概要・あらすじ
天地開闢以前から思索に耽っていた神、混沌が、顔を描き込まれたことによって下界に興味を持ち、人間の暮らしとその濁った気に当てられているうちに、自身が神であることも忘れ人間のように欲望によって突き動かされる存在に変わっていく。
登場人物・キャラクター
混沌 (こんとん)
『無面目』に登場する神。天地開闢の前から思索を続けているとされ、天窮山の岩の上に胡座をかいていた。頭髪はあるが、目、鼻、口、耳がないのっぺりした顔をしていたが、訪れた東方朔が筆で顔を描いたことでそれが本物の顔となる。東方朔らと話した後、人間の世界を見聞するために山を下り、江充らの企む陰謀劇に巻き込まれることになる。 欒大に成り代わってからは、その名とともに官職名である「五利(将軍)」と呼ばれることも多い。長安から逃れた後は、農夫の「李小」と名乗っていた。
東方 朔 (とうほう さく)
神仙好きで知られる時の皇帝・武帝の近侍となり、相談役をしている男。皇帝が望む「ジョカ(女媧)の五色の石」を求め、南極老人と共に混沌の下を訪れた。まだ顔のなかった混沌に、らんだいの顔を描き込んだ人物でもある。紀元前2世紀の前漢時代に実在した人物。
南極老人 (なんきょくろうじん)
『無面目』に登場する神仙の1人。東方朔の碁仲間で、「ジョカ(女媧)の五色の石」を探す際に相談を持ちかけた相手。無面目が知っているだろうと教え、共に訪ねている。道教で実際に崇められている神で、『西遊記』や『封神演義』といった作品にも登場している。
江 充 (こう じゅう)
長安の都の、「水衡都尉(すいこうとい)」と呼ばれる役人で、「酷吏」とも呼ばれる罪人の拷問係。長安にやってきた混沌を捕らえ拷問を行っている。武帝の勅命を受け巫蠱を行うものを取り締まったが、自身で証拠を捏造し対立するものを罪人に仕立て上げていた。中国前漢時代に実在した人物で、『無面目』の物語自体、江充が起こしたと記録されている「巫蠱の大獄」と呼ばれる紀元前91年の事件を元にしている。
公孫 賀 (こうそん が)
中国前漢時代の皇帝・武帝の補佐をする「丞相(じょうしょう)」。混沌に欒大になりすますよう命じ、対立する李延年を陥れるため巫蠱の術を行った。陰謀の片棒を担ぐ息子の公孫敬声(こうそんけいせい)共々、歴史上実在した人物。
武帝 (ぶてい)
中国前漢時代の第7代皇帝。神仙に強いあこがれを抱いていることで知られ、方士の欒大を気に入り「五利将軍」の官位を与えていた。猜疑心が強い性格で、欒大に成り代わった混沌にそそのかされ世に巫蠱が蔓延していると信じ込まされていた。
劉 拠 (りゅう きょ)
中国前漢時代の皇帝・武帝の長男で、皇太子。公孫賀らによる、欒大のすり替え事件の黒幕だったが、江充による巫蠱取り調べの容疑者となり対抗するために挙兵。嫌疑と挙兵の事実が皇帝に対する謀反とされ、父親に追われる立場となった。歴史上実在した人物。
李 延年 (り えんねん)
「協律都尉(きょうりつとい)」と呼ばれる官職を持つ芸人。兄は「弐師将軍(じししょうぐん)」に任じられる李広利(りこうり)、妹は武帝が最も愛した女性だった李夫人(りふじん)だったため重用されていた。混沌が成り代わる以前の欒大と親しかった。妹の死後も権勢を保とうとし、太子の劉拠の即位を妨害するため、巫蠱を使う陰謀を行った。 妹や弟共々、歴史上実在した人物。
欒大 (らんだい)
「五利将軍(ごりしょうぐん)」の称号を持ち、神仙好きの皇帝・武帝に重用されていた方士。小手先が起用な小ずるい男で、特別な力は持っていない。顔のなかった混沌に東方朔が描き込んだ顔のモデルで、それゆえに公孫賀らによって替え玉の標的にされた小心者の男。中国前漢時代に実在した人物。
朱 安世 (しゅ あんせい)
侠客や盗賊の首領とされる顔の広い人物。対立する公孫賀と李延年それぞれに巫師を紹介し、欒大に成り代わっていた混沌にも手勢を貸していた。江充の巫蠱取り締まりが始まった後捕らえられるが、獄中から関係者を告発し大獄が拡大した。中国前漢時代に実在した人物。
麗華 (れいか)
欒大が買った妾付きの新人女中。欒大に成り代わった混沌の目に留まって側に置かれるようになり、後に妻となる。