世界観
人ならざる者「魔人」に狙われたのがきっかけで「魔人」に対抗する力に目覚めた少女が、仲間とともに「魔人」退治に挑む姿を描くダークファンタジー。ゴシック調で美しい作画と、謎に満ちた、終盤まで先の読めないストーリー展開が魅力。
あらすじ
中学2年生の鷹花スミレは、霊感が強く、普通の人間には見えないものが見える特異体質。さらに名橋ルチアが落としたブローチを拾ったのがきっかけで能力が強化され、化け物「魔人」まで見えるようになってしまう。「魔人」が見えるようになったせいで狙われるようになってしまったスミレは、ルチアとともに「魔人」退治を始めることになる。
メディアミックス
TVアニメ
2007年1月から、TBS系列やKBS京都で木村真一郎監督によるTVアニメ版が放送された。シリーズ構成を山田靖智が務め、鷹花スミレ役を茅原実里、名橋ルチア役を高垣彩陽が演じた。
ドラマCD
2006年10月、フロンティアワークスよりドラマCD版がリリースされた。声優はTVアニメ版とは異なり、鷹花スミレ役を佐藤利奈、名橋ルチア役を生天目仁美が演じた。
登場人物・キャラクター
鷹花 スミレ (たかはな すみれ)
私立銀女学院に通う中学2年生の女子。前髪をM字型に切り、耳の下まで伸ばしたオレンジ色のボブヘアをしている。明るく前向きな性格だが、霊感が強く、幽霊などが見える特異体質。さらに偶然拾った名橋ルチアのブローチの針で指を傷つけたことと、ルチアの誤射によって対「魔人」用の銃弾を受けたことで能力が強化され、本来普通の人間には見えない「魔人」が見え、また対抗する力を持つ「生ける抗体(アンチヴァイアラス)」として目覚める。 これにより「魔人」に命を狙われるようになってしまい、ルチアとともに「魔人」退治を始めることになる。退治には前向きに取り組んでいるものの、一方で突如手に入れた能力に戸惑っており、うまくコントロールできないことに悩んでいる。
名橋 ルチア (なはし るちあ)
「魔人」退治を生業とする「退治屋」の15歳の少女。洋服店「ヴィーナス ヴァンガード」の店主でもある。銀色の前髪を左寄りの位置で斜めに分け、腰まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。父親のリュシフから受け継いだ、「魔人」を可視し、対抗する強力な力を持つ左目を所持しており、力を押さえるため普段は眼帯をしている。 クールで落ち着いた性格だが、幼い頃から強すぎる特異な力により異端視され、孤独な日々を送っていた。そのため、普段は強気にふるまっているが、精神的にややもろいところがある。ある日自分が落としたブローチを回収した鷹花スミレが、ブローチでけがをしたことにより能力が開花し、「魔人」に狙われるようになったことを知る。 そのためスミレに、ともに「退治屋」として活動することを提案する。
名橋 総一郎 (なはし そういちろう)
名橋ルチアの養父で、ともに「魔人」退治を行う年老いた男性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸まで伸ばした白髪を後ろで一つで結んでいる。モノクルをかけて、顎ひげを蓄えている。本名は「榊塚総一郎」だが、博学であることから、ルチアの母親であるリリスに、ヘブライ語で「蛇」の意味を持ち、知識の象徴でもある「ナハシュ」というあだ名で呼ばれるようになった。 現在日本ではその「ナハシュ」をもとにして「名橋」という苗字を名乗っている穏やかで落ち着いた、紳士的な雰囲気の人物。ルチアの強すぎる力を案じ、ルチアを養女として迎えて日本へともに帰国し、現在も武器や眼帯を与えてサポートしている。本来、総一郎自身は「魔人」を見ることはできないが、デーメルから受け取ったモノクルを使って可視化している。
草薙 与識 (くさなぎ よしき)
鷹花スミレが公園で出会った、謎の男子高校生。前髪をM字型に切り、癖のあるショートカットをしている。穏やかで中性的な雰囲気で、大の読書好き。スミレとは出会ってすぐに親しくなり、「魔人」からスミレに助けてもらったことでさらに仲が深まり、恋人のような関係になる。一方で、「魔人」を見ることができたり、スミレには「携帯電話は持っていない」と言いつつ実際は所持していたりと、謎が非常に多い。
ローラ
ライラの双子の妹で、デーメルの養女。前髪を目の上で切りそろえ、腰まで伸ばした淡いピンク色のロングウェーブヘアをツーサイドアップにしている。ライラとは非常によく似ているが、ローラは右目の下にほくろがある。名橋総一郎の依頼により、鷹花スミレと名橋ルチアをサポートするため、外国から日本へやって来た。 機械いじりが得意で、総一郎が制作した武器の改良も行っている。テレパシー能力を持ち、ライラとはテレパシーで離れていても通じ合っているが、ライラが苑果にさらわれてからは以前のように通信できなくなってしまい、ライラの本心がわからず悩んでいる。明るく元気な性格で、好物はチョコレート。
ライラ
ローラの双子の姉で、デーメルの養女。前髪を目の上で切りそろえ、腰まで伸ばした淡いピンク色のロングウェーブヘアをしている。ローラとは非常によく似ているが、ライラは右目の下のほくろはない。ローラとは非常に仲が良く、テレパシー能力を用いて離れていても通じ合っていたが、ある日リュシフと名乗る男にライラだけがさらわれ、以来苑果の配下として暮らすようになった。 クールで気まぐれな性格。
デーメル
とある国で、錬金術とオカルト研究に没頭している年老いた男性。伸ばしっぱなしのぼさぼさの髪をツンツンにはねさせ、顎ひげと口ひげを長く蓄え、眼鏡をかけている。学界からは異端視される変わり者だが「魔人」の研究を続ける貴重な学者であることから、名橋総一郎はデーメルに学ぶため留学を決意した。そのため、総一郎やリリスなど、研究所でデーメルに師事するものはデーメルを「師匠」と呼んでいる。
リュシフ
名橋ルチアの実の父親で、リリスの夫。前髪を目の上で切り、髪全体をツンツンに立てて肩につくほどまで伸ばした髪型をしている。「魔人」を駆除する「退治屋」として活動していたが、ある日業務中にアイオーンと名乗る男に、無理やり身体に「フラグメント」を埋め込まれてしまう。その後は特に問題なく過ごしていたが、ある日「真なる世界 我が手に」という謎の言葉を発しながらリリスを殺害。 その後姿をくらまし、消息不明となっている。
リリス
名橋ルチアの母親で、リュシフの妻。故人。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、腰まで伸ばしたストレートロングヘアを段をつけて切っている。穏やかで柔らかな雰囲気の人物で、名橋総一郎とは彼がデーメルに学ぶため留学してきた際に知り合った。ルチアを出産後、リュシフ、総一郎、デーメルも含めて5人で穏やかな日々を送っていたが、力が暴走したリュシフの手で殺された。
苑果 (そのか)
鷹花スミレ と名橋ルチアの敵。アイオーンの望みである「真なる世界」へたどり着くため、フラグメントを集める活動をしている若い女性。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、オレンジ色の髪の毛をハーフアップにして、後ろに小さく一つお団子を作った髪型をしている。眼鏡をかけている。アイオーンに心酔しており、配下であるガイ、ルカ、ライラのことは仲間ではなく、自らの手駒としか思っていない。
ガイ
苑果に仕える少年。溶岩を操り、自らの体温を炎のように高める力を持つ。前髪を眉上で短く切り、肩まで伸ばして段をつけて切った明るい茶髪のセミロングヘアをしている。両方の眉下から目の下にかけて、ピエロのような一本線のペイントを入れている。軽薄な性格で、常に他人を見下している。
ルカ
苑果に仕える少女。雷を操る力と、襲った人間の意識を奪って自分の身体のように操る力を持つ。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、腰まで伸ばした紫色のストレートロングヘアをしている。上品な雰囲気だが残忍で攻撃的な性格で、目的のためには手段を選ばない。もとは普通の人間だったが、ある日「魔人」に狙われて命を落とし、苑果に助けられたことがきっかけで配下となった。 苑果に従いつつも、アイオーンに心酔する苑果を不気味に感じている。
アイオーン
とある異端派の思想において「真なる神」の名を戴き、「この世を作った神は不完全な悪神で、自らこそが本来の神だ」と主張している存在。不完全な偽物の神が作ったこの世界を、本来あるべき姿である「真なる世界」に作り替えようとしている。「真なる世界」を作るために「フラグメント」を回収しており、精神体となってさまざまな人間の肉体を渡り歩きながら長い時間を生きている。 そのため、決まった容姿を持っていない。
三雲 音々 (みくも ねね)
鷹花スミレの友人で、三雲理久の姉。私立銀女学院高等部に通う2年生の女子。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、肩の下まで伸ばしたセミロングヘアをツーサイドアップにしている。明るく面倒見のいい性格。スミレとは幼なじみで、スミレにとっては姉のような存在。スミレに対しては過保護なところがある。
三雲 理久 (みくも りく)
鷹花スミレの友人で、三雲音々の小学校5年生の弟。前髪をM字型に切ったショートカットヘアをしている。スミレとは音々も含めた3人で親しく、密かにスミレに想いを寄せている。素直でおっとりした性格で、やや音々に振り回されがちなところがある。
ミカ
鷹花スミレ、京子、しずの友人で、私立銀女学院の中等部に所属する女子。前髪をM字型に切り、ふんわりとした癖のあるショートカットヘアに眼鏡をかけている。噂話や恋愛話が大好き。スミレが名橋ルチアと出会って以来、学生寮を出て暮らすようになったりと大きく変化していることが気になっている。
京子 (きょうこ)
鷹花スミレ、ミカ、しずの友人で、私立銀女学院の中等部に所属する女子。前髪を眉上で短く切り、胸まで伸ばして段をつけて切ったストレートロングヘアをしている。ある日ルカに狙われて身体を乗っ取られ、名橋ルチアを襲うために利用されてしまう。
しず
鷹花スミレ、ミカ、京子の友人で、私立銀女学院の中等部に所属する女子。前髪を目の上で切り、肩につかない長さの髪をおさげにしている。ミカと京子に比べるとおとなしいが、「ヴィーナス ヴァンガード」に来店した際には非常にはしゃいでいた。
月夜 (つくよ)
名橋ルチアと名橋総一郎の経営する洋服店「ヴィーナス ヴァンガード」に「魔人」退治の依頼をしに来た幼い少女。前髪を眉の高さで切り、腰まで伸ばしたストレートロングヘアの両サイドに小さく三つ編みを編んだ髪型をしている。双子の兄である陽司が1週間ほど前から「魔人」に狙われており、その恐怖で自室から出られなくなってしまっているのを案じて「ヴィーナス ヴァンガード」にやって来た。 しかし実際の月夜は、すでに殺されて「魔人」化しており、陽司を狙う「魔人」とは月夜自身のことである。まだわずかに自我が残っており、陽司のことを自分自身の魔の手から守りたいと考えている。
陽司 (ようじ)
月夜の双子の兄。前髪を目の上で切ったストレートショートカットヘアをしている。おとなしく人見知りな性格。ある日公園で月夜と遊んでいたところ、月夜が「魔人」に突如殺され、自分だけが助かる形で帰宅した。しかし直後に死んだはずの月夜が戻って来たことに驚愕し、自室にこもっている。死んだはずの月夜が、自分を恨んで殺しに来たと考えており、助けられなかったことを深く後悔している。
真弓 (まゆみ)
名橋ルチアと名橋総一郎の経営する洋服店「ヴィーナス ヴァンガード」に「魔人」退治の依頼をしに来た若い女性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、耳の下まで伸ばしたボブヘアをしている。ある日、考古学者の祖父が残した、真弓宛の「宝物」を取りに祖父の別荘を訪れたところ、建物内に謎の化け物がいるのを目撃する。 そのため、ルチアと鷹花スミレに化け物退治を依頼する。
笹峰 さやか (ささみね さやか)
名橋ルチアと名橋総一郎の経営する洋服店「ヴィーナス ヴァンガード」に「魔人」退治の依頼をしに来た女子高校生。草薙与識と同じ学校に通っている。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばしたウェーブボブヘアをヘアピンでまとめている。高校では図書委員会に所属しているが、蔵書整理で遅くまで作業をしていると、1人でいる時に限っておかしな気配を感じるようになり怯えていた。 これを化け物によるものと考え、ルチアと鷹花スミレに退治を依頼する。
場所
ヴィーナス ヴァンガード
名橋ルチアと名橋総一郎が経営する店。表向きは洋服屋として営業しているが、実際は「魔人」退治の依頼を受け付ける窓口となっている。店のチラシに「魔人」を見ることのできる人間にのみ読める文字が書かれており、「魔人」に悩んでいる人間は、チラシを頼りに店にやって来る。
その他キーワード
魔人 (ゔぁいあらす)
人間の魂を喰らおうとする、悪魔に等しい化け物。もとは人間だったものが、何らかの力により変容した存在。「魔人」は普通の人間には見えず、そのため「視えざる者」とも呼ばれているが、鷹花スミレや、「ヴィーナス ヴァンガード」に訪れる依頼者たちのように、何らかの条件を満たすと見えるようになる。「魔人」に狙われ魂を食べられた者は自らも「魔人」と化し、人間を襲うようになる。
フラグメント
「魔人」を見ることのできる人間の体内にあるエネルギー体。大量に集めることで、「真なる世界」の扉を開く材料となる。創世の日から人間の魂の中に受け継がれてきたものだが、現在では貴重品となりつつある。「星降りの夜」、つまり流星群の日にのみ結晶化し、所持者の身体から回収できることから、苑果たちは、流星群の日に フラグメントを宿す人間を狩る活動をしている。 単体で使用することも可能で、たとえばルカやガイに与えると、力が増幅する。
真なる世界 (しんなるせかい)
アイオーンが提唱した、善悪すら超越した理想郷。 鷹花スミレたちが普段暮らす「物質界」と、「物質界」の下にある「精神界」のさらに下の階層にあると考えられている。創世の力を秘めたエネルギー体である「フラグメント」により「真なる世界」の扉は開かれるため、苑果たちは「フラグメント」の回収を行っている。