高橋葉介傑作集 マンイーター

表題作「マンイーター」を含む、12の怪奇エピソードを収録したオムニバス作品集。ぶんか社刊行の「月刊ホラーM」1994年9月号から1997年5月号までに掲載された11エピソードに加え、「マンガ少年」1979年3月号に掲載された「荒野」を収録している。

正式名称
高橋葉介傑作集 マンイーター
作者
ジャンル
ホラー
レーベル
ぶんか社コミックス(ぶんか社)
巻数
全1巻完結
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あらすじ

マンイーター

何百年も生きているが見た目は若く美しい女性のは、声をかけてくる身体目当ての男性を逆に食して生きている。人に似ているが人ではない人喰いの私にとって、何百年もの間、狩りはずっと容易なものだった。そんなある時、街角で私は青年に惹かれて珍しく自分から声を掛け、これも珍しいことにその青年と性交までしてしまう。そんな気まぐれを自らもおかしなことだと戸惑いながらも、事後に青年を食べようとすると、彼は思わぬ豹変を見せ逆に私を襲う。実は同族だった青年を返り討ちにした私は、同族の共食いは禁忌という掟に背いてしまったため、恐ろしい報いを受ける。

肉蟲

若く美しい女性のユミは、恋人のヒロシを知人のレイコに奪われてしまった。それ以来、一人暮らしの部屋に籠って何か月もひたすらヤケ食いをしている。今では肉の塊になり、美人の面影はなくなったと共通の知人から伝え聞いたレイコはよこしまな好奇心からユミのもとを訪ねる。そこで待っていたのは、鍵も掛けず、異様な肉の塊になった裸体をさらしたユミだった。太り続けたユミの目的は復讐で、思いも寄らぬ方法でレイコは報いを受ける。

お気に召すまま

若く思い込みの激しい女性ヒロミは、クールでカッコいい青年タカヒロの恋人になるために、数多くいたライバルに怪我をさせてまで、ようやく映画に誘ってもらえるようになった。だがタカヒロは執着がなく、ヒロミの名前すら憶えようとしない。そんな彼に少しでも気に入られようと、ヒロミは言いなりに身体を改造していく。胸の豊かな女性がいいと言われればシリコンを入れ、少し背の低い子がいいと言われれば両足首を切り落とす。ところが、何でも言いなりになる自主性のない女の子は嫌いだとタカヒロに振られてしまい、絶望したヒロミは自殺を図る。望みどおりに死にきれず、ぼろぼろのつぎはぎだらけの人形のようになって生き返ったヒロミは、もう一度、タカヒロの愛情を得ようとある計画を実行に移す。

双子の恋

ツインテールの若い女性ヒトミの恋人は、若い男性の双子ケンイチケンジで、彼らはまるで同じ人間のようにそっくりだった。いつも3人でデートをしていたが、別れ際に双子はどちらが好きか決めて欲しいと訴え、ヒトミは選べないと泣いて喧嘩別れになるのがいつものことだった。このままでは何も解決しないと考えたケンイチとケンジは、重大な決心をする。同じタイミングでヒトミもあることを思いつき、これから訪ねてくる双子のために準備をして待つと伝える。

パパはあなたが嫌いみたい

結婚の許可をもらいに来た安達美和子の交際相手を、美和子の父は、道案内のため出迎えに来ては途中で油断させて殺すことを繰り返していた。そんな父親を怪しみ、交際相手の振りをして父親の案内を受けてみた美和子は、父親から斧で襲撃されてしまう。傷つけた後でそれが変装した娘だと気付いた父親は自殺し、美和子は何とか一命を取り留める。そんな辛い過去を打ち明けた美和子に、新しい交際相手の卓也はプロポーズするが、彼の家もまた訳ありの家庭だった。

きつね

は夜道を歩いていた。そんな暗い道に人影がもう1つ、それは後ろから離れて付いて来るだった。女は男のことを痴漢ではと疑い、男は自分が痴漢と思われては困ると、誤解を解くために女を追い抜こうとする。ところが2人はいつまで経っても距離を縮めることができず、足は勝手に動き続ける。そのうちに、女には男の顔が、男には女の顔が互いに狐に見え始めた。

似たもの同士

女子高校生の黒岩比喜子は、幼少期から同い年の白川多恵子が嫌いだった。お互い趣味が似ていて、そして負けず嫌いで常に勉強やスポーツで争っていたものの、まったく互角でいつも決着がつかない。最近では片方が怪我をすればもう一方も同じところを怪我するようになり、不気味に感じてますますお互いを疎んじるようになっていた。そんな時に、多恵子が比喜子も好意を寄せていた男子生徒の富岡修一と交際を始める。嫉妬にかられた比喜子は、彼らのデートの前日に冷水シャワーを浴びて、発熱で寝込むことで多恵子も共倒れにさせることを計画する。

首を吊っているのは誰?

女子学生の岡田は教室である怪談話をしていた。話のなかで、夜の学校の廊下を1人で歩いていた岡田は、後ろから足音も立てずにやって来た女生徒に横から追い抜かれる。足音に気づかなかったのは、その女生徒が首を吊って宙に浮いていたからだった。そして岡田の前でゆっくりと振り返った女生徒の顔は、知っている子のものであった。ここまで話したところで始業となり、話は切り上げになってしまった。その帰り道、岡田に中尾が声をかけてくる。「首を吊っていたのはあたしだったんでしょう?」と彼女は語るが、その言葉通りに首に縄が巻き付き、首吊り死体に変化していく。その変貌を見た岡田はとっさに、首を吊っていたのは同じクラスの杉下加代子だったと告げる。途端に中尾はいつもの姿に戻って、すたすた歩き去ってしまった。

猫の実

女子学生の双葉はある夏の日、人気のない草むらで、乱暴されて殺された若い女性の死体を発見する。近くですれ違った男は1人しかおらず犯人は明らかだったが、双葉は通報もしなかった。ただ興味を引かれるままに何度も死体を見に通い、やがて腐敗し始めた死体の口から草の芽が出てきたので双葉はそれを摘んで持ち帰る。庭に植えた芽はなかなか育たなかったが、たまたま通りかかった野良ネコを思いつきで殺し、埋めたうえに移植したところ大きく育ち、やがて実を結んだ。

フタバ

女子学生のフタバは、同性のキタガワユミコから教室でキスを迫られ、それを拒んでユミコの小指の骨を折ってしまう。ユミコの傷も癒えないうちに、フタバは交際を申し込んできたスズキコウジと付き合い始める。その様子を見たユミコは嫉妬し、コウジを刺殺したうえで、フタバ目がけて飛び降り自殺をした。それ以来、ユミコの幽霊がフタバに付きまとうようになる。

コインロッカーベイビー

女子学生の「あたし」は学校の帰りにコインロッカーで赤ン坊を見つける。既に衰弱して泣き声も出さないその子を、「あたし」は公園の池に捨ててしまう。それからしばらく経って池のほとりを通りかかると、水面から「あたし」を見上げる顔があった。それは水の中の生活に適応した鱗を持った赤ン坊で、「あたし」を見上げて嬉しそうに笑いかけてくるのだった。

荒野

青年の「私」は、自分が1人で荒野を歩く旅人になる夢を幾度も見る。旅人である「私」は、荒野の果てに緑あふれる土地があることを知っていた。だが、そこまでたどり着けるだろうかと疑問に思うところで、いつも目覚めていた。ところがある時、夢で旅人は急速に年老いて荒野の中で死んでしまう。それ以降、「私」はその夢を見なくなった。その後、上司の紹介で結婚した「私」に、自分に似た息子が生まれる。そして「私」は、ある日再び、何年かぶりに荒野を歩く旅人の夢を見る。

登場人物・キャラクター

(わたし)

エピソード「マンイーター」に登場する。異性からの誘いがひっきりなしの、美しく若い女性。自分を誘ってきた相手を逆に食して生きている存在で、人に似ているが人ではない、何百年もの時を生きるものである。素手で成人男性を引き裂き、肉を貪り骨をかみ砕き血をすするのが彼女の捕食行動で、それを可能とする力強い肉体を持っている。種族の掟で、マンイーター同士の共食いは禁忌とされている。

ユミ

エピソード「肉蟲」に登場する。同性からも「結構美人」と言われている整った容姿の若い女性。恋人のヒロシを知人のレイコに奪われたことを恨み、何か月もかけて、復讐の計画の準備を整える。

ヒロミ

エピソード「お気に召すまま」に登場する。若い女性で、クールでカッコいいタカヒロに夢中になっている。何事も徹底しないと気が済まないタイプで、タカヒロの理想の恋人になるために捨て身で言われるままに尽くしたが、逆に主体性がないと振られてしまう。

ヒトミ

エピソード「双子の恋」に登場する。見た目も性格もそっくりな双子の青年ケンイチとケンジと同時に交際している女性。好きな相手が見た目も中身もそっくりな双子なので、どちらか1人を選ぶことができずにいつも悩んでいる。

安達 美和子 (あだち みわこ)

エピソード「パパはあなたが嫌いみたい」に登場する。髪の長い、若い女性。美和子の父に男手一つで育てられた一人娘で、父親に溺愛されている。

(おんな)

エピソード「きつね」に登場する。髪の短い若い女性。暗い夜道を歩いて帰る途中で、後ろを歩く若い男に気付いた。実際は帰る方向が同じだっただけだが、痴漢だと誤解して走って逃げようとする。

(おとこ)

エピソード「きつね」に登場する。異性の気を引くほどでもない平凡な容姿の若い男性。帰宅が遅れて暗い夜道を帰る途中、たまたま同じ道の先を歩いていた若い女に痴漢に間違われてしまう。

黒岩 比喜子 (くろいわ ひきこ)

エピソード「似たもの同士」に登場する。前髪が長い、負けん気の強い女子高校生。同い年の白川多恵子とは幼い頃から仲が悪い。趣味が同じで、幼い頃は同じおもちゃを取り合い、高校では1人の男子生徒・富岡修一を奪い合った。不思議なことに、黒岩比喜子が怪我をすれば多恵子も同じところを怪我する。

岡田 (おかだ)

エピソード「首を吊っているのは誰?」に登場する。少し背中に髪がかかる位のヘアスタイルの女子学生。クラスメイトを始業のベルに気付かないほどに怪談話の世界に引き込む話術に長けている。

双葉 (ふたば)

エピソード「猫の実」に登場する。髪を顎のあたりでランダムに切った女子学生。危険なことも楽しんでしまう性格の持ち主で、学校をさぼって猫の死体を眺めて過ごし、死体から生えた草の芽を摘んで家に持ち帰って植えるなど、興味の対象が特殊。

フタバ

エピソード「フタバ」に登場する。髪を顎のあたりでランダムに切った女子学生。交際を申し込んできた相手の気持ちを平気で踏みにじり、嫉妬により死者まで出してしまうもそれを面白がるなど、不謹慎で残酷な性格。

あたし

エピソード「コインロッカーベイビー」に登場する。感情豊かで適度に遊び友達もいる、今時の女子学生。本名は「フタバ」。コインロッカーで見つけた赤ン坊を、魚の餌になるだろうと公園の池に捨てた。予想に反し、池での生活に適応して鱗の生えたバケモノになった赤ン坊に懐かれてしまう。

旅人

エピソード「荒野」に登場する。真面目な勤め人の青年の「私」の夢の中に現われる、自身の投影された姿。夢の中では、いつも太陽の照り付ける乾いた荒野を歩いている。「私」であり、「私」が結婚後に生まれた「息子」の姿でもある。

青年 (せいねん)

エピソード「マンイーター」に登場する。整った顔立ちの青年。若く魅力的な女性である私に声を掛けられて性交に至るが、直後に変身し彼女に襲い掛かった。実は青年も女性と同族の人喰いだが、マンイーターのオスはメスより弱く、負けて殺されてしまう。

レイコ

エピソード「肉蟲」に登場する。若く美しい女性だが、人の恋人を横どりするのが趣味で、知人のユミの恋人であったヒロシを奪った。それに傷ついたユミが部屋に何か月も籠ってヤケ食いし、豚みたいになったと聞いて確かめに行く性悪な女性。

ヒロシ

エピソード「肉蟲」に登場する。元恋人に出会ってまごつくような、押しに弱い青年。もともとはユミと交際していたが、今はレイコと付き合っている。

タカヒロ

エピソード「お気に召すまま」に登場する。クールでカッコいいと多くの女性にモテる若い男性。女性に対する要望が多く、理想の女性が時によってころころ変わる軽薄な性格。

ケンイチ

エピソード「双子の恋」に登場する。若い男性で、双子でまったく区別のつかないほどそっくりなケンジと暮らしている。ケンジとは同じ体格で同じ趣味、喧嘩の強さも女性の好みも同じ。そのため、ツインテールの若い女性ヒトミとケンジを交えて3人で交際しているが、どちらかに決めて欲しいと思っている。

ケンジ

エピソード「双子の恋」に登場する。若い男性で、双子でまったく区別のつかないほどそっくりなケンイチと暮らしている。ケンイチとは体格から趣味、女性の好みまでまったく同じ。そのため、ツインテールの若い女性ヒトミとケンイチを交えて3人で交際しているが、彼女にどちらかに決めて欲しいと思っている。

美和子の父 (みわこのちち)

エピソード「パパはあなたが嫌いみたい」に登場する。安達美和子の父親。背が低く、大きく開けた口とぎょろりとした目が特徴で、娘の美和子とは似ていない。男手一つで育ててきた娘の美和子を大事に思うあまり、結婚の許可をもらいに来た美和子の交際相手を密かに殺害し続けている。

卓也 (たくや)

エピソード「パパはあなたが嫌いみたい」に登場する。落ち着いた口調のどこか陰のある青年。結婚を申し込んでいる安達美和子の過去の凄惨な話を聞いても動じなかった。

卓也の母 (たくやのはは)

エピソード「パパはあなたが嫌いみたい」に登場する。卓也の母親で、卓也によく似た顔だちをしている。卓也を女手一つで育て上げ、彼を溺愛するあまり手放したくないと思っている。

白川 多恵子 (しらかわ たえこ)

エピソード「似たもの同士」に登場する。後ろ髪が長い、勝気な女子高校生。同い年の黒岩比喜子とは幼い頃から仲が悪い。趣味が同じで、幼い頃は同じおもちゃを取り合い、高校では1人の男子生徒・富岡修一を奪い合った。最近では比喜子と同じ時期に同じところを怪我するようになって、口にはしないがお互い不気味に思っている。

富岡 修一 (とみおか しゅういち)

エピソード「似たもの同士」に登場する。女子高校生黒岩比喜子と白川多恵子と同じ学校の男子生徒。最初は多恵子と付き合っていたが、しばらくして比喜子と交際を始めた。

中尾 (なかお)

エピソード「首を吊っているのは誰?」に登場する。少し目つきの険しい女子学生。クラスメイトの女子・岡田の怪談話が、首を吊った女生徒の正体を言わないままで終わったことを気にし、下校途中の岡田に「首を吊った女生徒は自分だったのではないか」と尋ねる。

杉下 加代子 (すぎした かよこ)

エピソード「首を吊っているのは誰?」に登場する。眼鏡をかけたショートヘアの女子学生。クラスメイトの岡田が語った怪談話の中で、首吊っていた女生徒は杉下加代子だったと言っていたことを中尾から伝え聞いた後、加代子の身に異変が起こり始める。

キタガワ ユミコ

エピソード「フタバ」に登場する。控えめな口数の少ない女子学生。同じ学校の女子学生フタバが好きで、教室でキスしようとしたが、無言で小指の骨を折られて拒否された。クラスメイトの男子スズキコウジの交際申し込みをフタバが受けるのを見て嫉妬からコウジを殺害した。

スズキ コウジ

エピソード「フタバ」に登場する。フタバと同じクラスの男子生徒。フタバの雰囲気に惹かれてラブレターを出したが、名前すら憶えてもらっていない。しかも会話を重ねるうちにフタバの独特の感覚にたじろぎ、自ら「もう付き合ってなんて言わない」と申し出を撤回した。

赤ン坊 (あかんぼう)

エピソード「コインロッカーベイビー」に登場する。女子学生の「あたし」がよく使うコインロッカーに捨てられており、発見された時には衰弱して泣きもしなかった。その後「あたし」に公園の池に捨てられるが、そこでの生活に適応したのか、鱗まで生やした生き物に成長する。インプリンティング(刷り込み作用)によって、「あたし」のことを親だと思い、見かけると嬉しそうにしている。

書誌情報

高橋葉介傑作集 マンイーター 全1巻 ぶんか社〈ぶんか社コミックス〉 完結

第1巻

(2014年2月5日発行、 978-4821175390)

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