを動かして、恐喝まがいのやり方で政財界に勢力を広げてきた男である。現総理大臣で政敵の大岡を追い落とすべく森沢洋子が立てた計画に乗るが、大岡に反撃されて弱気になり、妥協点を模索するようになる。

北原

雑誌「政経タイムス」の記者をしている男性。鎌田一作の親友で、神山幸治郎殺害に端を発する広田甚八郎や伊吹和久らの陰謀をまとめた調査資料を、鎌田の意を受けた八木秀一から入手。八木に頼まれて広田の政敵である現総理の大岡を動かす手助けをする。

大岡

現内閣総理大臣の座にある男性。近く大岡自身の三女と大手銀行頭取の次男の結婚披露宴をホテル・オリエンタルで取り行う予定だったが、ホテルの料理長である神山幸治郎が殺害されるという事件が起きたため延期となった。この事件が、次期総理の座を狙う政敵の広田甚八郎が仕掛けた自分を追い落とす計画の一環だったことを知り、秘書を通じて広田に圧力をかける。

クレジット

原作

勝目 梓

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