軍艦少年

軍艦少年

『ギャングキング』や「セブン☆スター」シリーズでも知られる柳内大樹の代表作の一つ。舞台は軍艦島を望む長崎の街。母を失った少年・坂本海星と、妻を失った父・坂本玄海は、坂本小百合の死を受け入れられずに苦悩していた。そんな二人が、やがて失われた時間を取り戻すために、それぞれ前を向いて新たな人生を歩み始めるヒューマンドラマ。講談社「ヤングマガジン」2012年21・22合併号から51号にかけて連載。2021年12月10日に実写映画『軍艦少年』が公開された。坂本海星を佐藤寛太、坂本玄海を加藤雅也が演じている。また、実写映画に合わせて発行された新装版コミックス『軍艦少年』の表紙には、佐藤寛太が演じる坂本海星をモデルにしたイラストが描かれている。

正式名称
軍艦少年
ふりがな
ぐんかんしょうねん
作者
ジャンル
家族
 
ヒューマンドラマ
レーベル
KCデラックス(講談社)
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大事な人を亡くした悲しみと向き合う時間

母親を失った坂本海星と、妻を失った坂本玄海。二人は大切な坂本小百合を失った悲しみを抱えきれず、酒に溺れ、喧嘩に明け暮れていた。しかし、ふとした瞬間に亡き小百合の面影がよぎり、言葉にできない孤独と悲しみに襲われる。本作では、二人が心の奥底に押し込めていた寂しさを認め、涙を流す姿が丁寧に描かれる。深い悲しみを抱えながらも、前を向いて生きようとする二人の姿は、観る者の心を揺さぶる。

周囲の支えと閉ざされた心

海星と玄海の周囲には、彼らを支えようとする人々が存在している。かつて海星が所属していた美術部の顧問で、海星の絵を高く評価し、小百合の友人でもあった女性・泉、そして玄海の親友で幼なじみの野母崎巌。また、海星と同じく母親を失った結や、海星の友人である純も、それぞれの方法で二人を助けようと試みるが、海星と玄海の心は依然として閉ざされたまま。二人が求めているのは、すでに亡くなった小百合の面影であり、周囲の優しさに気づかず、過去にとらわれている彼らの不安定な精神状態は、見る者をハラハラさせる。

家族の愛、軍艦島に眠る宝物

酒に溺れ、働く意欲を失った玄海を心配した親友の巌は、海星に現状打破の策として「軍艦島で宝物を探せ」と告げる。その言葉を忘れかけていた海星だったが、父親を立ち直らせる宝物が亡き母・小百合に関するものであることに気づく。こうして小百合の死を受け入れ、成長した海星は一人で軍艦島に上陸し、宝物を探す決意をする。本作の魅力は、二人の深い悲しみと、この宝物を軸に過去と現在を行き来しながら、家族三人の愛情を丁寧に描写している点にある。

登場人物・キャラクター

坂本 海星 (さかもと かいせい)

長崎県の高校に通う男子。年齢は16歳。かつて美術部に所属しており、真剣に絵を描いていた。しかし、母親の坂本小百合が病気で亡くなって以来、ケンカに明け暮れる日々を送るようになった。父親の坂本玄海も酒に溺れ、親子は泥沼のような生活をしていた。それでも、坂本海星の心の奥底には危機感が芽生えていた。友人の裏切りや年上の不良からの暴力に晒される中、自分と同じように心の傷を抱える同級生の結と出会う。結と過ごすうちに、海星は失った母親への思いと向き合うようになる。

坂本 玄海 (さかもと げんかい)

坂本海星の父親。長崎県で「端島ラーメン」というラーメン店を経営している。しかし、妻の坂本小百合が病気で亡くなって以来、酒に溺れて店を閉めている。息子の海星が喧嘩に明け暮れていることを知りながらも、彼を止めることができずにいる。かつて軍艦島で小百合や親友の野母崎巌と共に青春を過ごした。病に苦しむ小百合に「一緒に死のうか?」と問いかけたものの、彼女が最期まで笑顔を絶やさなかったため、弱音を吐かせてやれなかったことを今でも悔やんでいる。

書誌情報

新装版 軍艦少年 講談社〈KCデラックス〉

(2021-12-06発行、978-4065263501)

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