あらすじ
第1巻
堂島藍は、世界で一番おいしい料理を作るシェフの父親が自慢で大好きだった。だが今から5年ほど前、藍がまだ小学生の時に、父親は事故で帰らぬ人となってしまう。その後、親戚の家に身を寄せていた藍は、高校進学を機に、父親が営んでいた思い出のレストラン「カンパネラ」の近くで一人暮らしをする事になる。入学早々遅刻した春の日、ご飯を作ろうと、思い出の味、オムライスに挑戦する藍だったが、父親の料理の才能が受け継がれる事はなかったのか、オムライスに入っていた火の通っていない肉を口にし、いきなり下痢と嘔吐に襲われる事となる。その後、ようやく症状は治まったものの、極度の空腹に苛まれた藍は、庭の雑草を口にしようと外に出る。そこで藍は、隣室との境目にパンツ一丁でしゃがみ込む隣人の三園公恒の姿を目撃する。藍は彼にひとまず服を貸し、助けてあげる事にする。公恒は、助けてもらったお礼にと、藍のリクエストであるオムライスを調理。藍は久しぶりの人との食事を通して、公恒の面差しのみならず、その笑顔と優しさから父親を思い出し、思わず涙するのだった。その翌日、藍は登校中に、公恒が自分と同じ学校に通うクラスメイトである事を知る。そして二人は食事を通して、次第に仲を深めていく。
登場人物・キャラクター
堂島 藍 (どうじま あい)
一人暮らしをしている小柄な男子高校生。自分の店でシェフを務める忙しい父親と二人で暮らしていたが、小学生の時に父親を亡くした。それ以来、親戚の家で世話になっていたが、高校入学を機にアパートで一人暮らしを始めた。父親の作る料理の中でも、特にオムライスが大好きで、甘いものが苦手な自分のために、いつも誕生日にだけは店を貸し切り、オムライスで誕生日を祝ってもらっていた。そんな思い出から、父親の作る料理は世界一美味しいと考えている。ただし、堂島藍自身の料理の腕は壊滅的で、なにかと鈍くさく、常識を知らない。空腹に耐えかね、庭の雑草を食べようかと思った時に、偶然外に締め出される形となった隣人の三園公恒と遭遇する。パンツ一丁だった彼に服を貸した事がきっかけで、互いがクラスメイトである事を知り、公恒に食事や弁当を作ってもらうようになる。また勉強が苦手で、小テストで0点を取った事がきっかけで、進級への不安を感じ、クラスでとなりの席に座っている乙守百花に勉強を教えてもらう事になる。人見知りなところがあり、公恒や百花以外の人とはうまく話す事ができない。
三園 公恒 (みその きみつね)
堂島藍と同じ高校に通う男子。藍とはクラスメイト。藍の住むアパートの隣室に姉の三園ゆきねといっしょに暮らしている。藍の亡くなった父親に面差しが似ていて、なおかつ料理上手。友達は多い方だが、基本的に広く浅くの関係であり、面倒な事は見て見ぬ振りで、深くかかわりを持つ事がなかった。しかしある時、風呂上がりにぼーっとしていたところ、室内で姉と彼氏がイチャイチャし始め、パンツ一丁で部屋に戻れなくなるというトラブルが発生。素っ裸状態で庭に締め出され困っていたところ、隣室から出て来た藍と知り合い、助けられた。これがきっかけで、藍となかよくなりたいと思うようになり、つねにお腹を空かせている藍に、食事を作ってあげたり、お弁当を渡したりと、なにかと声を掛けては友達になりたいアピールをしているが、なかなかうまく伝わらない。積極的に行動を始めてからは、朝に弱い藍を起こし、朝食を用意して食べさせ、いっしょに学校に行く事が日課となりつつある。性格は極めて温和だが、自由奔放な姉に振り回される事が多い。クラスメイトの乙守百花とは、小学生の頃から同じ学校に通っている。友人達からは総じて「キミー」と愛称で呼ばれている。
三園 ゆきね (みその ゆきね)
三園公恒の姉で、フリーター。堂島藍が住むアパートの隣室に弟といっしょに暮らしている。無精ひげを生やした彼氏がおり、スキを見ては彼氏を部屋に連れ込んでイチャイチャし始め、その声は隣室の藍までダダ漏れ状態になっている。何事にも自由奔放な性格で、物事を深く考えないタイプ。つねに弟を振り回している。
乙守 百花 (おともり ももか)
堂島藍と同じ高校に通う女子。藍や三園公恒とはクラスメイト。年齢は15歳。公恒とは小学生の時から同じ学校に通っていた。成績優秀で、周囲には少々冷たい印象を与えるが、実際は友達思いで面倒見がいい。小さい頃から曲った事が嫌いで、ものをはっきりと言う少々お節介な性格だった。そのため、同級生の男子から嫌われて陰口を言われたりと、辛い子供時代を送っていた。そのトラウマがあるため、下手に発言して嫌われるのを避けようとする傾向にあり、本心が言えずに口数はやや少なめ。実は小学校4年生の頃から、みんなに好かれる公恒に対してあこがれとほのかな恋心を抱いており、それは今でも続いている。ある日、小テストで0点を取った藍に勉強を教える事になり、公恒を加えて三人で勉強したり、食事をしたりする機会が増えていく。
吉野 (よしの)
堂島藍と同じ高校に通う女子。百花とは仲のいい親友で、日常的に藍や乙守百花の話を聞いている。自由奔放な性格で、藍に似た雰囲気を漂わせている。
藍の父親 (あいのちちおや)
堂島藍の父親。レストラン「カンパネラ」でシェフを務めており、早朝に出勤して深夜に帰宅する忙しい日々を送っていた。そのため、共に暮らす息子の藍とは、いっしょに食事をする事もほとんどなく、留守番をさせては作り置きの晩ご飯を温め直して食べるように言い聞かせていた。甘いものが苦手な藍のために、誕生日には毎年お店を貸し切りにして、オムライスでお祝いをするのが定例となっていた。しかし藍が小学生の時、出勤途中に事故に遭って帰らぬ人となった。穏やかで優しい性格だが、服のセンスは壊滅的。