世界観
谷川流の小説『涼宮ハルヒの消失』のスピンオフという事もあり、登場人物は原作とほぼ同一だが、シリーズの特徴でもあるSF的要素や超常的要素がいっさい排除され、登場人物全員が「普通の地球に暮らす普通の人間」として描かれている。そのため、原作のパラレルワールドという世界設定となっている。
あらすじ
第1巻
高校1年の春、市立図書館で貸出カードの作り方がわからず困っていた長門有希は、たまたま居合わせたキョンに助けてもらった。その冬、有希一人しか部員がいない文芸部は、廃部の危機を迎える事となった。親友の朝倉涼子とキョンを部に誘い、さらにキョンの友人二人に名義だけ貸りて幽霊部員になってもらう事で、危機を脱する事に成功。その後、許可を得て学校でクリスマスパーティーを行う事になった文芸部では、お互いの事が気になる有希とキョンがいい雰囲気になるのだった。そしてパーティーの翌日、二人は街の道端で倒れている一人の少女と遭遇する。
第2巻
倒れていた少女は「涼宮ハルヒ」と名乗り、同じ高校の古泉一樹を連れて、なかよくなった長門有希とキョンを伝手に、北高校の文芸部の活動に加わるようになる。個性的なハルヒの存在にみんなが慣れた頃、バレンタインデーがやって来る。有希はキョンにチョコレートを渡すつもりでいたが、たまたまハルヒが自分より先にキョンにチョコレートを渡しているところを見てショックを受け、チョコレートの箱を取り落しその場から逃走してしまう。朝倉涼子は、誰がどう見てもいい仲になる寸前の二人に水を差すような真似をするハルヒの事をとがめるが、ハルヒは取り合わない。結局、有希は騒動の末にチョコレートを渡す事には成功したものの、告白はしそびれてしまう。
第3巻
いつの間にか文芸部の活動は、涼宮ハルヒらの在籍する光陽園学院と北高校の、生徒同士の交流活動という形で公認されるようになっていた。そして迎えた春、2年生に進級した長門有希達は、ハルヒの手配で合宿に行く事になった。行先は、北高校の上級生で文芸部の面々の友人である鶴屋の実家が経営する旅館である。朝倉涼子は、最近いつにもましていい雰囲気の有希とキョンが、一線を越えでもしたらどうしようかと心配するが、一方でハルヒはその過保護っぷりに呆れるばかり。合宿は結局、大きな波乱もなく健全に終わった。しかしその後のある雨の日、有希は交通事故に遭ってしまう。
第4巻
長門有希は大きな外傷を負う事はなかったものの、事故のショックで別の人格が生じて、意識が混乱するようになってしまう。それに最初に気づいたのは親友・朝倉涼子であった。有希が別人格を表出させている時期はしばらく続き、そして、彼女もまた本来の人格と同じようにキョンに恋をする。そんなある日、自分があと一眠りして起きたら元の人格に戻ってしまう事に気づいたもう一人の有希は、電話でキョンに告白をし、そしてそのまま眠りに落ちる。キョンが慌てて会いに行った時、そこには事故に遭う前のままの有希がいたのだった。
第5巻
季節は夏。自分の学校の用事でしばらく北高校から離れていた涼宮ハルヒと古泉一樹が、文芸部に戻って来た。ハルヒの仕切りのもと、文芸部は平常運転に戻ったものの、もう一人の長門有希に告白されてしまったキョンは気が気でない。そんな中、文芸部は夏祭りに行く事になった。そしてキョンは、花火の轟音の中で、一気にまくしたてるように有希に告白する。だが、有希はそれに対し「聞こえなかった」と答えるのだった。それからまた、文化祭の季節がやって来て、光陽園学院と北高校が合同で活動をする事になり、キョンの旧知の友人である佐々木が北高校にやって来る。
第6巻
佐々木は自分の学校で、ある男子生徒に言い寄られて困っていた。そこで、キョンに対して、恋人のふりを演じる事で虫除けをしてくれ、と依頼する。だが、キョンは「自分の事を好きだと言ってくれた奴がいるから」という理由で、それをきっぱりと断った。後日、佐々木は別の友人に対し、結局「好きな人がいるから」とはっきりと口にしてくだんの男子生徒をふった、という話をするのであった。なお、佐々木に対してやきもちを妬いていた長門有希は、珍しく朝比奈みくるのアドバイスを受け、キョンを文化祭でいっしょに回るよう誘う事に成功する。
第7巻
長門有希がキョンを文芸部に誘ってから1年が過ぎた高校2年の12月。キョンは、突然「今週の日曜日、親がいないんだけどうちに来ないか?」と言い出した。誤解を招く言い回しだった事に気づいたキョンは慌てて「いや、妹はいるしゲームをしようかと」と取り繕うのだが、色々な感情の奔流に襲われた有希は拗ねてしまうのだった。当日、キョンの妹にキョンと付き合っているのかと尋ねられた有希は、付き合ってはいないが好きだと伝えるが、席を外していたキョンは、それを偶然に聞いてしまう。それからキョンは鶴屋等が見てもわかるくらい、以前にもまして有希を強く意識するようになった。例によって鶴屋に招かれたクリスマス会の席、鶴屋家の庭で、キョンが有希に告白しようとした矢先、有希は先んじてキョンに告白するのだった。
第8巻
長門有希は勢いでキョンに告白した直後、背を向けて逃げようとしたが、それをキョンが引き留めた。そしてキョンもまた有希に告白し、二人は付き合い始めたのだった。それはもう誰が見てもそうとしか見えないようなカップルぶりで、涼宮ハルヒでもほとんど一目で見抜いたくらいであったが、朝倉涼子だけは何故か気づかなかった。大分経ってから、有希が風邪を引いて寝込んで家にキョンが看病しに来た時にようやく気づいたのだが、涼子はハルヒとそれについて語り合い、そして「歓喜」のあまりに泣き崩れるのだった。
第9巻
長門有希はキョンの学校でのお弁当を作って持って来るようになった。ことここに至り、もはや友人一同公認カップルの有様となり、ふだんは文芸部の部室に顔を出す事のないキョンの男友達までもが祝福しにやって来る。その友人達から「今年のバレンタインデーは日曜日」という事実を聞かされたキョンは、有希とその日にデートの約束をした。デートの最中、さすがにいい加減朝倉涼子にこの事を打ち明けないと、という結論に達した二人であったが、意を決して打ち明けようとしたら涼子は友人一同が集まっていたので、キョンは非情に恥ずかしい思いをする。その後、卒業式がやって来て、鶴屋と朝比奈みくるが卒業。また同時に、涼子はカナダへの引っ越しを決意する。
第10巻
朝倉涼子はカナダに住んでいる両親から、こちらに来ないかと以前から誘われていた。長門有希を置いて一人では行けないという理由で固辞してきたが、有希がキョンと付き合い始めた事で、その理由は涼子の中から消え去った。たまたま家に遊びに来た涼宮ハルヒに相談し、結局カナダ行きを決意する涼子。だが、それをそっけなく有希とキョンに打ち明けたところ、二人とは気まずくなってしまう。
メディアミックス
TVアニメ
2015年4月から7月にかけて、本作『長門有希ちゃんの消失』のTVアニメ版が、TOKYO MX、AT-Xなどで放映された。全16話。キャストは、長門有希役を茅原実里、朝倉涼子役を桑谷夏子が務めている。
WEBラジオ
2015年4月から12月にかけて、ランティスネットラジオで『長門有希ちゃんの消失 北高文芸部ラジオ支部』が放送された。全37回。パーソナリティは長門有希役の茅原実里と、朝倉涼子役の桑谷夏子が務めた。
登場人物・キャラクター
長門 有希 (ながと ゆき)
北高校に通う女子で、文芸部の部長を務めている。キョンに対して恋愛感情を抱いている。ゲームが好きで、よく部室で携帯用ゲームをしている。内気な性格だが、ドジなところがあり、時おり意図せずに大胆な行動をとる事がある。のちに事故に遭った事が原因で、「もう一人の有希」の人格を表出させるようになる。その際は、無表情な文学少女と化し、喋り方もクールな雰囲気のものとなる。
キョン
北高校に通う男子で、文芸部に所属している。長門有希とは同学年。平穏を愛する普通の高校生だが、いっしょに文芸部に所属している有希と友達以上恋人未満の関係であり、また少しずつ長門の事を意識するようになり、最終的には告白されてカップルとなる。ポニーテールが大好き。
朝倉 涼子 (あさくら りょうこ)
北高校に通う女子で、文芸部に所属している。長門有希とは同学年。非常に家庭的な性格をしており、ふだんから幼なじみの有希の生活の世話を焼いている。好物かつ得意料理はおでん。面倒見がいいのを通り越して完全に過保護なレベルで、有希のキョンに対する恋をサポートしている。両親はカナダ在住。
朝比奈 みくる (あさひな みくる)
北高校に通う女子で、書道部に所属している。長門有希の1学年先輩にあたる。親友の鶴屋に引っ張られるような形で、所属しているわけでもない文芸部のイベントに頻繁に顔を出している。ふだんは有希の恋愛沙汰も傍観しているが、文化祭の時には有希の後押しをし、キョンといっしょに校内を回るようにけしかけた。
鶴屋 (つるや)
北高校に通う女子で、書道部に所属している。長門有希の1学年先輩にあたる。文芸部の所属ではないが、有希やキョンと友人付き合いがあり、イベントのたびに何くれとなく顔を出している。実家が大金持ちで、豪邸に住み、別荘を持っていたり旅館を経営していたりするので、よくイベントに場を提供している。
涼宮 ハルヒ (すずみや はるひ)
光陽園学院に通う女子で、北高校の文芸部ミステリー部門に臨時部員として所属している。長門有希とは同学年。クリスマスにサンタクロースを捕獲しようとして魔方陣を構築するなど奇抜な行動が目立つが、通っている光陽園学院内ではまじめでおとなしい生徒を演じている。その分、文芸部に遊びに来た時には思う存分にはっちゃけている。
古泉 一樹 (こいずみ いつき)
光陽園学院に通う女子で、北高校の文芸部ミステリー部門に臨時部員として所属している。長門有希とは同学年。春の遅くに光陽園学院に転入して来たため、「謎の転校生」として涼宮ハルヒから疑惑の目で見られ、紆余曲折を経て舎弟のような立場に収まった。古泉一樹本人は、ハルヒに対して恋愛感情があるから行動を共にしていると語っている。
佐々木 (ささき)
光陽園学院に通う女子で、文化祭実行委員を務めている。長門有希とは同学年。中学3年生の時、キョンとクラスメイトで、彼の事を親友だと思っている。また、涼宮ハルヒとは小学校が同じで、一方的にあこがれを抱いていた。キョンに対して、自分に言い寄って来る男の虫除けのために付き合うふりをしてくれと頼むが、断られる。
集団・組織
文芸部 (ぶんげいぶ)
北高校にある部活動の一つ。部長の長門有希を中心として、特に明確な方針もなくのんべんだらりとした活動を行っている。のちに涼宮ハルヒや古泉一樹ら他校の生徒も参加し、以降は活発にさまざまな活動をするようになる。
クレジット
- 原作
-
谷川 流
- キャラクター原案
-
いとう のいぢ