概要・あらすじ
中学生山田義男は交通事故で植物状態となり、生霊となってしまう。病院を浮遊していた霊のジェニー(真田和子)と出会った彼は、チョキンと仇名を付けられる。金銭にまつわる事情に強い興味を持つジェニーを、チョキンは病院の外へ連れ出す。そして途中でマンビ(濱中)を仲間に加え、一緒に様々な業界の金銭にまつわる事情を見聞していくのであった。
登場人物・キャラクター
山田 義男 (やまだ よしお)
『銭』の主人公の一人。交通事故で植物状態となった男子中学生の生霊。キャップを前後逆にかぶっているのが特徴。事故の際、頭頂部に貯金箱の投入口のような傷ができたため、霊のジェニー(真田和子)にチョキンと仇名を付けられた。将来の夢はミュージシャン。ゲームやアニメが好きでコミケにも足を運んだことがあるが、どちらかと言えば広く浅いライトおたく。 コツコツ働くことより一発当てることを夢見るタイプ。自分の肉体のそばを離れ、ジェニーと共に様々な業界や人間の金銭にまつわる事情を見聞していた。だが5年の浮遊の後、危篤状態の祖父の生霊に諭されて肉体に戻った。
真田 和子 (さなだ かずこ)
『銭』の主人公の一人。大きくカールしたロングヘアで眼鏡を掛けたOL風衣装の女性の霊。死霊か生霊かは不明確。金銭とそれにまつわる人々の事情に興味が強く、特に金利などに詳しい。反面ゲームやアニメなどおたく趣味の知識は乏しい。病院内を漂っていたが、交通事故で植物状態となった男子中学生の生霊チョキン(山田義男)に誘われて、社会の金銭にまつわる事情を見聞する旅に出た。 生前はバブル期に多摩信金という信用金庫に勤務。同僚の長田陽子に誘われてホストクラブに通うようになり、英志という馴染みのホストもできた。だがホストのヨシキに貢いでいた長田陽子の横領の罪を負わされて職と両親の財産を失い、服毒自殺を図った。
濱中 (はまなか)
『銭』の主人公の一人。ボーイッシュな少女の生霊。髪はニットキャップに押し込んでいるが、実はセミロング。ギャンブルを好むが賭け事そのものではなく、それによるリスクを負うことが好き。生前万引きしたことが元で、金銭に興味のあるOLの霊ジェニー(真田和子)にマンビーと仇名をつけられる。 呼び方はマンビとマンビーが特に区別なく併用される。父はコンビニのスーパーバイザー。昔は家庭生活も良好だったが、マンビが私立中学に落ちた頃からギクシャクし始め、最終的には家庭が崩壊した。金銭を憎み、世の中を憎み、自分を憎んでいる。だが男子中学生の生霊チョキン(山田義男)に誘われ、彼らと同行するようになる。 右胸の下に痣がある。おたくが苦手。犬好き。
小林 (こばやし)
四角い顔で体と声が大きく、太い眉と眼鏡が特徴の男性。『コミックブーム』という漫画雑誌の編集部に務める編集者。新人で、まだ雑誌や単行本の収益形態をよく理解していない。また全般的に察しが悪い。友野響という霊感を持った女性と交際中。田伏陽二というエロ雑誌の編集者をしている後輩がいる。
友野 響 (ともの ひびき)
ロングヘアの黒髪を後ろで緩くまとめており、そばかすが特徴の女性。霊感があり、霊の姿を明確に見る事はできないが、集中すると霊の言葉を聞き取ることができる。また多少相手の心が読める超能力も持っており、非情に察しがいい。『コミックブーム』という漫画雑誌の編集者である男性の小林という恋人がいる。
ブロッケン伯爵 (ぶろっけんはくしゃく)
長髪に細面で、丸眼鏡を掛けた男性の幽霊。スーツ姿で右前腕に腕カバーをしている。生前はアニメのディレクターで作品のクオリティに厳しい人物であり、伝説のディレクターと呼ばれていた。だが自分の関わったアニメが、クオリティが低いまま放送されてしまったことを悔やみ、作画スタジオでカッターで自分の首を切り自殺した。 そのことが元で『マジンガーZ』の登場キャラにちなみ死後ブロッケン伯爵と仇名された。アニメ業界に詳しく、死後もアニメ関係者の霊と交遊が広い。美しい女性と面と向かって話すのが苦手。
戸沢【姉】 (とざわ)
細めの目に縁の太い眼鏡、ゴスロリ衣装にツインテールが特徴の女性。やや面長。同人誌製作が趣味で、鉄道には興味がないが、コミケへの参加権を確保するため鉄道ジャンル3位のサークル「鉄の穴」に潜り込もうとする。萌え絵に関しては一定以上の腕前を持つが、本人はオリジナリティに欠けると評価している。 当初は鉄の穴メンバーを利用することしか考えておらず、金銭にルーズなメンバーをたきつけて同人誌で大儲けしようとした。だが実際にその作戦が当たるころには、彼らの才能と純朴さに惹かれて、同じメンバーとして同人活動を続けていきたいと願うようになる。雲取アカネという芸名の声優の卵である妹がいる。
鶴巻 (つるまき)
太い眉と三白眼、大きい鼻が特徴の男性。コミケで鉄道ジャンル3位と目されているサークル「鉄の穴」のメンバー。映像記憶の持ち主で、記憶だけを頼りに写真のような絵を描くことができる。同サークルの過去の同人誌のイラストは全て彼が描いたものである。また数字に関しても抜群の記憶力と計算力を持つ。 反面、他人とまともに会話することができず、他人が目の前にいても電車の玩具で遊び出すなど、コミュニケーション不全の面がある。バカと言われると激しく怒る。メダルゲームも好きだが、不良グループにいつもメダルを脅し取られている。霊感があり、霊と会話できるだけでなく、その姿も正確に見ることができる。
立花 功一 (たちばな こういち)
比較的整った顔立ちが特徴。犬のブリーダー兼ハンドラー。死んだ母が残した犬舎号を継いでブリーダーを行っているが、犬への愛情が薄く、繁殖や世話は上手くいっていない。本来タブーである血統書の流用を行っている。母の霊と、金銭にまつわる事情に興味がある霊のチョキン(山田義男)、ジェニー(真田和子)、マンビ(濱中)らに諭され、考えを改めた。
戸沢【妹】 (とざわ)
後ろで縛ったベリーショートの髪に大きな眼鏡、小さな目と短い眉、厚めの唇が特徴の女性。あまり美人ではない。声優事務所サイダープロあずかり(見習いを指す業界用語)の声優の卵。居酒屋でアルバイトもしている。多数の声色を使い分けることができ、声質も良く、学校では周囲から神の声と称された。 だがプロの目から見ると技術以外のプラスアルファが足りないと見られており、アニメのレギュラーは務めていない。後輩の声優の卵御手洗みゆが枕営業でアニメのレギュラー仕事を射止めており、自分の現状に焦りを感じている。草薙麗留というPNの同人作家の姉がいる。
ヨシキ
やや広い額と眼鏡、口ひげが特徴の男性。ホストクラブ堕天使(ルシファー)のオーナー。年収一億円。バブル期の若い頃は自らもホストを務めており、その頃から老け顔だが眼鏡はかけていなかった。ホスト時代に信用金庫務めの長田陽子という女性に貢がせていた。彼女が顧客の金を横領しているのを知っており、それに巻き込まれたジェニー(真田和子)が服毒自殺を図ったことも知っていた。 現代で、5年間の眠りから覚め、ホスト業に足を突っ込んだチョキン(山田義男)に当時の経緯を語る。
長田 陽子 (おさだ ようこ)
ロングヘアでカールさせて上げた前髪が特徴。バブル期に多摩信金という信用金庫に勤務。ホストのヨシキに入れあげ、架空口座と偽装の約束手形を使って顧客の金を横領していた。このことを同僚のジェニー(真田和子)に教え、口止めをしたため、結果的に彼女に罪を被せた形になってしまう。 長田陽子本人は警察に捕まることを恐れていない。
英志 (えいじ)
金髪で長髪の美男子。バブル期にホストとして働いていた。優しく少しシャイで、やや影がある。両親は早くに離婚、母は四度目の結婚以来、別居。犬をたくさん飼っている。ジェニー(真田和子)の馴染みとなるが、彼女が長田陽子の横領の罪を着せられて、多摩信金を解雇された頃に店を辞めている。 2年ほどでホスト業界から足を洗っており、同僚だった元ホストヨシキによれば、郊外で犬と暮らしているのではないか、とされている。
その他キーワード
ZENI (ぜに)
『銭』に登場する機械。複数の人間の夢を接続し、共通の夢を見させる心理治療装置。眠りながらPTSDの治療が可能。ただしまだ研究は未完成で、チョキン(山田義男)、ジェニー(真田和子)、マンビ(濱中)が同時に参加した時以外はうまくデータが取れない。研究には友野響、立花功一が携わっている。 『銭』の物語は、最終話以外はこのZENIによる夢の中の出来事であり、霊として登場した一部の人間も実際には生きていることがわかる。立花功一も夢と異なり、犬のブリーダーではない。ZENIという名称は本編には未登場で、後書きで明かされた。