隠遁(いんとん)する天才漫画家と人生に行き詰まった編集者
天才漫画家の差能は大ヒット作の完結後、漫画を描く動機を失って失踪し、沖縄の小さな漁村で半年間、隠遁生活を送っている。一方、漫画編集者の安対は、離婚で慰謝料と養育費の支払いを抱えており、人生の逆転を賭けて差能に新連載を依頼しようと沖縄を訪れる。しかし「何を描いても気持ちよくない」という差能を説得することはできなかった。その後、居酒屋で酒を飲んでいた二人は、地元のヤクザの抗争に巻き込まれ、偶然拳銃を手にした差能は、襲撃してきた「鉄砲玉」を射殺する。人を拳銃で撃つことに失禁するほどの官能を感じた差能は、暴力団のヒットマンになることを熱望し、安対とともに、裏社会に深く関わることになる。本作は、漫画家と編集者の出会いから始まり、狂気の暴走に展開していくバイオレンスドラマである。
ユタの血を引く少女との出会い
仁原組の組員になった差能と安対は、敵対する奥蒸組長の命を取るよう指令を受ける。琉光会の最大派閥・奥蒸派は、一番大きな縄張りをさらに大きくしようとして、琉光会会長の直参である仁原組を潰そうとしていた。沖縄のユタの血を引く少女、与木区々と宿命の出会いを果たした二人は、彼女の協力を得て奥蒸組長の射殺に成功。区々は奥蒸組長襲撃の際に、アクシデントで視力を失うが、代わりに霊感を得る。そして、三人は報復から逃れるため、区々の霊感に従い、逃走の旅に出るのだった。
複雑化していく人間関係
田舎町にたどり着いた差能ら三人は、新興宗教の跡地のような物件を借りる。区々はその場所でユタとして悩み相談をしたいという。安対は心の内では反対だったが、差能が許したことで相談所の開設となった。区々は差能に心酔しており、安対は区々に密かに思いを寄せている。そんな関係性に不満を抱きながらも、安対は区々に協力を惜しまなかった。一方、奥蒸組の組長代行は、凄腕の殺し屋でクセの強い中年女の線子を雇い、差能たちの命を狙う。ユタの悩み相談所が三人の居場所であることを突き止めた線子は、皆が寝静まった時間に侵入するが、差能に一目惚れしてあっさり寝返る。その後、仲間になり差能に馴れ馴れしくする線子に、区々は嫉妬の炎を燃やすことになる。
登場人物・キャラクター
差能 構造 (さのう こうぞう)
25歳の男性。「オルタナトス」というアニメやゲームなどにメディアミックスされた人気作を描いた漫画家。同作の完結後に失踪し、沖縄の小さな漁村で隠遁生活をしていた。何もない簡素な家でほぼ全裸で過ごす変わり者。ちなみに大量の現金を持っており、畳の下に隠している。初登場時はロングヘアーだったが、物語途中で髪を切った。漫画編集者の安対と出会い、ヤクザの抗争に巻き込まれたことをきっかけに、拳銃に魅入られ、人を撃つことに執着するようになる。
安対 武 (あんたい たけし)
メガネと長身が特徴の男性。「週刊少年ジュース」という漫画雑誌の編集者。浮気が原因で離婚予定。慰謝料と2歳の息子への養育費を払うため、社内での出世を狙い、差能に接触。新連載を依頼するが断られる。その後、ヤクザの抗争に巻き込まれたことをきかっけに、差能と一緒に暴力団、仁原組の構成員になる。
与木 区々 (よぎ くく)
喫茶店でアルバイトをしていたショートカットの少女。父に捨てられ、ユタ(霊媒師)をしている祖母と二人暮らしをしている。街で外国人に絡まれていたところを、差能に助けられ、一途な想いを募らせる。差能と安対の手伝いをしている最中、銃撃戦のアクシデントで目を負傷するが、そのおかげで霊感を得る。
書誌情報
青 オールー 全5巻 エンターブレイン〈ビームコミックス〉
第1巻
(2002-11-25発行、978-4757712102)
第2巻
(2003-04-25発行、978-4757714311)
第3巻
(2003-11-25発行、978-4757716445)
第4巻
(2004-07-26発行、978-4757719484)
第5巻
(2005-02-25発行、978-4757721661)








