あらすじ
第1巻
小学5年生の若狭結姫はある日、空から落ちて来た勾玉を手にした事から、眠ったら行ける夢の中の世界・高天原で地平線の少女として崇められ、天照を救う使命を負う。高天原から鏡を通して助けを求めて来た鳴女によると、天照のもとへ行くには、勾玉を持つ仲間を四人探し出さなければならないという。現実世界で片思いしている甲斐隆臣によく似た青年・隆臣と、聖獣・迦陵頻伽との出会いを経て、自身と同じく勾玉を持つ一人目の仲間・颯太と合流を果たした結姫は、颯太が現実世界で同じクラスに在籍している因幡颯太である事を知り、驚愕する。迦陵頻伽によると、勾玉を持つ仲間は現実世界での結姫の傍に現れるよう、運命づけられているという。隆臣の粗野な中に垣間見える優しさに触れた結姫は、隆臣が現実世界の甲斐隆臣ならばいいと願うが、隆臣にあっさりと否定され、落ち込んでしまう。一方隆臣は、結姫の気持ちが甲斐隆臣に向いている事を知り、甲斐隆臣に激しく嫉妬するのだった。
第2巻
若狭結姫は、密猟者を追いつめた事件がきっかけとなり、勾玉を持つ二人目の仲間・泰造と出会う。現実世界で泰造こと日向泰造に紹介された相模圭麻も勾玉を持つ仲間であった。あと一人勾玉を持つ仲間を見つければ、天照を助ける事ができる。期待に胸を弾ませながら、結姫は現実世界で就寝して、高天原での冒険を再開する。そんな中、とある村で行われていた幻珊瑚のお祭りに参加した結姫は、高天原で行動を共にしている隆臣が、現実世界の甲斐隆臣である事を確信する。だが、隆臣は勾玉を持たないために、現実世界での甲斐隆臣としての記憶がなかった。そんな彼との接し方に悩む中、結姫は自然破壊の元凶である高天原の支配者・月読の宮殿・神王宮に招かれる事になった。月読は、より絶対的な支配者の地位を築くために、地平線の少女である結姫を配下に加えようと画策しているようである。そんな中、結姫は月読と対面した隆臣の様子がおかしい事に気づく。月読は、どうやら隆臣と面識があり、彼の幼少期を知っているようだった。
第3巻
月読が王宮内にさがったあと、若狭結姫は隆臣に、幼少期に神王宮で暮らしていたのだと打ち明けられる。隆臣は生まれつき額にある十三の数字の痣が原因で、物心がつく前から神王宮に住まわされていたのだという。隆臣が6歳の時に神王宮を逃げ出してからも、月読に執拗に追われていた事を知り、結姫は一刻も早く月読の支配下にある神王宮を出ようとする。ちょうどその時、神王宮に仕える女性・那智が現実世界の和泉那智であり、勾玉を持つ最後の仲間である事が判明。結姫と四人の仲間の持つ勾玉が共鳴し、現れた鳴女に、天珠宮にいる天照を助け出すよう懇願される。結姫らが天珠宮への行き方を模索する中、月読の一人娘であり、次期天照候補者の伽耶が、水晶虫にさらわれてしまう。神王宮を建設するために殺しつくされた水晶虫の生き残り達が、復讐を開始したのだ。もはや、自然界は人間の敵に回った。青ざめる結姫の力になりたいと願う隆臣は、伽耶を救い出したら六つ目の勾玉を継承すると言い出した月読に従い、単独で伽耶救出に向かう。
第4巻
一人で伽耶救出に向かった隆臣を追いかける中、若狭結姫は、隆臣が幼少期を共に過ごした伽耶が好きなのではないかと誤解する。隆臣に追いついた結姫は、仲間達と伽耶をさらった水晶虫のいる水晶の森を目指しながら、月読の支配下に置かれた人々の厳しい現実を目の当たりにして憤る。月読は既に地盤が緩んでいて、住む事すら危険な鉱山地帯に住む村人にも、容赦なく金属を発掘させる等、自然破壊のみならず、立場の弱い貧しい人々の生活すら脅かしていたのだった。やがて、たどり着いた水晶の森で、水晶の大蛇をやり込めた隆臣が、水晶に閉じ込められた伽耶を助け出す事に成功。隆臣に抱きかかえられた伽耶を見て、甲斐隆臣だけでなく、高天原の隆臣をも好きになってしまっている事を自覚した結姫は、隆臣の伽耶への気持ちを尊重し、自分の思いを封印する事を決意する。だが、伽耶を連れて神王宮に戻る前夜、隆臣は結姫に好意を持っている事を伝え、共に生きてほしいと告白する。
第5巻
若狭結姫に一方的に思いを伝えたあと、隆臣は、伽耶を連れて神王宮へと戻って行ってしまった。隆臣は、結姫を月読の魔の手から護る目的で動いていたが、そうとは知らない結姫は不可解な隆臣の行動に頭を悩ませる。世界支配を企む月読は、伽耶を連れて帰還した隆臣に六つ目の勾玉を渡し、スサノヲとして目覚めた隆臣を懐柔しようと画策していたが、いざスサノヲとして覚醒した隆臣は、龍へと姿を変え、本能の赴くままに天珠宮に天照を食らいに行ってしまう。伽耶から事の顛末を聞いた結姫は、隆臣を追って天珠宮へ向かい、天照をかばって自身が隆臣に食われる事で世界を救おうとする。ところが、結姫を見て意識を取り戻した隆臣は、自ら死を選び、天照も結姫も食らう事なく果ててしまった。天照を救う事に成功した結姫の勾玉は壊れ、結姫は二度と高天原に行けなくなったが、スサノヲとして高天原で自死した隆臣の肉体は、高天原では消滅してしまったが、中つ国の甲斐隆臣としては生き続ける事が叶った。結姫と甲斐隆臣は同じ中学に進学し、仲睦まじく過ごすのだった。
登場人物・キャラクター
若狭 結姫 (わかさ ゆうき)
神代小学校5年1組に在籍している女子。四人兄弟の長女で、弟の若狭光介、若狭陽一、若狭陽二の面倒をよく見ている。おとなしい両親に代わり、弟達を叱咤する事も多く、弟達に母親のように慕われている。小さい頃から母親を手伝って家事をしていたため、とてもしっかりしている。所帯じみていて、趣味は節約する事。ボーイッシュな性格ながら、女の子らしいところもあり、小学校3年生の時から、甲斐隆臣に一途に片思いをしている。水泳が苦手で、浅い池でも泳ぐ事ができず、水に入る事すら躊躇する。鳴女に託された勾玉により、中つ国と高天原を体ごと行き来する事ができる唯一の少女で、次期天照として世界を照らし、見守る存在として高天原に召喚された。高天原のもう一人の自分である、太陽をつなぎとめる樹と同化する事により、天照の位を継承せずとも莫大な力を得る事ができる。1月7日生まれで血液型はB型。
甲斐 隆臣 (かい たかおみ)
神代小学校5年1組に在籍している男子。家族は両親と兄が一人いる。優しい性格で、つねに穏やかに笑っている。勉強はできるが、恋愛事には疎く、小学校3年生の時から若狭結姫に片思いされている事にまったく気づいていない。勾玉を持っていないため、高天原での記憶がないが、高天原の隆臣が中つ国の甲斐隆臣である。小学校5年生の時に父親の仕事の都合で転勤するが、中学進学の際に戻って来て、結姫と同じ中学校へと進学した。高天原で六つ目の勾玉を手にしてスサノヲとして目覚めるのと同時に、中つ国と高天原、二つの世界の記憶を保有する事ができるようになった。1月30日生まれで血液型はA型。
因幡 颯太 (いなば そうた)
神代小学校5年1組に在籍している男子。一人っ子で、日常的に近視用の眼鏡をかけている。日夜勉強に励んでおり、周囲からはガリ勉と評されている。勉強が大好きで、成績はクラスで一番ながら協調性がなく、クラスの問題児扱いされている。ひょうきん者の和泉那智とは特に相性が悪く、しょっちゅう言い争いをしていたが、高天原で若狭結姫を支える仲間同士だと自覚してからは、中つ国でも高天原でも、那智と共闘する等、互いにわかり合える存在になった。高天原の颯太とは、互いの世界の記憶を共有しているが、体格や年齢、性格はまったく違っている。神代小学校卒業後は、有名私立中学校への進学を希望していたが、受験に失敗して結姫らと同じ地元の公立中学校へ進学する事になった。4月10日生まれで血液型はA型。
和泉 那智 (いずみ なち)
神代小学校5年1組に在籍している男子。家族は両親と妹が一人いる。口が悪く、事あるごとに女子に「ブス」と言うため、クラスメイトの女子に煙たがられている。甲斐隆臣の事が好きであると公言し、交換日記やテストの見せ合いをしたいと常々思っている。家は金持ちで、父親はイズミ・コーポレーションの社長を務めている。社長令息のため、テニスや乗馬、ダンスと一通りこなす。非常にわがままな性格のため、クラスの問題児扱いされている。高天原の那智とは、互いの世界の記憶を共有しているが、体格や年齢、性別が違っている。12月27日生まれで血液型はB型。
日向 泰造 (ひゅうが たいぞう)
神代小学校5年5組に在籍している男子。家族は両親と姉が一人いる。その喧嘩っぱやさと腕っぷしの強さで、学校内でも有名な問題児。中学生相手に喧嘩で勝った事もある。喧嘩をはじめ勝負事が大好きで、粗野な性格ながら純情さも持ち合わせており、一途な性格をしている。高天原で勾玉を手にするまでは、違うクラスの若狭結姫の事は名前すら知らなかった。高天原と中つ国、二つの世界の記憶を有するようになってからは、積極的に結姫や因幡颯太の前に顔を出し、天照救出に向けて活動するようになった。中つ国で鏡を媒介にして顔を合わせて以来、高天原の鳴女に一目ぼれしており、高天原で結姫のために勾玉の力を使い切り、中つ国に戻る際、中つ国を生きる鳴女を探し出す事を高天原の鳴女に誓った。高天原の泰造とは互いの世界の記憶を共有しているが、体格や年齢が異なる。5月13日生まれで血液型はO型。
相模 圭麻 (さがみ けいま)
神代小学校5年5組に在籍している少年。家族は両親と祖父と、年の離れた兄が二人いる。発明家気質で色々なものを拾って来たり、ごみ箱をひっくり返して使えるものを探し、さまざまなものを作っている。手の中に飛び込んで来た勾玉を大事に持ち続けているところを、同じクラスの日向泰造に見られ、先に高天原と中つ国両方の記憶を有する事になった泰造に紹介される形で若狭結姫と出会った。おっとりとしたマイペースな性格ながら、芯の強さと研究欲は高天原の圭麻同様で、右に出る者はいない。高天原の圭麻とは互いの世界の記憶を共有しているが、体格や年齢が異なる。どうしても食べられないものは納豆で、作り話で人を怖がらせて喜ぶ悪癖がある。6月12日生まれで血液型はAB型。
長門先生 (ながとせんせい)
神代小学校5年1組の担任を務めている女性教師。年若く、華やかな雰囲気をまとっている。つねに笑顔だが、怒ると笑顔のまま暴走して手がつけられなくなる。夢見がちなところがあり、いつか自分のもとに白馬の王子様が来てくれると心待ちにしている。ロマンチックな神話の世界が大好きで、授業でもよく取り扱っている。勾玉を持っていないため、高天原での記憶がない。高天原では伽耶として生きており、明るく快活な性格は中つ国と高天原で共通している。3月9日生まれで血液型はB型。
隆臣 (たかおみ)
高天原で盗賊団の頭領を務めている少年。年齢は15歳。嫁が多ければ多いほど尊敬される村出身の男性に育てられたため、女性に出会ったら、その瞬間に口説く習慣を持つ。粗野で乱暴だが、弱い者をいじめたりはしない。若狭結姫の作った料理を食べて、故郷を思い出して以来、結姫には恋愛感情に近い愛情を抱いている。中つ国の甲斐隆臣に結姫が恋している事を知ってからは、隆臣に露骨にやきもちを焼くようになった。盗賊団が解散してからも結姫と行動を共にするが、勾玉を持つ仲間が増えていくにつれ、仲間内で自分だけ勾玉を持っていない事に疎外感を抱き、孤立していく。6歳まで神王宮で過ごしていたが、神王宮で過ごした幼少期は名前がなく、「十三号」と呼ばれていた。遊び相手の伽耶には十三号をもじって「サンちゃん」と呼ばれている。生まれつき額にある数字の「十三」の文字のような痣が14歳を過ぎても消える事がなかったため、スサノヲの後継者となる。六つ目の勾玉を手にしてスサノヲとして覚醒したあと、本能に従い天照を食らおうとしたが、結姫の暮らす世界を守りたいという思いから、自死して高天原での肉体は消滅した。
颯太 (そうた)
高天原の砂地に囲まれた街で神官をしている少年。年齢は14歳。人間の目に見えにくいものが見える透視人でもあり、占いが得意。ふつうは水鏡を見て占いをするが、その占い内容は信頼のおけるもので、街で行政等の判断材料として用いられる事も多い。勾玉は、ふだんから水鏡に沈めて使用していたが、若狭結姫と出会った事で、勾玉が中つ国の因幡颯太と共鳴し、中つ国での記憶を取り戻した。中つ国の因幡颯太同様、勉強熱心で結姫と出会う前から高天原に伝わる神々の黄昏についての研究を続けていた。クールな性格だが、人外のものも見る事ができる体質のため、幽霊やおばけの類を大の苦手としている。また水泳が苦手で、浅い池でも泳ぐ事ができず、水に入る事すら躊躇する。中つ国の因幡颯太とは、互いの世界の記憶を共有しているが、体格や年齢、性格はまったく異なる。
那智 (なち)
高天原の神王宮で月読に仕えている女性。年齢は16歳。主に給仕を担当している。神王宮には働き口を探して、生まれ故郷から単身出て来た経緯で勤めている。線の細い美人だが、男勝りでさっぱりした性格の持ち主。神王宮で書庫を探していた颯太の勾玉が反応し、那智自身の前に現れた勾玉を手にした事で、中つ国の和泉那智と共鳴し、中つ国での記憶を取り戻すに至った。中つ国の和泉那智とは互いの世界の記憶を共有しているが、体格や年齢、性格はまったく異なる。中つ国と高天原で性別が違う事に違和感を感じておらず、中つ国同様に高天原の隆臣にも熱をあげている。趣味は無駄遣いで、自分の美しさを保つためには手段を選ばないところがある。リューシャーの都で一番の踊り子になる事を夢見ており、歌もうまい。
泰造 (たいぞー)
高天原で賞金稼ぎをしている少年。年齢は17歳。腕っぷしが強く、手配書に描かれた賞金首の人相と手配番号をすべて暗記している金の亡者。賞金首に情けをかける事はないが、か弱き者には優しい。趣味は金儲けと物を値切る事。勾玉は若狭結姫と共に密猟者を追いつめた時に偶然見つけた。勾玉を見つけると同時に、勾玉が中つ国の日向泰造と共鳴し、中つ国での記憶を取り戻した。中つ国の日向泰造とは、互いの世界の記憶を共有しているが、体格や年齢は異なっている。もともとの怪力が、勾玉の力でさらに強力になり、その力は水の流れをもせき止める事ができるほどである。
圭麻 (けいま)
高天原のリューシャーの都の地下層地区に住んでいる少年で、発明家をしている。年齢は15歳。華やかな都会であるリューシャーの都に棲みついている理由は、発明材料であるごみが多く、パラダイスのような魅力を感じているから。勾玉の力で、ぬけがらや体毛などの生き物の体の一部があれば、その生き物の能力をそっくりそのまま別のものに移す事ができる。黒曜虫のぬけがらを使って、空遊機のプロトタイプの発明に成功する。しかし無害なプロトタイプを真似した月読が量産し、空遊機が大気を汚す悪しき発明品になった事を悔いている。中つ国の相模圭麻とは、互いの世界の記憶を共有しているが、体格や年齢は異なる。
鳴女 (なきめ)
高天原で天照に仕えている女性。女性でありながら思兼神の役職に身を置く才女である。思兼神であるため、幼い頃に天照の神殿に入り、生涯そこを出る事は叶わないが、天照に心からの忠義を尽くしているため、自らの人生を不幸に思った事は一度もない。天照および高天原を救うために、勾玉の封印を解き、次期天照となり得る若狭結姫を中つ国から高天原に召喚した。鏡を媒体にして中つ国に姿を現す事ができるが、神獣鏡がないと中つ国の者と会話する事はできない。天照と共に天の岩戸計画を発動させた張本人だが、次代の天照となる結姫と、スサノヲとして世界を滅ぼす隆臣が愛し合う事は想定外だったとして、結姫の辛い状況を思い涙した好人物。結姫の暮らす世界を守るために自死した隆臣に生命エネルギーを渡し、高天原での隆臣の魂を助け、中つ国で変わらず生き続ける事ができるよう取り計らった。
迦陵頻伽 (かりょうびんが)
高天原に存在する神鳥で、性別は雌。非常に美しい羽根を持ち、ふだんは小鳥の姿をしている。隆臣の率いる盗賊団に食べられそうになっていたところを若狭結姫に助けられた事から、結姫に非常に懐いている。人間では、地平線の少女である結姫と勾玉を持つ四人の天神とのみ言葉を通わせる事ができる。出会った直後から、結姫が地平線の少女だと気づき、高天原での結姫の役割をまっとうさせるべく、傍に寄り添ってサポートを続ける。非常に口やかましく、明るい性格ながら少々怒りっぽい一面もある。フルネームが長いため、結姫に「ビンガ」と呼ばれるが、ありがたみがないという理由で迦陵頻伽自身は嫌がっている。
伽耶 (かや)
月読の一人娘で、天照の後継者候補の女性。神王宮で大事に育てられた快活な少女だが、病弱で幼い頃から薬漬けの日々を送っている。明るく振る舞っているものの、自身の父親である月読が暴君と呼ばれている事を知っており、心を痛めている。神王宮で、隆臣と幼少期を共に過ごした過去を持つ。隆臣の事を月読らが「十三号」と呼んでいる事を快く思っておらず、「サンちゃん」と呼んで隆臣を一途に思っている。スサノヲとして覚醒した隆臣に月読が殺害された際は、因果応報の当然の報いであるとし、月読の死を悼みながらも自然界の報復を受け入れ、巫女としての確かな器量を見せた。スサノヲ覚醒後は、天珠宮に行く若狭結姫に付き添い、自死した隆臣の魂を救うために天珠宮を離れた鳴女に代わり、天照のサポートをして生きる道を選んだ。
月読 (つくよみ)
高天原で最高位にある神王家出身の男性。一族の掟で国の宰相として高天原に君臨している。天照の兄にあたるが、巫女として自然界との調和を尊ぶ妹とは対照的に自らの物欲を満たすために、民にさまざまなものを作らせては自然破壊を続けている。幻珊瑚の海に廃油を捨てさせたり、空気を汚さないエコな飛行物体として発明された空遊機を、有毒ガスを吐く乗り物として量産させるなど、悪評が絶えない。スサノヲの後継者となりうる、生まれつき額に痣のある子供を探し出す事を使命とし、額に痣のある子供を差し出させては神王宮に住まわせ、監視していた。一人娘の伽耶を溺愛していたが、隆臣がスサノヲの後継者として覚醒したあと、彼を支配下に置くために伽耶に刃を向け人質としたためスサノヲの逆鱗に触れ、砂のように粉々に砕かれる最期を迎えた。
天照 (あまてらす)
高天原で最高位にあたる神王家出身の女性。一族の掟で巫女となり、高天原と中つ国を照らす太陽の化身に等しい存在となった。天照となって以来、天珠宮に籠って生涯出る事を許されない孤高な存在。女性の姿をしており、ふだんから鳴女が献身的に仕えている。人間達が自然破壊を進める中、鳴女と共に天の岩戸計画を発動。自然界の長であるスサノヲを覚醒させ、自らが彼に食われる事によって世界を再生しようと画策したが、若狭結姫がスサノヲを自死に導いたため、生き延びて中つ国と高天原を照らす太陽としての役目を継続する事になった。
スサノヲ
六つ目の勾玉を継承する権利を持つ、伝説の龍。高天原で、生まれつき額に痣を持って生まれて来た子供のうち、満14歳を迎えるまで額から痣が消えなかった者が後継者となる伝統がある。痣は数字の形をしており、痣を持つ子供一人一人が違う数字を持って生まれて来る。神王宮の月読が、生まれつき額に痣のある子供を民に差し出させ、神王宮に住まわせて監視していた。スサノヲは、人間以外のか弱き生き物達に「自然界の長」と呼ばれ、自然破壊を進める人間を全滅させるか否かの判断を委ねられる存在である。15歳になっても額の痣が消えなかった隆臣がスサノヲの後継者となったが、その背中からは漆黒の翼が生え、隆臣としての意識は失われ、やがて天照を食らって世界を再生させるために行動を始めた。スサノヲが目覚め、天照を食らい世界を再生に導くまでが、現天照と鳴女の仕組んだ天の岩戸計画であったが、若狭結姫の活躍により、隆臣の意識を取り戻したスサノヲは自死し、スサノヲの肉体は高天原から消滅した。
藻屑蟹 (しざーくれす)
高天原のとある谷に生息する巨大な蟹。背中に海藻や草木をくっつける習性がある。月読が谷に捨てた大量のごみが背中にくっつき、それが背中に高く積み重なり、ごみの塔と化してしまった。日常的に呼吸するように泡を吐き出すが、ごみを背負った事で毒性のある泡を吐くようになった。若狭結姫が、高天原で水晶虫にさらわれた伽耶を探しに行く途中の谷で遭遇し、覆いかぶさって来るごみを前にしてすっかり我を忘れて凶暴化しているところを、隆臣と泰造に抑え込まれた。最終的に、那智の勾玉の力により背中のごみが浄化され、正気に戻った。
社 (やしろ)
月読に仕えている男性。月読に仕える者達の中でのリーダー的存在で、神王宮の月読のプライベート空間に立ち入る事も許されている。人当たりのよさそうな見た目に反して、内面は腹黒く、月読に報いるためならば自らの手を汚す事も厭わない。リューシャーの都で風の精霊の手を借りた若狭結姫が地平線の少女ではないかという噂を聞きつけ、月読のもとへ連れて行った。月読に長く仕えて来たため、幼少期に月読に囚われていた隆臣の事も知っており、面識がある。
若狭 陽二 (わかさ ようじ)
小学1年生の男子で、若狭結姫の弟。双子の兄の若狭陽一といつもいっしょにいる。兄の若狭光介としょっちゅうもめ事を起こしているが、体格の差から喧嘩に勝った事はない。お母さん代わりのパワフルな結姫を慕っている。陽一よりも泣き虫である。
水晶の大蛇 (すいしょうのおろち)
水晶の森の守護神で、八つの頭と水晶の鱗と水晶の目を持つ大蛇。水晶の森の奥深くの滝の中で、水晶虫と共生しながら暮らしている。水晶の鱗は非常に固く、剣を立てる事ができないため、おとなしくさせるためには大蛇の複数ある頭をそれぞれ誘導し、だんご状に組ませて動けなくするしかない。スサノヲの継承者である隆臣を、隆臣自身の覚醒前から自然界の長と認め、水晶でできた剣を与えて敬う姿勢を見せた。
真苗 (まなえ)
錬金術師の孫娘。人々の心を氷の結晶にしてしまう術に取りつかれた錬金術師を人里離れた山奥に隔離し、一人で世話を続けて来た。しょっちゅう発作で寝込む老齢の錬金術師を心配し、いつも献身的に寄り添っている。
水晶虫 (くりすたるわーむ)
高天原に生息する虫。ふだんは水晶の森に生息しており、森を監視する事を条件に、水晶の森の守護神・水晶の大蛇の護る水晶を食べさせてもらっている。月読が神王宮を建設する際に、水晶虫の水晶を含む体液を欲して殺しつくしてしまったために、絶滅の危機に瀕している。人間に多量の仲間を殺された恨みから、月読の娘・伽耶をさらうが、川に流された幼虫を助けてくれた若狭結姫と心を通じ合わせて、人間への復讐心を治めた。
錬金術師 (まいすたー)
火炎石を使い、さまざまな術を施す老人。孫娘の真苗に世話されながら、人里離れた山奥に住んでいる。自然破壊を続ける人間を憎んでおり、私利私欲に走る人間を見つけては、魂を氷の結晶に代えて閉じ込めてしまう呪術で懲らしめていた。そのため、会うと魂を吸い取られると噂され恐れられていたが、実際は氷の結晶が壊れれば、魂は持ち主のもとへ戻って抜け殻状態になっていた人は息を吹き返す。氷の精霊と、世界を救うために行動している若狭結姫の清らかさと温かさに触れ、改心して人間の精神を氷の結晶に閉じ込めるのではない、別の方法で人々の自然破壊を食いとめようと模索するようになった。老齢のために、たびたび発作を起こして生命の危機に立たされるが、転生して真苗のそばに生まれ変わるとたびたび口にするなど、孫娘思いの性格をしている。
若狭 光介 (わかさ こうすけ)
小学3年生の男子で、若狭結姫の弟。双子の弟の若狭陽一と若狭陽二と喧嘩をしては、いつも大人げなく泣かせている。ひょうきん者ながら家族思いで、結姫が体調が悪く寝込んでいる時などは結姫を気遣っておとなしくしている。結姫が、おとなしい両親の代わりに叱ってくる事を、目の上のたんこぶのように捉えながらも慕っている。
玉髄貝 (あげーとないと)
高天原に生息する貝。海に生息し、見た目は巻貝に無数の足が生えた姿をしている。風精草が大好物のため、玉髄貝を捕まえたい人間は風精草を餌として海に撒く。外殻は発光性があり、非常に美しく希少価値が高い。ブレスレット等に加工されて高値で販売されたり、身は高級食材として食される。発光する性質から「光る石」と通称され、その稀少性から捕獲禁止の対象生物に指定されているが、密猟が後を絶たないのが現状である。
藍 (らん)
高天原の鉱山地帯であるタオナ村に住んでいる少女。墨頭虫と心を通わせており、月読の命令で村人達が掘り起こしている金属を盗んでは、墨頭虫に届けに行っていた。あまりに金属を盗むので、村人達に目をつけられ、追いかけ回されていたところを若狭結姫に助けられた。結姫一行の中では、颯太にもっとも懐いている。
若狭 陽一 (わかさ よういち)
小学1年生の男子で、若狭結姫の弟。双子の弟の若狭陽二といつもいっしょにいる。兄の若狭光介としょっちゅうもめ事を起こしているが、体格の差から喧嘩に勝った事はない。お母さん代わりのパワフルな結姫を慕っている。
柑橘虫 (しとろんへろす)
高天原で、突如颯太の住む街中に現れて暴れ出した巨大な虫。蜂のような外見をしており、街中であろうが、時期が来たらどんな場所でも脱皮をする。7年前に生んだ卵が孵化を始める時期であるため、生んだ場所を探して颯太の住む街や中つ国に現れた。地平線の少女である若狭結姫と意思疎通を果たした事により、羽化を始めた状態の子供達と再会を果たす事ができた。結姫に報いるべく、山の向こうから自身の脱皮後のぬけがらを使い、水を汲んで颯太の住む街を潤した。
飢魚 (ごるげいあ)
高天原に生息し、何でも食べる雑食の魚。不味くて食用にはならないため、人間には嫌われている。非常に仲間意識が強く、若狭結姫に助けられた恩を忘れずにいた。結姫の宝珠解放の呼びかけに応えて、群れを引き連れて廃油を食べて、海を綺麗な状態に戻した。
若狭結姫の父 (わかさゆうきのちち)
若狭結姫の父親で、一般的なサラリーマン。朝は眼鏡をかけて新聞を読むのを習慣としている。しっかり者の結姫を非常に頼りにしている。
砂漠花 (でぃざりあ)
高天原の金色砂漠の中に隠れ棲んでいる、化け物のように巨大な花。長い触手には棘があり、非常に危険。獲物となる人間が通りかかると、砂漠の中から現れて一飲みにしようとする。そのため人食い花として恐れられていたが、実際は砂漠地帯を通りがかる人間に、自らの花粉を遠くへ運んでほしいと願っていただけである。触手で捕まえた人間に花粉を託そうと試みていたが、攻撃される事が続いたため、仕方なく人間を食らっていた。地平線の少女である若狭結姫と意思疎通を果たした事により、結姫に花粉を託し、高天原中に広く撒いてもらう事が叶った。
隆臣の名付け親 (たかおみのなづけおや)
高天原のどこかの村で暮らしていた天涯孤独の男性。6歳の時に神王宮を逃げ出したあと、空腹のあまり餌につられて熊捕獲機の中に閉じ込められていた隆臣を助け出し、共に暮らすようになった。隆臣に名前がない事を知り、隆臣という名前を付けた。隆臣に名前の由来は強くて優しい、お姫様を守る名前だと語った。幼い隆臣に自身の村の風習に則り女性の口説き方を教えるなど、茶目っ気のある人物だったが、隆臣を追って来た月読の手先によって殺された。最後は隆臣をかばう形で死んだが、それが隆臣に自身が疫病神であるという意識を植え付けるきっかけになり、誰にも頼らずどこにも定住しなくてもいい盗賊稼業に身を落とす事を決めさせた。
墨頭虫 (かーぼんへっど)
高天原に生息する、全身真っ黒な虫。手足はなく、浮遊するだけの存在だが、非常に凶暴で金属を見ると持ち主を襲う習性がある。ふだんは陽の当たらない岩場に住み、岩の中のわずかな金属を食べているおとなしい虫だが、人間が私利のために金属を摂り過ぎたために、凶暴化してしまった。
若狭結姫の母 (わかさゆうきのはは)
若狭結姫の母親。おっとりした性格で、小さい頃から家事や弟達の世話をよく手伝ってくれる結姫を非常に頼りにしている。最近では、やんちゃ盛りの弟達の喧嘩の仲裁なども、結姫が適任と感じているのか、すべて結姫に任せている。料理が得意で、朝から朝食用にパンを焼く事がある。
集団・組織
盗賊団 (とうぞくだん)
高天原で、隆臣が頭領を務めていた盗賊稼業を営む集団。みんなサングラスをかけており、粗野でいかつい雰囲気を漂わせている。しかし実際は根は穏やかで優しく、弱い者いじめはしない気のいい男達。砂漠で難儀していた若狭結姫を助け、彼女の作った料理を食べた事をきっかけに、故郷の母親を思い出し、さらに人情味あふれる集団になった。柑橘虫との一件を契機に盗賊団を解散する事になってしまったが、みんな故郷に戻り、職を得てまっとうに暮らしていく事を誓った。
場所
高天原 (たかまがはら)
中つ国に住まう人間が、神の領域だと思っている場所の呼称。中つ国の神話に出て来る天照や月読などが実際に存在する、壮大な世界である。中つ国とは天照を共有しており、高天原は中つ国に住まう人間にとって、就寝中に見る夢の中の世界にあたる。したがって、高天原で眠れば、中つ国に自身の精神を戻す事ができる。勾玉を持つ者だけが、高天原にいるあいだは中つ国の記憶を忘れずに保つ事ができる。死後はすぐに転生するが、必ずしも前世と同じ種族に生まれ変わるとは限らない。
中つ国 (なかつくに)
高天原に住まう人間から見た、地球の呼称。高天原とは天照を共有しており、中つ国は高天原に住まう人間にとって、就寝中に見る夢の中の世界にあたる。したがって、中つ国で眠れば、高天原に自身の精神を戻す事ができる。ただし、中つ国にいるあいだも高天原の記憶を忘れずに保つ事ができるのは、勾玉を持つ者だけである。天照と距離があるため、天照に異変が起きると、たちまち曇り空になるなど、その異変はすぐに天候に現れる。また、鏡を通して高天原で起きた怪異が浸透して来る事があるなど、二つの世界は密接につながっている。
リューシャーの都 (りゅーしゃーのみやこ)
空遊機の飛び交う、高天原で最も華やかに栄えている都。月読の住まう神王宮があるが、地下層地区は空気が汚れ、貧しい者達が住まう暗澹とした場所である。神王宮はドームで覆われており、その中のみ澄んだ空気に満ちている。城下には月読の息のかかった者達が複数潜んでおり、都に少しでも異変があれば社を通じて、すぐに月読の耳に入る仕組みになっている。
天珠宮 (てんじゅきゅう)
高天原にある天空の神殿で、天照と鳴女が暮らしている場所。天珠宮の正確な位置は、鳴女にすら把握する事は不可能で、天珠宮が自然界の怒りの中心に浮かんでおり、完全に地上から切り離された状態である事以外、詳細は誰にもわからない。天珠宮に地上から行くには、神獣鏡と神華鏡を合わせ鏡にする事で現れた階段を昇っていくよりほかに道はなく、階段を奥まで進むには四人の天神が勾玉の力を使い、門を開ける必要がある。
神王宮 (しんおうきゅう)
高天原を支配する神王家の現当主・月読の住んでいる宮殿。自然破壊で汚れた世界の中でも、ドームで覆われて唯一澄んだ空気の中で過ごせる仕組みになっている。ドームは水晶虫の体液を固めて作られているが、それを作るために水晶虫が大量に殺され、絶滅の危機に瀕する事になった。宮殿内には神々の黄昏に関する重要書物が多数保管されているが、書物の眠る書庫の扉は固く閉ざされ、月読以外に開けることはできない。
イベント・出来事
幻珊瑚のお祭り (まぼろしさんごのおまつり)
高天原のとある田舎の村で、夏に行われている伝統的な祭り事。村の護り神に等しい幻珊瑚の生息する森に、年に一度降る雪を見るともう一人の自分に会う事ができ、もう一人の自分と対面した者は、幸せな気持ちになれるといわれている。降る雪が赤いのは、幻珊瑚の産卵を降雪と称しているからである。ちなみに、もう一人の自分とは、中つ国の自分の事である。祭りの最中、若狭結姫の前にもう一人の自分が現れなかった事から、結姫は意識だけでなく、体ごと高天原と中つ国を行き来している事が判明した。
その他キーワード
神獣鏡 (しんじゅうきょう)
高天原にいる鳴女が、中つ国にいる若狭結姫と会話する事ができる唯一の手鏡。結姫の部屋の全身鏡を媒体にして、鳴女から結姫に託された。元は鳴女が天照に贈られたものだった。結姫が高天原の砂漠で落としてしまったあと、旅の行商人が拾い、それを那智が購入して無事に結姫のもとに戻った。伽耶の持つ神華鏡と対の存在であり、神獣鏡には神華鏡を持つ者の姿が映し出される。天珠宮には、神獣鏡と神華鏡の二つの鏡が揃わなければたどり着けない。
神華鏡 (しんかきょう)
高天原にいる伽耶が幼少期から持っていた手鏡。天照の持ち物だったが、次期天照候補者として伽耶の手元に置かれるようになった。伽耶は自然破壊を続けた月読を父親に持つため、天照になれる器ではなかったが、神華鏡は神王家の巫女に代々受け継がれているため、伽耶は神華鏡の正統な持ち主である。スサノヲ覚醒後、天珠宮にいる天照を救い出すために、伽耶から若狭結姫に譲渡された。神獣鏡と対の存在であり、神華鏡には神獣鏡を持つ者の姿が映し出される。天珠宮には、神獣鏡と神華鏡の二つの鏡が揃わなければたどり着けない。
神々の黄昏 (らぐなれく)
高天原に何千年かに一度訪れる、危機的な状況。「世界の終末」とも呼ばれる。具体的には天照に異変が起きて、高天原と中つ国から太陽が消えてしまう。太陽の力が弱まると大地のバランスが崩れて、高天原の色々な場所にほころびができ、危険な生き物が中つ国に入り込むなどの異変が世界中で起きる事となる。しかし神々の黄昏が訪れても、地平線の少女が現れて天神と共に世界に太陽を取り戻してくれるという古い言い伝えがあり、高天原に伝説として残されている。
宝珠解放 (あるふぉーくろあ)
地平線の少女である若狭結姫が使える呪文。唱えると、通常は言葉を交わす事ができない、精霊や魚や木々などの人間以外の生物と意思疎通を果たす事ができる。また、自然界や精霊の大いなる力を借りる事もできる。この呪文で気持ちを通わせた人間以外の生物が地平線の少女に心を開いた場合、彼らの気持ちが、勾玉の中に小さな光として集うようになる。この小さな光は、自然破壊を続ける人間を許容する意思の表れでもあり、覚醒したスサノヲに、結姫が隆臣の意識を取り戻させる一助となった。
地平線の少女 (ほるあくてぃ)
高天原で噂される、神々の黄昏時に天照の危機を救うために現れる異世界の少女の呼称。「伝説の少女」とも呼ばれている。聖獣と会話でき、聖獣を召喚できる唯一の人物。人間以外の生物と意思疎通を果たす呪文・宝珠解放を唱える事ができる。中つ国から高天原に、意識の身でなく体ごと移動できる唯一の存在で、高天原で生きる自分と同化する事により、さらなる力を得る事ができる。次期天照の呼称でもあるが、この事は世間一般には知られていない。地平線の少女は四人の天神と共に天珠宮へ行き、スサノヲに天照が食われたあとの世界を、次期天照として明るく照らし出す使命を負う。
太陽をつなぎとめる樹 (たいようをつなぎとめるき)
高天原の天珠宮を支える聖なる樹。天上界で唯一生きて来た大木で、高天原における若狭結姫であり、結姫と同じ魂、同じ鼓動を持っている。同化する事で、中つ国から体ごと高天原にやって来た結姫の力を高め、伝説の少女として真の力を発揮させるよう導く。
空遊機 (えあおーと)
リューシャーの都で走っている空飛ぶ乗り物で、初機のプロトタイプは圭麻が発明した。それが悪しき方向に改良されて、人間が乗れる大きさになるのと同時に、大気を汚す有害ガスを吐く乗り物となった。都の中心部に住む者にとっては便利な乗り物だが、都の地下層にある地区には汚れた空気が溜まり、その町に住む子供はみな体調を崩している。なお、プロトタイプは小さな手のひらサイズの飛行物体で、素材も黒曜虫の抜け殻だったため、大気を汚さない無害なものだった。
勾玉 (まがたま)
一つ目の穴が開いている、小指程の大きさの石。鳴女の力により封印が解かれ、高天原を飛び出し、中つ国の持ち主のもとへと渡った。勾玉を持つ者だけが、高天原と中つ国の両方の世界での記憶を有する事ができる。聖獣と会話する事もでき、また勾玉の持つ魂結びの力は、勾玉を持つ者の中に眠る能力を解放する手助けをする。勾玉を持つ者は勾玉に刻まれた文字を読む事で、自身の能力を発揮する事が可能。天の岩戸計画における勾玉の最大の役割は、天珠宮への門を開けるために、勾玉を持つ四人の天神に勾玉に刻まれた文字を唱えさせる事である。
白銀花のキャンディ (しるゔぃあのきゃんでぃ)
高天原で圭麻が発明した飴。火山の近くに咲き、空気を綺麗にする効果を持つ白銀花の効用を勾玉の力で飴に変化した発明品で、舐めているあいだはあまり毒を吸わなくて済むようになる。
風精草 (しるふでいじ)
高天原に存在する、大気を養分とする宙に浮く花。とてもいい香りがする。光る石の原料となる玉髄貝が好んで食べるため、彼らの生息する海に餌として撒かれるために多量に摘まれている。なお、玉髄貝が風精草を食べると一時的な麻痺状態に陥ってしまう。
風鳴琴 (おーけすとりおん)
高天原で、勾玉の力を借りた那智が使える技の一つ。那智が自身の持つ勾玉に刻まれた文字を読む事で発動し、那智は望み通りの舞台衣装に身を包む事ができる。技の発動中は、歌い踊る那智の動きに合わせて那智の周囲が浄化されるほか、望んだものに音楽を吹き込み、楽器にしてしまう効果がある。また再生能力も併せて発動され、那智の意思の赴くままに傷ついた生物の傷を癒す事すら可能である。
ブルースカイブルー号 (ぶるーすかいぶるーごう)
圭麻が勾玉の力を使って生み出した飛行物体。帆を持つ艦船のような造りで、五人以上の人間が乗り込めるが、空気を汚す事もないため、自然環境に配慮した乗り物である。生き物だった頃の記憶が残っており、人語を解して作り主の圭麻に呼ばれればどこにでも現れる。