あらすじ
耳地獄 (((胎教)))
ギャルのレーナは、ギャル仲間のジュレたちと共に交際相手だったDV男を殺害し、人通りのない山中へと埋めて以降、気楽なアルバイト生活を満喫していた。そんな中、友人たちと連れ立って行った心霊スポット・桃色峠がDV男を埋めた場所だったことに肝を冷やすレーナだったが、マジックマッシュルームを服用し、幻覚が生じた先で出会った耳キノコ族の突然変異種・耳っちと恋に落ちる。夜が明けて耳っちが幻覚だったのかと悩むレーナだったが、ジュレの妊婦健診に付き添った際、耳キノコ族たちに襲われたところを耳っちに救われ、あの恋が現実だったことに感動する。レーナの耳たぶが、菌糸につながっていない新たな耳キノコ族となる子供を妊娠していることから、耳キノコ族はそれを脅威ととらえ、レーナと子供の命を狙っていることを告げた耳っちに、レーナは二人で耳キノコ族から逃げることを決める。世界中に分布する耳キノコ族たちから逃げるため、耳キノコ族の菌糸が及んでいないポリネシアまで飛行機で逃げることにした二人だが、冬虫夏草の要領で人間の体を乗っ取った耳キノコ族は、飛行機の中でもレーナたちに襲いかかる。
耳地獄 (((帰郷)))
貴族の女性・桔梗は、二人の従者を連れてかつて自分が暮らしていた岩山を訪れていた。10年以上前に捨てた生家に向かいながら、桔梗は幼い頃のことを回想していた。幼い頃の桔梗の思い出は、兄・菊千代の耳掃除と、彼の耳に寄ってくる大量の虫で埋め尽くされていたことだった。菊千代の耳垢の中には剛力なアリジゴクが住んでおり、アリジゴクを引っ張り出そうとした菊千代の手の指はすべて食い尽くされていたため、桔梗が耳垢を掃除したり、虫を追っ払ってやったりしなければならなかった。しかし菊千代は桔梗に感謝するどころか、桔梗が少しでも呼びかけに遅れて反応すると、怒り狂って暴力を振るうのだった。毎日山のように搔き出される耳垢と、耳かき棒すら食べてしまうアリジゴク、暴力的な兄との生活に耐えていた桔梗だったが、食糧を持って帰宅するはずの父親が3か月経っても戻ってこないことから、二人の関係に変化が見えるようになる。
登場人物・キャラクター
レーナ
「耳地獄 (((胎教)))」に登場する。海の家でアルバイトをしているコテコテのギャル。年齢は22歳。腰まである金髪にパーマをかけ、サイドテールにしている。アルバイト中に出会った男性と付き合っていたが、すぐに暴力を振ったり、バイト仲間のジュレと二股をかけたりしていた。そんな中、レーナとジュレが妊娠していたことが判明し、堪忍袋の緒が切れてDV男を殺害し、桃色峠に埋めている。その後、子供は堕ろしている。ギャル仲間たちと桃色峠に行ってマジックマッシュルームを服用した際、耳っちと出会い、一目惚れした。その日のうちに耳SEXを行い、両耳の耳たぶの中に耳っちの子供を妊娠した。耳キノコ族たちからは、菌糸につながっていない新たな耳キノコ族となる子供を危険視されており、子供もろとも命を狙われている。唯一耳キノコ族の菌糸が伸びていないポリネシアに脱出を企てたものの、耳キノコ族によって飛行機を墜落させられるが、フルーツ・パンチ・パンチ・ポンチに命を救われた。本名は「今野玲奈」。
桔梗 (ききょう)
「耳地獄 (((帰郷)))」に登場する。幼い少女で、兄の菊千代と共に切り立った岩山の上で暮らしている。黒髪のおかっぱで、単衣の着物を身につけている。母親は物心ついた頃から家を出ており、父親は出稼ぎに行って時折食料を持って帰ってくる。菊千代は耳に大量の虫が寄ってくる体質のため、毎日耳掃除をしてやっているが、少しでも呼びかけに反応が遅れると暴力を振るわれている。菊千代の耳垢があまりに毎日溜まりすぎるため、脳みそがカサカサになって耳から出ているのではないかと疑っていた。菊千代と暮らすうちにいつの間にか妊娠するが、菊千代によって胎児を搔き出されている。
ジュレ
「耳地獄 (((胎教)))」に登場する。海の家でアルバイトをしているコテコテのギャル。年齢は22歳。背中まである金髪にヘアバンドを巻いている。アルバイト中に出会った男性と付き合っていたが、すぐに暴力を振ったり、バイト仲間のレーナと二股をかけたりしていた。そんな中、ジュレとレーナが妊娠していたことが判明し、堪忍袋の緒が切れてDV男を殺害し、桃色峠に埋めている。その後も、妊娠した子供を大切にしている。
耳っち (みみっち)
「耳地獄 (((胎教)))」に登場する。耳キノコ族の突然変異種。巨大な耳の形をした笠を持ち、手足のように菌糸を扱うことができる。この手足のような菌糸を伸ばすと成人男性ほどの背の高さとなる。太陽の下でも活動することができるが、菌糸はほかの耳キノコ族たちにつながっているため、完全に独立した行動を取ることはできない。一人称は「ミー」。桃色峠に自生していた際にレーナと出会い、レーナの耳に一目惚れしてその日のうちに耳SEXを行っている。ほかの耳キノコ族たちがレーナの耳たぶに宿った子供を殺害しようとする中、助けに現れた。レーナと子供を守るため、笠の穴の中に日焼けマシンを入れているなど、我が身を省みない方法で耳キノコ族と対峙することとなる。
フルーツ・パンチ・パンチ・ポンチ
「耳地獄 (((胎教)))」に登場する。耳長族の巫女を務める女性で、ポリネシアの小さな島に住んでいる。褐色の肌と全体的に広がったカーリーヘアで、非常に長い耳たぶにピアスを付けている。ムー大陸の住人の末裔を名乗っており、「耳予言」を聞くことができる。ポリネシアに向かう途中で、耳キノコ族に襲われたレーナが海中に投げ出されたあと、ムーの海底遺産を発動させてイースター島で出迎えた。ムー大陸の予言にある「新たなる耳の誕生」に立ち会えることを光栄に思っている。
菊千代 (きくちよ)
「耳地獄 (((帰郷)))」に登場する。桔梗の兄。水干に袴を身につけ、黒髪をポニーテールにしている。耳に大量の虫が寄ってくる体質で、眠っているとアリやムカデなどが群がってくる。つねに砂のようなサラサラの耳垢が大量に溜まっており、その中に剛力で大きなアリジゴクが住んでいる。このアリジゴクが動くと耳の中が痛がゆくなるため、引っ張り出そうとしたところ、逆にすべての手の指を食べられてしまう。そのため耳掃除を桔梗に頼るしかないが、桔梗が少しでも菊千代自身の呼びかけに反応が遅れると、激怒して暴力を振るう。両親に捨てられたと考えており、桔梗もいつかは自分を捨てるのではないかと疑心暗鬼になっている。
場所
桃色峠 (ももいろとうげ)
古代から続く耳塚だった場所。耳のオバケが出ると言われており、心霊スポットとして知られている。しかし、レーナたちはその噂を知らないため、人通りも少ないこともあり、レーナとジュレの交際相手だった男性を殺害して埋めていた。耳キノコ族の群生地でもある。
ムー大陸 (むーたいりく)
地球上に耳キノコ族がはびこる以前に太平洋に存在した大陸。耳キノコ族の繁栄を予見して自ら海中に沈んだと伝わっている。横幅は沖縄沖からイースター島まで広がっており、太平洋の形を耳の形として捉えたときに、ちょうどその中心に位置している。「来たるべき耳が誕生するとき、再び浮上する」という予言が伝わっている。
その他キーワード
耳キノコ族 (みみきのこぞく)
かつて古代人の耳塚に雷が落ちたことから発生した生き物。人間の耳から進化したキノコで、口はないものの人語を話すこともできる。人間社会の音を聞き続けているだけの存在だったが、レーナたちが交際相手だった男性を殺害して桃色峠に埋めたことで、耳キノコ族がその死体を養分として分解しようとしている際に雷が落ちて突然変異が起こり、耳っちが誕生した。耳っちをはじめ、すべての耳キノコ族は菌糸でつながっているが、耳っちとレーナの子供が菌糸につながっていないことに脅威を感じ、殺害しようとしている。暗くてジメジメとした場所や、夜は活発に活動することができるが、日当たりのいい場所には行くことができない。また、海底を菌糸が這っているために世界中すべてが耳キノコのテリトリーとなっているが、太平洋だけは耳キノコの菌糸が及んでおらず、ポリネシアに耳キノコは生えていない。