概要・あらすじ
身寄りを失くした鈴原心、鈴原夢の兄妹は、海に囲まれた島の鬼燈学園へとやって来た。他の子供たちはわずか4人、教師を含めても合計で10人しかいない島での生活に馴染めるか心配していた2人だったが、自然豊かなその島の姿を見るにつけ、彼らの胸は躍っていた。だが島にやって来た初日の夕飯の際、須藤力也は心に島で暮らすための心得を語り出す。
それは決して大人の言うことを信じてはいけない、さもなければ死んでしまう、というものであった。最初は半信半疑だったものの、血にまみれた机の引き出しと、その中にあったナイフ、さらに教師たちの不審な行動を見て、心は徐々に疑いを強めていく。
登場人物・キャラクター
鈴原 心 (すずはら こころ)
妹の鈴原夢とともに、島の鬼燈学園へやって来た小学4年生の少年。島へ来る前は母親と3人で暮らしていたが、母親は「出かける」と言ったまま二度と帰って来なかった。その経験と母親が残した「夢のことを頼んだわね」という言葉から、何としても妹のことを守ろうと心に決めている。昆虫のことに詳しく、見ただけで名前や生態を言い当てることができる。 島での生活を楽しもうとしていたが、須藤力也の言葉と次々に起きる奇怪な事件を経て徐々に大人を疑い始め、島からの脱出を決意する。
鈴原 夢 (すずはら ゆめ)
鈴原心の妹で、年齢は5歳。心とともに、島の鬼燈学園へやって来た。目が見えず、普段は杖をついて生活している。その代わりに耳や鼻の感覚が鋭く、足音だけで人を判別することができる。素直な性格で、年上の宮澤初音ともすぐに友達になった。島での生活を楽しんでいたが、心や他の生徒たちとともに脱出行に加わる。
須藤 力也 (すどう りきや)
鬼燈学園の生徒の中では、最年長となる小学6年生の少年。両親はともに服役中で、そのことを他人に知られないように嘘を重ねたせいで、虚言癖や妄想癖があると思われている。鈴原心が来る前から学園の教師たちが隠しごとをしていることに気づいていた。出会った初日の夜に心に忠告をし、仲間である証のミサンガを渡して、心と協力して島内を探索する。 だが後日、雨の中探索に出たのを最後に姿を消してしまう。この時、鉈を片手にした豊田たちに担架で運ばれる血だらけの須藤力也の姿が、心たちに目撃されている。
藤井 秀一郎 (ふじい しゅういちろう)
鬼燈学園の生徒で、10歳の少年。IQ150の天才。島へ来る前は母親と二人暮らししていた。ある日心中を図った母親とともに車ごと崖から落下し、藤井秀一郎自身は一命は取り留めたものの、その事故がトラウマになって大人を敵視するようになった。また心中の前にチキンステーキを食べたこともトラウマとなっており、鳥料理を食べると吐いてしまう。 須藤力也とは別の視点で島の謎を探っており、甲斐雪乃に決して登ってはいけないと言われていた階段を登り、秘密の部屋を見つけた。自分たちが保険金目当てで殺されるのではないかと推理していたが、血だらけで運ばれた力也を見て自分の考えが正しいと確信。鈴原心たちに島からの脱出を提案し、準備に取り掛かる。
宮澤 初音 (みやざわ はつね)
鬼燈学園の生徒で、11歳の少女。失語症で一言も話すことができず、コミュニケーションを取る際は身振り手振りと筆談を利用する。これはギャンブル狂いの父親から折檻を受けていたことが原因であり、以前は歌うことが大好きな明るい少女だった。音楽が得意で笛の演奏が上手く、これをきっかけに鈴原夢とすぐに友達になった。年齢の割に発育が良く、桑舘からは性的な目で見られている。 鈴原心たちとともに脱出を決意し、逃げ出す当日の夜に、教師たちの夕飯に睡眠薬を盛った。
八海 太 (はっかい ふとし)
鬼燈学園の生徒で、10歳の少年。両親を事故で失ったことがトラウマになり、現実から逃げようとして過食症になってしまった。普段から菓子をつまんでおり、菓子がなくなると不安で叫び出す。須藤力也たちと同じく、島の大人たちが隠しごとをしていることに気づいている。その根拠は明確で、鈴原心が来る前にクラスメイトだった高知久信が、桑舘に殺されるところを目撃したからである。
甲斐 雪乃 (かい ゆきの)
鬼燈学園の女性教師。担当科目は保健体育。島にはまだ赴任したばかりで、生徒たちのことを知ろうと資料に目を通したり、積極的にコミュニケーションをとろうとしている。同じく島にやって来たばかりの鈴原兄妹にも話しかけ、鈴原心からも信頼されていた。当初は生徒たちから疑われていなかったが、ある日の夜、校内を歩いていた藤井秀一郎を木刀を持って追っていたところを心に見られ、他の教師と同じく敵視されていく。
桑館 (くわだて)
鬼燈学園の男性教師。メガネをかけた、冷たい印象を感じさせる人物。教師でありながら言葉遣いが荒く、生徒たちに対して汚い言葉を使ったりもする。また特殊な性癖の持ち主で、女性の下着を盗んでは臭いをかいでいる。その矛先は同僚の甲斐雪乃や、生徒の宮澤初音にも向いている。特に初音に対しては強く執着しており、1人で行動しているところを襲おうと狙っている。 他にも血だらけの須藤力也を運んでいるところや、高知久信を殺すところを生徒たちに見られているため生徒から強く敵視されており、脱出の際にも要注意人物としてマークされていた。
臼井 (うすい)
鬼燈学園の男性教師。寡黙な性格で、あまり多くを語ろうとしない。普段は老朽化した学園の屋根を修理している。他の教師たちと同じく、血だらけの須藤力也を担架で運ぶところを鈴原心たちに目撃されており、敵視されていた。だがある日の午後、学園を探索していた心と藤井秀一郎によって、死体で発見される。
豊田 (とよだ)
鬼燈学園の学園長を務める男性。鈴原心たちのような身寄りのない子供を集め、教育している。だが須藤力也たちには隠しごとをしていると疑われており、事実、普段は島の裏山に赴いて何かをしていた。力也は裏山には炭鉱があり、そこで学園を運営するための金を掘っていたのではないかと推理していた。心たちが脱出する夜に食事に睡眠薬を盛られるが、甲斐雪乃によって起こされ、島を逃げ出そうとする生徒たちを捕まえようと動き出す。
高知 久信 (たかち ひさのぶ)
鈴原心がやって来る前に鬼燈学園にいた男子生徒。もともと彼が暮らしていた部屋で、鈴原兄妹が寝泊まりすることとなった。須藤力也の忠告を受けて不安になった心が「久信」と名前の書かれた机の引き出しを開けると、中にはナイフとたくさんの血がこびりついていた。高知久信は島の秘密を知ったせいで殺されたと力也は語っており、八海太は実際に桑舘が久信を殺すところを目撃している。
女の子の幽霊 (おんなのこのゆうれい)
鈴原心たち生徒が目撃する幽霊。さまざまな場所に現われ、教師たちから隠れる場所を示したり、逃げ続けて空腹になった八海太を野いちごが実る場所へ導いたりと生徒たちに協力的。その正体について藤井秀一郎は、以前教師たちによって殺された生徒の霊なのではないかと推理している。
場所
鬼燈学園 (ほおずきがくえん)
鈴原心たちが通う学園で、周りが海に囲まれた島にある。ちなみに島内の施設は鬼燈学園と港しかない。学園名の由来は島のあちこちにホオズキが自生していることからで、ホオズキがヨーロッパで「妖精のランプ」と呼ばれていることにちなみ、「ランプのように子供たちを照らし続けたい」と豊田学園長が命名した。生徒たちは学園内に部屋を用意されており、そこで寝食をともにする。 甲斐雪乃によると、かつては多くの生徒が暮らしていたというが、現在は教師も含め10人しかいない。施設も老朽化しており、普段から臼井が屋根の修理などをしている。