あらすじ
東方よりの使者
時は19世紀。産業革命によって発達していたイギリスであったが、差別の芽はなくならず、労働階級の少女、ヴィルヘルミナ・マリーは同級生の男子たちから執拗(しつよう)ないじめを受けていた。その日もヴィルヘルミナは墓場でアーサー・ホルムウッド、キンシー・モリス、ジョー・スワの三人にいじめられていた。彼らに付き添うルーク・ウェステンラと二人っきりになったヴィルヘルミナは落ち込みつつも、持前の負けん気を発揮し、不屈の意思を見せる。しかしその瞬間、夕闇に紛れて一つの異形が舞い降りルークに襲い掛かる。ヴィルヘルミナは三人と協力してこの異形を退け、ルークを助けることに成功する。しかしその日以降、ルークのもう一つの人格であるルーシーが夜ごとに現れ、怪しげな行動を取り始めるのだった。ヴィルヘルミナはルーシーが以前から時おり現れるのを知っていたが、最近のルーシーは明らかに以前とは違う異質さを垣間(かいま)見せており、ヴィルヘルミナは徐々にルーシーのことを怪しみ始める。
登場人物・キャラクター
ヴィルヘルミナ・マリー
ウィットビー校に通う少女。赤毛の髪を三つ編みにしている。そばかすのある顔が特徴。愛称は「ミナ」。労働者階級生まれの少女であるため、身分と男尊女卑の立場から差別されており、同級生たちから執拗な嫌がらせを受けている。しかし勝気な性格なことから、嫌がらせに遭う度に闘志をみなぎらせている。勉強もスポーツも人並以上に頑張っている。「Catch As Catch Can(やれるもんならやってみろ)」を略した「CACC」が口癖。ランカシャーレスリングを身につけているため、大男をひっくり返すほどの能力を秘めている。タイプライターが得意で、最近は最新のタイプライターを購入して、その練習がてらタイプライターで日記を書いている。ルーク・ウェステンラとは仲が悪いが、彼の中に潜むルーシーとは仲がいい。墓場の出来事以降、ルーシーの様子が豹変したことを怪しんでいる。
ルーク・ウェステンラ
ウィットビー校に通う少年。金髪ロングヘアの小柄な体型をしている。少女と見まごうばかりの容姿をした紅顔の美少年。繊細で傷つきやすいため、幼い頃から何度も倒れており、その姿を見かねたアーサー・ホルムウッド、キンシー・モリス、ジョー・スワは彼を守り抜く騎士(ナイト)となることを誓っている。絵を描くのが趣味で芸術に造詣が深く、言動も詩的なところがある。実は性同一障害者で、女性的なものに強いあこがれを抱いている。しかし、ふだんはそれを抑圧しているため、いつもの自分を「噓で塗りつぶされた私」と嫌っている。このストレスから夢遊病を発症しており、夜になると時おり、女性の人格となったルーシーが現れる。ルーク・ウェステンラ自身はルーシーの存在に気づいておらず、ルーシーになった時の記憶はいっさいない。墓場で絵を描いていた際に、異形の存在に襲われる。無事に戻って来たものの、それ以降、ルーシーが夜になると現れて怪しげな行動を取り始める。
ルーシー
ルーク・ウェステンラの中に潜むもう一つの人格。ルークの中で抑圧された女性的な願望が形となった存在で、少女のように振る舞っている。ヴィルヘルミナ・マリーはルーシーの存在を知っており、ウィルベルミナはルークとは仲が悪いが、ルーシーとは仲がいい。墓場でルークが襲われた事件以降、夜になるとたびたびルーシーとなり、怪しげな行動を取るようになる。ドラキュラ伯爵を運命の相手と考えており、ヴィルヘルミナにその胸の内を打ち明けた。
アーサー・ホルムウッド
ウィットビー校に通う少年。スーツを着こなして上品な身なりをしている。イギリス貴族であるゴルダミング卿の息子で、キンシー・モリス、ジョー・スワたちのリーダー的な存在。ルーク・ウェステンラのことを大切に思っており、彼の騎士を自認している。ルークが墓場で異形に襲われた際、一人墓場をあとにした。ジョーにはアーサー・ホルムウッドが武器を取りに戻ったと思われているが、モリスからは逃げ出したと思われており、三人の友情に亀裂が入りつつある。
キンシー・モリス
ウィットビー校に通う少年。陽気な性格でバイタリティにあふれている。アメリカのテキサス出身の黒人だが、親が大富豪なためイギリスのウィットビー校に進学した。しかしイギリスには黒人が少ないため、肩身の狭い思いをしている。そんな中、自分を受け入れてくれたアーサー・ホルムウッド、ルーク・ウェステンラ、ジョー・スワには感謝しており、彼らとの友情を大切にしている。一方でルークに対して独占したい感情を抱いているため、アーサーが墓場で逃げ出して以降、彼に強い反発心を持つようになる。
ジョー・スワ
ウィットビー校に通う少年。冷静沈着な性格で、精神医学の道を志している。日本人で、名前は「諏訪襄」。アーサー・ホルムウッド、キンシー・モリスと共に、ルーク・ウェステンラのことを大切に思っている。ヴィルヘルミナ・マリーと同様に、タイプライターで記録を取る癖があり、実はひそかに精神患者と思わしき下級生、レンフィールドの記録を取り続けている。彼女の常軌を逸した言動から、本当に降霊術をしているのではないかと疑っている。また、ジョー・スワ自身は知る由もないが、レンフィールドの奇行はルーシーの怪しげな行動ともシンクロしており、不穏な空気を漂わせている。
書誌情報
#DRCL midnight children 5巻 集英社〈愛蔵版コミックス〉
第2巻
(2022-10-19発行、 978-4087927719)
第3巻
(2023-06-19発行、 978-4087927764)
第4巻
(2024-02-19発行、 978-4087927825)
第5巻
(2024-11-19発行、 978-4087928112)