アヤシモン

アヤシモン

漫画の主人公たちにあこがれるあまり、人外じみた怪力とタフさを持ってしまった少年、海堂マルオが、ヤクザ「炎魔会」の前会長の隠し子であるウララとの出会いをきっかけに、妖し者同士の勢力争いに身を投じていく姿を描いた妖怪任侠作品。「週刊少年ジャンプ」2021年50号から2022年26号まで掲載の作品。

正式名称
アヤシモン
ふりがな
あやしもん
作者
ジャンル
お化け・妖怪
 
マフィア・ギャング・ヤクザ
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊3巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

ウララ組立ち上げ編

漫画の主人公にあこがれて、漫画と同じ特訓を続けたことで人外じみた怪力とタフさを身につけた少年、海堂マルオは、軽く手を触れただけで器物を破壊してしまうため、アルバイトすらできない日常に鬱屈としていた。漫画のように悪者に襲われる少女を、颯爽(さっそう)と現れて助けたいという願望を持つマルオの前に、ヤクザたちに追われる少女、ウララが現れる。ウララから妖し者という存在を知らされたマルオは、ウララといっしょにいれば漫画の主人公のように自分の実力を生かした生活ができると考え、ウララと親子の杯を交わし、たった二人で「ウララ組」を立ち上げる。まずは公安警察「陰陽寮」の目を搔(か)い潜って新宿歌舞伎町に侵入するため、二人は区を跨(また)いでいる新宿御苑に入り、新宿の門番、橋姫と会う。橋姫はウララの世話係をしていた妖し者で、炎魔会の前会長の鬼王会長の隠し子であることを知る唯一の人物でもあった。鬼王会長の死に疑問を抱くウララが、炎魔会への復讐(ふくしゅう)を考えていると知った橋姫は、実力を見せ付けてあきらめさせようとマルオにたいまんを挑む。

炎魔会衝突編

アマメハギとのたいまんの末に、ウララ海堂マルオは無事に歌舞伎町での拠点と、新たな舎弟、テンを手に入れた。一方で炎魔会の2代目会長の灯独歩は、陰陽寮から不審な密入区者の情報を手に入れていた。その関係を疑われた橋姫は尋問を受けることになるが、ウララたちの写真を見せられても完全にシラを切り通したため、独歩は炎魔会を総動員してウララ、マルオの捜索を命じる。部下の雲外鏡を使ってウララを見つけた独歩は、その場でマルオの拷問を始める。マルオを切り捨て、その場から逃げ出そうと考えたウララだったが、本来の能力を封じた短刀を引き抜いて妖し者の姿で、マルオと橋姫を連れて逃走する。

轟連合編

灯独歩の圧倒的な実力を前に敗走したウララは、海堂マルオテンを危険に晒(さら)してしまったことを謝罪し、炎魔会への復讐が暴走行為だったこと、復讐をやめるべきか悩んでいることを吐露する。そんなウララにマルオは、このまま炎魔会に負けたままではいられないと語り、彼女を奮起させる。ウララが鬼王会長の隠し子だと独歩に露見した今、ひそかに行動しても意味がないと割り切ったウララは、一気に「ウララ組」の勢力拡大を目論見、新宿四大勢力の一角である暴走族、轟連合に接触を図る。鬼王会長を特に尊敬して慕っているコットンに相対し、自分をはじめとする2000人の構成員がすぐさまウララの傘下に入ることとなる。しかしコットンは、マルオとテンのことは認めておらず、むしろ邪魔者だと考えて排除しようとする。そして轟連合の副総長、オボロは、コットンとマルオ、ワックとテンのたいまんで決着をつけることを提案する。

KORIホテル編

コットンからオヅヌの爺さんを紹介された海堂マルオが、課せられた修行に悪戦苦闘する一方で、ウララたちは轟連合以外に仲間に引き入れられる組織がないかと、再び新宿歌舞伎町へと潜入する。そんな中、足を運んだホストクラブ「妖☆美星's(あやかしビースターズ)」は炎魔会によって潰され、炎魔会傘下のキャバクラに変わってしまっていた。それに加えて、炎魔会の敵対組織に所属する妖し者は歌舞伎町にいるだけで処分されるという。地獄のような状況にコットンたちは怒りをあらわにするが、そんな折、KORIホテル油家いなり多摩川アキラの使いとして現れ、ウララ、テン、コットンをKORIホテルへと案内する。ラグジュアリーホテルの雰囲気に圧倒されるウララたちだが、そこで多摩川から聞かされたのは、KORIホテルが炎魔会との関係を断って優良企業として事業を続けていくこと、それに伴って轟連合も関西へ移転してほしいとの申し出だった。難色を示した三人に、多摩川は祈禱師による封印も辞さない姿勢を見せる。

登場人物・キャラクター

海堂 マルオ (かいどう まるお)

人間の少年。「モブ顔」と称されるほど特徴のない顔立ちをしている。顔に3枚の絆創膏(ばんそうこう)を貼り、両腕にテーピングをしている。『ドラゴンボール』の孫悟空、『キン肉マン』のキン肉マン、『ジョジョの奇妙な冒険 part3 スターダストクルセイダース』の空条承太郎にあこがれを抱き、漫画と同様の特訓を続けた結果、8歳で大岩を砕くほど、人外じみた怪力とタフさを身につけた。幼少期に父親から虐待を受けて育ったため、当初はその仕返しを目的としていたが、あまりに強くなりすぎて周囲の軟弱さに張り合いをなくし、鬱屈とした毎日を送っていた。そんな中、ウララと出会って全力で戦う喜びを享受するため、ウララと親子の杯を交わした。たいまんの際にはどれだけ血だらけになっても嬉しそうにしているため、マゾではないかと噂(うわさ)されている。

ウララ

炎魔会の会長を務めていた鬼王会長の隠し子で、妖し者の少女。長い白髪を側頭部で2本の角状に結ったハーフお団子ヘアで、黒い着物を身につけている。鬼王会長の死後すぐに橋姫によって新宿から逃がされたものの、鬼王会長が何者かに殺害されたのではないかと考えており、復讐するために新宿に舞い戻った。まずはうわんの組を調査していたが見つかってしまい、逃亡する際に海堂マルオと知り合い、その強さを見込んで親子杯を交わした。それを機にマルオと二人で「ウララ組」を立ち上げている。父親にコンプレックスを持っているという共通点から、マルオとは一蓮(いちれん)托生と考えている。他者から正体を隠すために本来の力は短刀に封じ込められていたが、能力が解放されると六つ目の黒い狐に似た姿に変身する。

橋姫 (はしひめ)

ウララの世話係を務める妖し者の女性。アシンメトリーにした黒のロングヘアで、2箇所にメッシュを入れている。鬼王会長からもっとも信頼されており、炎魔会の秘密構成員として組内部にも極秘の仕事を担っていた。昼間は新宿御苑の職員で、夜は妖し者としての姿で密入区者を捕らえる「新宿の門番」をしている。ウララが現在の炎魔会に復讐することに反対しており、力尽くで止めるために海堂マルオにたいまんを申し込む。人間に擬態している際は「橋口姫子」と名乗っている。

うわん

炎魔会直系暴力団「宇椀組」の組長を務める妖し者の男性。メッシュの入った肩までの黒髪をポンパドールヘアにしている。大声で他人を恫喝(どうかつ)するのを趣味としている。ウララが組の内情を探っていたことを知り、目的を問い詰めるために構成員全員で追跡していた際、海堂マルオと遭遇した。

テン

通販詐欺の会社で使い走りをさせられていた妖し者の男性。金髪でフック状のアホ毛が特徴。猪熊入道に騙(だま)され、通販詐欺会社で奴隷のように働かされていた。新宿歌舞伎町に着いたばかりの海堂マルオが圧倒的な暴力でほかの妖し者を倒したのを見て、マルオの舎弟になりたいと申し出た。「天吊るし」という妖怪で、繋(つな)がっている天井であればどこへでも移動することができる。

猪熊入道 (いのくまにゅうどう)

ゴロツキの妖し者。顔の左半分に唐草模様の刺青(いれずみ)を入れており、髪にも刺青が広がっている。妖し者専門の喫茶店でテンに絡んでいた際に、海堂マルオに遭遇した。口が悪いが巻き舌になりすぎるため、なにを言っているか判別できないことが多い。

アマメハギ

通販詐欺会社の社長を務める妖し者の男性。テンを雇っていた。パーカーのフードをかぶり、大きなサングラスをかけている。にわかHIPHOPファン。肉体を作るための金を稼ぎに新宿にやって来たテンを騙して雇い、奴隷同然にこき使っていた。

灯 独歩 (あかり どっぽ)

炎魔会の2代目会長を務める妖し者の男性。パーマをかけた長いピンク色の髪をアシンメトリーカットにしている。灯独歩自身に隠し事をしたり、裏切った者に対しては非常に残虐で、生かさず殺さずの状態で芸術品として展示している。「火取り魔」という妖怪で、熱を奪う怪火を使って炎の対象物を凍らせることができる。

コットン

轟連合の総長を務める妖し者の男性。体の一部を黒い鉢巻にしている。鬼王会長を心から尊敬しており、本当の父親のように慕っていたことから、ウララが鬼王会長の娘だと知った際はすぐさま協力を申し出ている。ただし、海堂マルオとテンについては認めておらず、二人を仲間として認めるためにたいまんを挑む。「一反木綿」という妖怪で、その姿がとらえられないほどの速さで移動する。

オボロ

轟連合の副総長を務める妖し者の男性。金メッシュの入った黒髪を肩下まで伸ばし、オールバックにしている。直情的に行動する総長のコットンの歯止め役で、轟連合を俯瞰(ふかん)して見ている女房役を担っている。コットンほどのカリスマ性はないものの、コットンが単純なために轟連合としての行動規範のすべてをオボロが決定している。「朧車」という妖怪だが、その能力は不明。

ワック

轟連合の一番隊隊長を務める妖し者の老齢な男性。恰幅(かっぷく)のいい体型で頭部にバンダナを巻き、顎ひげを蓄えている。総長のコットンを尊敬しているため、コットンが敬愛している鬼王会長にも敬意を表しているが、ウララに対してはなんの敬意も払っていない。愛車のハーレーダビッドソンを大切にしている。諸国を回っているため、どこの言葉かわからない日本語を使う。「輪入道」という妖怪で、拳で殴ったものを車輪のように回転させることができる。

オヅヌの爺さん (おづぬのじいさん)

新宿西口近辺のホームレスを取りまとめている老齢な男性。両目が斜視で、口まわりにひげを蓄えている。半人半妖で、1000年以上鬼道や仙術を学んでおり、人間と妖し者の双方から情報を仕入れている。海堂マルオが灯独歩と対等に戦えるようにするため、コットンが紹介した。マルオの内在する能力の強さと、能力を使うための通り道が釣り合っていないことを見抜き、修行をつけている。

多摩川 アキラ (たまがわ あきら)

KORIホテルの副支配人を務める妖し者の男性。肩までの黒髪をオールバックにしており、眼鏡をかけている。「袋下げ」という妖怪で、化け狸(だぬき)の一種。炎魔会に所属していたのはあくまで刑部狸の代理だったと語り、刑部狸以外からの命令は基本的に受け付けない。

油家 いなり (あぶらや いなり)

KORIホテルの副支配人補を務める妖し者の女性。ショートボブヘアにしている。多摩川アキラの使いとして轟連合に出向き、ウララ、テン、コットンをKORIホテルに案内した。「白蔵主」という妖怪で、化け狐(ぎつね)の一種。人間や無機物など、どんなものにも化けることができる。

集団・組織

炎魔会 (えんまかい)

新宿四大勢力のひとつで、関東最大の広域指定暴力団。ウララの実父である鬼王会長が統括していたが、鬼王会長の死後、灯独歩が会長職を継いでからは数多の組が分裂して覇権争いを行っており、現在は新宿全体が抗争状態に陥っている。同じく新宿四大勢力のひとつであるホストクラブ「妖☆美星'S(あやかしビースターズ)」を排除し、歌舞伎町にあるすべての組織を炎魔会の傘下に収めた。それ以降、歌舞伎町内で敵対組織の構成員を発見次第、即座に攻撃している。

陰陽寮 (おんみょうりょう)

内閣府の公安警察。白いスーツとサングラスが制服となっている。妖し者を完全に殺すこともできる権利を有しており、「影人(かげひと)」という見えない式神をあやつることで、妖し者を拘束することもできる。ウララと海堂マルオが初めて新宿歌舞伎町を訪れた際に、マルオがたいまんを張らずに猪熊入道を倒したことで、簡易調査に出向いた。その際、ウララの様子を怪しみ、炎魔会と潰し合わせるべく、灯独歩にウララとマルオの顔写真を提供している。

轟連合 (とどろきれんごう)

新宿四大勢力のひとつで、コットンが総長を務める総勢2000人の暴走族。鬼王会長が存命だった頃、一時的に炎魔会がケツ持ちをしていた運送系業種の労働組合として運用されたが、現在は再び暴走族に戻っている。灯独歩の実力を知ったウララが、最初に味方にしようとした組織。

場所

KORIホテル (こりほてる)

新宿四大勢力のひとつで、明治10年に関西で創業したホテル。調度品以外すべての設備が、総支配人である刑部狸の陰嚢(いんのう)でできている。昭和初期に新宿に居を移して、炎魔会の直営事業として営業していた。副支配人を多摩川アキラが務めているほか、すべての従業員が狸か狐となっている。炎魔会の勢力が強くなってきたことに鑑み、今後炎魔会との関係を断ち、優良企業としてホテル事業を続けていくことを表明した。轟連合が炎魔会と抗争を続ければホテルの利用客にも被害が及んで客足も遠のくことを懸念し、轟連合にも関西に拠点を移すよう警告している。

その他キーワード

妖し者 (あやしもん)

妖怪および化け物の総称。人の念が入った貨幣や紙幣で体が構成されている。体を破壊されても魂は消えないが、肉体を取り戻すためにはおよそ99年かかり、肉体がなければほとんどなにもすることができない。元来だらしがなくいいかげんな性分で、義理人情や善悪も持ち合わせていない。楽しければ生死の観念を忘却してしまうところがある。また、「食糧区」と呼ばれる場所以外で人間を殺すのは禁忌とされている。

たいまん

妖し者同士で行われる真剣勝負。正式には「対魔務の儀」と呼ばれている。たいまんを行う二人の周囲を、鼓を打つ妖し者で囲む。鼓の音が届く範囲ではなにをやっても外からは認識されなくなるため、結界として鼓を打ち、たいまんを行う者は面を被(かぶ)ることで妖し者本来の姿と能力を引き出す。お互いの言霊をかけて力比べをするため、言霊で決めた取引は必ず履行され、敗者は勝者に絶対服従するというルールがある。また、たいまんを行う際には「たいまん恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す」と口上する習わしがある。

書誌情報

アヤシモン 3巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第3巻

(2022-08-04発行、 978-4088831992)

SHARE
EC
Amazon
logo