概要
日本が南北に分断された、もう一つの戦後の世界。藤沢浩紀と白川拓也は、中学3年生の時の同級生の沢渡佐由理にそれぞれ想いを寄せており、彼女を自作の飛行機で、海峡を挟んだ蝦夷に聳えたつユニオンの塔まで一緒に飛ぶ約束をする。
だがその直後、佐由理は二人の前から姿を消してしまう。そして三年の月日が流れ別々の道を進んでいた二人は、佐由理が原因不明のまま三年間眠り続けていることを知る。そして二人は、佐由理を眠りから目覚めさせるために、中三の時に彼女と交わした約束を叶える決意をする。
登場人物・キャラクター
藤沢 浩紀 (ふじさわ ひろき)
中学時代は弓道部に所属。素直で明るい性格。親友の白川拓也とバイトで材料費等を稼いで、いつかユニオンの塔まで飛行することを目的に自作の飛行機ヴェラシーラを作っている。飛行機づくりに興味を持った沢渡佐由理にヴェラシーラを見せ、完成したら彼女をユニオンの塔まで連れて行くことを約束する。 しかし、中学三年の夏佐由理が突然姿を消してしまった失意で、飛行機作りをやめ、佐由理のことを忘れるためにユニオンの塔から離れた東京の高校に進学する。
ユニオン
『雲のむこう、約束の場所』に登場する国家。戦後の南北分断以降、蝦夷(旧北海道)を占領している大国。
富澤 常夫 (とみさわ つねお)
青森アーミーカレッジの教授で、戦時下特殊情報処理研究室の室長として、ユニオンの塔の研究を指揮している。岡部とは旧知の仲。
ウィルタ解放戦線 (うぃるたかいほうせんせん)
『雲のむこう、約束の場所』に登場するテロ組織。南北統一を信念に対ユニオン活動を続ける、リーダーは岡部。蝦夷製作所の社員たちもメンバーで、後に白川拓也も参加する。米軍とも裏で繋がりを持ち、武器の援助を受けている。
蝦夷製作所 (えみしせいさくじょ)
『雲のむこう、約束の場所』に登場する企業。岡部の経営する工場で、米軍の下請けでミサイル等の組み立てを行っている。公安に目をつけられているとの噂もある。
沢渡 佐由理 (さわたり さゆり)
藤沢浩紀と白川拓也の同級生で、二人がそれぞれ密かに想いを寄せている。音楽が好きで、ヴァイオリンを弾くことができる。中学三年の夏、原因不明の睡眠障害で意識を失い、東京の病院に入院し三年間眠り続ける。 祖父は物理学者で、蝦夷でユニオンの塔を設計したエクスン・ツキノエ。
笠原 真希 (かさはら まき)
戦時下特殊情報処理研究室で脳科学を研究する研究員。年下の白川拓也に密かに想いを寄せている。
白川 拓也 (しらかわ たくや)
藤沢浩紀の親友で、一緒にヴェラシーラを作っている。中学時代はスケート部に所属。浩紀とは対照的に、理知的で大人びた性格。中学卒業後は地元の高校に進学し、その傍らで持ち前の物理の才で富澤研究室に外部研究員として参加し、ユニオンの塔の研究を進める。
岡部 (おかべ)
藤沢浩紀と白川拓也が飛行機の部品代を稼ぐためにバイトをしていた蝦夷製作所の社長。バツ一で一見粗野な性格だが、面倒見はいい。南北分断により、蝦夷に残された家族がいる。富澤常夫と旧知の仲で、彼の研究所に拓也を紹介した。 南北統一を目指すテロ組織ウィルタ解放戦線のリーダーの顔も持つ。
場所
津軽地方 (つがるちほう)
日本が南北に分断された別の戦後世界で、地名はほぼ現在の津軽と同じだがアメリカの統治下にある。海峡を挟んだ北海道はユニオンの占領下にあり蝦夷と呼ばれている。
その他キーワード
ヴェラシーラ
『雲のむこう、約束の場所』に登場するメカ。藤沢浩紀と白川拓也が自作していた白い機体に白い翼(ヴェラシーラの意味)の小型飛行機。沢渡佐由理が姿を消したことで、製作は中断されていたが、その3年後に佐由理との約束を果たすために完成させる。 外装はナノネットで、レーダーを反射しない。
ユニオンの塔 (ゆにおんのとう)
『雲のむこう、約束の場所』でユニオンにより建てられた建造物。南北分断後に蝦夷に建造された巨大な白い塔で、沢渡佐由理の祖父である物理学者エクスン・ツキノエが、平行宇宙の情報を受信するためのアンテナ施設、量子塔として設計・建造したらしい。 建設から25年、すっかり日常の風景に同化したその塔は、誰もが手の届かないもの、変えられないものの象徴として見られており、アメリカとユニオン間の軍事的緊張をも高めている。