A-BOUT!

A-BOUT!

不良達が集まる高校を舞台に、その高校のトップの座を目指す少年と、彼を取り巻く男達の戦いを描いた作品。不良少年達のケンカを主軸に据えながら、随所に時事ネタを含んだギャグも盛り込まれている。「週刊少年マガジン」2009年52号から2013年24号にかけて連載された作品。

正式名称
A-BOUT!
ふりがな
あばうと
作者
ジャンル
不良・ヤンキー
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あらすじ

第1巻

県内外から不良生徒ばかりが集まる光嶺高校の1年のクラスに、朝桐真之輔という転入生がやって来る。朝桐は転入早々、光嶺高校のOBである甲斐を倒した事で一躍有名人となり、光嶺高校の1年生を仕切る砂原竜介は、そんな彼に興味を示すのだった。中朝桐は、同じクラスの瀬下聖矢から柾木千春という男の存在を知らされる。砂原は1年生をまとめて砂原軍団を組織し、3年生の樋口のもとについていたが、柾木は砂原への抵抗を続けていた。そして行きがかり上、柾木を助ける事になった朝桐は、なし崩し的に柾木と組む事になる。砂原は朝桐のもとを訪れて、自分と共に樋口の仲間になるように誘うが、朝桐はそれを拒否。まさに一触即発のその時、3年生の樋口が現れて、砂原と柾木に決着をつけるように告げる。自分が無視された形になった朝桐は、樋口に対して戦いを挑む。

第2巻

砂原竜介の率いる砂原軍団に囲まれた朝桐真之輔は、そこに現れた3年生の樋口のハイキックを受けて失神し、あっさりと敗れ去る。朝桐は、樋口との圧倒的な実力差を見せつけられつつも、柾木千春瀬下聖矢と共に再び樋口に挑む事を決意する。

その後、朝桐達はファミレスで光嶺高校OBの甲斐と再会し、甲斐から樋口の強さを改めて伝えられるが、そこへ砂原軍団が現れ、朝桐達を取り囲む。そして始まる激闘の中、朝桐は砂原軍団の一人が運転する暴走車にひかれて救急車で運ばれてしまう。残った柾木と瀬下は必死に戦うが、そこに現れた砂原に敗北。だが、その場に舞い戻った朝桐はそのまま砂原と対決し、からくも勝利をおさめるのだった。この戦いを通じ、砂原は樋口の配下から抜ける事を決意する。

第3巻

大門寺裕次郎は、光嶺高校樋口派2年生の山城邦男から指令を受け、砂原竜介を倒した朝桐真之輔を襲撃。朝桐はそれを受けてたち、大門寺との戦いに勝利をおさめる。大門寺は敗れたものの朝桐との戦いに満足し、樋口派を抜ける事を宣言する。立て続けに離反者を出した事で、山城ら2年生は朝桐への報復を画策する。その先兵となったのは、かつて柾木千春によって重傷を負わされた2年生の仁宮だった。かつて砂原軍団の一員だった桑村勝夫は、そんな2年生の動きを察知し、砂原に報告するのだった。仁宮の号令で桑村を除くかつての砂原軍団が柾木と砂原を包囲する中、砂原は自身の過去に対するけじめとして、かつての仲間を次々に倒し、柾木もまた仁宮とタイマンの末にこれに勝利する。

一方その頃、この戦いに遅れた朝桐は、東郷という男と出会う。東郷に対してどこか通じるものを感じる朝桐だったが、その東郷は樋口派2年生の一人であった。

第4巻

瀬下聖矢は、山城邦男ら樋口派の2年生から、朝桐真之輔砂原竜介柾木千春の3人を呼び出すように伝えられる。樋口派から離反したため制裁を受けた大門寺裕次郎の姿を見せられながらも、瀬下は仲間を売らないと宣言し、山城らに叩きのめされて病院送りにされてしまう。そんな瀬下の姿を見た朝桐は、彼の仇を討とうと山城達が待ち受ける廃工場へ向かう。さらにそこへ情報を聞きつけた砂原や柾木、大門寺も合流する。砂原は大勢の樋口派1年生を次々と倒し、朝桐もまた山城を倒すが、そこへ樋口派2年生の東郷が姿を現す。瀬下の仇討ちのために戦う朝桐と、その朝桐に山城を倒された東郷の戦いは、紙一重の差で朝桐の勝利に終わるのだった。

第5巻

東郷を倒した事でさらに名を売った朝桐真之輔は、多くのヤンキーから狙われる立場となった。そんなある日、朝桐は、ロックスターになるという夢を持つ修豪高校加藤一茶志村賢太郎の二人に出会い、交遊を深めていく。だが、二人を「殿」と慕う修豪高校の田城雅功は、いきなり現れて二人と親しくなった朝桐の事が気に入らず、朝桐の名をかたって、よくない噂を流そうと画策。しかし、そこへ朝桐を狙うチーム「LSD」のメンバーが現れ、田城を朝桐と誤解して襲撃する。加藤と志村は重傷を負った田城の仇討ちに向かうが、田城を「LSD」の降井拓也に人質にとられ、返り討ちにされてしまう。降井は次いで光嶺高校を狙い、手始めに朝桐を血祭りにあげると宣言する。夜の光嶺高校を舞台に、朝桐とその仲間達は、降井ら「LSD」のメンバーを迎え撃つ。しかし朝桐達は、数で勝る「LSD」の前に少しずつ劣勢へと追い込まれていく。そんな中、勝利を確信する降井達の前に、樋口と、彼の率いる樋口派の生徒達が姿を現す。

第6巻

LSD」のメンバー達は、樋口の威圧感に圧倒されるが、朝桐真之輔は「LSD」との戦いは自分達でケリをつけると、樋口に手を出さないよう告げる。それを了承した樋口の目前で、朝桐は降井拓也とのタイマンに臨み、死闘の末に勝利をおさめる。降井が敗れた事で総崩れとなった「LSD」は、樋口派によって壊滅させられる。残された降井は、かつて自身をいじめていた徳武と共に再び「LSD」を再建する事を誓うのだった。

「LSD」の襲撃から一夜明けた翌日、光嶺高校では3年生の童門醍醐が樋口に対し、自分を「LSD」の襲撃に呼ばなかった事や、「LSD」の本部を叩かない事を問いただしていた。その頃、朝桐はひょんな事から光嶺高校の1年生、綾瀬遥と出会い、綾瀬が樋口派である事から臨戦態勢となる。さらにそこに童門派の1年生、紫兵治が登場し、綾瀬とは違った立場ながら、同じく朝桐の首を狙っている事を告げるのだった。

第7巻

朝桐真之輔を倒す事を共通の目的とする綾瀬遥紫兵治は、帰宅途中の朝桐を同時に奇襲する。そのまま三つ巴の戦いへと突入するが、警察の介入により決着はつかず、勝負は持ち越される事になった。その勝負の場として、紫は町外れにある廃工場を選択。朝桐は立会人の瀬下を伴って紫の待ち受ける廃工場に向かい、綾瀬もまた自身の盟友である古舘と共に現れる。だが、そこへ砂原竜介柾木千春も登場する。この戦いが光嶺高校の1年生最強を決める決定戦だと考えた砂原と柾木は、自分達も参戦すると宣言。さらに1年生最強決定戦の情報を聞きつけた六田正蔵喜多島光男和田亜希彦など、腕自慢が次々に集結していく。こうして、本当に1年生最強決定戦が行われる事となった。トランプのカードを順番に引き、強いカードの順にタイマンをするというルールが紫の提案により決められ、キングのカードを引いた柾木とエースのカードを引いた風間八尋の戦いが始まる。

第8巻

柾木千春は死闘の末に風間八尋を倒す。次は砂原竜介綾瀬遥の対決となった。砂原はかつて樋口のもとで砂原軍団を結成し、樋口派1年を仕切る立場だったが、朝桐真之輔に敗れてからは樋口のもとを離れていた。かたや綾瀬は現在も樋口派として、砂原に代わって1年生を仕切る立場となっていた。互いに似た立場を経験しながらも、主張の異なる二人の対決は熾烈を極める。かろうじて綾瀬を倒した砂原に、朝桐はこの戦いが砂原をさらに強くする事を予感する。しかし、その朝桐は、自身の対戦相手である喜多島光男の実力が、ほかのメンバーよりも落ちる事を不服として対決を拒み、その代わりに戦った瀬下聖矢が勝ち残ってしまう。勝ち残った砂原達は1年生最強決定戦を仕切り直す事を提案し、その夜に再び廃工場で落ち合う事を決める。そんな中、結果的にこの戦いからあぶれてしまった朝桐は、同じく決定戦に間に合わなかった大門寺裕次郎や敗北した喜多島らと共に、1年生最強決定戦そのものを潰そうと考える。

第9巻

1年生最強決定戦の決勝戦が開かれる、夜の廃工場へ向かう途中、柾木千春は「LSD」の降井拓也と出会う。そして降井から、自分達とは別の支部が光嶺高校を潰すために動いている事、それを主導しているのが光嶺高校3年生の吉岡である事を知らされる。その頃、廃工場では柾木抜きで1年生最強決定戦が始まろうとしていたが、そこへ「LSD」のメンバーと共に吉岡派1年生の佐士修平が現れる。混戦となる廃工場にさらに吉岡が登場し、自分を追いかけて来た柾木とそれに加勢する砂原竜介を撃退する。しかし、そこへ光嶺高校3年生の童門醍醐天知多聞が到着。「LSD」共々吉岡派のメンバーを倒していく。そのまま童門は天知を立会人として、タイマンの末に吉岡を倒す。これによって「LSD」と吉岡派は退散。あとに残った朝桐真之輔らは、1年生最強決定戦の決勝戦を開始し、どさくさまぎれに戦線に復帰して紫兵治を倒した朝桐と、六田正蔵を倒した砂原による最終決戦が行われる事となる。

第10巻

光嶺高校の1年生最強決定戦に勝利をおさめた朝桐真之輔は、砂原竜介柾木千春らを集めて、暇つぶしと称してカンケリに興じていた。そのさなか、砂原は柾木に、北条という男の思い出を語る。砂原と柾木は、かつて北条の舎弟だったが、その北条は樋口に敗れてこの町から去ったといわれていた。後日、北条がこの町に戻って来ているという情報をつかんだ砂原と柾木は、かつて北条の友人だった川地に会いに行くが、川地は北条に合わせる顔がないとだけ答え、空振りに終わってしまう。そんな中、砂原と柾木を追っていた朝桐は、楷統高校のヤンキー生徒と小競り合いを起こし、新たな火種を作る事となる。その頃、かつて朝桐に敗れた「LSD」の降井拓也は、徐々に勢力を拡大させている奇妙なヤンキーチームの噂を聞きつけていた。

第11巻

朝桐真之輔は、ひょんな事から北条と出会う。砂原竜介柾木千春から何度もその名を聞かされてきた朝桐は、初対面ながら北条と打ち解ける。北条は自分を慕う砂原や柾木とも再会、久しぶりの北条の姿に砂原と柾木も笑顔を見せるのだった。そんな折、ヤンキーチームが次々と壊滅させられているという情報を得た「LSD」の降井拓也徳武は、犯人を探す途中、逆に包囲されてしまう。そこに通りがかった東郷は、降井と共にその包囲を突破し、一連の事件の裏に「顔にキズのある男」が関係している事を知る。さらに楷統高校川地もまた、「チームイーター」という謎の集団に襲われ、重傷を負わされる。一方、北条の顔にもキズがある事を知った砂原と柾木は北条を問いただし、それに対して北条は自分が「チームイーター」の首謀者であり、次のターゲットが光嶺高校である事を告げるのだった。

その後、砂原と柾木から北条が敵となる可能性を伝えられた朝桐達の前に、「チームイーター」の襲撃を切り抜けた東郷が現れる。朝桐は過去に北条の身に何があったのかを東郷に尋ねるが、東郷は当事者である樋口に聞くように告げ、朝桐に樋口の居場所を伝える。

第12巻

北条との因縁を聞き出すため、朝桐真之輔樋口と会うが、そこへ久葉有八の率いる「チームイーター」のメンバーが襲撃してくる。朝桐と共に応戦する樋口だったが、久葉の不意打ちで腹を刺され、さらに騒ぎを聞きつけた警察によって連行されてしまう。同じ頃、砂原竜介柾木千春が北条のもとについた事を告げられ、北条の目の前で柾木とのタイマン勝負に臨む。互角の実力を持った砂原と柾木の決着はつかなかったが、北条が柾木に代わって砂原を倒し、その場を去っていく。

かろうじて「チームイーター」から逃げ延びた朝桐は、たまり場であるファミレス「ジェニーズ」で砂原と再会し、改めて北条や「チームイーター」と戦う意思を確認する。さらに、樋口が刺されたという事実を知った光嶺高校の1年生達も「ジェニーズ」へ集まって来る。朝桐は北条に連絡を入れて「チームイーター」への宣戦を布告し、それを受けた北条は建設中のビルへ朝桐を呼び出す。しかし、現場へ向かった朝桐達は、「チームイーター」に包囲されてしまう。

一方、光嶺高校では童門醍醐や天地多聞らも樋口が刺された事件を知り、「チームイーター」を潰すために派閥の垣根を超えて動き出していた。

第13巻

チームイーター」に包囲された朝桐真之輔らは、さらに敵の別働隊が東郷光嶺高校の樋口派を襲撃している事を知り、修豪高校加藤一茶志村賢太郎に東郷の救出を依頼する。それを受けて東郷の援軍に向かった加藤と志村は「LSD」の降井拓也と遭遇。互いに過去に因縁のある相手だったが、「チームイーター」という共通の敵を前に共闘を誓う。

一方、かろうじて「チームイーター」の包囲を突破した朝桐達は、北条の待ち受ける建設中のビルにたどり着くが、そこで彼らを待っていたのは北条だけでなく「チームイーター」の本隊だった。北条は朝桐と瀬下聖矢砂原竜介大門寺裕次郎の四人に対し、ここにいる全員とタイマンで勝利すれば自分が相手になると告げる。朝桐達は次々に現れる「チームイーター」のメンバーを倒していくが、そこへ北条の側についた柾木千春が現れる。朝桐は死闘の末に柾木を倒すがダメージは大きく、昏倒してしまう。さらに大門寺と瀬下も「チームイーター」のリーダー格である久葉有八に敗れ、残ったのは砂原だけとなる。

その頃、久葉に刺されて入院していた樋口は、病院を抜け出して自身のけじめをつけるために北条のもとへと向かっていた。

第14巻

光嶺高校勢の最後の一人となった砂原竜介に対し、決着をつけるべく北条は自ら相手になると告げる。だが実力差は歴然としており、砂原はあっという間に倒されてしまう。そこへ病院から抜け出して来た樋口が現れ、さらに「チームイーター」の別働隊を撃破した東郷ら樋口派、そして光嶺高校3年生の吉岡童門醍醐、天地多聞が合流する。こうして、「チームイーター」と光嶺高校はついに正面から全面対決する事となった。その中で樋口は自身を刺した久葉有八を倒すが、刺された傷口が開き、北条にたどり着く前に倒れてしまう。だがそこに朝桐が復活し、北条とのタイマンに臨む。そんな朝桐に柾木は、北条の脳には度重なる激闘から深刻なダメージが残っており、次に頭に衝撃を受ければ命に関わる、という事実を告げる。それでも北条に向かっていく朝桐は、北条の強烈な攻撃を受けながらも何度も立ち上がり、渾身の力を込めたパンチを北条の胸に叩き込む。朝桐のパンチを受けた北条は、こんな自分を今でも慕う砂原と柾木の気持ちに応え、自らの敗北を認めるのだった。

第15巻

朝桐真之輔に敗れた北条は再び町を去った。そして光嶺高校では、「チームイーター」との抗争をおさめたのが3年生ではなく、1年生の朝桐であるという噂が大きく広がっていた。それは、朝桐を倒す事で名を上げた者は同時に2年生や3年生をも超える事を意味した。光嶺高校はこれまでになく荒れ、力のない者が次々と学校を去っていく。そんなある日、童門派の島村発と出会った朝桐は彼に気に入られ、童門醍醐と引き合わされる。「チームイーター」の一件から朝桐の事を認めていた童門は、朝桐の童門派への加入を歓迎するが、童門派である紫兵治風間八尋は、朝桐という爆弾を抱えた事に不安を感じるのだった。折しも、童門派の2年生である番場が、覆面をかぶった謎の集団に襲撃され、重傷を負わされるという事件が発生。番場はこの襲撃を東郷ら樋口派によるものと断定し、樋口派と童門派との全面対決が勃発する事となった。

第16巻

砂原竜介柾木千春の二人は、光嶺高校内で覆面をかぶった男達の襲撃を受ける。その中に吉岡派の佐士修平がいる事に気づいた二人は、この騒ぎが吉岡派によるものである事を知る。だが、その直後に現れた吉岡派2年生の中後恭司によって砂原と柾木は倒されてしまう。さらに中後は童門派の風間八尋をも倒し、それを樋口派によるものと見せかけて童門派と樋口派の抗争をあおる。その頃、砂原と柾木がやられた事を知った朝桐は、瀬下聖矢や童門派の島村発と共に吉岡のもとへ向かい、そこにいた中後と対決するが、決着がつく前に逃げられてしまう。

一方、童門派と樋口派の対立は激化の一途をたどっていた。そんな中、腹を刺されて入院していたはずの樋口が現れ、全員校舎から出るよう叫ぶ。そのまま樋口は童門醍醐と決着をつけるべく校舎へと入って行き、それを知った朝桐も樋口を追いかける。

第17巻

樋口を追っていた朝桐真之輔は、その中で吉岡と遭遇する。朝桐よりも先に樋口を倒そうと考える吉岡は、朝桐と激しくぶつかりあう。そんな中、中学時代からの童門とのライバルである天地多聞、混乱に乗じて光嶺高校のトップに立とうと目論む中後恭司、そして中後へのリベンジを果たすべく病院から抜け出してきた砂原竜介柾木千春も、校舎へと入っていくのだった。

樋口を待ち受ける童門の前に最初に現れたのは天知だった。童門と天知は中学時代から何度も戦った相手であり、光嶺高校で決着をつけると誓っていた。その誓いを果たすべく、二人は激しい戦いに身を投じる。

第18巻

光嶺高校の校舎内で中後恭司と出会った砂原竜介柾木千春は、見事にリベンジを果たす。そして朝桐真之輔もまた吉岡との激闘を制し、吉岡は3年生でありながら1年生の朝桐に負けを認める。これからの戦いで光嶺高校のトップが決まると予感する吉岡は、朝桐を連れて樋口のもとへと向かう。その頃、樋口は、屋上で天知多聞に勝利した童門醍醐とのタイマン勝負に臨んでいた。互いに派閥の長である樋口と童門の戦いは、敗北がすなわち派閥の消滅につながるものであった。

第19巻

樋口童門醍醐との戦いに勝利し、これで光嶺高校最強は樋口となった。朝桐真之輔は、そんな樋口の強さを認めつつも、光嶺高校最強となった樋口に戦いを挑む。だが、これまでの光嶺高校では、1年生がいきなり3年生とやりあうなど、かつてはあり得ない事だった。朝桐は、3年生の吉岡を倒している自分にはその資格があると主張するが、樋口と童門の頂上決戦を見守っていたほかの生徒達は朝桐を認める事ができない。ついに朝桐は、そんな光嶺高校のルールにはついていけないと「退学」を宣言し、あくまでも樋口との決着をつけようとする。一方の樋口は光嶺高校のルールに基づき、「よそ者」を排除するために朝桐との対決を了承する。こうして、朝桐と樋口との最終決戦が始まった。

登場人物・キャラクター

朝桐 真之輔 (あさぎり しんのすけ)

光嶺高校に転入して来た1年生の男子。基本的にわがままで自分勝手な性格だが、仲間と認めた者に対しては不器用ながらも友情を示す事から、多くの男達の心をつかんでいく。やや淋しがり屋な一面もあり、何かと理由をつけては砂原竜介達を呼び出し、たまり場としているファミレス「ジェニーズ」に集まっている。ケンカの実力が非常に高く、光嶺高校最強の座を目指している事もあり、光嶺高校内外を問わず狙われる事が多い。

砂原 竜介 (すなはら りゅうすけ)

光嶺高校に通う1年生の男子。中学時代に尊敬していた北条が光嶺高校の樋口に敗れた様子を目の当たりにし、自身も光嶺高校へ入学した。一時は樋口の下で1年生をまとめあげて砂原軍団を組織していたが、朝桐真之輔との戦いに敗れて以降は彼と行動を共にするようになる。その後は「カッコイイ」とはどういう事か、という不良美学を求めるようになり、のちに敵対していた柾木千春と共に、「最凶コンビ」として朝桐をもり立てる存在へとなっていく。

柾木 千春 (まさき ちはる)

光嶺高校に通う1年生の男子。かつては砂原竜介とは親友ともいえる間柄だったが、光嶺高校で樋口のもとについた砂原を見限り、一匹狼としての立場を貫いていた。朝桐真之輔と出会い、砂原との友情を取り戻したあとは、砂原と共に「最凶コンビ」となり、朝桐のよき仲間として活躍する。つねにナイフを持ち歩く危険な人物だが、朝桐や砂原達と触れ合ううちに少しずつ心境に変化が現れ、特に朝桐に対しては強い仲間意識を持つようになる。

瀬下 聖矢 (せした せいや)

光嶺高校に通う1年生の男子。砂原竜介とは同じ中学の出身だが、目立たないように高校生活を送りたいと考えていたため、砂原が組織した砂原軍団に加入する事はなかった。鼻の穴が大きい事から、朝桐真之輔からは「ハナノアナ」というあだ名を付けられている。地味な性格と風貌ながら、ケンカの実力はなかなかのもので、柔道やボクシングなどの格闘技にも精通している。

大門寺 裕次郎 (だいもんじ ゆうじろう)

光嶺高校に通う1年生の男子。夏でも長ランを着込み、髪型はリーゼントという前世代の不良を地でいくスタイルだが、ケンカの実力は1年生の中でも屈指の強さを誇る。ファミレス「ジェニーズ」でキッチン担当のアルバイトをしており、大門寺裕次郎の作るジャンバラヤは朝桐真之輔をはじめ客からも人気が高い。自身を慕う二人の生徒と共に大門寺軍団を結成し、日々、男を磨くための修行をしている。

桑村 勝夫 (くわむら かつお)

光嶺高校に通う1年生の男子。かつては砂原軍団の一員として砂原竜介の下についており、軍団が解散したあとも砂原の事を慕っている。光嶺高校の1年生の中ではそれなりの強さを誇っているが、やられ役としての描写が多く、桑村勝夫本人もそれを自覚している。朝桐真之輔とは馬が合わずつねにケンカばかりしているが、朝桐の強さそのものは認めており、彼をさりげなくフォローする事も多い。

樋口 (ひぐち)

光嶺高校に通う3年生の男子。樋口派という派閥をまとめ、光嶺高校では「帝王」との異名を取る。光嶺高校の中では最強の一角であり、その名前は光嶺高校のみならず周辺の高校や地域にまで轟いている。自分が認めた相手としかケンカをせず、またいざ戦う際には、相手とのあいだに実力差があっても手を抜く事はしない。

東郷 (とうごう)

光嶺高校に通う2年生の男子。樋口派に所属する。樋口に次ぐNo.2の実力者。上下関係を重んじる性格で、樋口からの信頼も厚く、後輩達からの人望も高い。顔面にパンチの直撃を受けても、まるでひるまないタフネスぶりを誇り、「不死身」の異名を取る。自分勝手な人間である朝桐真之輔が「さん」付けで呼ぶ数少ない人物。

山城 邦男 (やましろ くにお)

光嶺高校に通う2年生の男子。樋口派に所属する。2年生の中では実力者の一人。ケンカの腕前は同じ2年生の東郷に劣るものの、樋口派の1年生に指示を出すなど、実行部隊を率いる立場として、周囲から一目置かれる存在。東郷とは意見が対立する事も多いものの、1年生の頃からの友人として共に樋口を支えている。

仁宮 (にみや)

光嶺高校に通う2年生の男子。樋口派に所属しているが、同じ派閥のメンバーに対してもお構いなしに攻撃する事から、樋口派の中で最も危ない人物と目されている。かつて柾木千春によって体に火傷を負わされており、その治療のために体中に巻いた包帯姿がトレードマークとなっている。

綾瀬 遥 (あやせ はるか)

光嶺高校に通う1年生の男子。自身の兄も光嶺高校の出身で、その兄が樋口の先輩だった事もあり、樋口派に名を連ねている。中学時代には100人以上もの人間を従えた軍団を結成し、周辺地域では有名な存在だった。かつては仲間の事を顧みない性格だったが、ケンカの際に自身をかばって重傷を負った古舘の姿を見て改心し、その後は古舘と共に光嶺高校のトップの座を狙っている。

古舘 (ふるたち)

光嶺高校に通う1年生の男子。綾瀬遥の相棒であり、綾瀬が光嶺高校に入学する以前からの付き合い。綾瀬を立てるために、つねに一歩引いたところから物事を見ている。光嶺高校に入学したのも、自身がトップの座を狙うのではなく、綾瀬のサポートをする事が目的。中学時代にケンカで綾瀬をかばって目に重傷を負っており、目の保護のためにつねにサングラスをかけている。

童門 醍醐 (どうもん だいご)

光嶺高校に通う3年生の男子。中学時代から名の通ったヤンキー。バット1本だけで自動車を解体するほどの格闘能力を持っている事から、「破壊王」の異名を取る。光嶺高校の3年生の中では樋口と双璧をなす存在だが、樋口が恐怖により派閥をまとめているのに対し、童門醍醐は自らの人望で派閥を率いているという違いがある。

島村 発 (しまむら はつ)

光嶺高校に通う2年生の男子。童門派に所属している。ロードバイクが趣味で、通学はもちろん、ケンカの現場にもロードバイクで駆けつける。童門醍醐は同じ中学の先輩にあたり、童門に誘われる形で光嶺高校に入学した。童門派の後輩に、自分の事を「ジョゼ」と呼ばせるなど、奇妙な言動が目立つものの、基本的に後輩思いの優しい性格。

番場 (ばんば)

光嶺高校に通う2年生の男子。童門派に所属し、派閥の中では童門に次ぐNo.2的存在。童門から信頼を得ているほか、後輩達からも何かと頼りにされており、両者の板挟みになって悩む事も多い。異なる派閥ながら似たような立場の東郷とは、互いに認め合う関係でもある。

紫 兵治 (むらさき へいじ)

光嶺高校に通う1年生の男子。中学時代に童門醍醐が暴れる姿を見て、彼の持つ強烈な存在感に惹かれて光嶺高校に入学した。1年生とは思えない貫禄のある風貌の持ち主で、その風格は、童門の後輩である番場をして童門以上と言わしめるほど。同じ派閥ではないが、大門寺裕次郎とは通じるものがあるのか、仲がいい。

風間 八尋 (かざま やひろ)

光嶺高校に通う3年生の男子。童門派に所属しており、紫兵治とは盟友。血の気の多い生徒ばかりの光嶺高校の中では珍しい知的な人物で、ケンカにおいても理詰めで相手を攻撃する戦法を得意とする。風間八尋自身にはない「野性」を持った紫や柾木千春に興味を抱いており、彼らに勝利する事でその「野性」を自分のものにできるのではないかと考えている。

天知 多聞 (あまち たもん)

光嶺高校に通う3年生の男子。普段は物静かな人物だが、ケンカの実力は高い。六田正蔵以外に部下を従えず、派閥を持たない特異な存在である事から「恐竜」との異名を取る。かつては多くの仲間と共に光嶺高校のトップを目指していたが、ある事件がきっかけて仲間をすべて失い、それ以降は派閥を作る事なく一人で行動していた。

六田 正蔵 (ろくだ しょうぞう)

光嶺高校に通う1年生の男子。九州から引っ越して来たばかりの頃に天知多聞と出会い、天知のもとで男を磨く事を決意して光嶺高校に入学した。派閥を作る事をよしとしない天知の下につき、唯一の天知派として活動している。1年生ではあるが、その実力は2年生クラスとも評され、実際に戦った砂原竜介もそのケンカの実力を認めるほど。

吉岡 (よしおか)

光嶺高校に通う3年生の男子。樋口とはかつて同じ派閥に所属し、相棒同士ともいえる関係だった。3年に進級すると同時に樋口と袂を分かち、自身の派閥を立ち上げた。罠や策略を張り巡らせ、最終的に自分が勝つために手段を選ばない性格から「無法者」と呼ばれている。相手が素手であっても、鉄パイプなどの凶器を持ち出す事で周囲からも恐れられている。

喜多島 光男 (きたじま みつお)

光嶺高校に通う1年生の男子。吉岡にあこがれ、和田亜希彦と共に吉岡派に加入した。主に和田とコンビを組んで活動するが、吉岡派の佐士修平からは見下されており、決して立場がいいとはいえない。1年生最強決定戦では瀬下聖矢に敗れ、その後は和田と共に最強決定戦を潰すために画策する。

和田 亜希彦 (わだ あきひこ)

光嶺高校に通う1年生の男子。吉岡とは同じ中学の後輩であり、彼にあこがれて吉岡派に加入した。主に喜多島光男とコンビを組んで活動するが、吉岡派の佐士修平からは見下されており、決して立場がいいとはいえない。ケンカの実力もかなり低く、死んだふりをして相手を不意打ちをするというのが主な戦法。

佐士 修平 (さじ しゅうへい)

光嶺高校に通う1年生の男子。吉岡派に所属している。吉岡派の1年生をまとめる存在。1年生最強決定戦には参戦する事はなく、吉岡の策略で「LSD」と共に朝桐真之輔達を襲撃した。同じ吉岡派である喜多島光男や和田亜希彦の事は仲間とは思っておらず、吉岡派がのし上がっていくための捨て駒として考えている。

中後 恭司 (ちゅうご きょうじ)

光嶺高校に通う2年生の男子。吉岡派に所属している。派閥の長である吉岡に対する忠誠心はなく、むしろ自分が光嶺高校でのし上がっていくための存在として利用している。つねにトンファーやスタンガンなど複数の凶器で武装しており、ケンカの際にはこれらの凶器を用いて戦う。ただし、基本的なケンカの実力も高く、素手でも相当な強さを誇る。

甲斐 (かい)

光嶺高校OBの男性。樋口ら現在の3年生よりも1歳年上で、朝桐真之輔が転入して来る1年前に光嶺高校を卒業した。卒業までに半数以上がやめていくという光嶺高校にあって、3年間無事に過ごして卒業した事で半ば伝説となっている人物。光嶺高校に転入初日の朝桐とケンカして敗れるが、樋口には、光嶺高校を卒業した事が弱さにつながったとその理由を分析されている。

加藤 一茶 (かとう いっさ)

修豪高校に通う1年生の男子。相棒の志村賢太郎とセットで「カトケン」と呼ばれている。志村と組んでロックスターになる事を夢見ており、主にボーカルを担当する。ケンカの実力も高く、「豪腕」といわれるほどの強さを誇る。自分と志村の夢を前向きに認めてくれた朝桐真之輔の、よき仲間となる。手下の田城雅功には「殿」と呼ばれている。

志村 賢太郎 (しむら けんたろう)

修豪高校に通う1年生の男子。相棒の加藤一茶とセットで「カトケン」と呼ばれている。加藤と組んでロックスターになる事を夢見ており、主にギターを担当する。ケンカでは高速で数十発のパンチを繰り出す事から「爆撃機」と呼ばれる。自分と加藤の夢を前向きに認めてくれた朝桐真之輔のよき仲間となり、朝桐のためであれば体を張る事もいとわない。 手下の田城雅功には「殿」と呼ばれている。

田城 雅功 (たしろ まさとし)

修豪高校に通う1年生の男子。入学した初日に加藤一茶と志村賢太郎にシメられ、それ以降彼らを「殿」と慕っている。悪人ではないものの調子に乗りやすい。朝桐真之輔の名をかたって、彼の評判を落とそうとした事が裏目に出て、「LSD」によって重傷を負わされてしまう。

三角 形一 (みすみ けいいち)

修豪高校に通う男子高校生で1年生。頭の形が三角形である事から、朝桐真之輔からは「オニギリ」と呼ばれる。三角形一本人はヤンキーではなく一般生徒だが、朝桐と知り合いになった事で、彼らのたまり場でもあるファミレス「ジェニーズ」にたびたび呼び出されている。砂原竜介や柾木千春をはじめとする朝桐のヤンキー仲間とも、それなりに馴染んでいる。

降井 拓也 (ふるい たくや)

ヤンキー集団「LSD」メンバーの男性。かつて光嶺高校で東郷と同級生だったが、2年生に進級する前に中退した。中学時代は徳武から日常的ないじめを受けており、その反動から徳武を半殺しにした。それからは、不良として上を目指すのと同時に、かつてのようにいじめられるのではないかという不安を抱えている。自らの傘下におさめるために光嶺高校に戦いを挑むが、朝桐真之輔に敗れる。

徳武 (とくたけ)

ヤンキー集団「LSD」メンバーの男性。降井拓也とは中学時代の同級生であり、日常的に降井に暴力を振るっていじめていた。その反動から降井に半殺しにされたあとは、舎弟のような存在となっている。いつか降井が誰かにやられるところを見るために彼と行動を共にしていた。しかし、自分でも知らないうちに降井に奇妙な友情を感じるようになっており、朝桐真之輔に敗れた降井に再起を促した。

川地 (かわじ)

楷統高校に通う3年生の男子。北条とは違う高校ながら馬が合い、よくいっしょに行動していた。しかし、ある事件がきっかけで北条を裏切ってしまい、彼に対する罪の意識から距離を置いていた。楷統高校ではトップを張る存在ながら、血の気の多い後輩からはつねに下克上の機会を狙われている。

北条 (ほうじょう)

「チームイーター」の創始者。砂原竜介や柾木千春の兄貴分だった男性。かつて光嶺高校の生徒であり、樋口とも友人だったが、楷統高校との抗争時に川地をかばった事で樋口達から制裁を受け、光嶺高校を去る。その後は少年院に入り、そこで出会った久葉有八と共に「チームイーター」を結成。多くの高校やヤンキーチームを従え、光嶺高校に勝つための組織を作り上げる。

久葉 有八 (きゅうば ゆうや)

「チームイーター」のリーダー格の男性。北条とは少年院で出会い、光嶺高校への復讐を目論む北条と意気投合した事から、出所後に「チームイーター」を結成した。ケンカの相手には、自分に対する恐怖心を刻みこむ事を信条とする。そのため、自分の事を恐れない相手に対しては必要以上に攻撃を加える事から、「チームイーター」の中でも恐れられている。

集団・組織

LSD (るなてぃっくせぶんどーるず)

降井拓也や徳武が所属するヤンキー集団。数多くの支部を持ち、各地のヤンキーチームや高校を制圧して勢力圏を拡大している。その事から、その報復で各支部が狙われる事も多い。メンバーの中には降井をはじめ光嶺高校の関係者も多く、光嶺高校とはつねに緊張状態にある。

チームイーター

北条が、各地のヤンキーチームのメンバー全員とタイマンを張るという手法で結成したヤンキー集団。タイマンに敗北したチームを飲み込んで大きくなった事で、「チームイーター」と名乗るようになった。メンバー全員が北条に心酔しており、メンバーの人数の多さもさる事ながら固い結束力を持つ。

場所

光嶺高校 (みつみねこうこう)

私立の高校。県内外から多くのヤンキー生徒が集まる不良の巣窟。そのため各地のヤンキー達のあいだでもその名が轟いており、光嶺高校で不良のトップの座を目指す者も多い。その反面、学校生活は熾烈を極め、卒業までの3年間で半数以上が退学するほど。この高校の校門をくぐる事ができるのは、光嶺高校の生徒だけという独自のルールがあり、そのルールを破った者はOBであってもただでは帰る事ができない。

修豪高校 (しゅうごうこうこう)

進学校だが、光嶺高校ほどではないまでも、ヤンキー生徒がそれなりにいる高校。加藤一茶や志村賢太郎が通う高校で、周囲のヤンキーからも一目置かれる彼らの存在により、修豪高校の名前が話題にのぼる事も多い。

楷統高校 (かいとうこうこう)

光嶺高校からは駅をはさんだとなりの町にある高校。光嶺高校の傘下にある高校だが、楷統高校の生徒達はつねに光嶺高校に逆襲する機会をうかがっている。現トップの川地をはじめ、生徒達一人一人の実力も光嶺高校に勝るとも劣らない猛者がそろっている。

ジェニーズ

朝桐真之輔が仲間達とのたまり場として利用しているファミレス。大門寺裕次郎が、光嶺高校に通っているという素性を隠して、キッチン担当のアルバイトをしている。朝桐がたまり場にしているという事もあり、ヤンキー同士のケンカの戦場となる事も多い。

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