食い詰め傭兵の幻想奇譚

食い詰め傭兵の幻想奇譚

まいんの小説『食い詰め傭兵の幻想奇譚』のコミカライズ作品。元傭兵の青年ロレンは冒険者となるものの、神官の少女ラピスに助けられた際に彼女に借金をすることとなった。借金返済のために奔走する冒険者の姿を描く、冒険ファンタジー。「コミックファイア」で2018年4月から配信の作品。

正式名称
食い詰め傭兵の幻想奇譚
ふりがな
くいつめようへいのげんそうきたん
原作者
まいん
漫画
ジャンル
アドベンチャー
 
ファンタジー
レーベル
ホビージャパン
巻数
既刊4巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

逃げた先で行き詰まる

ロレンは物心ついた頃から傭兵をしていたが、ある戦いで手ひどい敗戦を喫して、見知っていた仲間は次々と死亡し、所属していた傭兵団も壊滅。生き残った仲間たちも方々に散り、独りぼっちとなってしまったロレンは、路銀も少なくなったことから、冒険者に転職することを決める。ロレンは雑用でもして過ごそうとしていたところ、戦士を求めていたサーフェに誘われ、彼らのパーティとゴブリン退治の依頼に赴く。しかし、サーフェたちの素行は不用心そのもので、彼らの非常識な振る舞いを見て、ロレンは早々後悔に苛まれる。同じ思いを抱いていたパーティメンバーのラピスと意気投合し、ゴブリン退治に赴く一行であったが、サーフェは意気揚々とゴブリンの巣穴に突っ込み、あっさり死亡。ロレンたちは一気に窮地に立たされることとなる。ゴブリンの放った魔術消失の首飾りの力によってラピスも戦闘不能となるものの、ロレンはとっさに彼女を担いで逃げ出す。そして様子を豹変させたラピスから、実は彼女は魔族で、体のほとんどが魔術による作り物だという真実を聞かされる。偶然、魔術消失という相性最悪の攻撃を食らって戦闘不能となったラピスは、ロレンに助けられてゴブリンの巣穴奥地に逃げ込む。そして二人は、ゴブリンの巣穴が古代王国の遺跡につながっていることに気づく。二人は遺跡を探索していた際に偶然、同じタイミングで遺跡を調査していたリッツたち冒険者に合流。彼らの助けを借りながら出口を目指す。

家探しから行動が確定する

ロレンたちはリッツたち一行と合流するものの、彼らも遺跡のワナに引っ掛かり、迷っている最中だった。しかしロレンは、彼らの力を借りることで順調に遺跡探索を進める。だが、ラピスは遺跡に出てくる魔物がゴブリンばかりで、その生態も通常のゴブリンとは違うことに気づく。そしてラピスの助言を参考にしたことで、一行は脱出路を発見する。だが、そこにゴブリンが襲来。しかもゴブリンたちは今までにない強敵となっており、一行は苦戦しつつもなんとかこれを撃退する。そしてラピスは、この遺跡がネズミの代わりにゴブリンを実験体にした研究施設で、ゴブリンの製造と品種改良が行える施設だと推測する。ゴブリンを改良する仕組みは暴走しており、このままでは倒せば倒すほどゴブリンは強くなり、手の付けられない存在になるとラピスは危惧する。話を聞いた一行は遺跡からの脱出を後回しにし、遺跡の居住区を漁って、遺跡の停止方法を探るのだった。

目覚めから約束する

居住区で研究施設の説明書を見つけた一行は、それに従って遺跡の制御室を目指す。ラピスは制御室を操作するものの、不正侵入に気づいた遺跡は迎撃装置を起動して、ロレンたちに襲い掛かる。次々襲ってくるゴブリンをロレンたちは倒していくが、倒せば倒すほどゴブリンは強化されていき、次第にロレンたちは疲弊していく。そこでロレンは今までの話から逆転の一手を思いつき、そのロレンの機転によって遺跡の中枢は壊れ、ゴブリンたちも活動を停止するのだった。満身創痍(そうい)のロレンはそこで意識を失うものの、ラピスに助けられて街の病院に運び込まれ、治療を受ける。しかし当初のゴブリン退治は、討伐の証となるゴブリンの耳を回収し損ねて失敗扱いとなっていた。ラピスから事の顚末を聞いたロレンは入院費のこともあり、収入はまさかの赤字となったことに気づく。ラピスが代金を立て替えてくれたことで辛うじて首をつなぐが、ロレンは無一文どころか借金を抱えることとなり、ラピスの提案で借金を返すまで彼女と行動を共にすることを決める。一方、ラピスは実は遺跡で金目の物をちゃっかり回収していた。また、ロレンの人柄を気に入ったラピスは、彼に借金をさせてつなぎ止めることをもくろむ。

関連作品

小説

本作『食い詰め傭兵の幻想奇譚』は、まいんの小説『食い詰め傭兵の幻想奇譚』を原作としている。原作小説版はHJ NOVELSより刊行され、イラストはperoshiが担当している。

登場人物・キャラクター

ロレン

新米冒険者の青年で、元傭兵。黒髪の精悍(せいかん)な顔立ちで、たくましい体つきをしている。物心ついた頃から傭兵として戦場で育った歴戦の戦士だが、所属していた傭兵団が苛烈を極める戦闘に遭遇して壊滅。命からがら逃げ出したものの、生き残った仲間ともはぐれて一人だけとなり、路銀も心もとなくなったため、生活費を稼ぐべく傭兵から冒険者へと転職した。もともとは冒険者としての経験も伝手もなかったが、偶然前衛を欲していたサーフェに誘われ、彼のパーティに合流した。しかし、冒険者としても素人同然のサーフェたちに嫌気が差し、同じ思いを抱いていたラピスと意気投合する。サーフェたちがゴブリンの集団に襲われて全滅した際、ラピスを背負って逃亡。この出来事がきっかけでラピスに気に入られ、彼女の秘密を明かされる。ゴブリンの事件解決後、ラピスに助けられることで一命を取り留めるが、彼女に借金をしてしまい、その返済のために彼女と行動を共にするようになる。なお、この借金は半ばラピスによる自作自演なものだが、ロレンは気づいていない。冒険者としては素人レベルなため、魔物や遺跡探索の知識はほぼ皆無。その代わり、傭兵として戦い抜いた経験から剣の腕と土壇場での判断能力は高く、戦闘では大きな両手剣を武器として戦う。危機に陥った際には脳のリミッターがはずれ、暴走状態となる。このあいだは意識が飛んでおり、目の前の敵を倒すことだけしか考えられなくなる。また、暴走状態が終わると反動で倒れてしまう。

ラピス

人間とほぼ同じ見た目の魔族の少女。青みがかった黒い髪をポニーテールにセットし、白い神官服を身にまとっている。両親から経験を積むために人間社会を旅するように言われ、正体を隠して人間社会を旅している。両親から「制限」として瞳と四肢を奪われた上に、それらを人間社会のどこかに隠されてしまう。現在使っている瞳と四肢は魔力で動く義眼、義手、義足のようなもので、これらを動かすためにつねに魔力を消費しているため、魔族としての恵まれた力はほとんど封印されている。現在は力を取り戻し、故郷に帰るため、両親が隠した瞳と四肢を探すために冒険者となっている。知識の神は、その性質が魔族の気質とかみ合うため、例外的に魔族たちから信仰されており、人間の街では知識神に仕える神官として振る舞っている。女性の一人旅はさまざまな面倒を呼び込むため、不用心なサーフェをうまく利用して、彼のパーティにまぎれ込むが、想定以上に不用心で後悔する。サーフェたちに同じ思いを抱くロレンと意気投合。ゴブリンに襲われた際に、魔術消失の首飾りの効果で行動不能となり、ロレンだけでも逃がそうとするが、彼に助けられたことをきっかけに、強い興味を持つようになる。ゴブリンの遺跡攻略後、根なし草のロレンが勝手にいなくなるのを防ぐため、ロレンの生活費や入院費の面倒を見ることで、彼を借金で縛りつける。しかし、借金の契約内容自体はかなり良心的なものとなっている。もともと好奇心旺盛な性格で、幅広い知識を持ち、古代王国に関しても詳しい。そのことに突っ込まれると「知識神の神官」であることを盾に誤魔化すが、周囲からは怪しく思われている。表向きは神官らしく物腰が丁寧で、誰とでも分け隔てなく接するが、根は合理的でかなりシビアなところがある。危機的状況では口調が冷徹なものにがらりと変わるが、これも意識してやったりはしておらず、無意識の産物で、ふだんの口調も危機的状況の口調もどっちも素となっている。

リッツ

白銀級冒険者の男性。筋骨隆々とした大男で、巌のように険しい顔立ちをしている。ベテランパーティをまとめるリーダー役で、強面に反して性格は気さくで、人当りもいい。また同業者からの評判もよく、一部の冒険者からはあこがれの存在として見られている。剣と盾で戦う「剣士」で技量も高いが、それ以上に判断能力に長けており、不測の事態にも臨機応変に対応する。責任感が強く、リーダーとしての責務を果たすべく、殿(しんがり)を積極的に引き受けている。新たに発見した遺跡の調査をした際にロレンとラピスと遭遇。彼らの同行を認めるとともに、面倒見のよさから彼らのゴブリン討伐の依頼も手伝っている。強化ゴブリンと遭遇した際も戦い抜き、仲間たちと共に遺跡から生還する。

チャック

白銀級冒険者の男性。無精ひげを生やしたお調子者で、確かな実力の持ち主ながら、その言動から周囲からは軽く見られがち。リッツのパーティに所属しており、盗賊としてワナの解除や索敵に適した能力を持つが、その性格から抜けた部分が多いため、よく相棒のニムからは怒られている。ニムとはよく口ゲンカをしているが、根はお互いのことを憎からず思っており、本人がいないところではのろけ話をするほどニムに惚れている。ふだんの言動から誤解されがちだが、白銀級のベテラン冒険者だけあり、プロ意識が非常に強く、その姿勢はロレンも認めている。

ニム

白銀級冒険者の女性で、種族はエルフ。金髪ロングヘアで、華奢な体型をしている。リッツのパーティに所属しており、「弓使い」として戦闘では弓を武器に戦う。冷静沈着で、事実を淡々と話すぶっきらぼうなしゃべり方をする。その言動から誤解されがちだが、根は仲間思いで、面倒見がいい性格をしている。チャックとはケンカするほど仲がいい関係で、些細なことで言い争いするが、とっさの事態では真っ先にお互いを気にするなどお互いを憎からず思っている。

コルツ

白銀級冒険者の男性。白いひげと髪を長く伸ばした魔術師で、ローブを身にまとって大きな杖を持っている。リッツのパーティに所属しており、多彩な魔術でパーティをサポートしている。年下の人間にも親しく接する好々爺然とした気さくな性格をしている。魔術は回数制限はあるものの、圧倒的な火力を持ち、パーティの切り札的な存在として扱われている。経験豊富なだけあって絶妙なタイミングで魔術を使うが、老齢で体力的には問題があり、長期的な戦いではすぐにバテてしまう。

サーフェ

銅級冒険者の青年。人当りのいい性格をした好青年で、自信とバイタリティに満ちあふれている。6歳の頃に英雄の手記を読み、英雄にあこがれている典型的な世間知らずで、悪人ではないが向こう見ずで自意識過剰なところがある。イケメンで自信満々な態度から異性からの人気が高く、パーティメンバーのナロン、オクシィとは肉体関係がある。ロレンが呆れるほど冒険者としても戦士としても常識に乏しく、ラピスからは「思考力も注意力も散漫」と遠回しにバカと言われるほど。ゴブリン討伐の依頼を受け、ゴブリンを雑魚扱いしてゴブリンの巣穴に入り込むが、ワナにはまって死亡した。

ナロン

銅級冒険者の少女。赤毛のショートヘアで、バンダナをしている。強気な性格ながら、同じパーティのサーフェの太鼓持ちをしている。サーフェと肉体関係があり、基本的に彼の言うことはなんでも肯定する。逆に、サーフェの意に反する意見にはいっさい耳を傾けないため、ロレンの警告も無視している。ゴブリン討伐の依頼を受け、サーフェと共にゴブリンの巣穴に突撃するが、ゴブリンに敗北して捕われてしまう。

オクシィ

銅級冒険者の少女。金色の髪を長く伸ばし、フード付きのローブを身にまとっている。落ち着いた性格ながら、サーフェと肉体関係があり、基本的に彼の言うことはなんでも肯定する。魔術師で魔術をあやつるが、使える回数に制限のある魔術を基本的にサーフェに対して優先的に使うため、判断能力は低い。注意力散漫な性格で、すぐにほかのものに気を取られる。ゴブリン討伐の依頼を受け、サーフェと共にゴブリンの巣穴に突撃するが、ゴブリンに敗北して捕われてしまう。

その他キーワード

魔族 (まぞく)

優れた身体能力と恵まれた魔力を持つ種族。姿は人間族に近いが、瞳が深い紫色をしている。閉鎖的な種族で、他種族への関心が薄いため、人間族とはほとんど交流がなく、一部では不気味な存在として偏見を持たれている。また、恵まれた力を持つため、種族柄合理的な思考を持つ者が多く、種族全体で神々への信仰心が薄いため、神殿関係者からは特に評判が悪い。実態は人間族と変わらず、よい魔族もいれば悪い魔族もいて、ふつうの人間と同じように接することができる。また、魔族の合理的な考え方は、知識神の「知識を求め習得し、さらに知識を求めよ」という教えとも合致するため、知識神は例外的に魔族からも信仰されている。知識神は神々の中でも魔術に寛容なため、ほかの神々の神官は神の力を借りる「法術」を修得した時点で魔術を使えなくなるが、知識神の神官は唯一魔術と法術の両方を扱える。人間では両方とも中途半端になりがちだが、魔族であれば魔術と法術をかなり使いこなすことができる。魔族はほとんどが大陸中央の山岳地帯に引きこもって生活しているが、外を旅する魔族も存在する。ただし、魔族は他種族に比べて強すぎるため、外に出る際には「制限」を課すのが決まりとなっている。

古代王国 (こだいおうこく)

はるか古代に栄えていた王国。魔族を含めるあらゆる種族を国民としていたが、ある日を境に突然王国は滅び去り、各地に散り散りとなった部族が、現在の勢力図をつくるきっかけとなった。現代では考えられないほど魔術文明が発達していたとされ、全盛期には空を飛ぶ都市も存在したとされている。現在も古代王国時代の建物が遺跡として発掘されるが、危険な遺跡や貴重な宝物も発見される一方で、同じくらいどうでもいい遺跡が発掘されている。

ゴブリン

魔物の一種。猿ほどの体軀に体毛がなく、緑色の体色をしている。一体一体はさほど強くなく、武器を持った成人男性ならば苦もなく倒せるレベル。しかし繁殖力が強く、爆発的に数を増やすため、群れた場合の危険度は非常に高い。また、他種族のメスを母体にしても数を増やすことができるため、獲物が女性である場合は生かしたまま巣穴に連れ帰る習性を持つ。武器を使う程度の知能はあるが、それほど高くない。ただしまれに能力が高い個体が突然変異的に誕生することもあり、集団を統率する知能に秀でた上位個体も存在する。古代王国の時代では、その醜悪で悪辣な習性から嫌われていたが、同時にその習性を有効活用する方法が研究されていた。中には人間に近しい外見で、繁殖力が強いのを利用して、ネズミの代わりに実験動物としても使われているものもいる。また、用途に応じて品種改良も行われており、古代王国時代の設備には専用の繁殖設備もあったとされる。ロレンたちが入った遺跡もその一種だったが、長年放棄されていたために半ば暴走状態にあり、死体を素材にして無尽蔵にゴブリンを強化、製造する設備となっていた。ラピスはこのまま放置していれば、人間を超える知能を持ち、龍をも倒す力を持つまでゴブリンが強化されると危惧し、遺跡の停止を決意する。

魔術消失の首飾り (まなろすとのくびかざり)

「魔術消失(マナロスト)」の効果が宿るマジックアイテム。魔術消失は一定範囲内の魔術の使用を不可能にする高等魔術で、本来であれば発動には非常に高い技量が必要だが、この首飾りを使えば誰でも発動することができる。魔力蓄積型のマジックアイテムで、発動に使用者の魔力は必要ない。ゴブリンを率いるゴブリンマジシャンが遺跡から偶然回収し、その力を使っていた。ラピスにとっては天敵ともいえるマジックアイテムで、魔術の行使ができなくなったために体の機能がほとんど停止し、しばらく身動き一つできなくなる。ロレンがゴブリンマジシャンを倒した際に回収しており、ゴブリンの遺跡を破壊する際、その保護魔術を消し去ってロレンたちを助ける逆転の一手となった。

クレジット

原作

まいん

キャラクター原案

peroshi

書誌情報

食い詰め傭兵の幻想奇譚 4巻 ホビージャパン

第4巻

(2022-12-28発行、 978-4798630465)

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