あらすじ
1
神山高等学校2年生の伊勢崎蓮介は、2学期の初め、桜野高等学校の教室の窓で勉強をしている女生徒を見かける。思わず手を振ると、彼女は無表情のまま手を振り返してくれた。その後、坂の上の高校の窓で勉強をしているその女生徒ナギセと毎朝筆談で話をするようになった伊勢崎。ところが、ある時彼女の姿が見えなくなってしまう。
2
倉田結は、3年の夏、中学から続けていた弓道部を引退した。部活が縁で知り合った伊勢崎蓮介は、「2年ちょいありがとな」と気軽に倉田に手を差し伸べる。そこへ、上村直貴と野上草太がかき氷機を持ってやって来る。2年生の終わりに伊勢崎を助けたことがきっかけで、彼の友人であった2人も倉田に話しかけるようになっていた。こうして倉田の毎日は少し賑やかになったが、彼は未だに伊勢崎たちとの距離感を掴みきれずにいた。
3
夏休みの最終日、上村直貴は野上草太とともに倉田結の家を訪れた。すでに到着していた伊勢崎蓮介と4人で勉強をするためだ。4人が揃ったところで、昼食の出前に春日そばの看板娘であるハルがやって来る。片想いをしているハルから高校の文化祭のチラシをもらった上村は、勉強そっちのけで3人とともに出かけることにする。
4
3年の秋を迎え、受験に向けた勉強もますます本格化してきていた。「負けたら学年に関係なく、参りましたと一礼する」というルールのある球技大会を来週に控え、初戦の1年に負けたらと戦々恐々とするクラスメイトたち。野上草太は、そんな彼らに「練習すればいい」と提案するが、「そんな時間はない」と一蹴されてしまう。
5
倉田結は、冬休み中の12月26日に突然、伊勢崎蓮介から「明後日合格祈願に行く」と告げられる。当日待ち合わせ場所に向かうと、そこには伊勢崎、上村直貴、野崎草太が揃っていた。彼らは電車で2時間半かけて、野上の実家近くの天満宮へと向かった。そうして着いた先は一面の銀世界。雪にはしゃぐ伊勢崎と上村だったが、しばらくすると野崎のもとに伊勢崎から不審なメールが届く。
6
伊勢崎蓮介は、受験を目前に控えた2月のある日、雨に濡れながら倉田結の家に駆け込んだ。伊勢崎が身を挺して雨から守ったカバンの中には、海外にいるナギセからの応援の手紙が入っていた。ところが、雨に濡れた伊勢崎は滑り止めの受験を前に風邪で寝込んでしまう。
7
2月13日、伊勢崎蓮介は3月1日の卒業式が日に日に迫って来るのを感じていた。そんななか、伊勢崎は担任から卒業生代表答辞役に決まったと告げられる。伊勢崎はその日の帰り道、一時帰国しているナギセとしばしの時間を楽しんだ。高校生最後の日を迎える前に、伊勢崎はナギセに自分の想いを告白することを決意する。
登場人物・キャラクター
伊勢崎 蓮介 (いせざき れんすけ)
すべてのエピソードに登場する。エピソード「1」と「5」~「7」の主人公。3月9日生まれの男子高校生。登場時は神山高等学校2年生。弓道部に所属しており、同じ弓道部という縁で倉田結と仲良くなった。また、上村直貴とは中学の頃からの友人同士。天真爛漫で人との距離が近いタイプ。
倉田 結 (くらた ゆい)
すべてのエピソードに登場する。エピソード「2」と「5」~「7」の主人公。1月17日生まれの男子高校生で、伊勢崎蓮介の級友。真面目で勉強ができるが、友達付き合いは苦手。しかし、時には友人のために反省文必至の無茶をするなど、情熱的な面もある。伊勢崎と同じく弓道部に所属しており、かなりの腕前の持ち主。
上村 直貴 (うえむら なおたか)
すべてのエピソードに登場する。エピソード「3」と「5」~「7」の主人公。4月30日生まれの男子高校生で、そば屋の看板娘ハルに密かに思いを寄せている。伊勢崎とは中学の頃からのクラスメイト。野上草太とともに校内で麻雀をしたりかき氷を作ったりと、自由に青春を謳歌している。
野上 草太 (のがみ そうた)
すべてのエピソードに登場する。エピソード「4」と「5」~「7」の主人公。5月1日生まれの男子高校生。県外の中学から神山高等学校に進学して来た。中学時代は荒れており、あまり楽しい学校生活を送ってはいなかった。そのため、今の高校生活を大切に思っている。愛らしい外見で、他校の女生徒からバレンタインチョコを大量にもらうなど、異性からの人気が高い。
ナギセ
エピソード「1」「6」「7」に登場する。初登場時は桜野高等学校の3年生だった。高校の友人からは「ナギ」と呼ばれている。高校卒業後は、2年ほど海外で過ごした後に家業の造り酒屋を継ぐ予定。海外に渡ってからは、伊勢崎蓮介と文通をしつつ英語を教えている。ちなみに漢字では「凪瀬」と書く。愛想笑いをせず、真顔でいることが多い。
ハル
エピソード「2」「3」「7」に登場する。男女共学の商業高校に通う女子高校生。倉田結が行きつけにしているそば屋の店主の孫で、看板娘でもある。学校が終わった後はそば屋の手伝いをしているため、あまり遊びにでかけたりはできない。しかし、そんな不満や苦労を見せることなく、いつも笑顔で仕事をこなしている。
場所
神山高等学校
伊勢崎蓮介らが通う男子校。隣に女子高である桜野高等学校がある。10月に毎年球技大会を行っている。敗者は勝者に「参りました」と一礼する習わしがあるため、下級生に負けると屈辱的。部活道は3年の夏で引退となる。
桜野高等学校
ナギセが通っていた女子高。隣は男子校である神山高等学校だが、桜野高等学校が坂の上にあり、間に高い壁が作られていることから、行き来には自転車でも14分かかる。理事長は倉田結の祖父。全寮制で、3年生は2月の退寮後、卒業式まで学校には来なくていい。