魔法使いで引きこもり?

魔法使いで引きこもり?

小鳥屋エムの小説『魔法使いで引きこもり?』シリーズのコミカライズ作品。過去のトラウマから人とのかかわり合いを避けて生活し、90歳で孤独死した「愁太郎」は、生前に積み重ねた数多くの善行を評価され、神様の勧めで異世界にシウ=アクィラとして転生することとなった。チート級の能力を持ちながらも、前世と同じく人に対して心を開かず、精神的な引きこもり状態にあったシウが、さまざまな友人たちの温かさに触れて成長していく姿を描く、スローライフ転生ファンタジー。物語の進行に応じてサブタイトルが変化し、コミックス第1巻~第3巻は「~モフモフ以外とも心を通わせよう~」、第4巻~第5巻は「~モフモフと学ぶ魔法学校生活~」となっている。「コミックアライブ」2018年8月から2021年2月号にかけて掲載された作品。

正式名称
魔法使いで引きこもり?
ふりがな
まほうつかいでひきこもり
原作者
小鳥屋 エム
作者
ジャンル
転生
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

旅立ち

90歳で孤独死した「愁太郎」は、生前、わが身を顧みず人々に親切にし、熱心に働いたことを神様に高く評価され、同時に童貞のまま死んだことを憐(あわ)れまれて、異世界への転生を勧められる。こうして愁太郎は前世の記憶を持ったまま、シウ=アクィラとして異世界に生まれることとなった。転生にあたり、シウは神様の計らいで半ば強引にさまざまなチート級の能力を授けられたが、ほとんどそれらに頼ることなく日々を過ごしていた。11歳になった年、育ての親であるヴァスタが亡くなったことを機に、シウは「子ども冒険者」となる。コレルの街の宿屋に身を寄せ、子ども冒険者として小さな仕事をこなしつつ、さまざまな技術の研鑽(けんさん)を積んでいたシウは、ある日、特殊な個体の魔獣が生まれるという卵石を入手。そして、そこから騎獣を孵(かえ)すことに成功し、パートナーを得たシウは近く旅立つことを決意する。そんな中、シウは宿屋の娘、リシェの紹介で、パン屋「ピュアクローゼ」に立ち寄る。するとそこに、パンの素材の飼育場に魔獣が現れたという報告が入る。しかも、それを知ったパン屋の娘、フェリシアが、一人で飼育場に行ってしまったという。心配するフェリシアの姉、シンシアをなだめ、シウはいっしょに行くと言ってきかないリシェと二人、フェリシアの救出に向かう。

王都ロワルへ

卵石から孵った猫型騎獣(フェーレース)は、シウ=アクィラに「フェレス」と名づけられた。生まれてから少し経ち、フェレスの状態が安定した頃、シウはリシェらに見送られ、別れを惜しみながらコレルの街から旅立つ。最終目的地とした王都ロワルに行くお金を稼ぐため、途中にあるソルレア街を目指すことにしたシウは、ソルレア街へと向かう隊商の馬車に乗せてもらうことになる。道中、ヒマを見つけては隊商の仲間たちに隠れて魔法の鍛錬をしていたシウは、ある夜、馬車が魔獣の襲撃を受けた痕跡を発見。隊商から離れて痕跡を追い、生存者を発見したシウは、彼らに隠れて魔法を使って魔獣を撃退し、馬車を修復する。シウが助けたのは、王都ロワルでも名を知られた道具屋を営む「スタン=べリウス」という人物で、彼はソルレア街まで、隊商と行動を共にすることとなった。そんな中、レベル4という高い水準で鑑定魔法を使えるスタンは、シウが希少な空間魔法の使い手であることを見抜き、同時に彼の目的地が王都ロワルであることを知る。そしてスタンは、シウを自分の護衛として雇い、いっしょに王都ロワルへ行こうと申し出るのだった。さらに、シウの勤勉な姿勢はスタンや隊商の仲間たちに好感をもって受け入れられ、シウはソルレア街までの道中で、彼らの教えを得て新たな技術を身につけていく。

冒険者たち

ソルレア街で隊商と別れたシウ=アクィラは、スタン=べリウスに身元を保証してもらい、彼と共についに王都ロワルへと足を踏み入れる。そして、スタンの営む「べリウス道具屋」の離れの一室を借りて、新たな生活を始めることとなった。子ども冒険者として小さな仕事をこなし、充実した日々を過ごしていたシウはある日、一人の女性がしつこい貴族の子弟たちに言い寄られている姿を目撃する。相手が貴族ということもあって周囲の人は見て見ぬふりで、見かねたシウは女性に話しかけてみる。その後、機転を利かせて貴族の男たちから逃れたその女性は、シウに「ラエティティア=アルプス」(ティア)と自らの名を明かし、後日お礼をさせて欲しいと言い残してその場から立ち去るのだった。翌日、仕事を受けようと冒険者ギルドに向かう途中、シウは通りすがりの王立ロワル魔法学院の学院生につまらない言いがかりをつけられてしまう。適当にあしらおうとするシウだったが、そんな彼を助けたのはティアだった。そして彼女はシウに昨日のお礼をしたいと、彼を中央地区の「鷹の目亭」へと誘う。そこには彼女の仲間である冒険者のキアヒ=ディガリオキルヒ=ディガリオグラディウス=ガエルが待っていた。実は彼らは、壊れたグラディウスの愛剣を修復してもらうため、「プリームス」という名の凄腕(すごうで)のドワーフの鍛冶(かじ)師を探していた。だがどうしても見つからず、彼が魔法で擬態しているのではないかと考え、年齢のわりに言動が老成しているシウこそが、実はプリームスなのではないかと疑っていたのである。会話を重ねて誤解を解き、さらに交流を深めていくうちに、キアヒたちは改めてシウの能力を認め、プリームス探しを手伝って欲しいと願い出る。快く引き受けたシウは魔法を使い、プリームスが本当は「アグリコラ」という名前で、現在は農民として暮らしていることを突き止めるが、その際に魔力を大幅に消耗し、無理がたたって倒れてしまう。

騎獣・ルコ

キアヒ=ディガリオたちと会った翌日、元気になったシウ=アクィラが、いつものように依頼を受けるべく冒険者ギルドを訪れると、そこでは騎獣の世話の仕事の引き受け手が見つからず、ギルドの受付と依頼主がもめていた。その依頼が十級ランクであることを知ったシウは、自分が引き受けると申し出る。その後、シウは依頼主であるオベリオ家を訪れて騎獣、ルコの世話を問題なくこなすが、その中で、ルコが主である少女にかわいがられてはいるものの、環境的にあまり大事にされていないことを知るのだった。それから1週間後、今度はシウを指名して、冒険者ギルドに同じ仕事が舞い込む。専任の騎獣調教師を雇う余裕がありながら冒険者ギルドに安く仕事を依頼することや、依頼を持ち込むオベリオ家の副執事の態度が悪いことで、オベリオ家は冒険者ギルド内でも問題視されていたが、シウはこの依頼を引き受けて再びオベリオ家へと向かう。するとそこで待ち受けていた副執事はシウを子どもと侮り、人を人とも思わないような、あり得ない契約を提示して、オベリオ家専属で働くようにと申し付ける。だが、貴族の権威をものともしないシウは、その申し出を拒否。逆上した副執事がシウをさんざんに罵倒していると、そこにオベリオ家の主人であるレイトンが姿を現す。副執事は自分に都合のいいことをまくし立ててシウを処罰するようレイトンに訴えるが、シウは開発中の通信魔法の魔道具を使い、ラエティティア=アルプス(ティア)を呼び出す。そして、木々の声を聞くことができるティアの証言と、いっさいの噓偽りを述べないという「エルフの神の誓い」の宣誓により、副執事のすべての所業がレイトンに明かされることとなる。

誕生祭

王都ロワルで行われる誕生祭の話を聞いたシウ=アクィラは、王都ロワルではなじみのない、シャイターン国の主食である「米」を使った料理の出店を出すことにした。岩猪(いわいのしし)のカツ揚げやシルラル湖のエビの天ぷら、火鳥の肉のカラアゲなど、前世の記憶をもとに考案した料理は当然ながら米との相性も抜群で、シウの店は大いに繁盛する。午後になり、扱うメニューをパンケーキなどのおやつにチェンジしたところで、シウが何か不穏な雰囲気を感じ取ると、そこに彼と同年代くらいのオベリオ家の令嬢、ソフィア=オベリオが、従者を伴って姿を現す。そしてソフィアは開口一番に、オベリオ家の名を汚したとして、傲慢な態度でシウに謝罪を要求する。エミナ=べリウスの宣伝を聞きつけて多くの客がシウの出店にやって来たことで、謝罪の件はいったんはうやむやになったものの、客足が落ち着いたところでシウは呆然(ぼうぜん)としているソフィアに試食用のパンケーキを渡しながら、せっかくの日なのだから、もめ事なしで祭りを楽しんで欲しいと告げる。パンケーキを口にして毒気を抜かれたソフィアは、後日自分の家に来るようにと言い残し、シウの前から立ち去るのだった。そして迎えた誕生祭の最終日、シウは出店を休み、かねてからの約束どおり、ラエティティア=アルプス(ティア)らと共に祭りを楽しむこととなった。そこには、ティアが来ると聞きつけたエミナ=べリウスや、グラディウス=ガエルの友人となったアグリコラの姿もあった。大勢で祭りを楽しむうち、その場にいるメンバーが冒険者や道具屋ということもあり、話題はいつしか貴重な道具に関するものになっていく。そんな中エミナから、祖父のスタン=べリウスが、客に品物を売るかどうかはスタン自身が相手を見て決めること、そしてスタンが認めた者には貴重な品であっても安く譲ることなど、商売人としてのこだわりを聞いたアグリコラは、それこそが「職人」だと口にし、自分の過去を語り始める。

ティアたちとの別れ

誕生祭の日にフェレスを見て気に入ったソフィア=オベリオは、再びシウ=アクィラの前に姿を現し、自分の騎獣、ルコとフェレスを交換するよう申し付ける。騎獣をまるで物のように扱うソフィアのことを憐れみつつ、シウは彼女の申し出をきっぱりと拒否。すると逆上したソフィアは、騎獣は本来は魔法使いと共にあるべきものであること、そして王立ロワル魔法学院に通う自分こそがフェレスの主としてふさわしいことを主張し、フェレスを手放したくないのならば王立ロワル魔法学院に合格して見せろとシウにせまる。騎獣の本来の在りようなど、世の中にはまだまだ自分の知らないことが多いと痛感したシウは、さまざまな知識を身につけるため、王立ロワル魔法学院への入学を決意し、入学試験にも難なく合格する。それから間もなく、王都ロワルでの目的を果たしたラエティティア=アルプスたちは、シウらに別れを告げ、キセラオ街へと旅立つのだった。

王立ロワル魔法学院

王立ロワル魔法学院に入学したシウ=アクィラは、もっとも優秀な第一クラスに在籍することになった。そして、もともと顔見知りで同じ年に入学したリグドール=アドリッドアリス=ベッソールに加え、身分を超えたさまざまなクラスメイトたちと交流を深めると同時に、特例として十級ランクの冒険者に昇格し、冒険者ギルドの仕事にも精を出す日々を送っていた。そんなある日、シウはリグドールに魔法訓練をするため、王都の外の森に付き合って欲しいと誘われる。厳しい教師のケルビル=バッヘムを恐れ、予習をしたいという名目だったが、そこにはリグドールが好意を寄せるアリスに、格好悪い姿を見せたくないという思いもあった。二人は外出許可をもらって森へとやって来るが、そんな彼らの前に、アリスとその従者たちが姿を現す。リグドールの様子を心配していたアリスは、シウから魔法訓練のことを聞き出し、様子を見に来たのだった。訓練を始める前、これまで街から出たことがなかったリグドールは過保護な両親のことを愚痴るが、それを聞いたシウとアリスは、リグドールが患っていた魔力過多症の危険性を語り、両親が彼を心配するあまり、過保護にしていたのだろうと伝える。話を聞いたリグドールは両親への思いを改め、彼らのためにも自ら強くなろうと、シウとの魔法訓練を開始するのだった。迎えた翌日、ケルビルの授業が始まるが、それは実戦練習の名を借りた、庶民出身のシウやレオンたちをいたぶるためだけに考案されたものだった。貴族、商家出身の学院生たちが困惑する中、冷静に状況を分析するシウと、貴族に対して激しい憎しみを抱くレオンは、戦況を優位に進めていく。そんな状況に業を煮やしたケルビルは、庶民出身の学院生たちを悪しざまにののしり、その言葉に反応したレオンと一触即発の状態になってしまう。

辺境伯との出会い

王立ロワル魔法学院での学院生活と冒険者ギルドの仕事で、忙しい日々を送っていたある日、シウ=アクィラのもとに生徒会長のエドヴァルド=グランバリと、副会長のヒルデガルド=カサンドラが姿を現す。彼らによれば、シウが上級生からいじめられているという噂(うわさ)を聞き、生徒会裁判を開くためにシウ自身に話を聞きに来たのだという。心当たりがないこともなかったが、シウ自身は特に気にしておらず、同時に生徒会裁判が行われるのは平日の午後ということで、冒険者ギルドの仕事に忙しいシウは彼らの申し出を丁重に断る。その後、冒険者ギルドを介して商人ギルドからの依頼を受けたシウは、ガルン魔道具店へと向かう。そこでシウは仕事を通し、辺境伯のキリク=オスカリウスと面識を得ることとなる。そしてキリクはシウに対し、貴族の権力がらみの面倒を避けるため、自分が政治的な後ろ盾になることを申し出る。

悪魔憑き

学園祭の季節がやって来た。これは王立ロワル魔法学院に加えて、近隣の王立第一中等学校、王立第二中等学校も含め3校合同で行われるもので、他校の催しも自由に見て回ることが可能な大々的なものであった。シウ=アクィラのクラスの出し物はメイド・執事喫茶に決定し、庶民や商家出身の学院生はもとより、伯爵・公爵家の貴族まで含め、全員一丸となって挑むこととなった。それぞれに協力し合って準備を整え、迎えた学園祭の日。シウのクラスのメイド・執事喫茶は、他校から訪れた学生たちにも大好評で、特に伯爵家のアリス=ベッソールは、シウの知り合いで王立第二中等学校に通うアキエラをはじめ、身分を超えた友人との交友を深めていく。そんな中、場違いにも突然姿を現したキリク=オスカリウスは、表面上はいつもの軽い調子で明るくシウに接しながらも、何かを警戒している様子だった。やがて学園祭の1日目が終了する頃、後片付けをしていたシウの前に、ソフィア=オベリオが姿を現す。彼女は尋常ではない様子で「騎獣がいない」とシウに怒鳴りつけると、心配するシウを振り払い、その場から走り去ってしまう。そんな一部始終を見ていたキリクは、シウに彼女が「悪魔憑(つ)き」であることを伝える。そして、ソフィアが自らの意志で悪魔を呼び出して契約を交わしたのであれば魔法省に裁かれる可能性があり、この一件の関係者であるシウの身にも火の粉が降りかかるかもしれないと警告する。

関連作品

小説

本作『魔法使いで引きこもり?』は、小鳥屋エムの小説『魔法使いで引きこもり?』を原作としている。原作小説は小鳥屋エムが「カクヨム」に投稿した作品で、KADOKAWAから刊行されている。イラストは戸部淑が担当している。

登場人物・キャラクター

主人公

「子ども冒険者」として生計を立てている少年。かわいらしい顔立ちで、冒険者としては頼りなさげな外見から、周囲には何かと心配されることが多い。だが、実際は全種の基礎属性魔法に加え、さらに「空間庫」「魔力庫... 関連ページ:シウ=アクィラ

神様 (かみさま)

「愁太郎」をシウ=アクィラとして転生させた存在。言動は少々軽いが、その身に秘めた神々しさから、愁太郎には初見で神に類する存在だと見抜かれた。なお実際の外見は不明で、その姿は神様を見た人が、人生でもっとも慕っていた人と同じように見える。そのため愁太郎にとっては、幼い頃に愛人の子として本家に引き取られた彼のことを見守っていてくれた「かや」という女性の姿に見えている。神様自身は、愁太郎の人柄と彼が人のために行動してきた90年の歳月を非常に高く評価しており、改めて楽しい人生を送り直して欲しいと、愁太郎に転生を打診。その際、無欲な愁太郎のために、「生前に努力した分だけの能力」という口実で、「空間庫」「魔力庫」「記録庫」という非常に強力な魔法を扱うことのできる、チート級の能力を与えた。だが愁太郎が、シウとして転生したあとも地味で堅実な生活を送ってきたこともあり、11歳にして育ての親のヴァスタを亡くしたところで、改めてシウの前に姿を現し、冒険者として人生を楽しむよう伝える。これが、シウが「子ども冒険者」として活動するきっかけとなった。その後も、時おりシウの意識の中に姿を現しては、彼がこの世界で前向きに生きていくためのアドバイスを送り続ける。

ヴァスタ

元冒険者の老人。引退後は樵を生業としていた。行き倒れて亡くなった女性が抱えていた、赤ちゃんのシウ=アクィラを見つけ、彼を引き取って11歳まで育てたが、その後に亡くなった。生前は、シウに樵としての生き方や冒険者としての心得を教えたほか、彼の秘めた能力も知っており、本当に信頼できる人以外には、絶対にその能力を明かさないようにと言い含めていた。実は冒険者時代に、若き日のキリク=オスカリウスの命を救ったことがあり、礼はいいから同じような目に遭っている奴がいたら、今度はお前が助けてやるようにと諭した過去がある。結果的にこれが、辺境伯となったキリクがシウの政治的な後ろ盾となる、そもそものきっかけとなった。

フェレス

シウ=アクィラのパートナーを務める猫型騎獣(フェーレース)。シウが拾った卵から大事に孵した騎獣で、希少獣ということもあって周囲からはシウ共々かわいがられている。

リシェ

コレルの街の宿屋の娘。ふだんは家業の手伝いをすることはあまりないが、宿屋に下宿しているシウ=アクィラに対しては何かと世話を焼くことが多い。少々つっけんどんなところはあるが、実はかわいいもの好きで、シウの身の上に同情すると同時に彼のことをいつも気にかけている。のちにシウの仕事を手伝ったことで彼の力の一端を知り、王都ロワルへ向かうというシウのことを明るく送り出す。ちなみにリシェ自身も、もともと王都ロワルに出て働こうと考えていた。

シンシア

コレルの街のパン屋「ピュアクローゼ」の娘。フェリシアの姉。優しい性格で、フェリシアのことを大切に思っている。リシェとも顔なじみで仲がいい。

フェリシア

コレルの街のパン屋「ピュアクローゼ」の娘。シンシアの妹。言葉遣いが少々乱暴でおっちょこちょいなところがあるが、自分のミスについて思い悩んでしまったりと、実際は繊細な性格の持ち主。

スタン=べリウス

王都ロワルでも名の知れた「べリウス道具屋」を営む初老の男性。心優しく誠実な商人で、大事なものは自分が認めた相手にしか売らないという強いこだわりを持つ。魔獣に襲われていたところを、ソルレア街を目指して旅をしていたシウ=アクィラに救われ、彼と知り合った。実は固有魔法として鑑定魔法をレベル4で使うことが可能で、いち早くシウが空間魔法の使い手であることを見抜き、同時に自分の能力を隠したいのであれば、隠蔽魔法に加えて鑑定魔法も身につけるべきだと、シウにアドバイスを送る。さらに、シウがソルレア街を経由して王都ロワルを目的地としていると知ると、彼を護衛として雇い、さらに王都ロワルでの寝食の面倒を見ることも申し出る。エミナ=べリウスをはじめとする家族のことを非常に大切に思っており、いっしょに暮らすようになってからは、シウのことも家族として信頼し、大事にしている。

エミナ=べリウス

スタン=べリウスの孫娘。第二王立中等学校の卒業生でもある。年齢は17歳で、既婚者。スタンが経営する「べリウス道具屋」の跡取りで、現在はスタンに商売を仕込まれている最中。夫で道具職人のドミトルとはラブラブで、新婚ということもあって現在は実家を出て生活しており、仕事のために毎日べリウス道具屋まで出勤している。元気で明るいおしゃべり好きだが、一本筋の通った気丈な性格で、人を見る目にも長(た)ける。かつて通っていた学校では今一つ成績がよくなかったこともあり、今になってシウ=アクィラに魔法を教えて欲しいと願い出ている。「スミナ王女物語」という物語に登場するエルフの少女が大好きで、ラエティティア=アルプス(ティア)と知り合い、鑑定魔法の使い手であるスタン=べリウスが、うっかり口を滑らせたことでティアがエルフであることを知ってからは、あこがれの念と共に積極的にアプローチし、どんどんなかよくなっていく。なお、一度は鍛冶の道から足を洗ったアグリコラが鍛冶師として再起するにあたり、エミナ=べリウスの励ましが大きなきっかけとなったが、これは道具職人である夫、ドミトルのことを心から尊敬しており、アグリコラからも夫と同じ職人としての心意気を感じ取っていたからである。

アキエラ

王都ロワルに居を構える「ヴルスト食堂」の娘。少々引っ込み思案な性格で、自己評価が低いところがある。シウ=アクィラとは同年代で、彼に勉強を教えてもらったこともあり、進学した第二王立中等学校では算術で学年一番の成績を誇る。合同学園祭において、シウの紹介で王立ロワル魔法学院のアリス=ベッソールと知り合い、彼女との交流をとおして明るくなっていく。シウなど親しい者からは「アキ」と呼ばれており、のちにアリスからもその名で呼ばれるようになる。

ラエティティア=アルプス

キアヒ=ディガリオがリーダーを務める、五級ランクの冒険者パーティーの一員の女性。エルフの女性で、職業は弓使い。通称は「ティア」。火・風・水・土・金・木・無・光の基礎属性魔法に加え、固有魔法として遠見魔法をレベル2で使うことができる。魔力量は108。エルフということもあって長寿だが、実年齢は不明。男色家かラエティティア=アルプス(ティア)の本当の年齢を知っている者以外で、ティアに興味を抱かない男性はいないとも評されるほどの、類まれなる美貌の持ち主。一方でティア自身は非常にクールな性格で、人間を嫌っており、中でも自分に力がないくせに権力を笠に着て周囲を思うままにしようとする者のことが特に大嫌い。また、非常に耳がいいことに加えて木々の精霊と話をすることができることもあり、さまざまな情報を握っている。物珍しい目で見られるため、ふだんは擬態魔法でエルフであることを隠している。面倒な男に絡まれていたところをシウ=アクィラに助けられ、即座に彼がただの子どもではないことを見抜いて、興味を持った。その後は、グラディウスの愛剣修理に協力してもらったり、共にいくつかの仕事をこなすうちにシウのことを気に入り、自らのパーティーに勧誘する。ちなみに冒険者としても非常に優秀で、ティアたちのパーティーは「最高ランクへの最速パーティー」として、冒険者間でも高く評価されている。

キアヒ=ディガリオ

キアヒ=ディガリオ自らがリーダーを務める、五級ランクの冒険者パーティーの一員の青年。キルヒ=ディガリオの双子の兄で、年齢は21歳。職業は斥候のアサシン系。火・風・水・無・闇の基礎属性魔法に加え、固有魔法として精神魔法をレベル3で使える。魔力量は48。陽気なイケメンながら非常に警戒心が強く、飄々(ひょうひょう)とした言動はすべてそれを隠すためのものである。だが、表には出さないながらも実際は優しい性格で、これらはすべて仲間を守るため。また、子どもが傷つけられることに関しては特に敏感で、理由の如何(いかん)を問わず怒りをあらわにする。仲間のラエティティア=アルプスを介して知り合ったシウ=アクィラのことも、当初は警戒していたもののすぐに気に入り、以降は何かと軽口を叩(たた)きながらも彼のことを気にかけるようになる。ちなみに冒険者としても非常に優秀で、キアヒたちのパーティーは「最高ランクへの最速パーティー」として、冒険者間でも高く評価されている。冒険に出て野宿する時でも、寝る時は必ず寝間着に着替えるという妙な習慣がある。

キルヒ=ディガリオ

キアヒ=ディガリオがリーダーを務める、五級ランクの冒険者パーティーの一員の青年。キアヒの双子の弟で、年齢は21歳。職業は斥候のシーフ系。火・風・水・無・闇の基礎属性魔法に加え、複写魔法をレベル3で使える。魔力量は47。優し気な顔立ちの知性派イケメンで、口調も物腰も穏やか。つねに冷静で、シウ=アクィラが鑑定魔法を高レベルで使えることにいち早く気づくなど、洞察力にも長けている。冒険者としても非常に優秀で、キルヒたちのパーティーは「最高ランクへの最速パーティー」として、冒険者間でも高く評価されている。

グラディウス=ガエル

キアヒ=ディガリオがリーダーを務める、五級ランクの冒険者パーティーの一員の青年。年齢は20歳で、職業は剣士。火・風・闇の基礎属性魔法を使うことができ、魔力量は31。大家族の貧乏貴族出身、さらに軍隊経験者ということもあって食べ物に関して少々意地汚いところがあるが、朴訥(ぼくとつ)で一本気な竹を割ったような性格をしている。グラディウス=ガエル自身の愛剣に「トニトルス」、通称「トニー」と名づけて大事にしており、そのトニーが折れてしまったため、修理してくれる人を探して仲間たちと共に王都ロワルに滞在している。トニーには素材としてヒヒイロカネという希少金属が使われていることもあって、修復できるのは「鍛冶の神様」の異名を持つドワーフの鍛冶師しかいないこと、そしてその人物が「プリームス」という名前であること以外には情報がなかった。これらの情報をもとにシウ=アクィラに捜索を依頼したところ、プリームスは本当はアグリコラという名前であり、現在は鍛冶から足を洗って農民として生活していることを知る。一度は断られるものの毎日誠実にアグリコラの家に通い詰め、のちにその思いが通じて彼と友情を築き、さらにトニーを修復してもらうことにも成功する。ちなみに冒険者としても非常に優秀で、グラディウスたちのパーティーは「最高ランクへの最速パーティー」として、冒険者間でも高く評価されている。

アグリコラ

王都ロワルで農民として暮らしているドワーフの男性。年齢は135歳。職業は農民・鍛冶職人で、生産魔法をレベル4で使える。魔力量は85。「鍛冶の神様」とも評される凄腕の鍛冶職人だが、現在は鍛冶からは足を洗い、農民として生活している。グラディウス=ガエルが折れた愛剣「トニトルス」を修復してもらうために探していた人物だが、彼からは「プリームス」という名だと思われていた。これは、ギフトとして「鍛冶の神プリームスが祝福を与える」という能力を持っていたことが原因となっている。実はかつて、許嫁(いいなずけ)に「人を殺す道具を作る人と結婚したくない」と言われて別の男のもとに走られ、そのトラウマから鍛冶を辞めた経緯がある。それ以来、覚悟なく武器を作り続けていたと自分のことを責め続けていた。だが、それは婚約者が自分に都合よく婚約を解消するための言い訳に過ぎないとエミナ=べリウスに励まされ、同調したラエティティア=アルプスとエミナが婚約者だった女性を悪しざまに言う様子を見て元気を取り戻す。同時に、自分のもとに毎日顔を出してくれるグラディウスに友情を感じ始めていたこともあり、彼の愛剣を修復することで鍛冶屋として再起しようと決意する。

副執事 (ふくしつじ)

大商家「オベリオ家」で副執事を務める中年男性。オベリオ家令嬢のソフィア=オベリオの騎獣、ルコの世話をする仕事を冒険者ギルドに持ち込み、この仕事を引き受けたシウ=アクィラと出会う。オベリオ家の権威をかさに着て傍若無人な振る舞いを繰り返し、人を人とも思わない条件でシウと専属契約を結ぼうと画策。そのことをシウに指摘されると逆上し、主人のレイトン=オベリオに讒言(ざんげん)してシウを陥れようと企むも、ラエティティア=アルプスによる、いっさいの噓偽りを述べないという「エルフの神の誓い」の宣誓で、すべての暴挙を白日の下にさらされてしまう。この一件によりオベリオ家の名に大きな傷をつけ、解雇されることとなった。本名は「セト」。

ソフィア=オベリオ

大商家「オベリオ家」の令嬢。ルコの飼い主。ルコをめぐり副執事が失脚した一件で、オベリオ家の名に傷をつけたとしてシウ=アクィラを逆恨みし、オベリオ家の従者を引き連れてシウを脅し、謝罪を要求する。事の真相を知っていったん引き下がりはするものの、その後もシウの前に現れては難癖をつけ続ける。さらに、シウの騎獣であるフェレスとルコを交換するようにせまり、本当に大切なものが見えていないと、シウに憐れまれるようになる。のちに、シウがソフィア=オベリオ自身も通う王立ロワル魔法学院に入学してからは、先輩の地位を利用してシウの悪い噂を流して彼がいじめられるように仕向けるも、シウには簡単にかわされてしまい、まったくダメージを与えられずに失敗。これらは、仕事が忙しい両親にあまり構ってもらえなかったソフィアの寂しさに付け込んで取り憑(つ)いた、夢魔(インキュバス)の仕業によるもので、のちにこの影響により物事の判断がつかなくなり、フェレスをめぐって大騒動を巻き起こす。

ルコ

大商家「オベリオ家」令嬢、ソフィア=オベリオの騎獣。鹿型騎獣(ルフスケルウス)のメス。生後3か月ほどだが非常に賢くおとなしい性格をしている。ソフィアにはかわいがられているものの、彼女にまともに世話をしてもらっておらず、寂しい思いをしている。副執事がルコの世話の仕事を冒険者ギルドに持ち込んだことをきっかけに、その依頼を受けたシウ=アクィラと出会い、彼と心を通わせていく。

リグドール=アドリッド

王都ロワルの東上地区にある商家「アドリッド家」の第二子の少年。シウ=アクィラと同じ年に王立ロワル魔法学院に入学し、同じ第一クラス在籍となった。王立ロワル魔法学院内で、特にシウと仲がいいメンバーの一人。アドリッド家がオープンしたカフェに試作品をつまみ食いに来て、父親に見つかり叱られていたところを、メニューのレシピを提供しに来ていたシウにとりなしてもらったことをきっかけに、彼と知り合った。魔力量が多い魔力過多症で、幼いうちに死んでしまうのではないかと危惧した母親に甘やかされてきたこともあり、学力も高くない。そのことを心配した父親の計らいで、王立ロワル魔法学院入学までは、シウに家庭教師をしてもらっていた。もともとお調子者のところがあるが、入学式の日に出会ったアリス=ベッソールに一目ぼれして、学院生活を通じて彼女への思いを募らせ、同時に彼女を守るための強さを身につけていく。シウやアントニーなど、親しい友人には「リグ」と呼ばれている。

アリス=ベッソール

伯爵位を持つ「ベッソール家」の第三子の少女。シウ=アクィラと同じ年に王立ロワル魔法学院に入学し、同じ第一クラスに在籍する。王立ロワル魔法学院内で、特にシウと仲がいいメンバーの一人。年齢に似合わず非常に礼儀正しく、明るく優しい性格で身分を鼻にかけることもない。王立ロワル魔法学院への入学祝いとして、マジックアイテムの魔法袋を作ってもらうためスタン=べリウスが経営する「べリウス道具屋」を訪れ、そこでシウと知り合った。アリス=ベッソール自身が伯爵家の未婚の女性ということもあって、王立ロワル魔法学院の催しなどにおいては色々と自分の自由にならないことが多いが、シウを通してアキエラと交流を深め、現状を打破するために自ら行動する強さを身につけていく。

アントニー

王立ロワル魔法学院に通う男子。シウ=アクィラと同じ年に入学し、同じ第一クラスに在籍する。王立ロワル魔法学院内で、特にシウと仲がいいメンバーの一人。商家の出身で、リグドール=アドリッドとは入学前から顔見知り。落ち着いた、穏やかな性格の持ち主。親しい友人には「トニー」と呼ばれている。

アレストロ=フェドリック

公爵位を持つ「フェドリック家」の第六子の少年。シウ=アクィラと同じ年に王立ロワル魔法学院に入学し、同じ第一クラスに在籍する。王立ロワル魔法学院内で、特にシウと仲がいいメンバーの一人。マイペースで鷹揚(おうよう)な性格で、つねににこやかな笑みを絶やさない。公爵家の出身でありながら身分を鼻にかけることはいっさいなく、シウが暮らしている「べリウス道具屋」の離れに泊まりに来たり、いっしょに料理をすることもまったくいとわない。実はかつて、親友のヴィクトル=ロスラーに完治できないケガを負わせてしまったことがあり、アレストロ=フェドリック自身は表面上はそんなそぶりを見せないものの、内心ではそのことを気にしている節がある。

ヴィクトル=ロスラー

名誉騎士の称号を戴(いただ)く「ロスラー家」の第二子の少年。シウ=アクィラと同じ年に王立ロワル魔法学院に入学し、同じ第一クラスに在籍する。王立ロワル魔法学院内で、特にシウと仲がいいメンバーの一人。冷静で落ち着いた性格で、言動も武人然としたところがある。もともとは騎士学校に行くつもりで養成所に通い身体を鍛えていたが、ある時、親友のアレストロ=フェドリックをかばって右腕に完治しないケガを負い、騎士の道を断念して王立ロワル魔法学院に入学したという経緯がある。ただし、ヴィクトル=ロスラー自身は親友を守った当時の自らの行動を誇りに思っており、いっさい後悔はしていない。もともと魔法使いを目指していたわけではないこともあって魔力量が少なく、そのことに少々コンプレックスを抱いている。

レオン

王立ロワル魔法学院に通う男子。年齢は15歳。シウ=アクィラと同じ年に入学し、同じ第一クラスに在籍する。庶民出身で、ふだんは酒場で働いている。身分のことで貴族から蔑まれることが多く、貴族に対しては憎しみに近い感情を抱いている。だが、シウたちとの付き合いを通し、貴族の中にも身分を気にしないクラスメイトたちのような者もいることを知り、態度を軟化させていく。クールなイケメンということもあり、庶民出身でありがならも、王立ロワル魔法学院の女子生徒たちからの人気は高い。のちにシウが冒険者であることを知り、彼の紹介でレオン自らも十級ランクの冒険者として登録し、冒険者ギルドの仕事を請け負うようになる。ちなみに、王都ロワルの冒険者ギルドの受付嬢にして、自身の働く酒場の常連客でもあるクロエに淡い思いを抱いている。

ヴィヴィ

王立ロワル魔法学院に通う女子。シウ=アクィラと同じ年に入学し、同じ第一クラスに在籍する。庶民出身で、平日の午後は働いている。少々引っ込み思案な性格で、なかなか友達が作れずにいるが、同じ庶民出身ということで、シウやレオンには親近感を覚えている。

エドヴァルド=グランバリ

公爵位を持つ「グランバリ家」の第二子の青年。王立ロワル魔法学院の5年生で、第一クラスに在籍し、生徒会長を務めている。非常に正義感が強く、何かと単刀直入の物言いで、貴族としては珍しいタイプ。人の心の機微に疎く少々空気が読めないところがあり、生徒会副会長のヒルデガルド=カサンドラには、エドヴァルド=グランバリとシウ=アクィラはよく似ていると評されている。ヒルデガルドには「エド」と呼ばれている。

ヒルデガルド=カサンドラ

公爵位を持つ「カサンドラ家」の第一子の女性。王立ロワル魔法学院の4年生で、第一クラスに在籍し、生徒副会長を務めている。つねに余裕ある立ち振る舞いをする美女で、何かと先走りがちな生徒会長のエドヴァルド=グランバリの抑え役兼ツッコミ役を担っている。

ケルビル=バッヘム

王立ロワル魔法学院の教師を務める男性。騎士の称号を持つが、国の意向で教師として出向している。強面(こわもて)で厳しい教師として恐れられているが、極端なまでの選民思想の持ち主で、伯爵・公爵位を持つ名家に対しては、相手が学院生であっても異様なほどに媚(こ)びへつらう。庶民出身の者が王立ロワル魔法学院に在籍することを疎ましく思っており、彼らをいたぶるためなら手段を選ばない。のちにシウ=アクィラの機転により、その所業が学院長の前で明るみに出て、謹慎処分の末に配置換えを命じられる。

ガルエラド

アウレアと共に旅をしている竜人族の男性。近年、各地の竜の様子がおかしいために調査を行っている。旅の道中、何かとシウ=アクィラと出会うが、その都度あまり深くかかわりを持つことなく、姿を消す。シウと2度目に会った際、彼から「ガル」と呼ばれるようになるが、ガルエラド自身、周囲に自分の本当の名を知られることをよしとしておらず、この呼び名を気に入っている。

アウレア

ガルエラドと共に旅をしているハイエルフの幼い少女。まだ言葉もおぼつかないが、その純粋さでフェレスと心を通わせている。旅の道中、何かとシウ=アクィラと出会うが、その都度あまり深くかかわりを持つことなく、姿を消す。ガルエラドには「アウル」と呼ばれている。

キリク=オスカリウス

シュタイバーン国の北方の辺境を治める辺境伯の男性。隻眼で左目に眼帯を付けた偉丈夫で、顔をはじめとして身体中に大きな傷痕がいくつもある。性格は陽気で豪放磊落(らいらく)そのものだが、観察眼に長け頭も切れる。国内で知らない者はいないほどの武人で、何かと魔獣や他国の侵略にさらされる地域を治めていることもあって、その武勇伝は数知れず。また、気さくな人柄から多くの国民に慕われており、「隻眼の英雄」の異名でも知られる。一方で、粗野な人物だとして貴族の中には、キリク=オスカリウスのことを疎む者も少なくない。ちなみに、眼帯を付けている目は「魔眼」であり、真実を見抜く力を持つ。シウ=アクィラが商人ギルドの仕事を請け負った際にその場に居合わせ、シウに強い興味を持ち、貴族として彼の後ろ盾になることを申し出た。政治的な権力に興味を示さなかったシウに一度は断られるものの、付き合いを深めるうちに単純にシウを心配しているだけであることを理解され、のちに名実共にシウの後ろ盾となる。実は若い頃に、当時冒険者だったヴァスタに命を救われたことがあり、礼はいいから同じような目に遭っている奴がいたら、今度はお前が助けてやるようにと諭された過去がある。シウに後ろ盾となることを申し出たのも、老成しているように見えてどこか危なっかしいアンバランスな彼を心配し、ヴァスタに言われたことを実践しようとしたからに他ならない。

場所

王立ロワル魔法学院 (おうりつろわるまほうがくいん)

シュタイバーン国の王都ロワルにある王立の魔術学院。その権威は高く、単に「学院」と言った場合は、王立ロワル魔法学院のことを指す。非常に大きな図書館があることで有名で、魔法使いとして勉強するのに最善の環境が整えられており、成績優秀者はラトシリア国の魔法大学校へ進学し、大魔法使いとなる道が開かれている。また、王立ロワル魔法学院では魔法の能力に応じてクラス分けがされ、優秀な学院生は各学年共に第一クラスに編入される。基本的には貴族や大商人の子息が15歳から通う学校だが、学力や資金力があれば庶民でも12歳から通うことが可能。ソフィア=オベリオに、魔法使いでなければ猫型騎獣(フェーレース)であるフェレスの主人にふさわしくないと挑発されたシウ=アクィラも、12歳の時に入学試験を受けて簡単に合格し、王立ロワル魔法学院に通うようになる。ちなみに、魔法の能力に優れた人材を確保したいという考えから、入学試験では学力以上に魔力量をはじめとした魔法に関する素質が重要視される。学院内では、地位ではなく学力で競うことをモットーに、貴族だからといって権力をひけらかしたりすることは固く禁じられているが、学院生にはどうしても選民意識を捨てられない者もおり、その意識が学院外の者に向けられることもある。

その他キーワード

空間庫 (くうかんこ)

シウ=アクィラが転生にあたって神様から半ば強引に与えられた魔法。シウしか使うことができない。空間魔法から派生した亜空間のようなもので、空間の隙間に作った倉庫となっており、シウ以外には見ることも触ることもできない。「空間庫」には、生き物でなければどんなものも入れることが可能で、しかも熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま保管しておくことができる。ちなみに空間庫はシウのイメージによってできているため、敵が崖の上から落としてきた巨岩を空間庫に一度しまい、改めて出した巨岩を風魔法で敵の方に吹き飛ばして攻撃したりと、シウのアイデア次第でさまざまにアレンジした使い方ができるようになっている。

魔力庫 (まりょくこ)

シウ=アクィラが転生にあたって神様から半ば強引に与えられた魔法。シウしか使うことができない。文字どおり魔力がプールされたもので、その容量は無尽蔵。これを使えば、本人の魔力をいっさい消費することなく、さまざまな魔法が使い放題となる。ただし、何かと質素倹約を旨とするシウの性格上、彼が「魔力庫」を使うことはほとんどなく、もっと積極的に使うようにと神様に苦言を呈されることもある。

記録庫 (きろくこ)

シウ=アクィラが転生にあたって神様から半ば強引に与えられた魔法。シウしか使うことができない。本をそのまま複写して保管しておくことが可能で、読みたい本をいつでも瞬時に脳内に表示することができる。

誕生祭 (たんじょうさい)

王都ロワルで、麦の実りの喜びを神殿で祈る「豊穣の祈りの日」に行われる祭。本来、豊穣の祈りの日は祈りと共に夜は無礼講で飲み明かすというもので、子どもにとってはあまり大きな行事ではないが、王都ロワルにおいては「誕生祭」の名で、催し物があったり屋台が出たりと、老若男女問わず楽しめる一大イベントとなっている。年中無休でも、この日ばかりは休業にしてしまう店も多く、誕生祭に合わせて出稼ぎのため王都ロワルを訪れる人もいるほど。

冒険者 (ぼうけんしゃ)

世界各地の冒険者ギルドから依頼を受け、さまざまな仕事をこなす人およびその職業。依頼の内容は多岐にわたり、いわば何でも屋に近い。冒険者は、その能力や実績に応じて一級から十級までランク分けされており、ランクの数字が小さいほど実力が高い。例えば三~四級だと国から依頼されるレベル、二級だと上位竜を討伐できるレベル、一級だと世界的にも勇者と見なされるレベルとなっている。ちなみに冒険者ギルドに持ち込まれる依頼にもランクが定められており、自身の冒険者ランクの上下二級の範囲までの依頼しか受けることができない決まりがある。より効率的に冒険者ランクを高めようと、ほとんどの冒険者が自分のランクより高ランクの依頼ばかり受けるため、必然的に低ランクの依頼は引き受け手が少なくなる傾向にある。ちなみに誰も引き受けない依頼は、何らかの問題を起こして冒険者ギルドからペナルティを与えられた冒険者に、強制的に割り振られる。

子ども冒険者 (こどもぼうけんしゃ)

冒険者の見習い。本来、子どもは冒険者として活動することは認められていないが、身寄りのない子どもに限り、特別に「子ども冒険者」として冒険者ギルドから小さな仕事を請け負うことができる。シウ=アクィラも王立ロワル魔法学院に入学するまで、この職業に就いていた。

クレジット

原作

小鳥屋 エム

キャラクター原案

戸部 淑

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