魍魎の揺りかご

魍魎の揺りかご

豪華客船オーシャンクレイドル号で修学旅行の帰途についていた高校生たちが、突如沈み始めた船内に閉じ込められる。さらに船内には、凶暴な殺人者と化した乗客が徘徊していた。そんな極限状態でのサバイバルに挑む少年たちの姿を描いた戦慄のサスペンス作品。「ヤングガンガン」平成22年9号から平成24年17号にかけて不定期に掲載された。

正式名称
魍魎の揺りかご
ふりがな
もうりょうのゆりかご
作者
ジャンル
サスペンス
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概要・あらすじ

修学旅行の帰りの航路で、学生たちの乗った大型客船オーシャンクレイドル号は突然強く揺れ、少しずつ沈没を始めた。船底を空に向けるかたちで転覆してしまった船内から脱出するためには、船底に向かって上っていくしか道は残されていない。しかし沈みつつある船内には殺人鬼まで現れ、生存者を無差別に殺してはその肉を食し徘徊していた。

生き残った滝川優矢鮎川真琴春日日明宮村華菜らの一行は、他の生存者を捜索しつつ殺人鬼を避け、各々の特性を活かして支え合いながら脱出を試みる。

登場人物・キャラクター

滝川 優矢 (たきがわ ゆうや)

高校の男子生徒。クラスの中では特別印象に残る感じではなく、至って平均的な容姿をしている。サーカス団に所属しており、身体能力に優れる。転校を繰り返し、友人ができてもすぐに別れなければならない環境で育ったために、自ら一歩引いた立ち位置で学校生活を送っている。人となかなか打ち解けようとしないが、ひとたび仲間と認めた相手は、自分の身を危険に晒してでも助けようとする情に厚い面がある。

鮎川 真琴 (あゆかわ まこと)

高校の女子生徒。髪型は茶色のボブヘアで、前髪をピンでまとめている。水泳部に所属しており、泳ぎに自信を持っている。助け合い、支え合う行為を当然のことと考え、自然に手を差し伸べる仲間想いな性格。当初は滝川優矢に反発していたが、のちに言葉ではなく態度で示す彼なりの優しさを理解し、心から信頼を寄せるようになる。

宮村 華菜 (みやむら かな)

高校の女子生徒。黒髪ツインテールのヘアスタイルにきつい目つきをしている。自身が凶暴な殺人鬼になってしまう寄生虫に冒されたことを知りながら、自分だけが辛い目に遭うのが我慢できずに周りを巻き込んだ自己中心的な性格。その性格ゆえに行動をともにする滝川優矢や春日日明に対しても不平不満を言うばかりで協力を惜しみ、周りの状況も考慮せずわがままを言っては、幾度も周囲の足を引っ張る。

鈴原 夢 (すずはら ゆめ)

高校の女子生徒。ショートヘアで、行きずりの青年の興味を引くほどの美人だが、盲目。目が見えない分、他の感覚に優れており、他人の感情に敏感で思いやりもある。滝川優矢とは中学時代からの知り合いで、仲がいい。

春日 日明 (かすが あきら)

高校の男子生徒。黒髪で少し長めの前髪を真ん中あたりで分けており、身長の高い大人びた風貌をしている。丁寧な口調で物腰も柔らかい。周囲には、自身を善良なフェミニストであるかのように上手く印象付けている一方で、自分が生き残るため、危険因子は極力排除しようとする。その内面は自己中心的で冷酷な思考の持ち主であり、他人を道具のように扱う。

縞田 (しまだ)

高校の男子生徒。足が不自由で車椅子を使っている。茶色の前髪が左目を覆うほどに長いのが特徴。船内の脱出経路を探す春日日明らに行き会ったが、春日に足手まといだと言われ、置いて行かれるのも当然と同行を一旦は諦めた。しかし、滝川優矢が春日らに反論したことで、縞田もともに行動することを許された。他者の様子を普段から冷静に良く観察している。

ハンナ

豪華客船オーシャンクレイドル号の女性従業員。年齢は、高校生である滝川優矢たちと同じくらいで、濃い肌の色と黒髪のロングヘアが特徴。長い航海生活の中で、滝川や鮎川真琴とも名を呼び合うほどに親しくなった。

俊助 (しゅんすけ)

短い黒髪に半袖シャツ、釣りズボン姿の幼い男の子。母親と2人で豪華客船オーシャンクレイドル号に乗っていた。船が沈没を始めた際、母親は俊助を助け、上に上がって行くようにと言い残して溺死した。言いつけを守って上への避難経路を探し、鮎川真琴や滝川優矢と合流する。幼いながらもとっさの機転が利く、利発な少年。

芹沢 (せりざわ)

高校の男子生徒。茶髪をオールバックにして逆立て、大きな十字架のペンダントを下げている。殺人鬼は感染性のもので、また治癒能力が高くなることに気付き、それを見分けるため、自身の取り巻きの生徒にペンダントの十字架を炙った焼き印を左手の所定の場所に押させた。焼き印がない者は感染者と見なして殺すと宣言し、賛同しなかった委員長の西島を躊躇いなく自らの手で殺して、取り巻きにも他人の足を引っ張るものは切り捨てると言い放つ。 生き残るために効率よく危険を排除しているとうそぶくが、実際は自身の生存欲求を最優先に身勝手に振る舞っているだけの傲慢な人物。

大河原 (おおかわら)

高校3年生の男子生徒。ほぼ坊主頭に近い短髪で、体格がいい。芹沢の班員で行動をともにしていたが、十字架狩りに出くわした際に芹沢に囮として利用され、逃げる途中で死んでしまう。

坂田 (さかた)

高校3年生の男子生徒。サングラスをかけて髪を長めにした軽薄そうな見た目で、芹沢と同じ班に所属している。臆病で小心な性格で、不安定な足場を渡るのを渋ったために小雪澤を巻き添えにして危険に晒した。そのため、見せしめに芹沢に突き落とされ、殺された。

小雪澤 (こゆきざわ)

高校の男子生徒。医者を志望している。小柄で華奢な外見で、極限状態でも他者を気遣える優しい性格。恐怖感から芹沢と行動をともにしているが、芹沢の他人を一切思いやらない考え方には納得していない。

西島 (にしじま)

高校の男子生徒。委員長を務めており、責任感が強く面倒見も良く、人望が厚い。しかし焼き印を押し、その有無のみで殺人鬼の感染者を見分け、感染者は即座に殺すという芹沢の意見に反発して殺された。

十字架狩り (くろすはんたー)

長身の壮年男性。妻とともに豪華客船オーシャンクレイドル号に乗船していた。剣の達人で、芹沢の提案に賛同し、腕に十字架の焼き印を押したメンバーを殺して回っている。その目的は、焼き印の仕組みを知らずに非感染者なのに殺されてしまった人の敵討ちの行動ではないかと、芹沢は推察している。

新庄 (しんじょう)

高校の若い女性教師で、滝川優矢や春日日明の担任を務めている。病に倒れた母親の治療費を全額持つことを条件に、学園長に命じられ、修学旅行先のアフリカから寄生虫に感染した猿の密輸に加担してしまう。ただし、新庄自身には、この計画の詳しい内情は知らされていない。

藤倉 波瑠 (ふじくら はる)

高校の女子生徒。金髪のロングヘアで、黒いぴったりしたデザインのニットキャップを被り、制服の丈を上下とも短く改造した、露出度の高い派手な容姿をしている。芹沢の班員で行動をともにしているが、恐怖で人を束ねるやり方には戸惑いを感じている。安西摩魅と仲がいい。

安西 摩魅 (あんざい まみ)

高校の女子。癖のある黒髪をポニーテールにした髪型で、制服の丈を上下とも短く改造した、露出度の高い派手な容姿をしている。褐色の肌と肉感的な唇が特徴。芹沢の班員で行動をともにしているが、恐怖で人を束ね、足手まといは即座に見捨てる彼の振る舞いに次第に疑問を抱くようになっていく。藤倉波瑠と仲がいい。のちに小雪澤の人柄に好意を寄せるようになる。

場所

オーシャンクレイドル号 (おーしゃんくれいどるごう)

地上8階、地下3階の大型客船。全長190メートル、全幅24メートル、総トン数29540トン。乗務員は180人、乗客定員は650人。実は春日日明の父親が設計した船であり、そのため春日は詳細な内部構造を知っていた。春日によれば、今回の乗客は300人ほど。

その他キーワード

殺人鬼 (さつじんき)

豪華客船オーシャンクレイドル号に突然現れた、人間離れした力を持つ存在で、無差別に人を殺して回っている。芹沢や滝川らの調査により、寄生虫に感染した結果、殺人鬼になることが明らかになった。実は生物兵器の実験台であり、オーシャンクレイドル号は殺人鬼を観察するための実験室であった。データを取り終え、用済みになった後は、証拠隠滅のため船もろとも爆破された。

寄生虫 (きせいちゅう)

人間の後頭リンパ節と脳幹のあたりに巣食い、中枢神経系に作用して人格や行動に異常をもたらす寄生虫。医者を目指している小雪澤が、殺人鬼を解剖した際に発見した。人の拳位の大きさで、はっきりと目視できる異様なサイズ。口移しで寄生する人体を行き来することが可能で、宿主の人間が弱ると他の身体に移ろうとする。

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