あらすじ
異世界へお出掛け
ある一人のゲーマーが目覚めると、自分がオンラインゲームで遊んでいたキャラクター「アーク」となり、見知らぬ場所に立っていた。天騎士としてのアークの力に戸惑いつつ、自分が骸骨の姿で遊んでいたことを思い出し、アークも骸骨姿そのままだったことに気づく。見知らぬ人々にバレたら、化け物扱いされると考えたアークは、全身鎧(よろい)を着て素顔を隠して、目立たないようにこの見知らぬ地を旅することを決める。しかしアークは道中、盗賊に襲われている貴族の令嬢、ローレン・ラーライア・ドゥ・ルビエルテとその侍従、リタ・ファレンを目撃。盗賊を恐れつつも、悪事を見過ごせないアークは、盗賊を成敗して令嬢たちを助けるのだった。そして彼女たちの話から、この世界が自分の元いた世界とも、ゲームの世界とも違う異世界であることを実感する。ローレンを街まで送り届けたアークは、この世界で円滑に暮らしていくため、まずは資金作りが必要だと考え、傭兵(ようへい)となるのだった。異世界情緒を楽しみつつ、手ごろな依頼をこなし始めたアークは、ラタ村の少女、マルカの薬草採取の依頼を受ける。マルカの健気な姿に心打たれながら、薬草採取に全力で臨むアークだったが、そんな中、二人は巨大な魔物、ジャイアントバジリスクと遭遇する。アークは圧倒的な力でジャイアントバジリスクを倒すが、目立ちたくないアークは、そのことを秘密にするようにマルカにお願いし、新たな街へと旅立つのだった。一方、ジャイアントバジリスクは実は2匹おり、数日後、もう1匹のジャイアントバジリスクが別の場所にも現れ、現地の騎士団によって狩られていた。しかしジャイアントバジリスクは、本来の生息地からかけ離れた場所に現れており、一部の者たちはこの異変に疑念を募らせるのだった。
エルフ族のアリアン
アークは盗賊討伐の依頼を引き受け、彼らのアジトを発見して盗賊に捕まった精霊獣を助ける。ケガをしていた精霊獣をアークが魔法で癒したところ、精霊獣はアークに懐いたため、アークは精霊獣を旅の友にすることを決め、「ポン太」と名づけるのだった。異世界を満喫していたアークは、初のエルフを見つけてテンションが上がる。アークはエルフの青年、ダンカ・ニール・メープルにあいさつをして交友を持とうとするが、人間とエルフの種族のあいだには溝があり、冷たくあしらわれてしまう。迫害されているエルフのことが気がかりになったアークは、依頼を受けつつ、エルフたちの住む「カナダ大森林」を探索していたところ、盗賊たちがエルフの子供を捕まえている場面に出くわす。エルフ族の剣士であるアリアン・グレニス・メープルが盗賊に襲い掛かるも、盗賊は子供を人質にしてアリアンは窮地に陥ってしまう。アークは盗賊たちの非道を見過ごすことができず、アリアンに加勢し、エルフの子供たちを救うのだった。そしてアークは、同族を助けたいというアリアンの願いを受け入れ、傭兵として彼女に雇われる。ディエントの街にエルフたちが囚われていることを知ったアリアンとアークは、街で活動していたダンカと合流し、人買いの拠点に攻め入る。順調に人買いを倒すアークだったが、そこで謎の忍者少女と遭遇。誤解から襲われたものの、すぐに誤解を解いた忍者少女からディエントの領主がエルフ狩りの黒幕という情報を得る。アークたちはそのまま領主の城に攻め入り、領主を成敗。囚われのエルフを助け、街を脱出するのだった。
王都オーラヴ動乱
アークを信頼したアリアン・グレニス・メープルは、彼にエルフたちの森であるカナダ大森林に来ないかと誘う。アークはそんなアリアンに、自分の秘密を打ち明けることを決め、自分の骸骨姿を彼女にさらす。自分に重大な秘密を打ち明けてくれたことをアリアンは重く受け止め、その秘密を守ることを誓い、人間の姿に戻るのを協力する約束を交わすのだった。アリアンの言葉からアークも自らの姿は呪いによるものかもしれないと考え、漠然だった旅の目的を自分の「呪いを解く」ことに決め、その手掛かりを求めてエルフの里を目指す。そしてアリアンの父親であり、エルフの里の長(おさ)でもあるディラン・ターグ・ララトイアから、エルフの救出を引き続き手伝ってくれれば、その報酬として「あらゆる呪いを解く泉」を渡すという約束を取り付ける。そしてアークとアリアンは、囚われたエルフを救出するため、王都、オーラヴを目指す。その道中、アークは何者かに襲われた王女のユリアーナ・メロル・メリッサ・ローレン・オーラヴを陰ながら助けるというトラブルに見舞われつつ、無事にオーラヴに到着するのだった。オーラヴについたアークはそこで忍者少女のチヨメと再会。チヨメはさらわれた同族を助け出すため動いており、目的を同じくするアリアンは共闘することを決める。アークはチヨメの仲間であるゴエモンと、人買いのアジトに潜り込み大暴れ。そのスキにアリアンたちは、囚われの獣人たちを救い出す。
災いを齎す者
アークとアリアン・グレニス・メープルは、チヨメからお礼として東の帝国にエルフを買った人間がいるという情報を受け取り、その調査に向かっていた。道中、魔獣の生態調査をしていたエルフのカーシー・ヘルドに協力するが、アークたちはそこで魔獣が異常に成長する異変に遭遇する。カーシーと別れ旅するあいだも異変が各地で起きている噂(うわさ)を聞いたアークたちは、何者かが意図的に行っているのではないかと推測し始める。そして帝国の街、ケーセックに到着したアークたちは、そこで怪しげな砦にエルフが連れ込まれた話を聞く。アークとアリアンは砦(とりで)に潜入するが、そこはひそかに魔獣を兵器として育てている牧場だった。魔獣は人間を餌としており、エルフたちもすでに魔獣に食われて生きていなかった。そしてアリアンたちは、魔獣を育てていた魔物使いのフンバ・スドゥ・ロゾバンヤと対峙(たいじ)する。アリアンが魔獣の力であやつられ危機に陥るものの、二人に合流したチヨメの助けもあり、アークはフンバを撃退する。しかしフンバは、切り札である大魔獣のヒュドラを目覚めさせ、暴走させる。このままでは暴走したヒュドラが手当たり次第に街の人間に襲い掛かるため、アークは召喚術を使い、圧倒的な破壊の力でヒュドラを消し去るのだった。
泉と呪い
かつてアークによって助けられたユリアーナ・メロル・メリッサ・ローレン・オーラヴは、王国のエルフの迫害を憂慮していた。そのため、ユリアーナは王になることを決意。エルフの長たちと会談を行い、彼らの後ろ盾を得たことで、ユリアーナは王国に台頭する。これによってアークたちのエルフ救出任務もひと段落つき、アークは約束されていた報酬「あらゆる呪いを解く泉」の情報を得るのだった。泉は龍王の住まう地にあるため、交渉役としてアリアン・グレニス・メープルが同行し、その地に探し物があるチヨメも同行を申し出て、いつものメンバーで泉探索に向かうこととなる。アークたちはアンデッドの大軍を倒しつつ険しい山脈を抜け、ついに泉がある「龍冠樹」へとたどり着く。誤解から龍王のウィリアースフィムに襲われるアクシデントに見舞われるものの、一行はなんとか無事に泉を見つける。そしてアークは泉の力で呪いが解け、人の姿になるものの、そのまま気を失って倒れてしまう。アークが目を覚ました頃には、1か月も経っており、自分の姿も元の骸骨姿へと戻っていた。ウィリアースフィムはアークの本来の肉体はこの世界になく、別の世界にあり、呪いが解けかかったことで、急速に二つの体が入れ替わろうとして負荷が出たのだと語る。また、呪いは泉に対して耐性をつけてしまったため、もう効果がなくなってしまっていた。アークは旅の目的が振り出しに戻ったものの、仲間たちの励ましもあり、決意を新たにする。
新たな地へ
アークは今までの活躍がエルフたちに認められ、「ララトイア」の姓を授かり、名を「アーク・ララトイア」と改める。また、同時にダンカ・ニール・メープルが何者かの襲撃を受けたという知らせを受け取ったため、アークは彼の治療のためアリアン・グレニス・メープルと共に、南の大陸を目指すことを決める。チヨメもダンカを襲った者に心当たりがあり、彼らと同行する。船で海を渡り、荒野を進む一行は、そこで虎人族と行動を共にするダンカを発見する。しかし、そこは黒巨人による襲撃の真っ最中で、アークたちはダンカと共に、襲われる虎人族の集落の救出に奔走することとなる。黒巨人による襲撃は頻繁に起きており、多くの集落が襲われていたが、アークはその中で黒巨人の幼体の死体を発見し、何者かが人為的に引き起こしているのを推測する。そしてアークはその犯人を見つけるが、それはチヨメにとって兄代わりともいえるサスケだった。サスケはすでに死人となっており、不死者となって何者かにあやつられていた。サスケの存在にチヨメは動揺を覚え、その凶刃に倒れてしまう。アークたちはチヨメを守るため、サスケを捕まえることができず、彼の存在を見失ってしまう。だが、彼らの進行ルートをアリアンが割り出し、敵の目的地が都市、タジエントと判断し、アークたちは戦力をまとめ上げ、タジエントに向かうことを決める。タジエントは襲い掛かる黒巨人と不死者の軍団によってすでに混乱の坩堝(るつぼ)になっており、それぞれが戦いを始める。チヨメはサスケと激闘を繰り広げ、悲しみを乗り越えてこれを撃破する。一方、アークは街の住人に不死者は教会から出てきたことを聞き、教会に乗り込む。そしてアークは、事件の黒幕であるチャロス・アケーディア・インダストリアと対峙し、これを打ち倒す。
救援要請
アークとチヨメはタジエントの戦いと、サスケの最後の言葉から「ヒルク教国」が裏にかかわっていると考える。しかしヒルク教国は遠く、内情も不明なため、その調査が必要だと結論を下す。また、ディラン・ターグ・ララトイアがエルフの遠方にある里であるドラントの里から救援要請があり、一行はヒルク教国を目指すため、海路でドラントの里に向かい、そこを抜けてヒルク教国に向かうこととする。しかしドラントの村は、予想以上に追い詰められており、不死者に率いられた魔獣の群れによって通行ができない状態となっていた。またしても不死者の存在に一行は不穏なものを感じるが、精鋭のエルフの戦士たちとアークたちの活躍によって脅威は取り除かれ、ドラントの里は窮地を脱するのだった。そしてアークたちは森を抜け、その先にあるサルマ王国に足を踏み入れる。一方、ヒルク教国では七枢機卿(すうきけい)の一人であるチャロス・アケーディア・インダストリアが打ち取られたことで、残りの枢機卿が集合。各国に根を伸ばした枢機卿たちは教皇であるタナトス・シルビウェス・ヒルクの命に従い、それぞれ暗躍を開始し、事態は新たな局面を迎えることとなる。
ノーザン王国の危機
サルマ王国に到着したアークたちは、そのままヒルク教国に向かうべく歩を進めていたところ、ノーザン王国の王女であるリィル・ノーザン・ソウリアと出会う。リィルの故郷であるノーザン王国は10万にも及ぶ不死者の大軍に襲われており、リィルは国王である父親から援軍要請の命を受け、サルマ王国の先にあるノーザン王国の飛び地を目指していたのだ。リィルは追手の不死者に襲われ絶体絶命の危機に陥っていたが、アークに助けられ事なきを得る。そしてアークはリィルたちに護衛を依頼される。アークたちは不死者に襲われるこの件にもヒルク教国がかかわっていると考え、それを確かめるためにも依頼を引き受けることを決める。そして一行はノーザン王国の飛び地である領都・キーンに無事にたどり着く。リィルは窮地に陥った自国を助けるため、キーンの領主であるディモ伯爵に援軍をお願いするが、それらはすべてリィルを逃がすためのウソで、援軍は間に合わない事実に直面する。絶望するリィルを見かねたアークは、力を貸すことを申し出て、一行はノーザン王国に向かう。
天騎士アーク
迅速に進軍したことでアークとリィル・ノーザン・ソウリアたちは、ノーザン王国の王都ソウリアにたどり着く。辛うじて陥落前ながらも、敵は約10万の軍勢で、王都の命運は風前の灯火(ともしび)だった。アークは単身で敵の軍勢に突っ込み、天騎士の戦技「執行者焔源の熾天使」を行使する。圧倒的な力を持つ天使の力で軍勢を蹴散らすものの、アークは初めて使用する天使の力を制御することができずに暴走させてしまう。天使の力によって敵は滅ぼされたものの、地形は変わり、アークは危うく守るべき王都すら吹き飛ばしかける。アークは決死の力で天使の力を制御し、大惨事を防ぐものの、その力を大きく消耗させてしまう。アリアン・グレニス・メープルとチヨメの活躍もあり、敵の残党は掃討され、アークは無事に帰りつくものの、そこでノーザン王国に巣食う黒幕で、枢機卿の一人でもあるパルルモ・アーヴァリティア・リベラリタスがアークたちに襲い掛かる。力を消耗しきっていたアークは苦戦するが、仲間たちとの連携でパルモを打ち倒し、ノーザン王国を魔の手から今度こそ完全に守り抜くことに成功するのだった。そしてアリアンたちは、エルフや獣人は不死者を見抜く力を持つため、パルルモの正体をあっさり見抜くことができたことから、ヒルク教国は人々を煽動(せんどう)してエルフや獣人を迫害しているのではないかと思い至る。
更なる力を求めて
ノーザン王国を救ったアークたちは、事態を整理するため、いったん調査を切り上げて帰還することを決意。アリアン・グレニス・メープルとチヨメがそれぞれの里で仕事をしているあいだ、アークは特訓に励むことを決める。天使の力を暴走させたアークは、己の未熟さを痛感し、天騎士の力を完全に制御すべく、ウィリアースフィムのもとに赴く。ウィリアースフィムと特訓するアークだったが、龍王と暴走した天使の力は天変地異そのもので、ご近所迷惑だった。周囲の人々の声もあり、ウィリアースフィムはアークを人外魔境の深き森「黒の森」に放り込む。弱肉強食の深い森で特訓を繰り返すアークだったが、ある日、森に異変が起き、その異変を察知したダンカ・ニール・メープルと会い、彼と共に異変を調査することとなる。そしてアークは森の主である樹王と会い、何者かが樹王の体を乗っ取った話を聞く。樹王に頼まれ、異変解決に乗り出したアークは、ヒルク教国の枢機卿の一人、バルトード・スペルビア・ヒュミリタスと遭遇する。バルトードはタナトス・シルビウェス・ヒルクの命令で、強力な魔物を素材として求めていたのだ。バルトードはアークの妨害に遭うも、必死にもがいた結果、油断していたウィリアースフィムを捕縛することに成功する。しかし、2体の強力な魔物を取り込んだバルトードは、その力を制御できず、爆弾となってしまう。爆発する寸前となるバルトードだったが、アークは特訓の成果である「執行者焔源の熾天使」を完全な形で放つことでバルトードを撃破し、ウィリアースフィムを救出することに成功する。
関連作品
小説
本作『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』は秤猿鬼の小説『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』を原作としている。イラストはKeGが担当している。秤猿鬼が「小説家になろう」に2014年10月から投稿した作品で、オーバーラップ「オーバーラップノベルス」から刊行されている。
テレビアニメ
2022年4月から6月にかけて、原作小説『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』のテレビアニメ版が、AT-X、BS11、TOKYO MX、インターネット配信ほかで放送された。制作はスタジオKAIとHORNETSが担当した。キャストは、アークを前野智昭、アリアン・グレニス・メープルをファイルーズあい、チヨメを富田美憂が演じている。テレビアニメ版は、原作小説版とコミックス版を併せて再構成した内容となっており、アニメ独自の展開も多い。またテレビアニメの放送後には、本作を担当するサワノアキラによる描き下ろし漫画『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中 番外編』が「コミックガルド+」で2週間の期間限定公開された。『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中 番外編』はテレビアニメ版のBlu-ray Boxの特典BOOKに収録されている。
登場人物・キャラクター
アーク
オンラインゲームで遊んでいた際に、異世界に来てしまったゲーマー。オンラインゲームで遊んでいたゲームの男性キャラクター「アーク」となり、白を基調とした全身鎧を身にまとっている。ゲーム時代はメイン職業を「天騎士」、サブ職業を「教皇」にしていた。有料の外見変化アイテムを使って「全身骨格」を選んでいるため、鎧の下は骸骨姿となっている。ゲーム時代は聖騎士の資格を得たものの、呪いで骸骨姿となったため、呪いを解くことを目的に40代前半のナイスガイな武人肌の騎士のロールプレイで遊んでいた。異世界では化け物然とした骸骨姿は無用なトラブルを招くと考え、目立たずひっそり生きることを決める。しかし、生来の情に厚い性格からトラブルを見過ごせず、さまざまな事件にかかわっていく。ゲーマーであるため、いわゆるファンタジーっぽいものが大好きで、異世界生活を満喫している。骸骨姿ながら飲食は可能で、料理を得意としている。またエルフなど、いかにもファンタジーっぽいものを目にするとテンションが上がる。アリアン・グレニス・メープルを助けたのをきっかけに彼女に依頼され、迫害されるエルフの救出のため、各地で奮戦することとなる。のちにその功績が認められ、エルフたちから「ララトイア」の姓を賜り、エルフの騎士「アーク・ララトイア」と名を改める。ゲーム時代はレベルを最高まで上げ切っていたため、その戦闘能力は高い。また異世界では、なぜか職業による魔法の制限がなくなっているため、天騎士以外の魔法も自在に扱える。特に転移魔法の「次元転移」と「転移門」は強力で、八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せる。ただしキャラのスペックは高いが、技術的なものは拙い部分があり、戦上手な相手には子供扱いされたりしている。呪いを解くのはロールプレイの設定だったが、骸骨姿は本当に呪いであることが判明し、それを解くのを目的とする。龍冠樹の泉で呪いが一時的に解け、本来の肉体に戻るが、完全に戻ることができず失敗。呪いが泉の水に耐性を持ったため、完全に呪いを解く方法を改めて模索している。
ポン太 (ぽんた)
黄緑色の体毛を持つ狐のような動物。「ベントゥヴォルピーズ」と呼ばれる精霊獣で、「綿毛狐」の通称でも呼ばれる。狐のような姿をしており、ふさふさの大きな尻尾をいくつも持っている。盗賊に捕まっていたところをアークに助けられ、傷を癒やされたことで彼に懐いて行動を共にするようになる。尻尾がタンポポの綿毛のように見えたため、「ポン太」と名づけられた。アークにはあっさり懐いたが、本来は非常に警戒心が強く、人族よりも精霊に近しいエルフにすら滅多に懐くことはない。そのため、精霊獣が懐くのは一種の人格を証明する手助けになり、エルフたちもアークが精霊獣に懐かれているのを見て、警戒心を解いている。食いしん坊で、アークといっしょによく各国の料理を堪能している。風をあやつる力を持ち、タンポポの綿毛のように風に乗って飛ぶことも可能。風を使うことで攻撃することもできるが、それほど威力はない。ただしアークが魔獣を倒し、それを料理にして食べた際、魔獣の力によって一時的に風の魔法の力が大幅に上がった。
アリアン・グレニス・メープル
カナダ大森林の森都「メープル」に所属するダークエルフの少女。薄い紫がかった銀髪のポニーテールで、金色の瞳を持つ。まっすぐな性格のエルフの戦士で、剣も魔法もスゴ腕。エルフ狩りに使った子供たちを助けるべく、盗賊と戦うが、子供を人質に取られたため窮地に陥る。その後、アークによって助けられ、ポン太に懐かれる彼を信頼できると判断し、エルフ救出をアークに依頼する。人間に対しては警戒心が強いが、一度気を許した人物には強い信頼を寄せるようになり、アークの骸骨姿にも先入観に囚われず接した。アークの呪いを解くのに協力を約束しており、エルフ内で何かと便宜を図っている。アークと行動を共にするようになり、メープルからララトイアに所属を変えるようになる。そのため名前も「アリアン・グレニス・ララトイア」と変わり、アークがララトイア所属となってからは夫婦と間違えられることもある。
チヨメ
「刃心(じんしん)一族」の獣人の少女。黒い毛並みの大きな尻尾と耳を持ち、黒ずくめの装束を身にまとっている。一人称は「ボク」。まじめな性格で、物腰が柔らかい。アークはその身なりから「ケモミミ忍者」と呼んだが、「忍者」の名は刃心一族特有の秘密の名で、それを知るアークに興味を覚える。里の精鋭である「六忍」の一人として、迫害された同族の救出を任務に動いており、ディエントの街でアークと遭遇。アークを人買いの仲間と思い襲い掛かるが、ポン太がアークに懐く様を見て、誤解を解いて矛を収める。その後、アークに詫(わ)びとしてエルフの情報を手渡し別れた。エルフ救出を行うアークたちとは目的が近しいこともあり、のちに合流して彼らと行動を共にするようになる。アークの正体は知らなかったが、のちに風呂上りに気を抜いて、そのまま出たアークの姿を見て知ることとなる。獣人救出に尽力したアークを恩人として慕い、呪いを解くのに協力するのを約束している。戦闘能力は高く、素早い身のこなしと隠密の腕はかなりのもの。また、水をあやつる「水遁」の術を使うことができる。ふだんは礼儀正しく大人っぽい言動が多いが、おいしいものが好きで、特にアークと船旅をして食べた巨大烏賊(いか)であるクラーケン料理が好物。船旅をする際には、クラーケンの出没を楽しみにするほど気に入っている。「チヨメ」の名は「六忍」が代々襲名する名前で、本名は「ミア」。人族に滅ぼされた山野の民の里の出身で、ロウに助けられ、忍者となる。サスケを襲名したあとも、ロウのことを兄のように慕っており、行方不明となったあともその消息を負っていた。のちに不死者となったロウと再会。死をもてあそばれた兄を救うため、決死の覚悟で彼と戦い、打ち破ることに成功する。
紫電 (しでん)
アークの乗騎となった疾駆騎竜(ドリフトプス)。6本脚の屈強なドラゴンで、トリケラトプスのような姿をしている。疾駆騎竜は虎人族にとって荒野を旅する大事な相棒で、成人した虎人族は与えられた疾駆騎竜を非常に大切にしている。元は虎人族のエナ族の所有物だったが、黒巨人の襲撃に伴ってはぐれてしまう。その後、街の人間に拾われた際に、足を欲したアークが、持ち主のエナ族に届けるのを条件に借り受ける。疾駆騎竜は気位が高く、自分より力が強い者しか乗せないが、アークの怪力には歯が立たず、あっさり彼を認めている。その後、アークが虎人族の問題解決に奔走し、大活躍したため、虎人族から友好の証として正式に譲られた。アークも疾駆騎竜のことを気に入っており、「紫電」と名前を付けてかわいがっている。
ダンカ・ニール・メープル
カナダ大森林の森都「メープル」に所属するエルフの青年。目つきが鋭く、ぶっきらぼうな性格をしている。アリアン・グレニス・メープルによると彼女と同等以上の腕を持つエルフ族の戦士で、さらわれたエルフの救出のために動いている。同族に対してはそれなりに人当りがいいが、人族に対してはアリアン以上に当たりが強い。アークが初めて会ったエルフだが、ポン太が懐いている姿を見て警戒心こそ解いたものの、終始取り付く島がない態度で接した。のちにアリアンの依頼を受けたアークと再会。当初こそ警戒心を露わにしていたが、次第にアークを仲間として認めていく。当初は任務以外のことには頓着しないドライな部分があったが、少しずつ人となりが変わっていく。このことをダンカ・ニール・メープル自身はアークの「お節介」が移ったと愚痴っている。ファブナッハ大王国で活動中、サスケに襲われ重傷を負う。その後、負傷の体を押して任務続行中、襲われている虎人族を助け、そのまま彼らの事情に協力している。アークたちと合流後、タジエントの街で虎人族の事件を解決する。事件解決後も虎人族とは協力関係を維持しており、黒の森に異変が起きた際には、虎人族に森に詳しいのを買われて異変の調査を依頼された。アークの素顔については知らなかったが、仲間内で油断したアークがうっかり兜(かぶと)を脱いで食事をした姿を見て、その素顔を知ることとなる。ストイックながら、実は食べ歩きが趣味で、おいしいものには目がない。サスケとの戦いも実は喰い過ぎて満足に動けないのが敗因だった。コミックスの描きおろし漫画『ダンカメシ』においては主役を務め、ダンカが食道楽する様が描かれている。
ハンゾウ(初代)
「刃心一族」に伝説として語り継がれる人物。アークと同じく流れ者で、600年前、当時迫害されていた獣人を保護し、彼らをまとめあげて刃心一族を作り出した。アークの転移魔法と同じ力を持つ「時空忍術」が使えたとされる。人族でありながら猫耳が大好きだったと伝えられており、アークは、忍者フリークな猫耳オタクだったのではないかと推測している。風竜山脈と氷竜山脈のあいだに己の隠れ家を作り出し、そこで生活していたと伝えられている。現代では獣人族の安住の地を求めていたチヨメが、「初代ハンゾウの隠れ家」の跡地である鳥居を発見し、隠れ家の跡地に新たな里を建設している。ハンゾウ(初代)自身の名前を含む高名な忍者の名前を「六忍」として遺しており、現在も忍者の名前を襲名する仕来りが刃心一族に受け継がれている。また、契の精霊結晶と呼ばれる強力なアイテムを里に遺している。
ハンゾウ(二十二代目)
「刃心一族」の当代の長を務める男性。年老いた獣人ながら、年齢を感じさせずにかくしゃくと振る舞っている。初代ハンゾウの隠れ家を発見以降は、その地に新たな里を作り、保護した獣人を住まわせている。アークには多大な恩義を感じており、素顔を見ても動じず礼を言っている。
サスケ
「刃心一族」の少年。本名は「ロウ」で、「六忍」の就任と共に「サスケ」の名を襲名している。黒い髪に大きな尻尾と耳を持つ獣人で、黒ずくめの装束を身にまとっている。幼い頃、故郷を滅ぼされたチヨメを救ったため、チヨメとは長い付き合い。お互いに六忍襲名前から付き合いがあるため、チヨメとはお互いに本名で呼び合うこともあるほど親しく、チヨメにとって実の兄のような存在となっている。チヨメ曰(いわ)く、チヨメより強いらしく、風をあやつる「風遁」を得意とする。里から奪われた契の精霊結晶の捜索を担当していたらしく、そのあとを追う中でヒルク教国に行き当たり、命を落とした。その後、ヒルク教国の手によって不死者として蘇(よみがえ)っており、彼らの先兵としてファブナッハ大王国で暗躍している。アークたちの目の前に姿を現し、動揺したチヨメに大ケガを負わせた。その後、タジエントの街で再びチヨメと対峙(たいじ)。正気を失った不死者であるため、その力は大きく落としていたらしく、覚悟を決めたチヨメに敗北した。最期の瞬間に正気を取り戻し、チヨメに感謝の言葉と警告を伝え、この世を去った。風の契の精霊結晶をその身に宿していたが、死後、契の精霊結晶はチヨメに回収されている。
ゴエモン
「刃心一族」の男性。本名は不明で、「六忍」の一人として「ゴエモン」の名を襲名している。筋骨隆々とした黒髪の大男で、獣人であるため獣の耳と尻尾を持つ。優れた身体能力に加え、土や岩をあやつる「土遁」の術を扱える。土遁の術は攻撃にも使えるが、己の肉体を鉄のように固くすることもできる攻防一体の性能を持つ。王都オーラヴで獣人救出作戦を決行する際に、チヨメに応援として呼ばれ、アークと出会う。寡黙であまり自己主張しない性格だが、アークとはなぜか一目で通じ合って意気投合した。アークのことをかなり気に入っており、彼の骸骨姿を知ってもいささかも動揺せず刃心の里に歓迎し、歓迎の証として手作りの猫の仮面を彼に手渡している。
ディラン・ターグ・ララトイア
カナダ大森林の集落の一つ「ララトイア」の長を務める男性。ヒゲを生やした中年のエルフで、金髪を長く伸ばしている。アリアン・グレニス・メープルの父親で、グレニス・アルナ・ララトイアの夫。穏やかで理知的な性格で、閉鎖的な考えを持つ者が多いエルフの中では柔軟で先見的な思考を持つ。アークの骸骨姿にも偏見を持たず、あるがままを受け入れ、娘の手助けをしてくれたことに感謝した。アークにあらゆる呪いを解く泉の情報を引き換えに、エルフ救出を依頼した。エルフのために尽力してくれているアークには感謝しており、のちに彼を正式にララトイアに迎え入れた。
グレニス・アルナ・ララトイア
ディラン・ターグ・ララトイアの妻で、アリアン・グレニス・メープルの母親。若々しい容姿をしたダークエルフで、おっとり性格でのんびり屋。ふだんは家事をメインに行う主婦的生活をしているが、アリアンの剣の師匠で、その腕前はかなりのもの。アークと模擬戦をした際にはアークの身体能力と転移魔法をものともせず、アークを一方的に叩(たた)きのめして子供扱いした。かなりの猛者(もさ)で、ドラントの里の救援に向かった際には、アークの転移魔法で敵の本陣に運んでもらい、ほぼ単騎で敵を全滅させている。
イビン・グレニス・メープル
アリアン・グレニス・メープルの姉。薄い紫がかった銀髪をストレートロングにしたダークエルフで、エルフの中でも有数のスゴ腕剣士。その剣の腕前はアリアンを優に超えており、妹からは「嫁のもらい手もない戦闘狂」と評されている。しかしアリアンがアークと帰郷後、イビン・グレニス・メープルが結婚することが発覚し、アリアンを驚愕(きょうがく)させた。妹を溺愛しているため、アリアンからはいろんな意味で苦手意識を持たれている。
ウィリアースフィム
最上位の竜種である「龍王(ドラゴンロード)」の一体。青い鱗(うろこ)を持つ巨竜で、風竜山脈と氷竜山脈のあいだにある「龍冠樹」を寝床としている。威風堂々とした立ち振る舞いをするが、意外と話のわかる人物で、エルフ族とは長年友好関係を築いている。草原で寝ていた際に、アークに尻尾を踏まれたため怒り、彼と激闘を繰り広げる。アークでも単独では敵(かな)わないほどの高い戦闘能力を誇り、口から放つ「竜王の息吹(ドラゴンブレス)」は本気で放てば地形すら変える威力がある。アリアン・グレニス・メープルの取り成しで矛を収め、以降はアークとも友好的に接する。長き時を生きているだけあって博識で、アークに呪いについて説明したり、ハンゾウ(初代)と面識があったりと、一行をその知識で助けている。初代ハンゾウの隠れ家近くに住んでいるが、もともとハンゾウの隠れ家があったところにあとから来たため、チヨメが新しい里を立ち上げたいといった際も快諾している。アークが天騎士の力の制御のため、特訓を開始した際にはそれに付き合っている。黒の森でアークと特訓していた際に、森の異変と遭遇。アークの特訓に丁度いいからと樹王の危機を他人事で見ていたが、油断していたところをバルトード・スペルビア・ヒュミリタスに攻撃され、取り込まれてしまう。しかし、バルトードが龍王の力を制御しきれず暴走。巨大な爆弾となってしまうが、アークの執行者焔源の熾天使を焼き払われ、解放される。
樹王 (じゅおう)
黒の森に君臨する主の内の一体。樹人(トリエント)たちの王である樹王「古樹人(エルダートリエント)」で、本体は山のようにそびえたつ巨大樹の姿をしている。森の主たちの中では比較的温和で、よっぽどのことがない限り怒ったりしない。ウィリアースフィムとは旧知の仲。樹木の体を自由自在にあやつることができ、その力を利用して人間に近しい姿になることも可能。その際には髪を長く伸ばし、巨大な花を髪飾りのように付けた少女の姿となる。人語で会話することもでき、食事も可能。ウィリアースフィムの連れて来たアークと出会った際も、彼の食事を気に入り、黒の森専属の料理人にならないかと誘っている。人間に対しても意外と気安く、見た目もあって言動はちょっとかわいいが、根っこの部分は魔獣たちの主らしく物騒。樹王の怒りもわかりやすく怒り狂うのではなく、本人的には「ちょっと注意する」程度の感覚だが、それでもふつうの人間なら即死するような攻撃を行う。森に侵入したバルトード・スペルビア・ヒュミリタスに警告代わりの攻撃を行うが、思わぬ反撃にあって体を乗っ取られてしまう。その後、意識を体の一部に移して切り離し、アークたちに接触。自分の体を取り戻す手伝いを依頼した。バルトード撃破後は依頼の報酬代わりに、アークの特訓を手伝っている。
リィル・ノーザン・ソウリア
ノーザン王国の第1王女。金髪を肩口で切りそろえた幼い少女だが、一人称は「わらわ」で、語尾に「じゃ」を付ける古めかしいしゃべり方をする。幼いが律儀で聡明な性格で、エルフや獣人にも偏見を持たずに接する。王都が10万の不死者の軍勢に襲われた際に、父親であるアスパルフ・ノーザン・ソウリアに援軍を連れてくるように命じられ、ザハル・バハロヴとニーナ・ドゥ・アブロアを共にして王都を脱出する。ノーザン王国の飛び地である領都、キーンを目指すが、道中、追手に襲われる。窮地に陥ったところをアーク一行に助けられ、彼らを護衛として雇った。アークたちの力で無事にキーンにまでたどり着くが、実は援軍要請はウソで、本来の命令はリィル・ノーザン・ソウリアの保護である。リィル自身はそれを知らされなかったため、キーンで真実を知って動揺する。またキーンの軍勢を率いて王都に戻っても、日数の関係から王都は陥落するという話を聞き、絶望する。八方ふさがりの状況で意気消沈するが、アークの申し出により、彼らの力を借りて王都に戻ることを決意。その際、アークに報酬として国内のエルフと、獣人の解放と保護を約束する。アークたちとわずかな軍勢を率いて、最短距離で王都に戻ったお陰で、辛うじて陥落前に間に合い、アークの活躍で王都にせまる不死者の軍勢の撃退に成功する。自国を救ってくれたアークのことを慕っており、彼らが求める情報の手助けになればと、宝物庫の閲覧を許可した。
ザハル・バハロヴ
ノーザン王国に所属する騎士の青年。鳶色の髪を逆立て、精悍(せいかん)な顔つきをしている。リィル・ノーザン・ソウリアの筆頭護衛騎士で、リィルがキーンを目指す際にもその護衛を務めている。リィルたちを逃がすため、追手として差し向けられた死霊騎士を足止めするも、力及ばず戦闘不能となる。辛うじて生きていたが致命傷を負い、あとは死を待つばかりだったが、そこに偶然アークが通りかかり、彼の力で九死に一生を得る。その後はアークの力を借りて追手を撃退し、リィルと合流。リィルの交渉によってアークたちと行動を共にするようになる。
ニーナ・ドゥ・アブロア
ノーザン王国に所属する騎士の女性。黒髪ロングヘアで、泣きぼくろがある。生真面目で実直な性格をしている。リィル・ノーザン・ソウリアの護衛騎士で、リィルがキーンを目指す際にもその護衛を務めている。追手として差し向けられた死霊騎士をザハル・バハロヴが足止めし、そのあいだにリィルと共に逃亡するも、死霊騎士に追いつかれて窮地に陥る。捨て身の特攻で死霊騎士に手傷を負わせるが致命傷を負う。リィルと共に命が風前の灯火となるが、アークの助けによって一生を得る。片腕を失う大ケガをしていたが、アークの回復魔法によって五体満足に回復する。また王都のケガ人を救うため、アークに頭を下げて回復魔法の使用をお願いしており、アークに多大な恩を感じている。
アスパルフ・ノーザン・ソウリア
ノーザン王国の国王で、リィル・ノーザン・ソウリアの父親。争いの絶えないノーザン王国を治めている。私人である自分を抑え、公平な王として振る舞っている。国の立地的に敵が多いため、ヒルク教国の力を借りて国内を安定させているが、ヒルク教国の獣人迫害には難色を示しており、ひそかに獣人を匿(かくま)うなど根の部分は良識的な性格をしている。王都が不死者の大軍に襲われたため、己の子らである第1王子、第2王子に各地を巡って援軍を集めるように命じる。また、王女であるリィルにも表向きは援軍要請の命を与えるが、娘だけでも助けるという親心で、実はひそかにキーンの領主にリィルの保護を頼んでいた。王都の決戦で民たちと共に戦い抜いていたが、5日間にわたる戦いで疲弊しており、全滅寸前にまで追い込まれる。しかし、すんでのところでアーク一行が間に合い、彼らの力を借りて助かる。協力関係であったパルルモ・アーヴァリティア・リベラリタスが黒幕であったことにショックを受けるが、戦後はアークたちとの約束を履行し、獣人の解放宣言を行う。またヒルク教国の危険性を認識し、長年敵対関係にあったサルマ王国と停戦。両国で対ヒルク教国戦を想定した共同戦線を張るようになる。
カーシー・ヘルド
魔獣専門の研究をするエルフの男性。眼鏡をかけた優男で、理知的な雰囲気を漂わせている。カナダ大森林の外で生活する変わり者のエルフで、神聖レブラン帝国近辺の街「ブランベイナ」を気に入り、ここ40年ほどはその街で生活している。街の住人とも顔なじみで、彼らと親しく接するうちに人族とエルフの融和を考えるようになり、人族とエルフが手を取り合って暮らす未来を夢見ている。街では魔獣の生態を調べるのを生業としており、魔獣の生態を調べることで、魔獣被害を減らしている。砂漠の大ミミズ「サンドワーム」を捕獲するべく、街を訪れた同族のアリアン・グレニス・メープルに依頼する。その後、魔獣の異常大型化に遭遇。巨大なサンドワームに襲われ危機に陥るが、アークの活躍で事なきを得る。アークたちに依頼の報酬として神聖レブラン帝国の地図を渡すと共に、彼らのことを気に入り弟のノラン・ヘルド・ランドフリアにアークたちの旅を助けるように言伝をしている。
ノラン・ヘルド・ランドフリア
カーシー・ヘルドの弟。容姿はカーシーと瓜二つ。カナダ大森林の最南端にある港町「ランドフリア」の長を務めている。里を飛び出した兄とは長年、音信不通だったが、兄からアークたちの旅の助力を頼む連絡がきて、アークたちに強い興味を覚える。アークたちがドラントの里に向かう際に船を用立てて、彼らと会う。
ユリアーナ・メロル・メリッサ・ローレン・オーラヴ
ローデン王国の第2王女。はちみつ色の髪を長く伸ばしている。ドレスを身にまとった少女で、穏やかな性格をしている。姉である第1王女がリンブルト大公国に嫁いでいるため、王位継承権第3位を持つ。よくも悪くもまっすぐな性質で、その人柄を慕う者が多い。エルフとの融和を考えており、トライトン・ドゥ・ディエントの引き起こしたエルフの人買い事件を重く見ている。国王に命じられエルフと交渉を行うべく、リンブルト大公国に向かうが、謎の襲撃者に襲われて死亡する。しかし、その現場にたまたま居合わせたアークが、襲撃者を撃退して「再生復活」を行ったことで復活する。アークは名乗らずに立ち去ったが、ユリアーナ・メロル・メリッサ・ローレン・オーラヴはアークのことをもうろうとした意識の中で目撃しており、彼を「天使様」と思っている。復活後は再びリンブルト大公国に向かい、大公国に嫁いでいた姉の第1王女と合流。彼女に匿われることで、表向きは死亡したことにして、刺客たちの目をあざむいた。リンブルト大公国で水面下でエルフたちと交渉して、彼らの後ろ盾を得たことで、一気に王位争奪戦の最有力候補となる。ダカレス・シシエ・カルロン・ローデン・ヴェトランが死亡し、王位を巡る戦いはセクト・ロンダル・カルロン・ローデン・サディエと一騎打ちという様相となったが、セクトが早々に分が悪いと察して下りたため、実質的に次期王となる。
ローレン・ラーライア・ドゥ・ルビエルテ
ルビエルテ子爵家の令嬢。年齢は16歳。おっとりとした性格で、栗色の髪を長く伸ばしている。護衛と共に街の外を馬車で移動中、野盗たちに襲撃を受ける。護衛を皆殺しにされ、リタ・ファレンと共に慰み者にされかかるが、たまたま通りかかったアークに助けられ事なきを得る。アークに多大な恩を感じており、彼を慕っている。襲撃事件は貴族の護衛を皆殺しにしていることから、ただの野盗にしては「強すぎる」ために不審な点が多い。
リタ・ファレン
ローレン・ラーライア・ドゥ・ルビエルテの侍女を務める女性。年齢は20歳。明るめの赤い髪を片口で切りそろえている。野盗に襲われ、ローレンと共に慰み者にされかかるが、たまたま通りかかったアークに助けられ事なきを得る。襲撃事件で心に傷を負ったローレンの支えとなっている。父親は領内の騎士団団長を務めるホルコス・ファレンで、ホルコスはのちに領内に現れたジャイアントバジリスクを討伐している。
マルカ
ラタ村に住む少女。1年前に父親と死別してるため、幼いながらしっかりした考えの持ち主。母親と妹に楽をさせるべく、父親の薬草採取の仕事を受け継ごうと考えている。しかし森は危険なため、護衛依頼を出していた。報酬の金額は子供のお小遣い程度だったが、薬草採取に興味を覚えたアークが引き受けた。少ない報酬で立派な騎士然としたアークが来たため戸惑うが、すぐにアークの人となりを知ってなかよくなる。父親から薬草について教わっていたため、知識はかなり豊富で、野山も歩きなれており、身体能力は高い。薬草採取中にジャイアントバジリスクに襲われ危機に陥るが、アークの尽力によって事なきを得る。ただしアークが目立ちたくない事情があったことと、アークの配慮で母親に心配かけさせないため、ジャイアントバジリスクを倒したことは二人だけの秘密にした。アークとは再会を約束して別れている。
ペトロス・ドゥ・ランドバルト
ローデン王国南西部に位置する港町「ランバルト」の領主を務める男性。容姿の整った青年で、先見的な考えを持つ。父親であり前領主であるペドロスが、奴隷売買に手を染めているのを知り、その一環でエルフの奴隷、トレアサと出会う。ペドロスは奴隷売買を実の息子に糾弾されて失脚。トレアサはペトロス・ドゥ・ランドバルトに救われたのをきっかけに惹(ひ)かれ合うようになり、相思相愛の仲となる。トレアサは現在、領主夫人となっており、エルフと人族の融和を目指して、夫を支えている。のちにトレアサを救いに現れてダンカ・ニール・メープルとも会い、彼らに自分たちの考えを伝え、エルフたちから一定の理解を示されている。
セクト・ロンダル・カルロン・ローデン・サディエ
ローデン王国の第1王子。明るめの茶色の髪を伸ばしている。整った顔立ちで、穏やかな性格をしている。王位継承権第1位で、西のレブラン大帝国の後ろ盾を得ているのもあり、盤石な地位に就いている。政治手腕は穏健派ながら、その実、必要があれば肉親すら切り捨てる冷酷な策謀家で、弟のダカレス・シシエ・カルロン・ローデン・ヴェトランを裏から手をまわし意のままにあやつっていた。妹のユリアーナ・メロル・メリッサ・ローレン・オーラヴを殺した事件も、セクト・ロンダル・カルロン・ローデン・サディエが手引きしたもので、王位を継ぐために暗躍していた。肉親すらためらわず己の策の犠牲にするが、大国の思惑に左右されるローレン王国を守るためのもので、私欲ではない。のちにユリアーナが想定外の事態で復活したことで、己の策を潰されるが、王位争奪戦からおとなしく身を引き、ユリアーナに王位を譲っている。
ダカレス・シシエ・カルロン・ローデン・ヴェトラン
ローデン王国の第2王子。金髪を逆立ている。青い瞳を持つ青年で、苛烈な性格をしている。王位継承権第2位を持つ。配下の貴族たちを使って大規模なエルフ狩りを行い、それを以て派閥の資金源としていた。アークが没収したトライトン・ドゥ・ディエントの隠し財産も、その資金源の一つ。東の神聖レブラン帝国の後ろ盾を得ていたようで、神聖レブラン帝国にエルフを流す代わりに、ジャイアントバジリスクを仕入れていた。自分が王になるためには手段を選ばない野心家で、エルフの人狩りも条約に禁止されているため、明るみになったあと、一気に窮地に立たされることとなる。謎の襲撃者に次々と配下の貴族が討たれてしまったため、身を隠そうとするが、配下の裏切りに遭って死亡した。苛烈な割に短慮で上に立つ者としては非常に未熟で、その行動も実は兄のセクト・ロンダル・カルロン・ローデン・サディエに最初からあやつられていたのを、最期まで気づかなかった。裏切った配下もその正体は兄の放った密偵で、最期はユリアーナ・メロル・メリッサ・ローレン・オーラヴ殺しの罪を着せられ、さらに獣人を煽(あお)って王都を混乱に陥れた逆賊として討たれている。
ドミティアヌス・レブラン・ヴァレティアフェルベ
神聖レブラン帝国において皇帝の位に就く男性。ワインレッド色の髪を長く伸ばした青年で、東西レブラン帝国統一を目指す若き野心家。フンバ・スドゥ・ロゾバンヤを雇って魔獣軍団を結成して、侵略の準備を始めている。アークたちの活躍で魔獣軍団は全滅し、ヒュドラも死んでしまうが、軍団を再編成して、レブラン大帝国に攻め入る。軍閥出身であるため、レブラン大帝国に攻め入る際には、自らも最前線に出陣した。
ジャイアントバジリスク
大蜥蜴(とかげ)の魔獣。カメレオンのような頭と8メートルにも及ぶ巨体、3対の脚を持つ。大きな体に見合ったパワーを持ち、「石化の眼差し」「毒の霧」「麻痺の爪」と多彩な状態異常攻撃を得意とする魔獣で、アークのやっていたオンラインゲームでも「モンスター」として登場していた。ラタ村付近の山に潜んでおり、薬草採集のため山を訪れたアークとマルカに襲い掛かる。ゲーム内では中級くらいの強さとされるが、状態異常耐性を持っていないとあっさり殺されてしまう厄介者として扱われていた。アークにはゲーム時代と攻撃の予備動作が同じだったため、あっさり攻撃を見抜かれる。得意の状態異常攻撃もテウタテスの天盾によって防がれてしまい、まともに攻撃を加えることもできず、アークの「審判の剣」で一刀両断にされた。実はラタ村の山は本来の生息地ではなく、トライトン・ドゥ・ディエントがルビエルテ子爵領で混乱を起こすためにわざと引き込んだ。トライトンは神聖レブラン帝国が魔獣軍団として育てあげた2頭のジャイアントバジリスクを買い取ってルビエルテ子爵領に放っており、アークが倒したのはそのうちの1匹。本来はローレン・ラーライア・ドゥ・ルビエルテの襲撃事件と併せて、混乱しているところをジャイアントバジリスクに襲わせる計画だった。しかし、アークが無自覚に計画を妨害したせいで、ルビエルテ子爵領の混乱は最小限で済み、残った1匹もルビエルテ子爵領の騎士団が犠牲を出しつつも討伐している。
トライトン・ドゥ・ディエント
ディエント侯爵領の領主の座に就く高齢な男性。でっぷりと太った体型で、白髪をオールバックにして白髭(ひげ)を生やしている。権力を乱用して私腹を肥やしている悪党で、ローレン王国内で人身売買を行っていた。またルビエルテ子爵領において、ローレン・ラーライア・ドゥ・ルビエルテの襲われた事件と、ジャイアントバジリスクが現れた事件はトライトン・ドゥ・ディエントの手引きによるもの。第2王子のダカレス・シシエ・カルロン・ローデン・ヴェトランの派閥に属し、第1王子派のルビエルテ子爵を妨害するため、領地で混乱を起こすべく事件を引き起こしていた。また、エルフの人狩りも行っており、領地には人買いの拠点を隠し持っている。絵に描いたような悪徳領主だったが、エルフ救出に現れたアークとアリアン・グレニス・メープルによって成敗される。最後はアリアンによって解放されたエルフたちにタコ殴りにされたうえに、何者かによって居城も爆破され、そのまま爆発の中に取り残されることとなる。アークはトライトンがタコ殴りにされているあいだに、トライトンの隠し財産を発見しており、組織再建阻止を名目にアークによって没収されている。
ウドラン
トライトン・ドゥ・ディエントの息子。父親と同じく絵に描いたような悪党で、さらに頭が悪くてワガママという救いようのない人物。父親からも半ば見放されており、勝手に行動している。エルフ狩りに勝手に同行して、エルフの子供たちをいたぶり、子供たちを助けにきたアリアン・グレニス・メープルに対しても子供を盾に脅迫した。その後、義憤に駆られたアークが乱入し、彼に鎧ラリアットを食らって撃退される。大ケガを負ったものの無事で、父親に説教をされていた際に、アークが再び乱入。アークのことがトラウマになっており、彼にせまられて気絶した。その後、父親と同じく爆発する居城に取り残される。
フンバ・スドゥ・ロゾバンヤ
魔獣呪術師の男性。黒髪のドレッドヘアで、獰猛(どうもう)な顔つきをしている。魔獣を兵器として用いることを考えた神聖レブラン帝国に雇われており、ライブニッツァ領で多くの魔獣を育てていた。人間をいたぶったり、殺したりすることにいっさい良心の呵責(かしゃく)を抱かない極悪非道な人物で、殺した人間を魔獣のエサにしていた。罪人や犯罪者を魔獣のエサとしていたが、それに飽き足らず、罪のない領民や連れ込んだ娼婦(しょうふ)すら犠牲者にしていた。そのため、周囲からもその行いをとがめられていたが、本来の雇い主は皇帝のドミティアヌス・レブラン・ヴァレティアフェルベであるため、それを後ろ盾にして好き勝手している。魔獣呪術師としては非常に優秀で、数々の魔獣を「魔獣軍団」として集めており、大魔獣であるヒュドラすら育てあげている。エルフを人体実験のために確保し、その行方を追ってきたアークとアリアン・グレニス・メープルと対峙する。配下の魔獣に幻術を使わせ、アリアンをあやつるが、アークによってアリアンを正気に戻されてしまう。その後、魔獣軍団をアークにけしかけるが、別動隊として動いていたチヨメにほとんど魔獣を殺されて失敗。追い詰められたため、半ば暴走状態のヒュドラを解放する。幻術であやつったため、アリアンからは恨みを抱かれ、アークにヒュドラを滅ぼされて放心していたところを、アリアンによって火魔法で消し炭にされた。
ヒュドラ
フンバ・スドゥ・ロゾバンヤが育てた大魔獣。小さな城くらいの大きさの蛇の魔獣で、いくつもの頭を持つ。その巨体に見合った破壊力は抜群で、さらに強力な自己回復能力と水魔法をあやつることができる。単体で城や町を破壊できるため、「国落とし」の名でも呼ばれている。ドミティアヌス・レブラン・ヴァレティアフェルベが魔獣軍団の核としてフンバに育てさせていたが、アークたちの襲撃で追い詰められたフンバが起動する。人間をエサにしており、起動したヒュドラはライブニッツァ領の街に向かって進攻し始めたが、アークの召喚した炎獄魔人によって消し炭にされて滅んだ。
タナトス・シルビウェス・ヒルク
ヒルク教国において教皇の地位に就く正体不明の人物。豪華な装飾された白いローブに身にまとい、性別すらも不明。己の部下である七枢機卿を各国に潜ませ、情報操作をして暗躍している。エルフや魔物を捕えて怪しげな実験を繰り返しており、ヒルク教国の教会本部の地下大聖堂には大規模な人体実験場を作り出している。詳細は不明ながら「イベント」を起こすのが目的らしく、そのために七枢機卿を不死者にして力を与え、さらに不死者の大軍を作り出している。また、人間に潜り込ませた不死者の存在を気取られないように、各国の情報を操作して不死者の存在を感知できるエルフや、獣人の迫害を行っている。アークはその所業から、タナトス・シルビウェス・ヒルクも自分と同じ流れ者で、不死者を手駒にするのに長(た)けた「死霊術師(ネクロマンサー)」なのではないかと推測している。
チャロス・アケーディア・インダストリア
ヒルク教国の「七枢機卿」の地位に就く男性。毛の薄い肥満体型で、いつも何かを食べている。南大陸の人族最大の都市「タジエント」の街に駐留している。聖職者としてはちゃんと仕事をこなしているため、町の人間からは慕われているが、本性は自堕落で楽をすることばかり考えている。タナトス・シルビウェス・ヒルクの命令には忠実だが、タジエントの街を滅ぼす際には、自堕落に過ごせる場所を潰されるのに不満を呟(つぶや)いていた。サスケを使って、タジエントの街を滅ぼすため暗躍していた。その正体は人喰いの不死者で、タイジェントの街を半壊状態まで追い込み、どさくさに紛れて住人を食い荒らしていた。しかし、アークたちの活躍によって思ったほど街に被害を与えられず、住人を喰い荒らすのも妨害される。最終的に怒り狂ってアークたちの前に真の姿を現し、彼らに襲い掛かる。本来の姿は巨大なサンショウウオのうえに、人の上半身が乗っかったような醜悪な姿をしている。体中に口がある不気味な姿をしているが、これはチャロス・アケーディア・インダストリアに喰われた犠牲者の魂で、口からは犠牲者の嘆きの声がつねにこぼれている。この嘆きの声は聞いた者の力を奪い、弱体化することができる。また、犠牲者の魂を利用して傷を癒やすこともでき、四肢を失ってもすぐさま回復するという驚異的な回復力を持つ。サンショウウオの大きな口から吐く吐息「混沌腐食霧(カオスコロージョン)」は対象を溶かしつくす凶悪な威力がある。犠牲者の魂を利用するその醜悪な有り様がアークの逆鱗(げきりん)に触れ、時の蛇獅子の力を受けたアークに、再生を許さぬ怒濤(どとう)の攻めを受けて滅ぼされた。
パルルモ・アーヴァリティア・リベラリタス
ヒルク教国の「七枢機卿」の地位に就く男性。眼鏡をかけた神経質そうな青年の姿をしている。ノーザン王国を担当しており、表向きは不死者の大軍に襲われた国を見捨てられず、義に駆られてノーザン王国に残り、彼らの支援を担当している。そのため、国王であるアスパルフ・ノーザン・ソウリアからも信頼を寄せられている。外向きは理知的で穏やかであるが、その本性は同じ七枢機卿すら見下す傲慢な性格をしている。またサディストでもあり、人間の絶望や恐怖する表情を何よりも好む。手駒の不死者を使ってノーザン王国で暗躍し、リィル・ノーザン・ソウリアに追手を差し向けた張本人。内部からノーザン王国の兵士を殺し、徐々に戦局を悪化させていた。アークによって不死者の軍勢を滅ぼされたあとは、彼らに喰って掛かるが、その際にチヨメに不死者であるのを見抜かれて首の骨を折られる。本来の姿は鳥の頭と2対の腕を持つ巨漢で、チヨメに攻撃されたあと自らノーザン王国を滅ぼすべく正体を表す。「吸魔呼吸(ラクフィリオマジク)」によって嘴(くちばし)から魔力を吸収することで、魔法を無力化し、その吸収した魔力を衝撃波「衝撃音撃破(インポールソマロォル)」として放つことが可能。連戦で消耗していたとはいえ、アークに押し勝つ怪力を持つ。チャロス・アケーディア・インダストリアのことを七枢機卿の中で「最弱」と見下しているが、アークからは再生能力がない分、「チャロスより弱い」と評価をくだされる。それに怒り狂ってアークを攻撃するも、注意をそらされたところにアリアン・グレニス・メープルとチヨメの連携攻撃を食らって敗北する。魔力吸収によって魔法を無効化できるため慢心していたが、不死者を浄化する魔法は天敵で、それによって戦闘能力をすべて奪われ、最期は火葬された。
バルトード・スペルビア・ヒュミリタス
ヒルク教国の「七枢機卿」の地位に就く男性。頭をスキンヘッドにした痩身でサングラスをかけ、褐色の肌を持つ。七枢機卿の中では冷静な性格で、私情を交えず淡々と仕事をこなす。しかしその実、タナトス・シルビウェス・ヒルクを熱狂的に信奉する狂信者で、タナトスの命令には絶対忠実。タナトスに直接声を掛けられただけで、恍惚(こうこつ)とした表情となる。タナトスのためならあらゆる犠牲を容認し、そこに良心の呵責を覚えない。本来は神聖レブラン帝国での活動を主にするが、タナトスの命令で実験の素材を求めて黒の森に向かう。現地では魔獣を大量虐殺を行って樹王の怒りに触れるが、その樹王を実験の素材にすることを決め、樹王の肉体を乗っ取る。本来の姿はミジンコとクラゲを合わせたような姿をした化け物で、体中から触手を伸ばして他者を吸収したり、乗っ取ったりすることが可能。ただし、強い力を持つ者を乗っ取るのは難しく、不意を打ってもそれなりに時間が掛かる。樹王の体をほぼ乗っ取るが、そこに樹王の依頼を受けたアークたちが現れ、妨害される。樹王に肉体の主導権を奪還されるも、とっさに目の前にしたウィリアースフィムに乗り移る。ウィリアースフィムが完全に油断していたため乗り移るのには成功するものの、その力を制御できずに巨大な爆弾となってしまう。その後、アークの執行者焔源の熾天使によって焼き払われた。
エリン・ルクスリア・チャスティタス
ヒルク教国の「七枢機卿」の地位に就く女性。蠱惑(こわく)的な雰囲気を漂わせた絶世の美女で、流れるような長い髪に白い法衣をまとっている。その輝くような美貌で男性を籠絡し、己の意のままにあやつるのを得意とする。現在はレブラン大帝国に根を張り、国内の要人を籠絡して情報操作を行っている。その容姿もあって表では慈愛あふれる聖女のような扱いを受けているが、その本性は邪悪。本来の姿は蛇のような姿をしており、エリン・ルクスリア・チャスティタス自身の容姿に寄ってきた男性を喰らって殺す、文字どおりの「つまみ食い」を好む。タナトス・シルビウェス・ヒルクの命令には忠実だが、それ以外では己の欲亡を優先するきらいがあり、籠絡する任務のあいだに現地の男をつまみ食いしている。同じ七枢機卿のパルルモ・アーヴァリティア・リベラリタスとは犬猿の仲。
場所
ルビエルテ
ローデン王国の北部に位置する都市。規模は比較的大きく、活気があって街には商業施設が数多く存在する。アークが異世界に来て初めて訪れた町で、アークはこの町の傭兵組合所で登録した。領内の治安を維持するための騎士団も存在し、ジャイアントバジリスクが現れた際にも騎士団が出動している。領主のルビエルテ子爵は第1王子のセクト・ロンダル・カルロン・ローデン・サディエの派閥に所属しているため、第2王子の派閥に属するトライトン・ドゥ・ディエントからは敵視されている。
ディエント
ローデン王国の北部に位置する都市。王都と国境を結ぶ要衝にある都市のために交易が盛んで、国内でも屈指の大都市となっている。有事の際には城塞として使われることも想定しており、城と街は堅牢な造りとなっているのが特徴。領主であるトライトン・ドゥ・ディエントは、人身売買に手を染めるなど黒い噂の絶えない人物だが、領内の政治に関してはきちんと仕事をこなしている。領内は豊かで、町も活気に満ちている。アークが人買いにさらわれたエルフの救出作戦の際に、トライトンは成敗され、その居城も何者かによって爆破された。第2王子であるダカレス・シシエ・カルロン・ローデン・ヴェトランの派閥に属し、人買いの売り上げもダガレスの資金源となっていたが、アークに奪われたことでダガレスは一気に窮地に立たされることとなる。また国境沿いという立地を活かして、神聖レブラン帝国ともつながっており、魔獣軍団の試作品であるジャイアントバジリスクを仕入れるなど暗躍していた。
オーラヴ
ローデン王国の王都。王家の城を中心に栄えた城下町で、国内外からあらゆるものが流れてくるため、ディエント以上に活気のある街となっている。人工はディエントの約3倍ほどの5万人。街は4重の城壁に囲まれているため、難攻不落な城塞都市としての側面も持ち、王城に近い城壁ほど身分の高い者しかくぐれない仕組みとなっている。
リンブルト大公国 (りんぶるとたいこうこく)
ローデン王国の東部に位置する国家。もともとはローデン王国の一部だったが、600年前にローデン王国とエルフが戦争をし、その際にエルフとの融和を目指す者たちが独立した。当時のローデン王国はエルフとの戦いに敗れて独立を止めることができず、リンブルト大公国はエルフとの交易によってあっという間に経済大国となったため、現在まで独立を維持している。人族の国家では唯一、エルフと交易があるため、小国ながらその経済力と発言力はかなりのもの。また600年前の戦いの結果から、エルフに対して武力を向けようとする国家も少なく、その事実がなおさらこの国の価値を高める結果となっている。ローデン王国もこの国との国交を重要視しており、現在の大公の妻に第1王女のセリアーナ・メリア・ドゥ・オーラヴ・ティシエントを嫁がせている。
ローデン王国 (ろーでんおうこく)
北大陸の南部に位置する王国。王都、オーラヴを中心に貴族が寄り集まって形成した王政国家で、王は貴族たちの代表としての権力は持つが、地方は貴族たちに統治を任せているため、王といえど地方貴族たちの意向は無視することはできない。北大陸では、レブラン大帝国と神聖レブラン帝国に次ぐ国力を持つ国で、大陸の覇を狙う両帝国は、ローデン王国を自陣営に取り組むべく干渉している。600年ほど前にエルフの持つ力を狙って、カナダ大森林に攻め込んだ過去があるが、結果は大敗北。その際にリンブルト大公国が独立したうえに、エルフと条約を結び、エルフの捕縛を全面的に禁止している。しかし現代ではその条約をひそかに破り、人身売買しているものが少数存在する。
ノーザン王国 (のーざんおうこく)
北大陸の南東部に位置する王国。王都であるソウリアは北に「デルフレント王国」、西に「ヒルク教国」、南に「サルマ王国」に隣接し、それぞれの国の中心地に存在するため、各国との国境争いが絶えない地となっている。サルマ王国とは特に強い敵対関係となっており、現在はサルマ王国の先に飛び地である領都、キーンが存在する。元は獣人たちもふつうに暮らしていたが、昨今はヒルク教国の影響が強く、表立って敵対することを恐れたノーザン王国はヒルク教国が国内で獣人狩りをしているのを黙認している。ただし一方で、王国の住人が獣人を匿(かくま)っているのも見て見ぬフリをしている。不死者の大軍にソウリアが襲われ、亡国の危機に陥るが、アークたちの活躍によって不死者の軍団は撃退される。その際に、国王であるアスパルフ・ノーザン・ソウリアが獣人の解放を宣言したことで、国内の獣人事情は回復の兆しを見せている。
レブラン大帝国 (れぶらんだいていこく)
北大陸を二分する大国の一つ。元は一つの覇権国家だったが、長い歴史の中で分裂し、大陸西部を治めるレブラン大帝国となった。その位置関係から「西の帝国」「西レブラン」とも呼ばれる。首都は巨大都市「ヴィッテルヴァーレ」で、巨大建築物が立ち並ぶ荘厳な都となっている。南の大陸にも版図を広げており、南大陸の北半島はに存在する大都市「タジエント」は帝国領となっている。
神聖レブラン帝国 (しんせいれぶらんていこく)
北大陸を二分する大国の一つ。元は一つの覇権国家だったが、長い歴史の中で分裂し、大陸東部を治める神聖レブラン帝国となった。その位置関係から「東の帝国」「東レブラン」とも呼ばれる。レブラン大帝国とは国力がほぼ拮抗しており、大陸に覇を唱えるべく軍備を増強させている。
カナダ大森林 (かなだだいしんりん)
エルフ族が治める大森林。北大陸南東部に広がる広大な森林で、人族からは「エルフの森」とも呼ばれる。森の浅い部分はふつうの森だが、奥に進むにつれ魔獣が強くなって森も深くなるため、人族には容易に立ち入れない秘境となっている。エルフたちは森の中にいくつかの集落を作り、その集落の長老たちが合議制で森全体を管理している。首都は森都「メープル」で、巨大建造物が立ち並ぶ都市となっている。森の南端には港町「ランドフリア」があり、この港町を通じて各地とも交易をしている。そのため森に人族は立ち入り禁止だが、人族以外の獣人やドワーフとは交流があり、森の一部には彼らも暮らしている。実はかつては荒野しか広がっておらず、エルフの初代族長が人族からの迫害に逃れるため作り出した人工の森。そのためエルフの建造物は樹木と人工物が融合し、独特の形状をしたものが多い。初代族長はアークと同じく流れ者で、カナダ大森林の各集落には初代族長が残した、各地を移動するための「転移陣」が今も残っている。
ファブナッハ大王国 (ふぁぶなっはだいおうこく)
南大陸に存在する国。さまざまな部族の獣人族を初代王が統一して生まれた国で、人族よりも獣人たちが多い国となっている。カナダ大森林とは古くから船で交流があり、交易で訪れるエルフも存在する。北の大陸では「獣人」は人族からの蔑称で、獣人は自らを「山野の民」と名乗るが、南の大陸では初代王がさまざまな種族を「獣人」として統一したため、こちらの種族名で呼ぶのが一般的となっている。ファブナッハ大王国には人族がいないが、北西部の半島にはレブラン大帝国の南大陸での拠点である都市、タジエントが存在し、この街は南大陸で最大規模の人族の街となっている。近年は獣人が捕まり、タジエントで奴隷として働かせられるケースがあるため、獣人の一部は人族に対して強い警戒心を持っている。また、南には人外魔境である黒の森が存在する。
黒の森 (くろのもり)
南大陸に存在する大森林。ファブナッハ大王国の南に広がる深い森で、多種多様な魔獣が跋扈(ばっこ)する人外魔境。ファブナッハ大王国では脅威とされる巨人型魔獣「黒巨人(ジャミアント)」ですら、黒の森の食物連鎖では下位に位置し、森にはそれ以上の巨大で凶悪な魔獣がひしめいている。森の中にはそれぞれの縄張りを管理する「主」と呼ばれる者が存在し、主の中には龍王にすら匹敵する強い力を持つ者もいる。
その他キーワード
流れ者 (ながれもの)
別の世界から流れ着いた者の総称。アークも「流れ者」の一人で、異世界に「ここではない何処」から流れ着いた者たちが、こう呼ばれている。人以外にも魔獣なども本来はこの世界に存在せず、いずこからか流れ着いた者が定着したとされる。どうして流れ着いてくるのかは不明で、ウィリアースフィムによればアークの場合、魂だけがこの世界に飛ばされ、骸骨の魔物の体に定着したとされる。このためアークは肉体と精神が一致しておらず、精神が少し変容してしまっており、これが結果的に負の感情を抑制し、異世界に来てからのアークの順応性の高さにつながっている。ただしその結果、アークの精神は目に見えぬ負担をため込んでいる。アークは一度、あらゆる呪いを解く泉で肉体を取り戻しかけるも、精神の負担が肉体に逆流して1か月間意識不明状態となった。負担をため込めば最悪、命を落とす可能性もあるため、アークは泉の水を定期的に摂取してガス抜きすることで、それを防いでいる。
ベレヌスの聖鎧 (べれぬすのせいがい)
アークの装備の一つ。頭、胴、腕、腰、足を覆う全身甲冑(かっちゅう)で白を基調とし、金縁の装飾が施されている。天騎士専用の装備で、装備としての格は最高の「神話級」。高い防御能力もさることながら、光と火の加護を受けているため、光と火属性の攻撃を半減し、呪いに対して強い耐性を持つ効果がある。また、着用していれば体力を一定時間ごとに自動回復する効果があるため、夜天の外套と併せて使えば、体力と魔力が無尽蔵に回復する強力な防具となる。
夜天の外套 (やてんのがいとう)
アークの装備の一つ。黒に近い紺色のマントで、装備としての格は最高の「神話級」。闇の加護を受けており、闇属性の攻撃を半減する効果がある。魔力を一定時間ごとに回復する効果があるため、ベレヌスの聖鎧と併せて使えば、体力と魔力が無尽蔵に回復する強力な防具となる。着用するだけで魔力を自動回復する装備は異世界でも珍しく、アリアン・グレニス・メープルは実在したとしたら「神器」クラスだと語っている。
テウタテスの天盾 (てうたてすのてんじゅん)
アークの装備の一つ。金縁の豪華な装飾の施された青い金属製の盾で、装備としての格は最高の「神話級」。高い防御能力と吹き飛ばし系統の攻撃への耐性に加え、プレイヤーキャラクターのレベルに応じて状態異常への耐性値を高める効果がある。このため毒や石化といった状態異常攻撃をする相手には、相性のいい装備となっている。また、専用の盾攻撃戦技「強打盾(シールドバッシュ)」を使用すれば、武器としても使用可能。
聖雷の剣 (がらどぼるぐ)
アークの装備の一つ。黒を基調とした大きな両手剣で、装備としての格は最高の「神話級」。高い攻撃力と装備車の敏捷(びんしょう)度を上げる効果がある。神話級の武器にはそれぞれ固有の戦技が存在し、この剣を装備中のみ戦技「聖雷の剣」を使うことができる。戦技「聖雷の剣」は攻撃に聖属性を付与し、攻撃力を1割増しにして有効範囲を少し広げるというもの。そのためアークはゲーム時代、戦技「聖雷の剣」はおまけのようなもので、評価は微妙と語っている。しかし異世界では審判の剣と同じく、戦技に変化が応じており、力を込めれば込めるほど武器の射程が伸びるという凶悪な効果となっている。アークが全力で戦技「聖雷の剣」を使った際には、刀身に雷が集まって光り輝く刃を形成し、その刃で縦横無尽に敵を切り裂くことが可能となっている。
天騎士 (てんきし)
アークがメインとしている職業。アークがプレイしていたオンラインゲームでは最上級の職業の一つに数えられ、「召喚士」「聖騎士」「教皇」「魔導士」「騎士」「司教」「魔法士」「戦士」「僧侶」の九つの職業を育てることで、「天騎士」に転職することができる。天騎士のみが装備できる防具は性能が段違いなため、防御性能は全職業中でも屈指のものだが、職業の特性で装飾品が装備できないという欠点が存在する。そのため装飾品による性能変化が気軽にできず、汎用性は低い。また防御性能は高いが、敵を引き付けるスキルを持たないためタンクとしても運用できず、そのほかの専用スキルも軒並み性能は微妙扱いされている。そのため、アークを含めユーザーからの評価は「使い勝手の悪い浪漫職」とされている。ただし、スキルを使わない一対一の正面切っての殴り合いならば、全職業の中でも最強だとされる。
次元転移 (でぃめいしょん むーゔ)
アークの使う転移魔法の一つ。「魔法士」で覚えられる魔法で、ゲーム時代はタップした場所に瞬間移動する魔法だった。緊急回避的な魔法として有効だったが、敵の攻撃範囲が広いと回避しきれないため、ゲーム時代は高難易度のマップではあまり使えない魔法とされていた。異世界では視界が通る場所ならどこにでも瞬間移動できる魔法となっており、視界さえ通っていれば障害物を無視して移動もできるため、非常に使い勝手のいい魔法となっている。連発も簡単にできるため、連続使用することで空中を疑似的に飛行することも可能。ただし視界を通して移動するため、夜や霧など視界不良の場所では一気に移動できる場所が制限される。また、視界が通っていたとしても、転移先の足場が悪かったりすると思わぬアクシデントに遭遇するため、使い方には注意が必要となる。アークに触れていれば、ほかの者もいっしょに転移することができる。
転移門 (げーと)
アークの使う転移魔法の一つ。「魔導士」で覚えられる魔法で、ゲーム時代は登録した場所に瞬間移動する魔法だった。次元転移と違い、見えぬ場所にも転移することができるが、登録した場所以外には転移不可能。異世界では登録ではなく、アークのイメージによって転移する魔法となっており、ゲーム時代に登録した場所やアークの記憶に残らない場所には転移はできなくなっている。逆に言えばイメージさえできればどれだけ離れていようと転移することができ、大人数も転移可能なため避難や移動用の魔法としては非常に優秀となっている。
審判の剣 (じゃっじめんと)
アークの使う戦技の一つ。「聖騎士」で覚えられる戦技で、剣に光り輝くオーラをまとって攻撃する。戦技だが物理攻撃ではなく、魔法攻撃として扱われ、物理攻撃に対して強い耐性を持つ相手にもダメージを与えられるのが特徴。異世界では効果がかなり変わっており、ゲーム時代は剣に光をまとう程度だったが、異世界では光り輝く巨大なオーラが敵を切り裂く魔法となっている。アークはゲーム時代はいつ使っても効果は一定だったが、ゲームが現実になったことで力の入れ具合によって効果が変わっているのではないかと推測している。このため審判の剣自体は中級程度の戦技だが、アークが全力で放てば奥義に匹敵する威力を出せる。
再生復活 (りじぇねいと)
アークの使う蘇生(そせい)魔法の一つ。「教皇」で覚えられる魔法で、死んだ者を生命力が完全に回復した状態で復活させることができる。ただし、死亡からそれほど時間が経っておらず、死体の損壊が少なくなければならず、条件を満たさない場合は失敗する。なお蘇生魔法には下位のものとして、「司教」が覚えられる「蘇生復活(リニメイション)」が存在する。蘇生復活は復活したとしても、生命力は1割程度しか回復しないため、重傷を負ったままでは死んでしまう可能性がある。そのため、アークは復活が必要の際には再生復活を使用した。死者を復活させる魔法は、異世界ではほとんど存在しないため、アークは使ったあとにそのことに思い至り、蘇生魔法を使えることを秘密にしている。
炎獄魔人 (いふりーと)
アークの使う召喚魔法の一つ。「召喚士」で覚えられる魔法で、異界から「炎獄魔人」と呼ばれる獣の頭を持つ巨人を召喚する。その大きさはヒュドラに匹敵し、炎の力をあやつることができる。必殺技は「炎獄破砲(フラーマヘリオン)」で、口から極大の炎を放って敵を焼き尽くす。炎獄破砲はあまりに威力が高すぎるため、放つ際には敵を上空に投げ放ち、空に向かって撃つ。炎獄魔人は非常に強力ながら、召喚時間に制限があり、最大5分間しか召喚できない。
時の蛇獅子 (あいおーん)
アークの使う召喚魔法の一つ。「召喚士」で覚えられる魔法で、異界から「時の蛇獅子」と呼ばれる狼の頭を持つ大蛇を召喚する。この召喚獣自体に攻撃力は存在しないが、召喚者の状態を「固定」して体力や魔力が消耗しなくなる。このため、いっさいのダメージを無効化することができ、戦技や魔法も使い放題となる。ただし、効果時間は3分間となっている。
執行者焔源の熾天使 (えくすきゅーしょなー みかえる)
アークの使う戦技の一つ。「天騎士」の持つ四つの最高奥義の一つで、天使を己の身に降臨させて戦うという、戦技でありながら召喚魔法に近い性質を持つ。執行者焔源の熾天使は炎の天使を召喚し、その姿は紅の全身甲冑をまとった女性の天使といった姿をしている。ゲーム時代にレベルを最大まで鍛えたアークですら、召喚するだけで全魔力の3分の1を消費し、最大5分しか召喚できない。しかし威力は絶大で、ノーザン王国の戦いでは天使の放つ斬撃の一つ一つが軍勢を焼き払った。必殺技は「紅焔執行剣(ルブルムフラーマ)」で、山を吹き飛ばすほどの威力がある。ただし余りに威力が高すぎるため、アークは初めて使った際にまともに制御ができず、逆に天使に己が意のままにあやつられかけ、危うく味方に必殺技を誤射するところだった。また負担も激しく、半ば暴走状態だったため体力と魔力をガンガン消費し、天使の降臨が終わった際にはまともに立てないくらい消耗していた。このためアークはウィリアースフィムに相談して特訓を開始し、バルトード・スペルビア・ヒュミリタスとの戦いを経て、天使の力の制御に成功する。
エルフ
森を生活圏とする種族。人に比べて長い年月を生きる長命な種族で、武芸に秀でて精霊魔法をあやつる者が多い。カナダ大森林に暮らすエルフを総じて「エルフ族」と称するが、厳密には長い耳に翡翠(ひすい)色の瞳を持つ「エルフ」と、人と変わらぬ耳に金色の瞳を持つ「ダークエルフ」が存在し、両エルフは協力してカナダ大森林を治めている。アークのやっていたゲームにもダークエルフは登場するが、そちらでは褐色肌に赤い瞳を持つ姿をしていた。エルフ族は独特の風習を持ち、特に名前は独自の文化があり、「自分の名前」「同性の親の名前」「所属している集落の名前」を名乗るのが決まりとなっている。そのため家族でも姓が違ったり、家族でなかったとしても所属が同じであれば同じ姓を名乗ることとなる。
獣人 (じゅうじん)
人の体に獣の特徴を色濃く持つ種族。獣の種類はさまざまで、さまざまな部族が存在する。身体能力に秀でた者が多いが、総じて魔法への適性が低いのが特徴。北大陸では「獣人」の名は人族による蔑称であるため、獣人たちは自らを「山野の民」と呼んでいる。また寄る辺のない獣人は人族にとって格好の迫害対象で、人族に囚われた獣人は奴隷として使いつぶされる状態となっている。実は人族より感覚が優れているため、不死者を匂いで見抜くことができ、その力を嫌ったヒルク教国が人々を扇動して迫害しているのが真実だった。
契の精霊結晶 (ちぎりのせいれいけっしょう)
「刃心一族」の秘宝。ハンゾウ(初代)が異世界に持ち込んだ特殊な魔道具で、文字の刻まれた宝石のような形をしている。この宝石を体内に取り込んで精霊と契約すれば、魔法適性がない者でも強力な魔法を使うことができる。魔法適性がほとんどない獣人にとって重要なアイテムで、「六忍」に襲名された者は全員、契の精霊結晶を宿している。ハンゾウ(初代)が持ち込んだ契の精霊結晶は全10個あるが、いくつかは紛失して行方不明となっている。
龍冠樹 (ろーどくらうん)
龍王が住まう大樹。長い時間、龍王の魔力の影響を受けて変質した精霊を宿した大樹で、龍王の住まう場所に稀(まれ)に生えてくることがある。大樹の葉や幹がさまざまな効能を持つのはもちろん、張り巡らされた大樹の根が土地そのものに影響を与えて変質させる。その影響は、大本となった龍王の魔力の性質によって大きく異なるため、龍冠樹によってそれぞれ効能は違う。ウィリアースフィムの住まう龍冠樹の場合は、「あらゆる呪いを解く泉」が効能として現れている。ただし龍王は気位が高く、大樹に宿る精霊も意思を宿しているため、無断で侵入した場合は精霊と龍王を怒らせる可能性がある。そのため龍冠樹の効能を得るには、龍王と交渉する必要がある。アークは自分の呪いを解くため、エルフ族を通してウィリアースフィムと交渉して、泉の使用許可を得ている。呪いを完全に解くことはできずに呪いが泉の水に耐性を持ってしまったが、完全に効能を失った訳ではなく、アークは定期的に泉の水を服用することで、精神の肉体へのフィードバックを軽減している。
豊穣の魔結石 (ほうじょうのまけっせき)
エルフ族のみが作り出すことができる特殊な石。大量の魔素(マナ)を凝縮したもので、粉末状に砕いて畑に撒(ま)けば、作物の成長を大きく助けて収穫量を大幅に増やすことができる。このため人族にとっても重要なアイテムだが、現在エルフはリンブルト大公国以外とは交易をしていないため、豊穣の魔結石を手に入れる方法は非常に限定されている。
不死者 (あんでっど)
死体に仮初の命が宿ることで生まれた化け物。発生する要因は自然的なもの、人為的なものとさまざま。仮初の命が宿った結果、魂が摩耗して穢れ、「死の穢れ」と呼ばれる独特の瘴気(しょうき)をまとっているのが特徴。死の穢れは人族には知覚することができないが、エルフは目で、獣人は匂いでこれを判別することができる。アークが不死者と違うと判断されたのも、この死の穢れがないからだった。
クレジット
- 原作
-
秤 猿鬼
- キャラクター原案
-
KeG
書誌情報
骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中 10巻 オーバーラップ〈ガルドコミックス〉
第1巻
(2017-08-25発行、 978-4865542523)
第10巻
(2022-03-25発行、 978-4824001412)
骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中Ⅺ オーバーラップ〈ガルドコミックス〉
(2022-07-25発行、 978-4824002549)
骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中Ⅻ オーバーラップ〈ガルドコミックス〉
(2023-03-25発行、 978-4824004536)