顔に泥を塗る

デパートの受付で働く美紅は、イケメン弁護士の彼氏、結城悠久と平穏な同棲生活を送っていたが、仕事中にメイクをした綺麗な大学生のイヴと出会ったことで物語が始まる。その日のメイクに合わせてレディース・メンズを問わずさまざまな服を身につけているイヴに、あこがれを抱いた美紅は、彼からこれまで経験したことのない派手なメイクを勧められる。美紅自身も驚くほど艶やかなメイクをイヴに施されたままで帰宅した美紅だったが、そのメイクを全否定した悠久から、二度と派手なメイクをするなと激しい言葉で罵られる。この日を境に、悠久の高圧的な態度や自分の人生に疑問を抱くようになった美紅がイヴに支えられながら自由を取り戻していく、人生逆転ドラマがラブコメディを交えながら展開される。

美紅は学生時代から付き合っている悠久と幸せな結婚を夢見ていたが、清楚（せいそ）な女性を好む悠久の要望で派手なメイクと服装を避け、地味なメイクや服装ばかり選び続けていた。そんな美紅は男性でありながらメイクを施し、レディースファッションを身にまとったイヴから真っ赤なリップを勧められ、メイクの楽しさと自分がメイクで変われることに高揚感を覚える。しかし、これまで優しかった悠久はこの日を境に豹変し、美紅を威圧的な言葉や態度で束縛するようになり、モラハラ男の顔をのぞかせるようになる。イヴは自信も自由もなくした美紅を心配し、彼女にメイクを勧めたり前向きな言葉かけて元気づけようとする。誰よりも束縛を嫌い自由を愛するイヴは、他者に遠慮するあまり気弱になりがちな美紅にとって、ひときわ輝く存在となっていた。そして、美紅はイヴから人生観が変わるほどの影響を受けることとなる。

自分らしく自由にメイクする楽しさに目覚めながらも、このまま悠久と結婚して安泰な人生を送ることも考えていた美紅は、しばらく気まずい雰囲気だった悠久からプロポーズされるが、その婚約の条件にイヴとの関係断絶を強要される。一度は悠久の言われるままにイヴと距離を置こうとするが、このまま結婚して一生悠久に服従する人生を送ることに疑問を覚え、ついに悠久と真摯に向き合うことを決意する。そして、これまで溜め込んでいた感情を悠久にぶつけ、美紅は同棲していた家を出て行き、悠久に頼らない新たな生活をスタートさせる。そんな美紅を温かく見守るイヴだったが、悠久に対して未練を断ち切ることのできない美紅の姿に苛立（いらだ）ちを覚えるようになる。これを機に、イヴがメイクの楽しさに目覚めた過去が明かされ、やがて交際を始めたイヴと美紅の恋の行方も見どころとなっている。