陽気なしめりけ

陰気な少年の根倉しめりけは、クラスのマドンナの広印美笑子にあこがれていた。ある日、美笑子の好みが「陽気な人」だと知ったしめりけは、目を覆っていた前髪をバッサリと切る。「陽気な人」になることを決意したしめりけは、クラスで明るく振る舞うが、直射日光を浴びてダウン。いつもは前髪で遮断されていた日光が、直接瞳孔から侵入し、心身を蝕んだのである。美笑子に心配されながら、なんとか立ち上がったしめりけは、一時限目の音楽の授業に臨む。今日は、一人ずつ校歌を歌うテストの日だった。しかし、この学校の校歌は絶望的に暗い。なんとか明るく歌う方法はないものかと思案したしめりけは、クラスメートの小島小太郎に声をかけた。小柄な小太郎に、頬紅をつけ、口の下にマジックで線を引いたしめりけは、彼を膝に抱えた。そして腹話術で歌いだしたしめりけに、クラスメートたちは魅了された。美笑子の笑顔に喜ぶしめりけだったが、すぐに嘔吐してしまった。しめりけは注目されるのが苦手なのだ。その後、体育の授業でも陽気な姿を見せることに失敗したしめりけは、一か八か、美笑子の前で一発ギャグを披露する。それは上履きを便器に見立てる下品なギャグだった。見た目は上品だが、実は下ネタ好きな美笑子は、しめりけのギャグに大笑いする。チャンスだと思ったしめりけは、「一緒にお弁当を食べよう」と美笑子を誘うが、「ボーイフレンドと食べるから」とあっさり断られた。できたばかりだというボーイフレンドは、小太郎だった。腹話術の人形のまねという特技を手に入れた小太郎は、ちゃっかり美笑子のハートを射止めていたのだ。