世界観
湾港都市であるリブラシティは、橋一つを挟んで、富裕層の居住区であるアッパーと、貧困層の居住区であるアウトサイドに分かれている。アッパーの住人たちはアウトサイドの住人や、アウトサイドで起こる事件にいっさい興味がなく、かかわることもない。そのため、アウトサイドの住人たちもアッパーの住人たちを嫌悪している。リブラシティは見えざる議会という謎の組織が裏からあやつっており、反抗勢力の暗殺のほかにベムたちとは違う、人間を改造した妖怪人間を生み出している。
あらすじ
第1巻
アッパーからアウトサイドに左遷された女性刑事のソニア・サマーズは、スリや窃盗、いじめが平然と行われているアウトサイドの様子に辟易していた。司法が正しく機能していないことに憤りを覚えるソニアは、スリ犯を追う中で、超人的な身体能力を持つベムと出会う。その直後、水が満たされていない場所で溺死しているスリ犯を発見し、アウトサイドでは日常的に非人間的な事件が起こっていることに呆然とする。
第2巻
アウトサイドでは、若い女性ばかりが高圧電流で黒焦げにされて殺害される事件が頻発していた。殺害方法が高圧電流という点から、ソニア・サマーズはベムの犯行ではないかと考えはじめる。一方のベムたちは、現場に死体と共に残されていた「怪物よ、お前の運命は俺のもの」というメッセージが、自分たちへ向けた挑戦状ではないかと考えていた。
TVアニメ
本作『BEM』は、TVアニメ『BEM』を原作としている。こちらは、TVアニメ『妖怪人間ベム』のリメイク作品で、2019年夏にテレビ東京系列で放送された。内容は漫画版『BEM』とほぼ同一だが、犯罪描写やキャラクターの心理描写がより細かくなっている。ベム役を小西克幸、ベラ役をM・A・O、ベロ役を小野賢章が演じている。
登場人物・キャラクター
ベム
もともとは妖怪として生まれ、人間にあこがれている妖怪人間。人間に擬態している時は黒いジャケットに白いボトムス、ハットを身につけ、ステッキを所持した成人男性の姿をしている。妖怪の時は肌が全体的に茶色く、脳を露出したような頭部だけが黄色い。大きな手足には指が3本ずつあり、腕と脚が長い。人間を助けることで、ベム自身も人間になれると信じている。高圧電流をあやつることができ、心肺停止状態の人間に対する心臓マッサージとしても使用される。ベラ、ベロに対しては父親のように接している。見えざる議会からは「アルファ」と呼ばれている。
ベラ
もともとは妖怪として生まれ、人間にあこがれている妖怪人間。人間に擬態している時は腰まで伸びたストレートの赤い髪を、左サイドのみアップにした、女子学生の姿をしている。10年前、息絶える寸前のメアリ・ラッセルに出会って、メアリの容姿をそのまま模している。妖怪の時は肌が全体的に紫色で、ウェーブがかった長い赤い髪が生えた、成人女性を思わせる姿をしている。大きな手足には指が3本ずつあり、腕と脚が長い。ベムと同じく、人間を助けることでベラ自身も人間になれると信じている。腕の皮膚を伸ばして鞭のように振るうほか、冷気をあやつることができる。人間としてアッパーの名門校「セントジョーゼフ・ハイスクール」に通っており、そこでは「アナベラ」と名乗っていることから、級友たちには「アニー」と呼ばれている。見えざる議会からは「ベータ」と呼ばれている。
ベロ
もともとは妖怪として生まれ、人間にあこがれている妖怪人間。人間に擬態している時は右目が隠れた白い髪に、ヘッドフォンを着け、白いパーカーの上から赤いジャケットを着た、小中学生くらいの少年の姿をしている。妖怪の時は肌が全体的に暗い緑色で、脳を露出したような頭部だけが黄色い。大きな手足には指が3本ずつあり、腕と脚が長い。一見してベムの小型版という印象。ベムと同じく、人間を助けることでベロ自身も人間になれると信じていたが、助けた人間から裏切られることが多く、人間のことを信じられなくなりつつある。聴覚が優れており、アウトサイドにいながらにして、アッパーにいるダリル・ブライソンの家庭内での様子を聞くこともできる。ふだんはアウトサイドで、ゲーム好きの子供たちとよくいっしょに行動している。見えざる議会からは「ガンマ」と呼ばれている。
ソニア・サマーズ
警察官の女性。金髪を前下がりのミディアムボブヘアにして、前髪を右側に流している。以前はアッパーに勤務していたが、組織上層部、ひいては見えざる議会の絡んでいる事件に手を出してしまい、左遷されてアウトサイド勤務となった。正義感が強すぎるあまり、融通がまったく利かない。水男の起こした事件で初めてベムと遭遇し、一度はベムを危険視したが、感電男や澱粉男に襲われた際にベムに助けられたことから、妖怪人間の中にも味方が存在すると考えるようになった。
ウッズ
警察官の男性。ボサボサの黒髪で、無精ひげを生やしている。もともとはアウトサイドに勤務しており、「舵取屋」と呼ばれるマフィアのような組織から賄賂を受け取るなど、警察らしからぬ行動を取っている。アウトサイドで、ソニア・サマーズの教育係として行動を共にしており、妖怪人間に関する捜査にも協力姿勢を見せている。
ダリル・ブライソン
アッパーに住んでいる少年。ダリルの父親が、国会議員であるカーヴァーの秘書兼ボディーガードを務めているため、非常に裕福な家庭で育った。自宅は高層ビルの中にあり、そのうち一室はゲーム筐体が所狭しと置かれているゲーム部屋となっている。ゲーム好きで、アッパーではどんなゲームも負けなしだが、アウトサイドでベロと出会い、ゲームの腕を競ううちになかよくなった。カーヴァーのように街をよくする議員として働きたいと考えており、そのために命を狙われることも視野に入れている。ベロとは大人になっても交流を続け、いっしょに反社会勢力たちと戦ってほしいと申し出た。
ロディ
アッパーに住んでいる少年。ベラと同じく名門校「セントジョーゼフ・ハイスクール」に通っており、同じクラスに在籍している。ボサボサ頭に黒ぶちの眼鏡をかけており、オタク気質。ベラに好意を抱いており、授業中もベラの横顔などをノートにスケッチしている。噓のつけない正直な性格で、思っていることがすべて顔や行動に出るため、クラスメートたちからは「心だだ漏れくん」と呼ばれている。
ヨハネ
アウトサイドに住んでいる初老の男性。短い金髪をオールバックにして、両耳に二つ、さらに唇にもピアスをつけ、口まわりに髭を生やしている。ベムが贔屓にしている情報屋で、偽造IDの密売なども行っている。街の噂話にも精通しており、殺人があった際にはその犯行手口なども記憶している。
カーヴァー
アッパーで国会議員を務めている男性。ソニア・サマーズの友人で、精悍な顔つきをしている。アッパーとアウトサイドを併せた自治体である「リブラシティ」を理想の街にすべく活動している。そのために、まずは犯罪の巣窟と化しているアウトサイドを安全な場所にするため、パフォーマンスも含めてさまざまな策を講じている。ただし、この活動が見えざる議会の目に留まり、ニンジャから暗殺のターゲットとして狙われている。
メアリ・ラッセル
アッパーに住んでいた女子高校生。お嬢様学校として知られるアーク・ハイという学校に通っていた。腰まで伸びたストレートの赤い髪を、左サイドのみアップにしている。裏表のない正直な性格で、ジュエリーデザイナーになることを夢見ていた。ドミニク・ヴァーリのヘアアクセサリーを盗んだ疑惑をかけられたのをきっかけに、いじめに遭っていた。10年前に行方不明になっていたが、最近になってアウトサイドで殺害され、白骨化していたのが発見された。ベラはメアリ・ラッセルが死ぬ直前に出会ってその死を看取っており、人間に擬態する時のモデルにしている。
フェルト
アッパーから派遣された警察官の男性。面長で彫りが深く、額が広めで頰骨やこめかみのラインが浮く程度に痩せている。任務を達成するためには手段を選ばない冷徹さを持っており、他人に対して非常に威圧的な態度で接する。特査一課工作担当官として、ベム、ベラ、ベロの捕獲を命じられている。
ロル・V・ティターン (ろるゔぃーてぃたーん)
アウトサイドで指名手配されている男性。黒髪のモヒカン頭に、口元にはガスマスクのようなものをつけている。フロム・エンセラダスでは重力を自在にあやつれるという設定で、「重力男」という愛称で呼ばれている。本来はX国の空軍大佐にして、土星探索隊の一員だった。木星付近で遭難し、ブラックホールに飲み込まれた挙げ句、50年後の月面で吐き出された。瀕死の重傷を負っていたため月面で救助され、軍の医療施設に収容されていた。しかし2年前、同じ施設に囚われていたハラジーを連れて脱走した。施設で改造手術を施されたため、地球の大気で呼吸することができない身体になっている。X国に引き渡さなければ国際問題になるため、フェルトに捕獲任務が下された。ハラジーやフロム・エンセラダスの仲間からは「ヴァル」と呼ばれている。
ハラジー
ロル・V・ティターンと共に行動している幼い少女。腰下まである薄い赤毛を、両サイドのみアップにしている。フロム・エンセラダスでは重力を自在にあやつれるという設定のロルと共に、道化姿で出演して人気を博している。非常に鼻が利き、舞台上からでも客席にある高級チョコレートの香りを認識できる。かつてはロルが収容され、人体実験を繰り返されていた施設に囚われており、同じくさまざまな実験を受けていた。
ギャヴィン・ブリックス
元世界的医療メーカー「ブリックス財団」の代表を務めていた男性。前髪を真ん中で分け、クセのあるミディアムヘアをしている。かねてより街のバーでベムと交流があり、ベムが妖怪人間ではないかと考えていた。また、ベムたちと真剣に友人になりたいと行動していた。かつては妖怪人間を新しい病気ではないかと疑い、医療機器と技術で救うことができるのではないかと考えていた。もともとはアウトサイド出身者で、アッパーから顧みられることのないアウトサイド居住者を救おうと活動していた。しかし、この活動が見えざる議会の目に留まり、身に覚えのない罪を着せられて失脚した。
エレーン・ヘイディング
アッパーに住む女性。年齢は27歳。長い金髪をポニーテールにまとめている。10年前、お嬢様学校と知られているアーク・ハイという学校に通っていた。ショッピングモール内のクレープ店で偶然ベラを見かけ、行方不明だったメアリ・ラッセルと瓜二つな容姿に驚き、声を掛けた。温厚な性格で物腰が柔らかく見えるが、人によって評価が「噓つきでヤバい」と「正直者で優しい」に二分している。
ドミニク・ヴァーリ
アッパーに住む女性。年齢は27歳。長い金髪をサイドで縦巻きロールにしてまとめている。10年前、お嬢様学校と知られているアーク・ハイという学校に通っていた。資産家の娘で、昔から誰も逆らわないことから、女王のように振る舞っている。メアリ・ラッセルがアクセサリーを盗んだと騒ぎ、いじめていた。ベラをメアリの怨霊だと考えており、非常に恐れている。
ダリルの父親 (だりるのちちおや)
アッパーに住む男性。ダリル・ブライソンの父親。痩せた体型で、額が広い。カーヴァーの秘書兼ボディーガードを務めており、つねに行動を共にしている。カーヴァーと同じくアウトサイドの健全化を目指しているが、カーヴァーとは別の思想を持っている。
水男 (みずおとこ)
博士の人体改造によって生み出された妖怪人間。全身が透明のスライム状になっており、口元だけが判別できる。2週間毎日、平均四人を溺死させており、アウトサイドでは非常に話題となっていた。快楽殺人者で、殺人や窃盗を楽しんでいる。
ボウリング男 (ぼうりんぐおとこ)
博士の人体改造によって生み出された妖怪人間。長いポンパドールヘアで、右腕と両足、右目が機械化されている。また右腕は足首まで伸びており、巨大な体軀を持つ。肩の上には、頭の数倍大きいボウリングの球が載っている。ボウリングの球を投擲して標的に命中させ、全身の骨を砕いて殺害する。少なくとも10年前からアウトサイドに住んでおり、メアリ・ラッセルを殺害している。
ニンジャ
博士の人体改造によって生み出された妖怪人間。アメリカンコミックスに登場するような忍者の姿をしている。クナイや煙玉、毒などを使って、見えざる議会にとって目障りな人間の暗殺を行なっている。「忍(にん)」が口癖。
感電男 (かんでんおとこ)
博士の人体改造によって生み出された妖怪人間。肩までの金髪を外ハネにセットし、スクエアタイプのアンダーリムの眼鏡をかけた若いナルシストな男性。高圧電流による連続感電死事件を起こしており、美しく若い女性をターゲットにしている。「運命」という言葉を頻繁に使用し、ベムをおびき出すための言葉も、「怪物よ、お前の運命は俺のもの」だった。
澱粉男 (でんぷんおとこ)
博士の人体改造によって生み出された妖怪人間。全身が澱粉でできており、少しの衝撃でパラパラと体からこぼれ落ちる。一人称は「オイ」。感電男とどちらが先にベムを殺せるかを賭けていた。澱粉男が殺害した死体の周囲には、澱粉と人間の皮膚が混ざった粉が散らばっていた。
掃除機男 (そうじきおとこ)
博士の人体改造によって生み出された妖怪人間。もともとは幼少期にネグレクトを受けていた潔癖症の男性で、清掃局に勤めていた。しかし、街も人も汚れていると考えるようになり、博士によって巨大な掃除機と合体した掃除機男になった。
博士 (はかせ)
見えざる議会の一員の男性。犯罪欲求のある人間たちからの依頼を受け、各人の希望通りに改造を施すことで妖怪人間を生み出し続けている。人間を異形の怪物に変異させる技術にあこがれているが、水男や感電男のような体の生物を生み出すことは「ちょっと知識があれば誰でもできる」と話している。
集団・組織
見えざる議会 (みえざるぎかい)
アウトサイドとアッパー双方を、裏から支配している謎の組織。ベム、ベラ、ベロを除く妖怪人間たちを生み出しては混乱を生み、楽しんでいる。また、ベムたちのことも認識しており、警察に命じて捕獲を企んでいる。社会的地位のある人間がアウトサイドの浄化などを目的に活動していることを知ると、暗殺または汚職をでっち上げて社会的地位を奪ったりと、手段を選ばずに排除している。
フロム・エンセラダス
イリュージョンを披露するサーカス集団。メンバー全員が宇宙人という設定で、2時間を超えるイリュージョンが人気を博している。特に「重力男とハラジー」というコンビが、本物の超能力を持っているのではないかと話題になっている。
場所
アウトサイド
アッパーと橋を挟んだ場所にある街。区分としてはアッパーを含めて「リブラシティ」という一つの自治体だが、アウトサイドには貧困層が多く、富裕層が住民の多くを占めるアッパーからは差別を受けている。スリや強盗が横行しており、善良そうに見える老人でも平気で物を盗む。また、子供たちは大人を信用しておらず、街全体が荒んでいる。
アッパー
アウトサイドと橋を挟んだ場所にある街。区分としてはアウトサイドを含めて「リブラシティ」という一つの自治体だが、アッパーには富裕層が多く、貧困層が住民の多くを占めるアウトサイドを差別している。アウトサイドを安全な街に再生しようとする議員もいるが、その全員が暗殺などによって命を絶たれている。
その他キーワード
妖怪人間 (ようかいにんげん)
人間から人外になった存在、もしくは人間に扮して社会に溶け込んでいる妖怪。その存在がアウトサイドで噂になり始めた当初は、単に「妖怪」と呼ばれていた。本来は人間を守るべく戦っているベムたちと、人間たちを殺害することを目的として活動している水男たちとに分かれているが、一般人にその区別はついておらず、「妖怪人間」と総称されている。
クレジット
- 原作
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ADKエモーションズ
- キャラクター原案
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村田 蓮爾
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