あらすじ
第1巻
暁悠真はある日、桜の木の下で奇妙な少女の久我宮叶奏と出会う。空を飛び、不思議な言動をする叶奏を見た悠真は、狐につままれたような釈然としない気持ちのまま、幼なじみの比奈瀬みなかと合流する。その直後、二人は怪現象に遭遇して旧校舎に閉じ込められてしまう。そこで奇妙な怪物「瘴鬼」に襲われた悠真とみなかは危機に陥るが、再び現れた叶奏に助けられて事なきを得るのだった。そして、叶奏の使う魔法で事実は隠蔽され、悠真とみなかはいつもの日常へと戻ることとなる。その一件があった帰り道、悠真は一匹の子犬を拾う。悠真が子犬に「クロ」と名づけた直後、クロは少女へと姿を変え、悠真を主と慕うようになる。悠真はクロから神姫のことと、クロが記憶喪失である事情を聞くが、その最中、悠真がクロといっしょにいる姿を見て嫉妬に駆られたみなかが、瘴気に取り憑かれてしまう。クロの力を借りた悠真はみなとを無事救うことに成功し、時を同じくしてそこにクロを捜し回っていた叶奏が駆けつける。そこで悠真は、叶奏と彼女の神姫の十六夜から、このままでは死んでしまうことを告げられ、それを防ぐために魔法士となるように誘われる。
登場人物・キャラクター
暁 悠真 (あかつき ゆうま)
高宮台学園に通う高校2年生の男子。おせっかいな性格で、困っている人を見ると手助けせずにはいられない。比奈瀬みなかとは幼なじみの関係で、彼女からはあまりの人のよさでよけいなトラブルを抱え込まないか心配されている。久我宮叶奏との出会い、クロとの契約をきっかけにして魔法士の世界にかかわることとなる。戦闘に関しては素人だが、クロと結魂することで身体能力の向上、思考の最適化が行われ、高い戦闘能力を発揮する。またクロと力を合わせることで、魔法を打ち消す魔法「相克のコード」が使用可能となる。
久我宮 叶奏 (くがみや かなで)
内閣府魔術庁に所属する少女。整った容姿と透き通るような長い銀色の髪で、儚げな雰囲気を漂わせている。オタクっぽいところがあったり、享楽的だったりと容姿からかけ離れた性格をしている。「到達者」ともいわれる魔法士の最高位、アデプトの魔法士で「白のアデプト」の通り名で呼ばれる。アデプトに見合った実力を持ち、数々の魔法を使いこなし、瘴鬼のみを消滅させるオリジナルの魔法を編み出すほどだが、操作系の魔法は苦手らしい。久我宮の家と代々契約している神姫の十六夜をパートナーにしている。美少女が大好きで、新たな神姫として呼び出したクロが、あまりに自分好みな褐色美少女だったため、契約完了前に過剰なスキンシップを取って逃げられた。これによって起きた諸問題の後始末をしているうちに、暁悠真と出会う。羞恥心が薄く、異性に下着や裸を見られてもいっさい動じない。
十六夜 (いざよい)
久我宮叶奏と契約している神姫。神鬼としての姿は白い毛並みを持つ狐で、神霊としての姿は白い髪を長く伸ばした美女。神器としての姿は、弦のない白い弓となっている。まじめで合理的な性格をしており、奔放な叶奏に対して日常的に小言を言っている。久我宮の家と代々契約している神姫で「瘴気の回収」と「瘴鬼の殲滅」を目的として、久我宮の家に力を貸している。
クロ
暁悠真と契約した神姫。神鬼としての姿は黒い毛並みを持つ子犬で、神霊としての姿は黒い髪を長く伸ばした褐色の肌を持つ少女。神器としての姿は、黒い刀身の短剣となっている。久我宮叶奏の呼びかけに応えて現世に現れたが、叶奏の過剰なスキンシップに怯えて召喚直後に逃亡。これにより契約を完了できず、魔力を大量に消耗していたところを悠真に拾われ、彼に「クロ」と名付けられることで契約を交わす。契約を完了した頃には魔力を大量に消耗していたせいで、必要最低限の知識を除いた記憶の大部分が失われていた。しかし、悠真を直感的にクロ自身の主として認識しており、彼を「ご主人様」と呼び慕っている。依代となっている神器は本来は弓のはずだが、神器の形態はなぜか剣の形で、戦闘の際には剣の柄部分から鎖が生えるなど、その能力には謎が多い。
比奈瀬 みなか (ひなせ みなか)
高宮台学園に通う高校2年生の女子。ウェーブのかかった髪をセミロングに整えており、かなりの巨乳の持ち主。暁悠真とは幼なじみの関係で、彼に好意を抱いている。オカルト好きでオカルト研究会に所属しており、ホラーな展開を目の当たりにするとテンションが上がって大喜びする。一方、耳年増でもあり、急にしおらしく振る舞って悠真との距離を縮めようと画策することもある。悠真に抱きつくクロの姿を見たことで、一時、嫉妬に駆られて瘴気に取り憑かれてしまう。正気を失って悠真に襲い掛かるが、悠真とクロに助けられ、事なきを得た。久我宮叶奏によって記憶を操作されており、魔法に関する記憶は改ざんされているため、悠真とクロの事情については知らずにいる。
集団・組織
魔術庁 (まじゅつちょう)
瘴気がかかわる災害に対抗する国家組織で、魔法士により構成されている。魔法士の絶対数が少ないため、実力を認められれば若い魔法士も所属することができる。所属した魔法士は身分証明書が発行されるが、魔術庁の存在は市井には秘密とされているため、厳密には公務員扱いとはならない。
その他キーワード
魔法 (こーど)
魔法士や神姫が持つ、魔力を使って超常現象を引き起こす技術。「code(コード)」とも表記される。瘴鬼を祓い、瘴気を回収するには必須の能力だが、現在は一般には秘匿されており、使い手も少ない。
結魂 (ゆにおん)
魔法士と神姫が融合する術。神姫は「神器」の形態となって魔法士に使われる。神姫は魔法士の体内魔力を操作して身体能力を大幅に向上、さらに思考能力の最適化と魔法によるサポートを行う。このため、結魂を行えば訓練を受けていない未熟な魔法士であっても、人並みはずれた身体能力や魔法を行使できるようになる。
魔法士 (こーどきゃすたー)
魔法を使う者の総称。魔法士の行動は「秘匿」が原則であるため、一般人にその存在が露見することは厳禁。このため、活動の際には認識阻害や記憶操作の魔法を使い、その活動を隠蔽しなければならない。また、魔法士はその力量によってランク分けされており、最高位の魔法士は「到達者」、もしくは「アデプト」と呼ばれ、一目置かれる存在となっている。魔法士はその絶対数が少ないとされているため、魔術庁には年若い魔法士も所属して働いている。
瘴鬼 (しょうき)
瘴気をまとって変質した存在。人や動物、果ては物までもが瘴気によって変質する可能性が存在し、その姿は個々によって違う。ある程度の力をつけた瘴鬼は自我を形成し、さらに力をつけていくと「領域」と呼ばれる異空間を作り出すことができるようになる。領域を作り出す瘴鬼は「領域持ち」と呼ばれ、領域内に人間を引きずり込んで取り込む災害と化す。なお、「領域持ち」の領域を破壊しても現実世界にはいっさい影響がない。また、瘴鬼を倒せば領域は消滅し、内部の人間も脱出することができる。瘴鬼は瘴気を取り込んで発生するため、これらを倒すことで瘴気の回収が可能となっている。
魔力元素 (えーてる)
空気中に漂う魔力のもととなるもの。人間に吸収されると「魔力(オド)」、神姫に吸収されると「魔力(マナ)」となる。魔法士が魔法を行使される際にも使われるが、魔力(オド)は人間の魂の維持にも使われているため、魔法士ではない一般人も少なからず持っている。また、魔力元素が地に堕ちて穢れを溜め込むと「瘴気」へと変質する。瘴気は指向性を得ると、人や動物、物に取り憑き、取り憑いた対象を瘴鬼へと変貌させる。瘴気は人間の手で正しい気「正気(せいき)」へと変換することができる。正気は魔力元素に再変換することができ、この魔力元素はさらに「魔力(オド)」や「魔力(マナ)」への変換が可能。そのため、瘴気の回収は魔力の回収にもつながる。なお、瘴気を正気に変換することは神姫にはできないため、神姫が大量の魔力(マナ)を必要とする場合、魔法士の協力が必要不可欠となる。
神姫 (しんき)
魔法士の使い魔。霊格の高い「神霊」に動物霊を混ぜた「神鬼」として呼び出され、「神器」を依代にして顕現させられる。神霊を神鬼にするのは、そのままでは力が強すぎて制御が不可能であるため。これによって神姫は「神鬼」としての動物の姿、「神器」としての武器の姿、「神霊」としての神の姿を持つ。その起源は陰陽師が使っていた使い魔「式鬼(しき)」で、「神姫」「神鬼」「神器」と「しんき」という言葉を多用するのは「しき」へと転じさせ、名付けによって神姫の存在を縛るため。神姫は術者の力量によらずに巨大な力を持つ存在を使役でき、この点が式鬼との最大の違いとなっている。神姫は元になった神霊由来の力を持ち、結魂などさまざまな形で魔法士をサポートする。ただし未熟な魔法士が、あまりに強い力を持つ神姫を使役すると、魂を維持するのに必要な魔力まで神姫に吸い尽くされて死亡するリスクがある。呼び出された神姫は魔力元素の集合体で、幽霊に近い存在だが、一般人にも視認可能。神姫と魔法士との契約は神姫側にもメリットが存在し、神姫の契約は原則的に双方同意の上で行われ、契約の破棄は魔法士の死亡以外の方法ではできない。
書誌情報
黒のカミサマと白のアデプト 2巻 KADOKAWA〈MFコミックス アライブシリーズ〉
第1巻
(2019-03-23発行、 978-4040655611)
第2巻
(2020-03-23発行、 978-4040645063)