あらすじ
仕官学校への赴任(第1巻)
「銃口から政権が、砲口から国家が生まれる時代」、19世紀の欧州北部。ヴァイセン王国の軍人であるベルント・バルツァーは少佐へと昇進し、順調に出世コースを歩んでいた。しかしそんなある日、バルツァーは同盟国であるバーゼルラント邦国に軍事顧問として赴任する事となった。軍事後進国であるバーゼルラント邦国で、学校の先生をする事となったバルツァーは不満を隠しつつ、渋々任務に従事した。バーゼルラント王立士官学校に赴任したバルツァーであったが、そこは問題だらけ。都市に近い事で満足に訓練さえさせてもらえない砲兵科、旧式の装備に時代遅れな訓練をしている歩兵科、さらには実質的に士官学校の実権を握っている王族のライナー・アウグスト・ビンケルフェルトとの対立もあってバルツァーは一気に窮地に立たされる事となった。そしてバルツァーは閉鎖的な価値観に囚われたアウグストの命によって、軍国の戦術の有効性を実証すべく、囚人の部隊を率いて10倍の兵力差の敵と戦う事となる。非合理的な状況を「催し物」と批判しつつも、バルツァーは生き残るべく10倍の兵力差を打破する事で、軍国の装備と戦術の有効性を示した。そしてアウグストに戦術の有効性を認められたバルツァーは、引き続き士官学校で教鞭を振るう事となる。
デモと扇動者(第2巻~第3巻)
ベルント・バルツァーはバーゼルラント王立士官学校で講義を行っていたが、10倍の兵力差を覆した話に尾ひれが付いて噂として広まり、生徒達から怯えられていた。ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトがバルツァーを認めた事で、授業内容に着実な変化が訪れているとはいえ、現状を好ましくないと思ったバルツァーは、生徒達と交流を深めていこうと決心する。一方、アウグストはバルツァーの手腕によって自分達の装備と戦術が著しく劣っている事を突きつけられ、それを解消するため工場の株と債権を買い占め、新たな装備の増産を始めていた。しかしその行動が職人達の反感を買い、ヴァイセン王国への不信感という形で市民達のあいだに現れ始める。バルツァーは街中のヴァイセン王国の商品の不買運動などを見て、既得権益との衝突として、よくある事と思っていたが、一連の事件の背後には因縁の存在であるルドルフ・フォン・リープクネヒトが暗躍している事を知る。天才的な扇動家であるルドルフの存在を危険視したバルツァーは、時を同じくして起きた「シュトルンツ鉄鋼」の抗議デモの背後にもルドルフの関与があると察し、抗議デモの鎮圧に乗り出したアウグストとは別に、独自にデモを鎮圧する事を決意。デモ鎮圧に参加させてもらえなかった騎兵科を率い、暴徒を鎮圧したバルツァーは混乱の最中、「シュトルンツ鉄鋼」の社長を確保する事に成功する。
介入する帝国(第3巻)
デモを鎮圧したベルント・バルツァーとライナー・アウグスト・ビンケルフェルトは、その後始末に追われていた。そこにアウグストと対立している第一王子のフランツ・テオドール・ビンケルフェルトの遣いとして、ルドルフ・フォン・リープクネヒトが訪れる。暴徒鎮圧の功労者として王城に招かれたバルツァーは、上官とアウグストのたった三人で敵地に乗り込む。王城にて、政治を舞台に駆け引きを行うバルツァー達だったが、そこにルドルフが現れ、エルツライヒ帝国の陸軍大佐としての正体を明かす。そして、バーゼルラント邦国に働きかけるルドルフの言葉によって、テオドールは5か月後の「枢密会議」で軍事同盟の見直しをする事を宣言する。第三国の介入を察知したバルツァーは、5か月の準備期間を活用するため、「シュトルンツ鉄鋼」の再生を打診する。そしてバーゼルラント邦国の国民を味方につけるため、バルツァーは「シュトルンツ鉄鋼」に子会社「バーゼル鉄道株式会社」を作らせるのだった。バルツァーは鉄道を敷く事で、交通網を単なる軍事利用するのではなく、物資や人の流通を活発化させる事で世論を厭戦化させ、両国の友好化を推し進めようと目論む。
援軍派兵と決死の撤退(第4巻~第5巻)
ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトはベルント・バルツァーの計らいによって、ヴァイセン王国との密談を行おうとしていた。しかし、それはヴァイセン王国参謀総長のホルスト・フォン・シュタウフェンベルクによって政治利用され、その密談中に勃発したヴァイセイン王国とホルベック王国の戦いに、アウグストが巻き込まれる事となってしまう。ホルストの命によって、バルツァーはバーゼルラント王立士官学校の生徒達から6名の派遣兵を選び、アウグストの選び抜いた200名の精鋭と共に戦地に赴く。アウグスト達が向かう先は前線から離れたのどかな「ホッペンシュテット村」で、安全な後方で、あくまで広告塔として扱われるはずだった。しかし、ホルベック王国の裏で暗躍するルドルフ・フォン・リープクネヒトの企みによって、村の近くの港が強襲されて、占拠されてしまう。アウグストが王子であると知っているホルベック王国の強力な騎兵隊が、バルツァー達のもとに迫る。村での防衛が不可能だと悟ったバルツァーは兵を率いて撤退するが、機動力に優れる騎兵隊に捕捉されてしまう。アウグストの部下達がその身を盾にしてバルツァー達を逃がすものの、戦争の天才・ハウプトマン・ニールセンの執拗な追撃によって窮地に追い詰められる。アウグストは遂に投降を決意するものの、追い詰められたバルツァーは、そこで自らが提唱した「騎兵不要論」を実践する最後のピースを発見。圧倒的に不利な状況で、バルツァーは画期的な戦術を組み立てて騎兵隊を打ち破る事に成功する。
国際会議(第6巻)
戦地より戻ったベルント・バルツァーは、ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトとバーゼルラント王立士官学校の生徒を守った英雄として持てはやされていた。そんな扱いに辟易としていたバルツァーであったが、そこに女性記者のアンネリーゼ・ホルバインが接触してくる。ルドルフ・フォン・リープクネヒトを追い続けるアンネリーゼは、バルツァーにルドルフの半生と目的、そしてその裏にはヴァイセン王国参謀総長のホルスト・フォン・シュタウフェンベルクの影があると語る。その言葉に思い至る節のあるバルツァーは、敵も味方も信用できない中、エルツライヒ帝国で行われる国際会議に向けて準備を進めるように指示を下される。一方、バーゼルラント邦国では「枢密会議」でヴァイセン王国との軍事同盟の継続が承認された。着々と勢力を伸ばすアウグストは、第一王子であるフランツ・テオドール・ビンケルフェルトの代理として、国際会議に参加する事となる。国際会議での主題は、ヴァイセン王国とホルベック王国の講和であったが、さまざまな政治的な思惑が渦巻いた結果、バーゼルラント邦国だけが槍玉に上がってしまう。政治的に不穏な状況の中、バルツァーのもとに「ヴァイセン領事館の職員の不審死」と「ヴァイセン王国国王の急な国際会議参加」の知らせが届く。議会の判断を無視し、独断で行動を起こした国王を見て、バルツァーはホルストとルドルフが結託している証拠をつかむチャンスだと考える。そして独自に調査を続けたバルツァーは、ヴァイセン領事館の総領事が国王暗殺を企んでいる事を見抜き、その背後にはホルストがいる事を確信する。
政略結婚(第7巻)
参謀総長の暗躍を知ったベルント・バルツァーは真実を知るため、あえてルドルフ・フォン・リープクネヒトの誘いに乗り、彼と行動を共にする。そしてバルツァーが出会ったのは、エルツライヒ帝国の女帝であるマリア・ルドヴィカ・フォン・アドラフェストンとフランツ・テオドール・ビンケルフェルトであった。バルツァーはそこで彼らの目的が、バーゼルラント邦国の二人の王子の政略結婚による講和である事を知る。ヴァイセン王国でも婚姻によって戦争を終わらせたい者、戦争を続けたい者で分かれる中、バルツァーは当人であるライナー・アウグスト・ビンケルフェルトと話をする。案の定、政略結婚に反対するアウグストであったが、バルツァーはそこでバーゼルラント王室に隠された衝撃の真実を知る。バーゼルラント邦国に深くかかわり過ぎたバルツァーは、自分の存在が政治利用されるのを防ぐため、アウグストに自身の解任を進言する。アウグストにそれを認められ、軍事顧問を解任されたバルツァーは、バーゼルラント王立士官学校を去るが、バルツァーに密かにつけられていた諜報員の存在によって、バーゼルラント王室の秘密はヴァイセン王国に渡ってしまう。
クーデター勃発(第8巻~第9巻)
傀儡となったフランツ・テオドール・ビンケルフェルトの姿を見たライナー・アウグスト・ビンケルフェルトは、5年のあいだこん睡状態とされていたバーゼルラント邦国国王が、実は意識がある事に気づく。国王を保護し、テオドールとその裏で暗躍する者達の企みを阻止するため、バーゼルラント王立士官学校に国王と共に身を寄せたアウグストであったが、そこで程なくしてテオドールによるクーデターが引き起こされる。バーゼルラント軍に偽装したエルツライヒ帝国の軍勢を使う事で首都を制圧したテオドールは、そのまま手勢を率いてバーゼルラント王立士官学校に攻め込むが、バルツァーの残した教本を参考に陣地を作った生徒達に退けられてしまう。初戦を敗北で飾ってしまったテオドールであったが、そこにエルツライヒ帝国より来たヨーゼフ・フォン・レンデュリックが合流する。バルツァーの薫陶を受けた生徒達は前線するが、ヨーゼフは巧みな用兵で着々と士官学校を追い詰める。
一方、ヴァイセン王国に戻ったベルント・バルツァーは諜報員によって監視され、その行動のほとんどを制限されていた。しかしそこに、ヴァイセン国王の命を受けた男が接触してくる。軍人としての将来を引き換えに、戦争を止める道を提示されたバルツァーは、軍人としての範を思い出し、この難しい状況の中で勝機を探し始める。そしてわずかな情報の中で、バルツァーはバーゼルラント国王の存在に行き着き、それを具申する事で、アウグストの救助と士官学校の援軍に向かう事を許可される。最新式の巨大臼砲によって危機に陥っていた士官学校に、バルツァーは気球を利用する事で手早く帰還する。気球よりの観測という新しい手法で生徒達を援護するバルツァー。戦場にある兵器を効果的に運用する事で新しい戦法を生み出したバルツァーは、敵の突撃から士官学校を防衛し、一時的な休戦に持ち込む事に成功する。
内乱終結(第9巻~第10巻)
18時間の休戦時間を利用し、次なる戦いの準備を進めるベルント・バルツァーとヨーゼフ・フォン・レンデュリック。お互いに勝利をつかむため、それぞれの最善を突き進むが、ヨーゼフが下水を利用した侵入を行った事で拮抗は崩れてしまう。防衛が不可能だと悟ったバルツァーは、ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトとバーゼルラント国王を気球で逃がそうとするが、そのタイミングでヘルムート・マルクス・フォン・バッベル率いる騎兵隊が援軍に駆けつける。敵に回った近しい友と戦いつつ、ヘルムートは国王とアウグストの乗る気球を守る事に成功し、彼らをバーゼルラント邦国の貴族達のもとに届ける事に成功する。大義名分を手にしたアウグストは、貴族達の軍を使って総攻撃に出るが、形勢が不利と悟ったヨーゼフは、フランツ・テオドール・ビンケルフェルトを確保した状態で撤退してしまう。敵の目的がテオドールの戴冠式を強行してバーゼルラント南部を切り取る事だと判断したバルツァーは、アウグストに追撃を進言する。ヴァイセン王国の介入も迫る中、多くの犠牲を出しつつもアウグストはテオドールを確保し、内乱の終結を宣言する。
変革する世界(第11巻)
内乱が終結した事で、一気に中央集権化が進むバーゼルラント邦国。ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトが執り行う内乱の犠牲者を弔う式典に参加する事となったベルント・バルツァーであったが、彼はそこでアウグストがバーゼルラントを民主化する宣言を聞く。アウグスト自身がバーゼルラント王家が隠していた事実を公表した事でヴァイセン王国の企みをつぶし、アウグストは国民投票を利用して民主化したバーゼルラント初代大統領に就任する。バーゼルラント邦国の強引な民主化は、周辺国家に大きな波紋をもたらし、世界は否が応にも激動の時代へと突入していく。一方、バルツァーは先のバーゼルラントに肩入れした行動が問題視され、ヴァイセン王国陸軍の査問会議に招集されていた。実質的な左遷という処分で落ち着いたバルツァーであったが、心配したアウグストとヴァイセン国王の計らいで、一時的にヴァイセン国王付きの「侍従武官」へと転向する。ヴァイセン国王とホルスト・フォン・シュタウフェンベルクの対立が明確なものになり始めた事もあり、バルツァーは「侍従武官」として国王に協力して行く事となる。しかしそれによって遂にバルツァーはホルスト・フォン・シュタウフェンベルクより危険視されるようになり、国王派の軍人を暗殺していたルドルフ・フォン・リープクネヒトに、バルツァー暗殺の命が下る事となった。
登場人物・キャラクター
ベルント・バルツァー
ヴァイセン王国の陸軍特務少佐。指揮官・一戦闘員として優れた能力を持つ軍人。さらに論文を現す程の幅広い軍事の知識を持っている。普段は気さくだが非常時に人格を切り離して理に従うことができ、上官をして「軍国(ヴァイセン王国)の軍人訓育の成功例」と言わしめる程の人物。第一次ノルデントラーデ戦役での戦功によって功績によって通常よりも3年早く佐官に昇進したが、唐突に同盟国バーゼルラント邦国の王立士官学校へ軍事顧問として出向を命じられる。 旧弊な王立士官学校の中で次々に近代的・合理的な軍事教育を取り入れ、ディーター・シュトルンツなど生徒達から大きな信頼を寄せられる。また、訓練長でもある第二王子・ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトも当初は反発したが後にその能力を認め、これがきっかけでバーゼルラント王室の宮廷闘争に巻き込まれてしまう。 シュトルンツ鉄鋼の暴動の鎮圧など実戦で成果を上げる他、ヴァイセン王国とバーデルラント邦国の同盟危機にあたっては、バーゼル鉄道株式会社設立を仕向けて枢密会議の議員達の支持を得るなど、政治面での才覚を発揮した。 しかし、若くしてこうした功績を次々に成し遂げたことにより、上司である本国の参謀総長・ホルスト・フォン・シュタウフェンベルクから警戒される。第二次ノルデントラーデ戦争では、王立士官学校の生徒達を選抜してバーゼルラント義勇軍を率いて参戦し、苦戦の末にホルベック王国軍を撃破。 その後、和平のための国際会議に向けて対バーゼルラント邦国工作の特務機関の指揮を執るよう命令を受け、大使館陸軍部連絡室(通称:バルツァー機関)の室長となる。
ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト
バーゼルラント王立士官学校の訓練長を務めるプラチナブロンドの青年。その正体はバーゼルラント王室の第二王子で、バーゼルラント王立士官学校の実権を握っている。旧時代な装備に前時代的な教育をしていたため、ベルント・バルツァーと初めて会った時は対立した。バルツァーの手腕を認めたあとは、バーゼルラント邦国が軍事面で周辺国家から大幅に遅れている事を実感し、彼の言葉を反映させた教育を行っている。また軍の装備を新調するため工場改革にも努めたが、これが却って職人達の反感を買い、デモ運動につながってしまった。政治的には改革派であるため、兄王子であるフランツ・テオドール・ビンケルフェルトとは対立している。バルツァーの手腕を気に入らないと思いつつも、その能力の高さは認めており、彼の助言には度々助けられている。そのため当初は感情的な言動が多かったが、バルツァーの影響を受けた言動が多くなり、クーデター戦では日和見していた貴族軍をハッタリと目先の利益で味方につけた。クーデター終結後は、混乱したバーゼルラント邦国を民主化に導き、初の国民投票によって初代大統領に就任した。実は本物のバーゼルラント王室の第二王子ではなく、暴動によって行方不明になった当時、出産3か月だった本物のライナー・アウグスト・ビンケルフェルトの身代わり。本物と同じ特徴を持っていただけの赤子だったため、アウグスト本人にはその記憶がなかったが、13歳の頃に同じ境遇のテオドールよりその真実を告げられた。クーデター終結後は自らその事実を民衆に明かし、王室解体を主導する。
フランツ・テオドール・ビンケルフェルト
バーゼルラント邦国の摂政を務めている金髪の青年。バーゼルラント王室の第一王子で、中世王族のような格好と芝居かかった言動が特徴。弟であるライナー・アウグスト・ビンケルフェルトからは「中世仮装趣味の夢想家(コスプレオタク)」と蔑まれ、ベルント・バルツァーは、初めて対面した際に「役者」と評した。保守的な政治を行っており、職人を手厚く保護しているため民衆の人気は意外にも高い。しかし、その実態はエルツライヒ帝国の傀儡であり、エルツライヒより送られたルドルフ・フォン・リープクネヒトの言いなりになっている。実は本物のバーゼルラント王室の第一王子ではなく、暴動によって行方不明になった本物のフランツ・テオドール・ビンケルフェルトの身代わり。テオドールはその事実を知っていたが、エルツライヒ帝国の女帝マリア・ルドヴィカ・フォン・アドラフェストンに釘を刺され、王族として振る舞うように強制された。マリアにはその事実を握られているため逆らう事ができず、王族として振る舞わなければいけないというストレスから精神障害を煩ってしまう。普段の芝居かかった振る舞いもその一環で、王族として演技する事でかろうじて人前でしゃべる事ができる状態で、演技をやめて素の姿になると、人と話す事すら満足に行えない状態となっている。「本物の王族」になるべく、バーゼルラント軍に偽装したエルツライヒ軍を使ってクーデターを起こすが、アウグストに敗れた。その後は、アウグストが偽者である事を民衆に明かしたため、王族としての実権をすべて奪われた。
ディーター・シュトルンツ
バーゼルラント邦国王立士官学校の生徒で砲兵科の2年兵。無邪気で子供っぽい性格だが、砲兵科では工学・数学・語学の主席で、学校全体でもトップクラス。同期のパウル・ブライトナーと共に軍事顧問に着任したベルント・バルツァーの出迎え役を命じられる。ベルント・バルツァーの機転で大砲の訓練ができるようになり、その後は彼を慕うようになる。 実家は兵器工場・シュトルンツ鉄鋼を経営しており、幼い頃から機械に触れていたため、武器の修理が得意。シュトルンツ鉄鋼の暴動事件後は、在学のまま子会社のバーゼル鉄道の社長に就任する。その後ベルント・バルツァーの命令により、バーゼルラント義勇軍に加わり第二次ノルデントラーデ戦争に参戦した。
ルドルフ・フォン・リープクネヒト
元ヴァイセン王国陸軍第二近衛連隊長で、陸軍大学時代のベルント・バルツァーの友人。大学時代に他の学友を扇動してクーデター未遂事件を起こし、結果として第一次ノルデントラーデ戦役を引き起こした。ベルント・バルツァー曰く、「最上で最悪の扇動者」。クーデター失敗の際に右眼を失っており、黒い眼帯をしている。 その後、ヴァイセン王国を脱出してエルツライヒ帝国陸軍大佐となり、同国の女帝マリア・ルドヴィカ・フォン・アドラフェストンの命令でバーゼルラント邦国に宮廷音楽家として派遣された。バーゼルラント王室に入り込み、第一王子、フランツ・テオドール・ビンケルフェルトを操り、暗躍している。 元はヴァイセン王国の準貴族の出だったが、父の事業の失敗のため傾きかけた家を継いでいた。
ヘルムート・マルクス・フォン・バッベル
バーゼルラント邦国王立士官学校の生徒で、騎兵科の3年兵。貴族の出で、王室から領地を接収されることを防ぐため「男子」として領地と爵位を相続し、「特例」として入学した。強い正義感を持ち、その使命感から人一倍の努力で優秀な成績を収めているが、騎兵科が「お飾り」となっている現状に不満を持っている。 またそれゆえに過度の気負いがあり、他の騎兵科学生たちからは煙たがられ「お嬢様(フロイライン)」と陰口を叩かれている。シュトルンツ鉄鋼の暴動事件の際、女性であることがベルント・バルツァーに知られた。当初はベルント・バルツァーに反感を覚えることもあったが、騎兵科のレースをきっかけに考えを改め、バーゼルラント義勇軍に加わり第二次ノルデントラーデ戦争に参戦して共に戦った後は深く信頼するようになる。 1人の男性としても気になる様子で、彼が女性記者アンネリーゼ・ホルバインと一緒にいるところを困惑の面持ちで見ている。第二次ノルデントラーデ戦争後の和平国際会議では代理公妃に任命され、第一王子、ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトのパートナーとして国際会議に女性の正装姿で参加する。
ユルゲン・ゲオルク・フォン・ブライトナー
バーゼルラント邦国王立士官学校の生徒で、騎兵科の3年兵。実直で正義感が強く、騎兵科学生の人望は篤い。シュトルンツ鉄鋼暴動事件の鎮圧で、ベルント・バルツァーの指揮の元初めて実践に赴き、その後バーゼルラント義勇軍に加わり第二次ノルデントラーデ戦争に参戦する。 騎兵科の同期・ヘルムート・マルクス・フォン・バッベルとは幼馴染で、女性であることを知っており、彼女の心がベルント・バルツァーに傾きつつあることに気を揉んでいる。
トマス・リンケ
バーゼルラント邦国王立士官学校の生徒で、歩兵科の1年兵。歩兵科の一年兵。気弱な性格の上太っていて動作が鈍く、教練では訓練長のライナー・アウグスト・ビンケルフェルトほか、教官達に良く鞭打たれていた。ベルント・バルツァーによってバーゼルラント義勇軍に抜擢され、第二次ノルデントラーデ戦争に参戦する。
マルセル・ヤンセン
バーゼルラント邦国王立士官学校の生徒で、歩兵科の1年兵。トマス・リンケの友人。友達思いだが反抗的な態度を見せ、よく教官から鞭で打たれていた。弾道の不安定なマスケット銃を正確に撃ちこみ続けるほどの射撃の才能がある。第二次ノルデントラーデ戦争ではベルント・バルツァーによってバーゼルラント義勇軍に抜擢され第二次ノルデントラーデ戦争に参戦し、ハウプトマン・ニールセン率いるホルベック王国軍との闘いでは射撃によって大きな功績を上げた。
マリア・ルドヴィカ・フォン・アドラフェストン
眼鏡をかけた黒髪の老年の女性。エルツライヒ帝国の女帝。バーゼルラント邦国の第一王子・フランツ・テオドール・ビンケルフェルト、第二王子・ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトの大叔母。表面は笑みを湛えた柔和な女性だが、身内の人間すら「外交の駒」として利用する冷酷な人物。 ルドルフ・フォン・リープクネヒトをバーゼルラント邦国 に派遣し、彼を通じてフランツ・テオドール・ビンケルフェルトを操っている。
ホルスト・フォン・シュタウフェンベルク
ヴァイセン王国陸軍参謀総長。軍部のトップとして、第二次ノルデントラーデ戦争や、バーゼルラント邦国併合作戦の指揮を執る。軍部ばかりでなくヴァイセン王国の国政にも大きな影響力を持つ。また和平国際会議の場には敢えて決定権を持たない外交官を送るなど、争いを誘発するような姿勢も見せる。 ベルント・バルツァーの能力を評価する一方で、警戒もしており、諜報部隊のユーリ・ヘーゼンとティモ・バウマンに命じてベルント・バルツァーを監視させている。ルドルフ・フォン・リープクネヒトの父親とは士官学校時代の同期だった。
ユーリ・ヘーゼン
ヴァイセン王国陸軍士官学校の生徒で3年兵。参謀総長・ホルスト・フォン・シュタウフェンベルク直属の諜報部隊に所属している。ベルント・バルツァーの監視を命じられ、 第二次ノルデントラーデ戦争の際、ティモ・バウマンと共にバーゼルラント義勇軍に同行する。その後は大使館陸軍部連絡室(通称:バルツァー機関)所属となる。 兄は陸軍大学時代のベルント・バルツァーの友人で、クーデター未遂事件の際に自決している。
ティモ・バウマン
ヴァイセン王国陸軍士官学校の生徒で3年兵。参謀総長ホルスト・フォン・シュタウフェンベルク直属の諜報部隊に所属している。ベルント・バルツァーの監視を命じられ、第二次ノルデントラーデ戦争の際、ティモ・バウマンと共にバーゼルラント義勇軍に同行する。その後は大使館陸軍部連絡室(通称:バルツァー機関)所属となる。 冷静なユーリ・ヘーゼンとは対照的に陽気な振る舞いが目立つが、軍人としての能力は優秀。
アンネリーゼ・ホルバイン
ヴァイセン王国で発行されている新聞デリッツ・ガゼット紙の女性記者。幼少の頃、陸軍大学のクーデター未遂事件の際に、扇動者・ルドルフ・フォン・リープクネヒトの不可解な行動を目撃し、それ以来、彼の動向を探っている。従軍記者として第二次ノルデントラーデ戦争に従軍した際にベルント・バルツァーに近付き、情報を交換するようになる。
パウル・ブライトナー (ぱうるぶらいとなー)
バーゼルラント王立士官学校砲兵科2年生の男子。同じ科のディーター・シュトルンツとは友人関係で、彼のフォローをよく行っている。実家はパン屋で五人兄妹の次男。兄が実家を継いでいるため、士官学校を卒業後は軍隊勤務を経たあと、退役軍人の官吏登用制度を利用して公務員として安定した職場で働きたいと思っている。成績は砲兵科の中で2位と高く、総合的な能力はベルント・バルツァーも認めるほど。 ただし軍人はあくまで腰掛と思っているため、戦争には参加したくないと思っている。そのため対ホルベック王国との戦いで援軍派兵に選ばれた際も、戦争に恐れを抱いてわざと体調を崩して辞退しようとしていた。援軍派兵でメンタル面が鍛えられ、クーデターが起きて、バーゼルラント王立士官学校に軍が攻めて来た際には的確な判断で仲間達を大きく助けた。
ヨーゼフ・フォン・レンデュリック (よーぜふふぉんれんでゅりっく)
エルツライヒ帝国の陸軍大佐。好々爺然とした老人で、女帝・マリア・ルドヴィカ・フォン・アドラフェストンの孫娘であるヘレナの「侍従武官」としてバーゼルラント王立士官学校に訪れた。ヘレナを故国に送り返したあとはバーゼルラント軍に偽装した「エルツライヒ第8猟兵連隊」を率いて、フランツ・テオドール・ビンケルフェルトのクーデターの実働部隊を指揮した。 「エルツライヒ砲兵の父」と呼ばれるほどの用兵の達人で、貴族でありながら学問志向を標榜し、エルツライヒ国内で砲術の地位向上に大きく貢献している。バーゼルラント王立士官学校での戦いでも、経験に裏打ちされた用兵で生徒達を追い詰めた。「未来の戦争」に思いを馳せており、画期的な発想を思いつくベルント・バルツァーの存在には強い興味を示している。 クーデターでバルツァーから休戦を提案された際にはそれを受け、紅茶を飲みながら彼の人となりを確かめ忠告をした。
ハウプトマン・ニールセン (はうぷとまんにーるせん)
ホルベック王国の大尉。黒い長髪に髭を生やした野性味を感じる容姿をした青年で、貴族でありながら血と戦を好む根っからの戦争屋。戦場では騎兵隊を率いながら先陣を切って敵につっこみ、血が滾るような熱い戦いを求めている。逆にヴァイセン王国軍人が掲げる「理性の軍隊」に関しては批判的で、自分の気分で条約を無視する無軌道な部分も存在する。 ただしそれを差し引いても、わずかな痕跡から逃げた部隊の行き先を察する優れた観察と的確に敵を打ち砕く判断能力の持ち主で、部下達からも慕われている。ライナー・アウグスト・ビンケルフェルトを捕らえるため、バーゼルラント王立士官学校から派遣された援軍に執拗な追撃を行ったが、金網と斉射砲を利用したベルント・バルツァーの戦術に騎兵を完封されてしまう。 仲間達が開いた血道を利用する事でただ一人生き残りとして脱出する事に成功するが、何の情念も存在しないバルツァーの戦術に嫌悪を示し、仲間達の仇をとるためバルツァーへの再戦を誓った。
場所
ヴァイセン王国 (ゔぁいせんおうこく)
近代化著しい国家。鉄道、電信、気球などが実用化されており、軍拡が激しい事から軍事大国の名をほしいままにしている。軍事同盟を結んでいるバーゼルラント邦国を緩衝地帯として南のエルツライヒ帝国とはにらみ合いの関係にあるほか、東のノルデントラーデ公国の支配権をめぐって「ホルベック王国」とも敵対している。
バーゼルラント邦国 (ばーぜるらんとほうこく)
ヴァイセン王国の南に存在する国家。鉄道や電信が実用化されているヴァイセン王国に比べていまだに馬車が主流になっており、軍事も装備も戦術も古いためヴァイセン王国では軍事後進国といわれている。国王による王政で国は運営されているが、五年前より国王が脳の損傷で全身麻痺状態であるため第一王子であるフランツ・テオドール・ビンケルフェルトが摂政として国政を担っている。 ヴァイセン王国とエルツライヒ帝国のあいだにあるという政治的均衡から、50年間、戦火とは無縁であった。そのため国民の国防意識は低く、ヴァイセン王国の先進的な商品も国内市場を守るため輸入が制限されていた。しかし、ベルント・バルツァーの意見を取り入れたライナー・アウグスト・ビンケルフェルトが改革を行い、ヴァイセン王国の鉄道が敷かれ、工場でもボルトアクション方式の銃が作られるようになっている。 テオドールによるクーデターがアウグストに鎮圧されたあとは、アウグスト主導による改革が行われ、中央集権化と国の民主化が一気に行われた。国民投票も行われ初代大統領としてアウグストが選ばれている。
バーゼルラント王立士官学校 (ばーぜるらんとおうりつしかんがっこう)
バーゼルラント邦国に存在する将来の士官や予備将校の養成を目的とした軍事学校。中等教育の卒業者なら身分を問わず志願のできる教育施設で騎兵科、砲兵科、歩兵科が存在する。校長はフランク・フォン・バウマンが務めるが、実質的な実権は第二王子であるライナー・アウグスト・ビンケルフェルトが握っており、教員にもアウグストの息のかかった者が多勢を占める。 都市部に近いため砲兵科の実弾訓練は行えず、装備も旧式のマスケット銃を使っているなど、ヴァイセン王国の軍人であるベルント・バルツァーの目から見ると「時代錯誤」な物が多かったが、のちにその手腕をアウグストに認められたバルツァーによって教える内容は大幅に改革されている。当初は農村の孤児や口減らしまで積極的に受け入れいていたため、周囲はアウグストが福祉活動を隠れ蓑に自身の派閥の兵士を養成するための施設と思っていたが、その真実の目的は国民に教育を施す事で自立させ、バーゼルラント邦国の民主化を促進させる事だった。
エルツライヒ帝国 (えるつらいひていこく)
バーゼルラント邦国の南に存在する広大な土地と植民地を持つ帝国。立憲君主制で現在はマリア・ルドヴィカ・フォン・アドラフェストンが女帝として行政を取り仕切っている。マリアとバーゼルラント邦国の王室は縁戚という関係もあり、フランツ・テオドール・ビンケルフェルトに大きく干渉している。またヴァイセン王国に負けず劣らずの軍事大国であり、バーゼルラント邦国をはさんでにらみ合いの関係となっている。