概要・あらすじ
平穏な日々を送っていた皐月駆と幼なじみの水奈瀬ゆかは、ある日突然赤い夜に引き込まれてしまう。化け物の出るその世界は、彼らのよく知る綾女とは似て異なる場所だった。そこで、駆は剣で化け物たちをなぎ倒す、草壁美鈴という少女に出会う。そして赤い夜のなかで生き延びるために、駆たちは力を手にしていく。
登場人物・キャラクター
皐月 駆 (さつき かける)
虹陵館学園の2年生男子。虹彩異色症の右目を持ち、普段はそれを眼帯で隠している。右目の視力はない。のちにその右目が、「劫の眼」と呼ばれるものだということが判明する。過去に姉を亡くした経験から、世界に希望を持っておらず怠惰な生活をしていた。赤い夜に引き込まれてからは、「劫の眼」を用いて先読みをすることができるようになる。
水奈瀬 ゆか (みなせ ゆか)
皐月駆の世話をよくしている、駆の幼なじみの少女。虹陵館学園の2年生女子。おっとりした性格だが、何事においても駆のことを優先する。草壁美鈴と駆が近づいていくのをよく思っておらず、2人の邪魔をすることもしばしば。赤い夜内での特殊な能力を持たない唯一の存在だが、一度だけ原因不明の力を発揮した。
草壁 美鈴 (くさかべ みすず)
皐月駆と水奈瀬ゆかが赤い夜のなかで出会った少女。虹陵館学園の3年生女子。現代の陰陽師で、化け物や黒騎士に対しては、剣と術を用いて戦う。草壁五宝と呼ばれる5本の剣を手に宿しており、手の爪ひとつひとつにその印が現れているため、常に手袋をしている。
橘 菊理 (たちばな くくり)
虹陵館学園の3年生女子。少し幼い風貌ながら皐月駆の姉によく似ていて、初めて出会った際には駆も見間違えたほど。アブラクサスという守護天使がついており、赤い夜では、アブラクサスが身に纏う鎖を使って戦う。言葉を話すことができないため常にスケッチブックを持ち歩き、それに言葉を書いて伝えている。
広原 雪子 (ひろはら ゆきこ)
考現学部の設立者の少女で、虹陵館学園の1年生。赤い夜においては強力な自己回復能力を持つ。明るくさばさばした性格だが、眼鏡を外すと本来の人格が現れ、冷徹な殺人マシーンとなる。
田島 賢久 (たじま たかひさ)
虹陵館学園の2年生男子だが、よく喧嘩などで無断欠席するため、その存在はあまり認知されていない。言葉遣いもぶっきらぼうで、唯一彼にもの申すことができる赤嶺彩子先生によくたしなめられている。自然発火能力であるパイロキネシスを持ち、赤い夜のなかではその炎を用いて戦う。
アワリティア
「黒騎士」のリーダーを務める男性。リゼット・ヴェルトールをこの世に復活させないという信念のもと、リゼットを復活させる鍵となる皐月駆たちを殺そうとする。契約の虹を操る魔術師として駆たちの前に立ちはだかる。
イラ
「黒騎士」の一人で、筋肉質な男性。肉弾戦を得意とする。草壁美鈴を「罪人」と称し、戦いを挑んできた。しかし返り討ちに遭い、瀕死の重傷を負う。その後、インウィディアと共に皐月駆たちの前に現れるが、2度目は駆の手によって倒された。
インウィディア
「黒騎士」の一人で、グラマラスな美女。鞭の形を取った武器で、広原雪子と対峙する。雪子と田島賢久によって撃退されるも、一度は逃亡に成功。2度目に現われた際は雪子と賢久によって撃退されるが、最終的には水奈瀬ゆかの謎の光によって倒される。
スペルビア
リゼット・ヴェルトールによる滅びの運命を回避するため、アワリティアに忠誠を誓った女性。2振りの剣を扱う剣士。アワリティアと共に「黒騎士」として、皐月駆たちを襲う。しかしその正体は、過去に死んだはずの草壁操であった。
百野 栞 (ももの しおり)
虹陵館学園の2年生女子で、魔術機関「禁書目録聖省」から派遣されてきた。イタリアからの帰国子女で、常にイタリア語の本を携帯している。あまり人と関わることをよしとせず、当初は皐月駆たちのことも拒絶していたが、リゼット・ヴェルトールを倒すという目的のもと、協力しあう関係となる。
ヴェラード
皐月駆と同じ「劫の眼」を持つ、中世の甲冑を着た男性。たびたび駆の夢に現れては助言をする。リゼット・ヴェルトールとはかつて恋仲だったことがあり、彼女の魔術への対応策も心得ている。
リゼット・ヴェルトール (りぜっとゔぇるとーる)
欧州最古の魔女で、不老不死。魔術機関「禁書目録聖省」、及び「黒騎士」たちの敵。当初はアワリティアの魔術、契約の虹によって水晶に閉じ込められていたが、皐月駆たちの手によって水晶の封印が解かれてしまう。封印を解き放ったリゼット・ヴェルトールは「リーゼロッテ・ヴェルクマイスター」と名乗り、奈落落としを目論む。
草壁 操 (くさかべ みさお)
草壁家の歴史において、最も強いとされた女陰陽師。しかし外法に走ったため、草壁の一族からは除外されている。草壁美鈴が憧れている人物でもあり、草壁五宝は過去、彼女が所持していた。草壁の二刀兵法を会得した人物でもある。
集団・組織
黒騎士 (くろきし)
リゼット・ヴェルトール、ひいてはリーゼロッテ・ヴェルクマイスターを封印するために結成された組織で、アワリティアが指揮を執る。リゼットの力の欠片である皐月駆たちを殺し、リゼットの望む奈落落としを阻止するために活動している。
禁書目録聖省 (いんでっくす)
千年の長きに渡って教皇庁の教えに従わない書物を目録化し、禁書として排斥することを目的として作られた、世界最大の魔術機関。ヴァチカンにある。百野栞はここから派遣され、赤い夜を監視するために虹陵館学園へやってきた。
考現学部 (こうげんがくぶ)
広原雪子が設立した現代を考える部活。赤い夜に入ることができるメンバーはすべてこの部に所属している。部活動を装っているが、実態は赤い夜に入って「黒騎士」たちを倒すための集団であり、結束力はあまりない。
場所
赤い夜 (あかいよる)
現実に酷似しているが、現実とは違い皐月駆ら能力者以外は入ることができない場所。滞在時間は一定でなく、唐突に入ることもあれば唐突に終わることもある。このなかで駆たちは「黒騎士」たちに狙われ、戦うことになる。
綾女 (あやめ)
皐月駆たちが呼ぶ「綾女」は略称で、正式名称は「綾女ヶ丘市」。2つの区域がある市で、ひとつは「綾女ヶ丘」と呼ばれる虹陵館学園がある場所、もうひとつは「新綾女」と呼ばれる開発の進んだ都会のことを指す。赤い夜のなかでも、この地域はしっかりと再現されている。
虹陵館学園 (こうりょうかんがくえん)
皐月駆たちが通う学園。綾女の綾女ヶ丘に存在し、通っている生徒もほとんどが近くに住んでいる。赤い夜になっても校舎は再現されており、校舎内で戦うことも多い。特にインウィディア戦では校舎内で戦うことで、中距離戦に適した彼女の能力を抑制した。
開かずの書庫 (あかずのしょこ)
草壁の外法使い、草壁操などが集めた本がそろっている草壁家の書庫のこと。陰陽道の主流から外れ、西洋魔術に走った外法使いがいたため、西洋魔術などに詳しい本も多く存在している。赤い夜は魔術で作られたことから、草壁美鈴がここで調査をした。
その他キーワード
劫の眼 (あいおんのめ)
皐月駆やヴェラードに宿っている目。先読みをし、ひいては望む未来を引き寄せる力を持つ。ヴェラードは、未来を引き寄せる力を持つ代わりにそれを背負う覚悟が必要だと駆に説いた。それ以降、駆はこの目の力を使うこととなる。
闇精霊 (らるゔぁ)
生き物のいない赤い夜を徘徊する化け物。さまざまな種類がおり、皐月駆たちを見ると襲ってくる。赤い夜で見られる黒い月はこの闇精霊の塊で、闇精霊たちの世界への入り口となっている。
草壁五宝 (くさかべごほう)
草壁一族に伝わる秘剣の五剣。元々は草壁七宝だったが、草壁操が2つを持ち出してしまったため、現在は草壁五宝とされている。草壁五宝の名には、元々秘剣が7つあったという事実を隠す意味もある。今は五剣すべてを草壁美鈴が手にしている。
奈落落とし (ならくおとし)
闇精霊の満ちた世界が現実世界とつながり、闇精霊の力が世界に満ちること。それによって、生物は生命活動ができなくなり、生きることが不可能になる。リゼット・ヴェルトールはこれを目的として行動していた。逆に「黒騎士」は、これを阻止するために動いている。
契約の虹 (けいやくのにじ)
「黒騎士」のリーダー、アワリティアが行った秘術。魔術機関「禁書目録聖省」においても禁術とされる、最上位魔法のひとつ。いかなる強大な力を持つ敵であろうとも、その力を7つに分断して、弱体化させる魔術。本来は分断された力の欠片は、魂を持つことができず消滅するのだが、リゼット・ヴェルトールの力は強大で、分断されても皐月駆たちのなかにあり、力を維持し続けている。
クレジット
- 原作
-
Lass
書誌情報
11eyes ―罪と罰と贖いの少女― 3巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第2巻
(2010-05-21発行、 978-4047154544)
第3巻
(2010-09-18発行、 978-4047155046)