雪にツバサ

雪にツバサ

作者・高橋しんにとって『きみのカケラ』(小学館「週刊少年サンデー」連載)の完結以来、7年ぶりの週刊連載作品。なお、主人公・翼(ツバサ)の高校進学以降の話は、新章『雪にツバサ・春』として刊行された(連載時は『雪にツバサ』)。現代の日本、北国の山あいにあるひなびた温泉街が舞台。超能力を持ちながらもヘタレのツバサと口がきけない少女・雪(ユキ)の二人を軸にした青春物語。ユキの心の声を唯一聞くことができるツバサと、勘違いから自分のことを超能力者だと思いこんでしまったユキ。さまざまな事件を通して、傷つきながらも少しずつ前に進んでいく二人を叙情的に描く。講談社「週刊ヤングマガジン」2011年33号から2013年24号まで連載。2013年26号から2015年10号までの掲載分は、加筆・修正のうえ『雪にツバサ・春』に改題され、単行本化された。

正式名称
雪にツバサ
ふりがな
ゆきにつばさ
作者
ジャンル
青春
 
異能力・超能力
レーベル
ヤンマガKCスペシャル(講談社)
巻数
全8巻完結
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孤独な超能力少年×口のきけない女子高生

翼(ツバサ)には、超能力を使ったことで背負ってしまったトラウマがある。それ以来、殻に閉じこもり「超能力なんて迷惑なだけでなんの価値もない」と、常に自分に言い聞かせながら生きている。誰にも必要とされず、誰とも繫がりを持たずにひっそりと消えていきたいというのが、ツバサの願望なのだ。一方、雪(ユキ)は、過去の辛い出来事のせいで声を失い、記憶の一部も喪失している。しかし、「誰かの役に立ちたい、誰かを助けたい」という思いが強く、次々と事件に首を突っ込んでいく。本作は、そんな二人の切なく健気(けなげ)な姿を、丁寧に描いた青春物語である。

ユキとツバサのコミカルな掛け合い

不良グループのたまり場に連れ込まれ、乱暴されそうになってしまうユキ。そのユキの心の叫びを聞いたツバサは、勇気を振り絞って現場に乗り込む。そして、超能力を使ってユキの体を操作し、格ゲーの要領で必殺技を繰り出して不良たちを蹴散らした。ユキは華麗な技と宙に浮かぶ自分の体を見て「自分は超能力者だったんだ」と大きな勘違いをする。それからというもの、ユキは心のなかでヒロインを気取った恥ずかしいセリフを吐き、「超能力探偵団」として町の事件を解決しようとする。ユキやツバサの辛い過去や、裏温泉街での女子高生売春など、悲惨な事件が描かれるが、ユキの天然ボケとそれに対するツバサのツッコミといった、コミカルな要素も本作の魅力である。

ユキとの出会いで変わっていくツバサ

手を使わずにマンガを読んだり、リモコンなしで電気を消したりできる自分の力を、ツバサは、役に立たない「小能力」と呼んでいた。しかし、口がきけないユキの心の声を聞くことができ、彼女を助けるためなら、壁をぶち破るほどの強い力を発揮する。また、物や人に刻まれた「記憶」を読み取るサイコメトリーや念写といった能力にも目覚めていく。それらはすべて「大切な人を守りたい」という想いからである。誰とも繫がりたくないと考えていたツバサは、ユキと出会ったことにより、どんどん変わっていく。そして、ツバサがユキの記憶に触れるにつれ、少しずつユキの過去を知ることになる。

登場人物・キャラクター

(つばさ)

小さな温泉街で、母と三人の妹と暮らす中学生の少年。いつもヘッドホンとマスクをしている。不良グループに属しているがいじめられっ子で、背が低く自分に自信がないヘタレだが、格闘ゲームは得意。超能力の持ち主で、転校してきた口のきけない女子高生・雪(ユキ)の心の声を聞くことができる。ある日、暴行を受けていたユキの声を聞き、格ゲーの要領でユキを操って不良共を蹴散らす。それ以来、自分に超能力があると勘違いしたユキから協力を求められ、街で起きる事件の解決に挑むことになる。翼(ツバサ)の超能力は、一人では小さなことしかできないが、ユキのピンチなどには大きな力を発揮する。ただし、ツバサ本人は小さい時のあるトラウマから、超能力を使うことを好んではいない。作中では通常「ツバサ」と表記される。また、ユキは心の中でツバサのことを「ちびっ子」と呼んでいる。

(ゆき)

麓の街から小さな温泉街に引っ越してきた高校生の少女。吹奏楽部でサックスを担当する。ショートカットの髪型が特徴。口がきけないため、携帯に文字を打ち込んで会話する。翼(ツバサ)には心の声を聞かれているが、本人はそのことを知らない。雪(ユキ)が口がきけないのをいいことに、不良たちから暴行を受けるが、ユキの心の声を聞いたツバサに操られて、不良たちを蹴散らす。それ以来、自分には超能力があると思い込み、超能力で人の役に立ちたいと思い立ち、ツバサに協力を求める。ツバサからは「先輩」と呼ばれている。

続編

雪にツバサ・春 (ゆきにつばさ はる)

同作者『雪にツバサ』の新シリーズ。主人公・翼(ツバサ)の高校進学以降の話に加筆・修正のうえ、タイトルを改めて単行本化された作品。現代の日本、北国のひなびた温泉街にある高校が舞台。不良だがいじめられっ子... 関連ページ:雪にツバサ・春

書誌情報

雪にツバサ 全8巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉

第1巻

(2011-12-06発行、 978-4063821192)

第8巻

(2013-12-20発行、 978-4063823882)

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