上級ワルキューレに歪められた異世界
鉄二朗が召喚された異世界は、世界樹に貫かれた多層世界であり、彼が最初に降り立った階層は「ミズガルズ」と呼ばれている。かつては原住民のミズガルズ人が平和に暮らしていたが、突如として現れた「神」が「死戦士」の収容所「ヴァルハラ」を設置する。その結果、ミズガルズは鍛錬の場として利用されるようになった。その後、260年間は「始まりの死戦士」によって秩序が保たれていたが、40年前に上級ワルキューレのカーラが召喚の場でもある世界樹の洞を占拠する。カーラが召喚したローマ死戦士団によって、ミズガルズ人の虐殺と奴隷化が行われ、歪んだ「楽園」が構築された。
生前の記憶を原動力に戦う「死戦士」たち
ワルキューレに常世へ招かれた者は「死戦士」と呼ばれる。死戦士は、強く思い描いたものを具現化する力を持ち、多くの死戦士は現世で愛用していた武具を生み出して装備している。この力を利用すれば、矢弾の量産や愛馬の具現化も可能である。また、死戦士は食事や睡眠を必要とせず、日暮れに鳴り響く鐘の音と共に傷が癒える。これは死んでいても有効で、頭部にある核を起点に復活することができる。ただし、死亡するたびに生前の記憶が削られてしまう。生前の記憶は暗闇を照らす光に例えられるほど重要な死戦士の原動力であり、武具の生成にも「記憶の灯」が必要。記憶を失い続けた死戦士は無気力になり、やがて生ける屍(しかばね)と化す。なお、ワルキューレから特別に「加護」を授かった死戦士は固有の特殊能力を行使できるが、加護を授けたワルキューレが死ぬと加護も失われる。自らを召喚したワルキューレと死別した死戦士は「野良」と呼ばれる。
さまざまな英雄が「死戦士」として登場
本作には、マルクス・リキニウス・クラッスス、関羽、ラゲルタ、ナポレオン・ボナパルトなど、さまざまな時代の英雄が「死戦士」として登場する。また、野良の死戦士を束ねる頭として、元寇(げんこう)で有名なフビライ・ハーンも登場する。鎌倉時代の武士という設定の鉄二朗が異文化の英雄たちとどのように出会い、誰と手を組み、どのように戦うのかという点も、本作の大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
相馬 鉄二朗 (そうま てつじろう)
肥後国の武士の男性。短気で不器用だが、義理堅い性格をしている。妻の偲(しのぶ)を病で失っている。古式剣術・相馬流の伝承者であり、弓の扱いにも優れている。元寇では数多くの蒙古を討ち取り、その武勇を示したが、活躍に見合う恩賞を得られず、飢饉も重なり厳しい生活を強いられていた。悪党に誘われたこともあったが、跡取り息子の武丸(たけまる)の高潔さに背中を押され、逆に悪党を斬り、武士の誇りを守った。元寇から3年後に天災で亡くなるが、フリストに魂の輝きを評価され、常世に導かれて「死戦士」となった。武丸の安否が気掛かりで、現世への帰還を第一に考えているが、フリストからは虐げられているミズガルズ人を解放する戦力として期待されている。当初は丸腰だったが、実戦の最中に生前に愛用していた太刀・月震の具現化に成功。実戦を重ねるうちに生成できる武具が増え、弓矢や大鎧も具現化できるようになった。なお、味方からは「テツ」もしくは「ブシ」と呼ばれている。死戦士としては小柄なため、侮られることも多い。
フリスト
ミズガルズ人に育てられた快活な下級ワルキューレ。体毛は白く、右耳の後ろには小さな片翼が生えている。この片翼は手のように自在に動かせるが、空を飛ぶことはできない。額には赤い紋章があり、ミズガルズ人の女性が着用する露出度の高い民族衣装を身にまとっている。集落に受け入れてくれたミズガルズ人に大恩を感じており、彼らを家族と呼び慕っている。ミズガルズ人を虐げている上級ワルキューレ、カーラの死戦士団に立ち向かうため、力を確保することを画策し、「死戦士」の召喚を試みる。単独で世界樹の洞に到達し、天災で命を落とした鎌倉武士鉄二朗を召喚することに成功する。その後、カーラの死戦士団との戦いで窮地に陥った際、野良の死戦士、関羽に救われ、彼の仲介によってカーラに抗う死戦士の集まりである野良団の女神として擁立されることとなった。なお、鉄二朗の扱いには手を焼いており、信頼を得るまでは「もののけ」と呼ばれていた。
書誌情報
黒鉄のヴァルハリアン 6巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2021-10-19発行、978-4088921099)
第2巻
(2022-01-19発行、978-4088921907)
第3巻
(2022-04-19発行、978-4088922775)
第4巻
(2022-07-19発行、978-4088923734)
第5巻
(2022-10-19発行、978-4088924618)
第6巻
(2023-01-19発行、978-4088925691)







