あらすじ
謎の獣
高校生の志隈は、アルバイト先へ向かうために早朝の地下鉄に乗車していたが、突然電車が停車した。車内の明かりも消え、運転士の姿も見えないため、線路に降りた乗客たちは、ズタズタに引き裂かれた運転士の死体を発見。そして、そこに巨大な熊のような異形の怪物(餓獣)が姿を現す。パニックに陥って逃げ出す乗客たちだったが、反対方向からも別の怪物が現れ、乗客は次々と殺されていく。志隈は、同じ車両に乗り合わせていた幼なじみの睦月、酔っ払いの女性である社長、社長の部下である岸本らと共に地上への脱出を試みる。
別行動
謎の怪物(餓獣)から逃れて地下鉄線路内から脱出するため、志隈、睦月、社長、岸本は、狭いダクト内を進む。その途中、怪物の襲撃によって一人はぐれてしまった志隈は、同じ境遇にありながらスマートフォンで冷静に怪物を撮影している男性と遭遇。しかし、怪物を撮影する男は脱出に非協力的なため、そのまま志隈は一人で地下鉄内の探索を続けるが、多数の怪物に囲まれてしまう。だが、怪物は視力が極めて弱いらしく、目の前にいる志隈に気づかずに通り過ぎていく。一方、同じく地下に閉じ込められていた乗客で足を負傷した等々力、まだ幼い男の子の雄大、バンドのおっかけをしているギャルが隠れていた部屋を怪物が襲撃。等々力の犠牲でなんとかダクトから逃げ延びたギャルと雄大は、睦月や社長らと合流する。
地上
地下鉄の乗客が次々に怪物(餓獣)に襲われて2時間が経過したが、警察は事態をまったく把握できていなかった。トンネル内に入っていった警官も戻ってこず、数百名が取り残されている地下鉄乗客はまだ一人も脱出できていなかった。だが、地下でドローンを使って怪物を撮影しながら地上への出口を探していた怪物を撮影する男と、行動を共にしていた志隈は、下水道を通ってついに地上へ生還する。しかし怪物を撮影していた男は、自分の撮影した動画をネットに上げることにしか興味がなく、取り残された仲間たちを見捨て、その場を立ち去ってしまう。志隈は派出所に駆け込み、警官に地下の状況を説明して助けを求めるものの、まともに取り合ってもらえない。警察の助けをあてにできないと絶望した志隈は、単身再び地下へと戻る。そんな中、情報を聞きつけてスクープを狙って待機していた女性記者の村田桜は、たまたま目撃した志隈を尾行して地下へと入っていく。一方で取り残されていた社長、岸本、ギャル、雄大は救助隊によって救われるものの、ボートでの移動中に怪物に襲われて救助隊は全滅し、ギャルも命を落としてしまう。その頃、仲間とはぐれて一人で地下をさまよっていた睦月は、地下で犠牲者から金品を奪っていた成田に出くわし、暴行されてしまう。しかしその後、成田も怪物に食われ、睦月は茫然自失となってその場を立ち去るのだった。
合流
再び地下に戻った志隈と、スクープを狙って志隈についてきたものの、怪物(餓獣)を目にして地下に入ったことを後悔していた村田桜は、社長、岸本、雄大と合流する。そんな中、地下の崩落が始まり、五人は現在は使われていない廃駅へ逃げ込む。ほっとしたのもつかの間、頭に付けられた装置から周囲に無数の鉄クギを発射する怪物が現れる。志隈の機転により、その場を無事逃げ延びたものの、地上へ通じるハシゴは破壊されていた。仕方なく地下鉄内を進む志隈は、睦月を見つける。だが、成田に暴行されて心に深い傷を負った睦月は、志隈から逃れるように闇の奥へと姿を消してしまう。その後、一行は地下の奥で異様な光景を目にする。そこでは人間が檻に入れられ、怪物の餌にされていた。この異様な光景を目撃した社長は、この餌場の近くに地上に通じる搬入口があるはずだと推測する。
混乱
志隈と雄大は、地下の餌場に捕われていた人たちを救出するものの、怪物(餓獣)に襲われて犠牲者が続出する。ついに岸本も倒れるが、志隈、社長、雄大の三人は地上への出口を求めて先へと進む。一方、地上への出口を見つけられずに、地下で疲れ果てて仲間と別行動を取っていた村田桜は、睦月と出会って行動を共にする。睦月は地下でなくした自分の弓道の道具を発見し、元気を取り戻していた。そんな中、睦月は合流した見知らぬ男の身勝手な行動に激昂し、村田に暴力を振るうその男を矢で射殺してしまう。その頃、志隈たち三人は怪物の地下への搬入に使われている巨大なトンネルに到達。地上へと通じるその巨大な縦穴からは、今まさに電磁石でつるされた怪物が地下へと降ろされようとしていた。
登場人物・キャラクター
志隈 (しくま)
とある高校に通っている男子。児童養護施設で育ち、現在もアルバイトをしながら施設で暮らしている。睦月とは同じ児童養護施設で育った幼なじみ。小さい頃からいじめられっ子で喧嘩はからっきしだが、優しい性格で行動力はある。地下鉄内で怪物(餓獣)に襲われたあとも、ほかの生存者と協力しながら脱出の道を探っている。一度は単身、地上への帰還に成功したものの、ほかの生存者を助けるために再び一人で地下へと戻る。
睦月 (むつき)
とある高校に通っている女子。志隈と同じ児童養護施設で育った幼なじみで、気の強い性格をしており、志隈をいじめる子供たちを暴力で黙らせていた。地下鉄で謎の怪物(餓獣)に襲われ、車両内で志隈と久しぶりに再会する。正義感が強く、困っている人を助けずにはいられない。弓道部に所属しているために弓を持ち歩いており、地下では弓を使って怪物と戦う。ネズミを大の苦手としている。
社長 (しゃちょう)
とある中小企業を経営する女性。胸元の大きく開いたドレスを着た美女で、朝から酔っ払って、社員の岸本と共に地下鉄に乗車していた。志隈たちと同じ地下鉄車両に乗り合わせ、怪物(餓獣)に襲われる。毒舌家でおおざっぱな性格ながら、機転がきくために怪物から生存者を何度も助けている。
岸本 (きしもと)
社長に雇われている社員の男性。社長と飲んだ朝帰りの地下鉄に乗車していた。志隈たちと同じ地下鉄車両に乗り合わせ、怪物(餓獣)に襲われる。わがままな社長にいつも振り回されているが、社長への忠誠心はゆるぎない。
雄大 (ゆうだい)
小学校低学年と思われる男の子。祖母といっしょに地下鉄に乗車していた。志隈たちと同じ地下鉄車両に乗り合わせ、怪物(餓獣)に襲われる。祖母は怪物に命を奪われてしまうが、雄大は志隈たちに助けられ、幼いながらも生き残るために必死にがんばっている。
等々力 (とどろき)
娘の結婚式に出席するために地下鉄に乗車していた中年の男性。志隈たちと同じ地下鉄車両に乗り合わせ、怪物(餓獣)による襲撃を受けて車両内から脱出する。脱出時に脚を負傷してしまう。
ギャル
とある高校に通っている女子。好きなバンドのおっかけをしているギャルで、志隈たちと同じ地下鉄車両に乗り合わせ、怪物(餓獣)に襲われる。怪物に襲われて脱出を試みる状況においても、どこか気だるげな様子を見せる。率先して人を助けるようなタイプではないが、幼い雄大を見捨てることなく、救いの手を差し伸べる。
成田 (なりた)
志隈と同じ高校に通っている男子。不良学生で、クラスメートの志隈から、よく金を巻き上げている。志隈たちと同じ地下鉄車両に乗り合わせ、怪物(餓獣)に襲われる。地下鉄内がパニックに陥ったあとも、死体を漁って金品を奪っていた。その行為を咎めた睦月に暴力を振るう。
撮影する男 (さつえいするおとこ)
謎の多い男性。怪物(餓獣)に襲われながらも、冷静に動画撮影を続け、動画サイトにアップロードして広告収入で稼ごうとしている。ほかの生存者たちとはいっさい協力せず、一人で行動して撮影を続けている。一度は単身、地上への帰還に成功したものの、さらなる動画ネタを求めて再び一人で地下へと戻る。
村田 桜 (むらた さくら)
スクープを狙う女性記者。地下鉄内で何やら事件が起きていることを嗅ぎ付け、スクープのために志隈を尾行して地下鉄内に入って行った。怪物(餓獣)に襲われ、地下鉄内に入ってきたことを後悔している。
餓獣 (がじゅう)
地下鉄線路内で乗客たちを襲う謎の怪物。巨大な熊のような見た目だが、鉄のマスクや重火器、火炎放射器など、人間によって付けられたと思われる装備を調えた数体が存在する。視力が悪く、聴覚と嗅覚で獲物を捕捉するため、音を立てなければ見つからずにやり過ごせることも多い。何者かによって地上から地下鉄内へ搬入され、多数の人間を食い殺しているが、その目的等はいっさい不明。