あらすじ
第1巻
奥羽山脈に連なる二子峠で暮らすウィードが率いる犬の群れを、突如として熊の軍団が襲った。熊の軍団を率いるモンスーンは、かつてウィードの父親である銀によって倒された巨熊、赤カブトの子供であり、その復讐のために二子峠に現れたのだった。犬達の総大将であるウィードを戦闘不能に追い込んだモンスーンは、そのまま銀達幹部のいる山を目指す。次々と犬達が倒される中、銀はモンスーンと対峙し、モンスーンが赤カブトの血を引く熊である事を確信する。そこへ二子峠の異変を察知した大輔達人間がヘリコプターに乗って現れ、モンスーン達は一時的に撤退する。大輔は重傷を負ったウィードを治療するために引き取るが、モンスーンは人間が去るの待って、再び二子峠を襲撃しようとしていた。その頃、銀の孫でありウィードの子供であるオリオンは、兄弟のシリウスやリゲルと共に三重県で修行に出ており、二子峠の惨状をまだ知る由もなかった。
第2巻
二子峠を急襲したモンスーン率いる熊の軍団を前に、犬達は苦戦を強いられていた。銀は、仲間を助けるために自身が囮となってモンスーンを引きつける。銀が逃げると判断したモンスーンは、犬達の攻撃を部下の熊に任せて銀を追う。銀を慕う犬達は、銀を援護すべくモンスーンを追撃するが、その中の一匹、ヒロが銀をかばって命を落とす。さらに銀もまたモンスーンの一撃によって谷底へと転落してしまう。復讐を果たしたモンスーンは、次いで二子峠の奪還を目指すが、峠に残った黒虎達は逃げずに熊と戦う姿勢を見せる。そこへ現れたボブと名乗る犬は、モンスーンのターゲットはかつて赤カブトを倒した犬達だけであり、ほかの犬は命を奪う事はないと告げる。犬でありながら熊の言葉を理解し、モンスーンの手下となっているボブに対して、熊と戦う構えを見せるジェロムは、懐疑的な目を向ける。
第3巻
モンスーン率いる熊の軍団の襲撃になすすべもない犬達だったが、黒虎らを筆頭に懸命の抵抗を見せる。その最中、モンスーン達熊の包囲網を抜けた赤目は三重県へとたどり着き、そこで修行中のオリオン達に二子峠が熊に襲われている事を告げる。赤目の話を聞いたオリオンは、兄のシリウス、弟のリゲル達と共に二子峠の救援に出発する。その二子峠では、犬達の抵抗も虚しくモンスーン率いる熊の軍団が犬達を壊滅に追い込み、ついに犬達の楽園は陥落する。散り散りになった犬達のうち、銀の盟友であるクロスは、大輔のもとへ身を寄せていた。モンスーンの指示でクロスを追っていたボブだったが、クロスが人間である大輔のもとへ逃げ込んだために手が出せずにいた。その頃、長野県では赤目から二子峠の危機を知らされた雲斎が飼い犬達を連れて出陣しようとしていた。
第4巻
モンスーン率いる熊の軍団の襲撃から辛くも逃れ、人間の大輔に保護されたクロスは、自分達を追って来ているボブを見つける。ボブはモンスーンから、クロス達を殺さなければ自身の命はないと脅されていた。自身の兄弟がすべてモンスーンによって殺されたという身の上をクロスに語ったボブは、クロスには山に戻らないように告げて去っていく。モンスーンに対してクロスを殺したと噓の報告をしたボブだったが、モンスーンに従うしかない惨めな自身の現状を嘆いていた。その頃、モンスーン配下の熊達は、二子峠に残った犬達を狩り集めた「貯蔵庫」を作っていた。その中に入れられたジェロムや哲心達は、モンスーン率いる熊の軍団が犬を常食としている事を知って愕然となる。そして、二子峠への救援に走るオリオンとシリウスは、その途中で雲斎と合流、雲斎はこのままモンスーンとぶつかっても勝ち目はないと判断し、まずはシリウス達を偵察隊として状況を探る事を提案する。だが、その偵察隊に選ばれなかったオリオンは不満を顕(あらわ)にする。
第5巻
辛くもモンスーンの襲撃を逃れた狂四郎とロケットは、福島県で二子峠を目指す玄内とシオン達に出会う。シオンは、自身が銀の兄弟の孫だと話し、自身のルーツを知るためにも二子峠に行く途中だと語る。その頃、雲斎の指示で二子峠に偵察に出たシリウスは、熊達が自分達の想像以上に統制のとれた軍団である事を知る。さらにモンスーンは別の場所を偵察していた雲斎達を襲撃、かろうじてその場を脱出した雲斎は、モンスーンを倒すためには人間の持つ武器が必要と考え始める。一方、雲斎から偵察に出ずに待機を命じられたオリオンは、雲斎の指示を無視して独断でアンディやボンといった仲間を連れて出撃、モンスーンと対峙するが逃げられてしまう。指示を無視したオリオンを雲斎は叱責し、制裁する。それでもオリオンは、打倒モンスーンの闘志を燃やす。その頃二子峠にたどり着いたシオンは、熊との接触を試みる。
第6巻
熊が二子峠に作った犬達の「貯蔵庫」を前にしてシオンは熊と接触、そこへシオンを追いかけて来た玄内は、「貯蔵庫」の中で哲心達が生け捕りにされている事に気づく。しかし「貯蔵庫」は、大きな岩で固められて助ける事はできず、その玄内とシオンも見張りの熊に襲われる。やむなく熊との交戦に入った玄内とシオンのもとへ、熊の偵察に出ていた雲斎と、その雲斎を追ってシリウスとリゲルも現れる。犬の援軍に驚いた熊達は撤退、雲斎達も態勢を立て直すためにその場を離れる。その頃、福島県からは玄内の盟友、謙信が出陣し、二子峠に入った。それを知ったモンスーンは、部下の熊、そしてボブを伴って謙信を迎撃する。一方、雲斎から待機を命じられながら独断専行をしたオリオンは、祖父の銀の側近、赤目と再会する。赤目はオリオンに「雲斎を信じろ」と告げ、モンスーンを倒すために必要な人間の武器を手に入れるべく人里へ向かう。そのモンスーンは、謙信とその部下達と交戦、その戦いを察知して集まった雲斎達の目の前で謙信はモンスーンに倒されるが、雲斎は謙信の戦いからモンスーンを倒すヒントをつかむ。
第7巻
モンスーンとの死闘の末に命を落とした謙信を見た雲斎は、その遺志を継いでモンスーンを倒す事を誓う。だが今のままではモンスーン達に勝つ事はできないと考えた雲斎は、シリウス達を伴ってその場を撤退する。モンスーンもまた、気まぐれからその撤退を許すが、部下の熊からの報告で、貯蔵庫に捕らえていた犬達が逃げ出した事を知る。貯蔵庫に捕らわれていた黒虎や長老達は、オリオンやリゲル達によって救出されていた。その頃人里へと下りていた赤目は、民家から鎌を手に入れ、オリオン達に合流する。さらにジェロムの子供達も、母親のリディアの仇を討つためにオリオン達に合流して来るが、シリウスはモンスーンとの抗戦ではなく、対話による交渉ができないものかと考え始めていた。
第8巻
赤目が人間の武器である鎌を手に入れ、再びモンスーン率いる熊の軍団に挑もうとするオリオン達だったが、オリオンの兄であるシリウスだけはモンスーンと対話での交渉を提案する。しかし、自分達の楽園を追われた犬達は、シリウスの意見を聞き入れない。シリウスとオリオンのあいだで不穏な空気が流れる中、オリオン達の仲間である剣が増水した川で遭難したとの知らせが入る。オリオンはシリウス達と力を合わせて剣を救出し、その様子を見ていた赤目は、確実に新たな世代が育っている事を実感する。だがシリウスはあくまでもモンスーンと対話する事を主張、熊の言葉を理解するシオンを通訳にしてモンスーンと交渉しようと考えていた。徹底抗戦を唱えるオリオンとのあいだに再び不穏な空気が流れる中、モンスーンの手下であるボブが現れる。
第9巻
オリオン達の前に現れたボブは、犬達の大将を連れて来いというモンスーンの意向を伝える。銀やウィードが戦線を離脱しているため、雲斎がその役を買って出るが、熊達を説得できると考えているシリウスは、熊の言葉を理解できるシオンを連れて共に雲斎について行く。だがオリオンをはじめとする犬達のほとんどは、モンスーン率いる熊の軍団との徹底抗戦を主張していた。モンスーンと対面した雲斎もオリオンと同じく熊達と戦う意思を伝え、鎌を持った赤目がモンスーンに襲いかかる。再びモンスーンに戦いを挑むオリオン達だったが、そんな中でもシリウスだけはシオンを通してモンスーンに共存を訴えかけていた。シリウスの言葉に耳を貸さないモンスーンは赤目を攻撃してその片目を奪うが、モンスーンも赤目の鎌で指を切り落とされる。勝ち目がない戦いでも決死の覚悟で臨む犬達を見たボブは、これまでの自身の惨めな半生を振り返り、モンスーンの一撃によって自らの生命を終わらせようと考え始める。
第10巻
ボブは死を覚悟してモンスーンに突進するが、オリオンとシリウスに助けられる。さらにモンスーンの周囲には、雲斎が集めた飼い犬達が集まって来た。これに対してモンスーンも配下の熊達に指示を出し、ついに犬と熊の全面対決が始まる。数こそ少ないものの、体格で圧倒的に勝る熊達を前に、犬達は次第に劣勢へと追い込まれる。その状況を見てもなお、シリウスは熊達と共存するための交渉を続けていた。しかしモンスーンは対話を拒否し、次々と犬達を倒していく。赤目から鎌を受け継いだ哲心やボンは決死の覚悟でモンスーンに挑み、手傷を負わせる事に成功するが、それでもモンスーンを倒す事はできなかった。戦いの中で哲心が落とした鎌を拾った雲斎は、モンスーンと正面から対決する。
第11巻
鎌を持ってモンスーンと対峙した雲斎は、モンスーンの手のひらに鎌を突き立て傷を負わせる事に成功する。さらに脇腹や腹などに次々と鎌で攻撃を仕掛ける雲斎を、モンスーンはとらえる事ができない。だが、モンスーンの反撃にあった雲斎は鎌を落としてしまい、次にその鎌を拾ったシリウスは、モンスーンを攻撃する事はせずにシオンを通してモンスーンへの説得を続ける。シリウスの行動に気を取られた雲斎はモンスーンの一撃を受け、オリオンはシリウスに対して憤りをぶつける。モンスーン配下の熊達も襲って来た犬達を次々と倒し、熊と犬との全面対決は熊の軍団が優勢のまま進んでいた。この状況にあってもなお、シリウスは熊との共存を訴え、モンスーンへの説得を続ける。だがモンスーンは、そんなシリウスに向かって爪を振り下ろす。
第12巻
モンスーンは自らに対峙するシリウスに向けて爪を振り下ろすが、その直前に体に銃弾を受ける。モンスーンを銃撃したのは秀俊であり、かつての銀の飼い主だった大輔と共に二子峠に入って来ていた。人間の銃に驚いたモンスーンはそのまま逃走し、二子峠から姿を消す。大輔は秀俊と協力して負傷している犬達を介抱するが、負傷している犬の数が多いため山を下りて応援を要請、犬達もそれに従い、人間達に治療をしてもらう事になる。さらにかつての赤カブトの暴威を知る人間達は猟友会に熊達の駆除を依頼、秀俊を筆頭として銃を持った人間達が多数二子峠へとやって来る。それを察知したシリウスは、熊達に逃げるように伝えようとするが、モンスーン配下の熊達は次々と人間達の銃撃に倒れる。人間達の協力で二子峠を奪還した犬達だったが、モンスーンがまだ生きている事から、オリオンは追撃して倒すべきだと主張する。だがシリウスは、この期に及んでもなおモンスーンとの戦いを拒んでいた。
第13巻
モンスーンは二子峠から逃亡したが、あくまでもモンスーンを倒すべきと考えるオリオンと、モンスーンと話し合うべきと考えるシリウスの主張は対立する。そんな中、大輔や秀俊といった人間達は、モンスーン率いる熊達との戦いで傷ついた犬達の救助を始める。オリオンはすぐにでもモンスーンを追撃したいと思っていたが、赤目に諭され、仲間の傷が癒えるまで待つ事にする。そんなオリオンを大輔は兄弟のリゲルや、シリウスと共に自分の家へと招くが、シリウスはシオンを連れてその誘いを無視して去っていく。オリオンはリゲルと共に大輔の家を訪れ、そこで久しぶりに祖父である銀と再会する。銀はシリウスがオリオン達のもとから離れた事を知り、再び二子峠へと戻って来る。そのシリウスは、モンスーンが逃げ延びた先である北神山地へとやって来ていた。モンスーンを見つけたシリウスは話し合いを求めるが、モンスーンはそれには応じずに再び姿を消す。二子峠に戻った銀は、仲間達の歓迎を受けるが、その中の赤カマキリと黒カマキリの兄弟はシリウスを助けるべく、仲間達には内緒で二子峠を抜け出すのだった。
第14巻
モンスーンを追って北神山地へとやって来たシリウスは、熊の言葉が理解できるシオンを通訳としてモンスーンとの交渉を試みるが、モンスーンはまるで聞く耳を持たず、シリウス達を攻撃して来る。それでもシリウスはモンスーンとの交渉をあきらめず、何度もモンスーンを説得する。そんなシリウスを追って、二子峠を抜け出した赤カマキリと黒カマキリの兄弟も北神山地へと入っていた。二子峠では、赤カマキリと黒カマキリがいない事を知ったアンディや、ボン達もそのあとを追いかけようとする。それを知ったオリオンは、アンディ達について行こうとするが、二子峠の仲間達のために残るべきと諭され、渋々承諾する。そこへ、銀の治療を続けるために大輔が二子峠へと入って来る。二子峠に戻った銀だったが、負傷の治療がまだ完全ではなかったため、大輔に従って山を下りる事を決意する。銀の意思を受け継いだオリオンは、二子峠の総大将としての責任と覚悟を固めていく。
第15巻
北神山地でモンスーンへの説得を続けるシリウスとシオンは、山歩きに来ていた人間とその飼い犬に遭遇する。だが飼い犬は、モンスーンによって襲われてしまう。モンスーンと対面したシリウスは、モンスーンが「シリウス」という名前を覚えた事から、モンスーンがまったく話のできない相手ではない事を感じ取る。だがそこへ、シリウスを助けに来た赤カマキリやアンディ達が到着、モンスーンに戦いを挑む。モンスーンは飼い犬を襲った事で、人間が介入して来る事を恐れ、再び姿を消してしまう。シリウスは、自身を心配している赤カマキリ達に感謝をしつつも、モンスーンの説得に手応えを感じ始めたため、再びモンスーンを探しに山の中へと入っていく。その頃、二子峠に残ったオリオンは、自分を抑え続ける事にストレスを感じていた。オリオンは山を下りて大輔のもとで治療を受けている銀やウィードに会いに行く。今すぐにでもモンスーンを追撃したいと願い出るオリオンに対して、銀とウィードは自分達の傷が癒えるまで待てと伝え、オリオンはそれを承諾、そのあいだにモンスーンを倒すための技を磨く事を決意する。
第16巻
モンスーンは、自身の新たなナワバリである北神山地で月の輪熊の母子を見つける。ナワバリを荒らされたと思ったモンスーンは母熊を殺し、次いで子熊を狙うが、そこへシリウスが現れる。なおもモンスーンの説得を続けようとするシリウスに苛立ちを感じながらも、モンスーンは再び山の中へと消えていく。そこへシリウスを連れ戻そうと追いかけて来たロケットとリゲルが現れる。リゲルはシリウスの言う事を理解しつつも、オリオンに従ってモンスーンを倒そうと考えていた。そんなリゲルに対してシリウスは、モンスーンから助けた子熊のチビを預ける。その頃二子峠では、赤目からモンスーンを倒すための技を教えられたオリオンが練習に励んでいた。そこへリゲルがロケットと共にチビを連れて帰って来た。熊であるチビの姿に色めき立つオリオンは、練習の成果をチビで試そうとするが、リゲルやジェロムに制止される。チビをその手にかける事はしなかったものの、そのチビを二子峠へと送ったのがシリウスである事を知ったオリオンの心中は穏やかではなかった。
第17巻
二子峠で赤目から伝授された技の鍛錬に励むオリオンは、ついに笹竹で空を飛ぶ鷹を切り落とすまでに成長していた。モンスーンを倒すために、ひたすら時を待つオリオンに対して二子峠の仲間達も彼を認め、結束が強くなっていく。一方、白神山地でモンスーンへの説得を続けるシリウスは、彼を追って来た玄内の協力もあり、モンスーンとの距離を少しずつ縮めていた。ついにモンスーンは、シリウスとシオンを受け入れ、共に過ごす時間も増えていくようになった。二子峠を襲ったモンスーンがシリウスと共に過ごしている姿に驚く玄内達だったが、モンスーンはまだ完全にシリウスに心を許したわけではなかった。それでもモンスーンと過ごす時間が増えれば互いに理解しあえると考えるシリウスは、モンスーンとの「命がけの友情」を結んでいくのだった。
登場人物・キャラクター
オリオン
二子峠で暮らす犬達の群れの総大将、ウィードの息子。秋田犬の雑種。父親のウィードや祖父の銀譲りの戦闘力を持つが、無鉄砲で頑固な性格をしている。モンスーン率いる熊の軍団を前にして徹底抗戦を唱え、モンスーン達と死闘を展開する。雲斎からは指揮官として必要な才能を持っていると評価されるが、犬達を率いるリーダーとしての資質は兄のシリウスに劣ると判断されている。
シリウス
オリオンの兄。秋田犬の雑種。容姿は父親のウィードや祖父の銀にそっくりの虎毛であり、父親や祖父からは「優しさ」を受け継いでいるが、やや融通のきかない一面もある。モンスーン率いる熊の軍団に徹底抗戦を唱えるオリオンに対して、あくまでも対話による解決を図ろうと考えている。熊の言葉がわかるシオンから熊の言葉を習い、モンスーンと交渉しようとするが、オリオンと同じく徹底抗戦を構える犬達からも次第に孤立していく。
ウィード
オリオン達兄弟の父親。秋田犬の雑種。父親の銀によく似た虎毛の持ち主であり、現在の犬達の総大将。モンスーンの襲撃を受けてすぐに重傷を負い、その後大輔によって救助されて治療を受けている。ウィードが早い段階で戦線離脱したため、犬達の指揮は雲斎が執る事になる。
銀 (ぎん)
ウィードの父親で、オリオン達兄弟の祖父。秋田犬の雑種。かつて巨大な熊、赤カブトを倒し、二子峠に犬達の楽園を築きあげた。既に老齢の域にさしかかっており、白内障を患っているため視力が極端に落ちている。それでも長年の戦いの経験から来る戦略眼は健在で、モンスーン達熊の襲撃の際にも、全滅を避けるための策を赤目に授ける。モンスーンから、父熊である赤カブトの仇として狙われた末に谷底へ転落するが、大輔によって救助されて治療を受ける。
リゲル
オリオンの弟。秋田犬の雑種。頑固で無鉄砲なオリオン、融通のきかないシリウスといった2匹の兄の板挟みになる事が多く、「損な役回り」である事を自覚している。兄達の事を誰よりも理解し、尊敬しているため、父親のウィードからも兄弟の抑え役として信頼されている。シリウスやオリオンの陰に隠れがちだが、身体能力は兄達に勝るとも劣らないものを持つ。
ジェロム
二子峠に暮らすジャーマンシェパード。かつては「殺し屋」と呼ばれた軍用犬だったが、ウィードと出会って友情を結んだ事で仲間となる。ロシアの軍用犬だったリディアと結婚し、子供にも恵まれるが、モンスーンによってリディアと子供達を殺され、その復讐のためにモンスーンに戦いを挑む。
クロス
銀と共に二子峠に犬達の楽園を築いた当時のメンバーのサルーキ。当時の幹部犬であるベンとのあいだに生まれた剣や譲二の母親。二子峠では主にほかの子供達の面倒を見ている。子供達を連れてモンスーンの襲撃から二子峠を脱出し、大輔のもとへ身を寄せる。
狂四郎 (きょうしろう)
二子峠に暮らす紀州犬。かつては親のいない幼犬達を集めて愚連隊を結成していたが、そこでウィードと出会い、仲間となる。荒い気性ながら、照れ屋で気が優しい性格。モンスーン率いる熊の軍団の襲撃から辛くも脱出し、ほかの県からの援軍を集めるためにロケットと共に奔走する。
ロケット
二子峠で暮らすボルゾイ。かつてはウィード達と敵対していたが、ウィードの持つ優しさに触れて仲間となる。犬達の中でもトップクラスの脚の速さを誇り、その健脚を利用してモンスーン率いる熊の軍団の包囲網を突破した。その後は狂四郎と共にほかの県からの援軍を求めて行動する。
シオン
銀の兄弟を祖父に持つ秋田犬の雑種。熊の言葉を理解し、熊とコミュニケーションを取る事ができる。武力ではなく、対話によってモンスーンと解決を図ろうとするシリウスの通訳を行い、場合によっては熊の言葉をシリウスに教える事もある。シリウスと行動を共にする事が多いものの、シオン自身はモンスーンの説得は不可能と考えており、オリオンと同様に戦うべきとの意見を持っている。
ヒロ
二子峠に暮らす紀州犬。怪力で荒い気性の持ち主だが、妻や子供といった家族を大事にするよき父親でもある。モンスーン率いる熊の軍団の襲撃から家族を守って戦い、命を落とす。
黒虎 (くろとら)
二子峠に暮らす甲斐犬。かつて銀達と共に赤カブトを倒し、二子峠に犬達の楽園を築いた当時のメンバーの1匹。赤目と共に銀の側近として接しているが、高齢ながら短気な性格と戦闘力は健在。モンスーンによって生け捕りにされ、非常食とするための「貯蔵庫」に捕われるが、脱出に成功。その後は大輔達によって治療を受ける。
ボブ
モンスーンの手下のドーベルマン。幼い頃に飼い主によって捨てられ、そこを拾ったモンスーンに脅されながら生きて来た。そのため、犬でありながら熊の言葉を理解する事ができ、二子峠の犬達との交渉を行う。本心ではモンスーンのもとから逃げ出したいと思っているが、モンスーンによって恐怖心が植え付けられており、モンスーンに従うしかない自身の運命を嘆いている。
赤目
二子峠に暮らす忍犬。かつて銀と共に赤カブトを倒し、二子峠に犬達の楽園を築いたメンバーの一匹。黒虎と共に銀の側近を務め、黒虎同様に高齢ではあるものの、忍犬として磨いた技は今なお健在。オリオン達若い世代の抑え役に回る事も多く、オリオンをはじめ赤目を慕う犬達も多い。モンスーンが二子峠に襲撃して来た際には先頭に立って戦うが歯が立たず、オリオンにモンスーンを倒すための技を伝授する。
哲心 (てっしん)
二子峠に暮らす忍犬。二子峠に築かれた犬達の楽園の後継者として育てられた。幼い頃に赤カブトを見た事があり、モンスーンが熊の軍団を率いて二子峠に襲撃して来た時には、モンスーンが赤カブトの血を引いている事を見抜いた。モンスーンによって生け捕りにされるが、無事に脱出。その後は大輔の協力で治療を受ける。
長老 (ちょうろう)
哲心の教育係として仕える忍犬。全身に火傷を負った体ながら、父親代わりとして哲心を育てた。既に老齢の域に達しており、二子峠では子供達や若い世代にさまざまな教養を伝える役割を担っていた。モンスーンの襲撃から哲心達をかばって命を落とす。
リディア
ジェロムの妻。ロシア軍用犬で、かつて仲間達とロシアから日本を侵略するためにやって来たが、ジェロムと結婚し日本にとどまる。その後はジェロムとのあいだに多くの子供をもうけるが、そのうちの1匹をモンスーンによって殺され、リディア自身もモンスーンの爪を体に受けて命を落とす。
剣 (けん)
クロスの子供のグレートデン。かつて銀の仲間であり「炎の将校」と呼ばれたベンを父親に持ち、父親譲りの闘志を持っている。二子峠ではオリオン達若い世代を指導する立場となっており、剣を慕っている犬達も多い。モンスーン率いる熊の軍団との戦いのあおりで谷底に転落し、脚を骨折するが、仲間達に助けられる。
譲二 (じょうじ)
剣の弟。容姿は父親のベンではなく母親のクロスに似ているが、短気な暴れん坊として二子峠で暮らす犬達からも恐れられている。しかし家族や仲間を思う気持ちは誰よりも強く、その気持ちは二子峠の仲間達から一目置かれている。
雲斎 (うんさい)
長野県を根城とする真田忍犬の頭領。老齢の犬ながら高い戦闘力を持ち、確かな戦術眼を持った策略家でもある。頭領として多くの犬達を従えており、モンスーン率いる熊の軍団の襲撃によって銀やウィードが戦線離脱したあとは、暫定的な大将として二子峠の犬達を統率する。
謙信 (けんしん)
新潟県を根城とする犬達の頭領。モンスーン率いる熊の軍団に二子峠が襲われているという知らせを受け、部下を率いて援軍に駆けつける。モンスーンと対峙した際には、その強大な力を目の当たりにし、自分達では倒す事はできないと確信するが、雲斎にモンスーンの弱点を見つけさせるために敢えて捨て石となる。雲斎を尊敬しており、彼の持つ統率力や戦闘力を謙信自身の指標としていた。
玄内 (げんない)
モンスーン率いる熊の軍団が二子峠を襲った際に、援軍として駆けつけた巨犬。自身よりも大きな体格を持っている熊を相手にしても退かない闘志と怪力の持ち主。荒い気性の持ち主だが義に厚い性格であり、二子峠に犬達の楽園を築いた銀達を尊敬している。モンスーンを説得しようとするシリウスを追い、シリウスと行動を共にする。
赤カマキリ (あかかまきり)
二子峠で暮らすアイリッシュウルフハウンド。かつて父親をウィードによって死に追いやられた過去があり、報復のためにウィードの子供であるオリオン達と敵対していた。その際に自分をかばってくれたシリウスに恩義を感じており、モンスーン率いる熊の軍団が二子峠を襲った際には、シリウスを守るために奮戦する。
黒カマキリ (くろかまきり)
赤カマキリの弟。兄を慕う気持ちが強く、その兄が守りたいと信じるシリウスの事も兄同様に慕っている。そのため、シリウスがモンスーンを説得しようとしている事に対しても一定の理解を示していた。兄の赤カマキリと共にシリウスを守る事を第一に考えて行動する。
アンディ
二子峠で暮らすジャーマンシェパード。かつて秀俊の飼っていたジョンと同じ犬種であり、ジョンの飼い主だった秀俊の事は「先生」と慕っている。オリオンとは同世代の親友であり、頑固な性格のオリオンの説得など抑え役に回る事も多い。高い身体能力の持ち主だが、モンスーン率いる熊の軍団には通用せずに負傷し、その後は秀俊達によって治療を受ける。
ボン
二子峠で暮らすホワイトシェパード。二子峠の犬達のあいだではムードメーカーとして場を和ませる役割を担っている。モンスーン率いる熊の軍団との戦いで奮戦するものの負傷し、戦線離脱を余儀なくされる。オリオンにとってはアンディと並ぶ親友の1匹。
モンスーン
かつて二子峠を荒らした巨熊、赤カブトの血を引く熊。赤カブトと共に二子峠で暮らしていたが、赤カブトを倒した犬達によって二子峠を追われていた。赤カブトの持つ凶暴性と残虐性を受け継いでおり、かつて父親を倒した犬達に復讐するために二子峠へと戻って来る。左腕が異常に発達しており、その左腕は頭部から赤い毛で覆われている。自分を倒す事ができる銃を持った人間を恐れており、首輪をした飼い犬には手を出さないなど慎重な一面もある。幼い頃に自分をかばった銀の事を覚えており、その銀に似た風貌を持ったシリウスに複雑な感情を抱いている。
赤カブト (あかかぶと)
モンスーンの父親だった巨熊。かつて、二子峠を根城として多くの人間達や犬達を襲っていた。頭頂部から背中にかけて赤いたてがみで覆われており、赤カブトの名前はそこに由来する。オリオンの祖父である銀は、黒虎や赤目といった仲間達と共に赤カブトを倒した。
チビ
月の輪熊の子熊。北神山地で母熊と共にモンスーンに遭遇し、そのモンスーンによって母熊を殺される。シリウスやシオンによってモンスーンから助けられ、その事が縁となって二子峠へと送られる。熊の言葉を理解できるシオンから犬の言葉を教えられ、犬達とも簡単なコミュニケーションが取れるようになった。
大輔 (だいすけ)
少年時代に銀の飼い主だった男性。銀が自分のもとを去ったあともつねに気にかけており、銀の息子であるウィードや孫のオリオンも大輔に懐いている。二子峠に現れたモンスーンの事は知らないものの、二子峠で何らかの異変が起こっている事に気づき、犬達のサポートを行う。
秀俊 (ひでとし)
大輔の暮らす町で開業医を営む男性。かつて銀の仲間の犬だったジョンの飼い主で、狩猟免許も持っている。ジョンと同じ犬種であるアンディを一時保護していた事もあり、アンディからは今も飼い主として慕われている。二子峠で起こっている犬達の異変に気づき、大輔と共に犬達のサポートを行う。
場所
二子峠 (ふたごとうげ)
奥羽山脈に連なる峠であり、かつては赤カブトによって多くの人々が襲われ「魔の山域」と恐れられていた。銀が率いる犬達によって赤カブトが倒され、それ以降は人間によって「犬の解放区」として認定され、多くの犬達が暮らす楽園となっている。
ベース
銀牙―流れ星 銀― (ぎんがながれぼしぎん)
平和を脅かす巨大熊・赤カブトを倒すために奮闘する虎毛の秋田犬・銀を中心とした犬たちの活躍を描いた冒険バトル漫画、後に銀の息子・ウィードを主役にした『銀牙伝説WEED』、『銀牙伝説WEEDオリオン』も描... 関連ページ:銀牙―流れ星 銀―
関連
銀牙伝説WEED (ぎんがでんせつうぃーど)
高橋よしひろの代表作・『銀牙‐流れ星 銀‐』の続編。前作の主人公・銀の息子・ウィードが、平和な犬の世界を作るために仲間と共に成長しながら強敵と戦っていく様を描いた冒険バトル漫画。また、本作の続編『銀牙... 関連ページ:銀牙伝説WEED
銀牙伝説WEEDオリオン (ぎんがでんせつうぃーどおりおん)
正義の軍団、奥羽軍のオリオン、シリウス、リゲルたちと、天下統一の野心に燃える黒脛巾政宗らとの犬同士の戦いを描くバトル漫画。『銀牙伝説WEED』の直接の続編であり、更なる続編に『銀牙~THE LAST ... 関連ページ:銀牙伝説WEEDオリオン
書誌情報
銀牙~THE LAST WARS~ 1巻 日本文芸社〈NICHIBUN COMICS〉
第1巻
(2015-09-09発行、 978-4537133332)
銀牙~THE LAST WARS~ 14巻 日本文芸社〈ニチブンコミックス〉
第4巻
(2016-03-09発行、 978-4537134148)
第5巻
(2016-05-09発行、 978-4537134391)
第14巻
(2017-12-09発行、 978-4537136630)