第3部隊を密着取材
本作は『怪獣8号』の主人公である日比野カフカたちが所属する第3部隊に、テレビのドキュメンタリー番組が取材に訪れたところから物語が始まる。時系列的にはカフカたちが試験に合格した直後で、取材という形で本編に登場する魅力的なキャラクターたちにスポットライトが当てられ、エピソードとして深く掘り下げていく。そのためエピソードによって主役となるキャラクターはそれぞれで、回想シーンを挟むため時系列も異なる場合がある。
それぞれの戦う理由
本編の『怪獣8号』は怪獣が突如出現し、人間に害を及ぼすことが当たり前の世界観となっている。人々の日常を脅かす怪獣と戦っている日本防衛隊は、高い適応能力と強靭な精神力を求められている。本編ではカフカを中心に、その戦う理由や成長が描かれているが、本作『怪獣8号 side B』は本編では描ききれなかったキャラクターたちの過去が語られる。防衛隊において時代遅れな刀剣で戦う第3部隊の副隊長・保科宗四郎の知られざる過去や葛藤、エリート隊員の四ノ宮キコルが新たな武器を手にするまでの顚末など、本編のキャラクターたちの魅力あふれるエピソードが盛り込まれている。
本編では語られなかったキャラクター物語
本編の『怪獣8号』は、カフカが怪獣8号に変身して怪獣と繰り広げる迫力満点のバトルシーン、ギャグ描写が魅力となっている。本作『怪獣8号 side B』は怪獣たちとのバトルこそあれ、エピソードごとに登場キャラクターが違うため、本編とは一味違った展開を見せる。メインキャラクターはもちろん、サブキャラクターに至るまで登場するため、本編のファンとしては読み応えがある。また、本編のヒロインである亜白ミナが極度の料理下手であるなど、本作で明らかになった設定や小ネタも多く、本編を知っていると一層楽しめる構成となっている。
登場人物・キャラクター
保科 宗四郎 (ほしな そうしろう)
第3部隊の副隊長を務める男性。マッシュルームカットと糸目が特徴で、うさんくさい関西弁でしゃべる。実家が室町時代から続く怪獣討伐隊の家系であるため、対怪獣用の剣技「保科流刀伐術」を身につけている。若くして近接戦闘のスペシャリストとして誰もが認める実力者だが、対怪獣用の遠距離武器への適性は非常に低い。近年は武器の発達と共に防衛隊の装備も銃火器に偏重しているため、刀の時代は終わったと言われており、周囲からもやんわりと指南役になって防衛隊を退くことをうながされている。しかし保科宗四郎は、その事実を認めることができず、意地でも刀で戦い抜く覚悟を決めている。第3部隊の隊長を務める亜白ミナにその才覚を見出され、彼女に勧誘されて第3部隊に所属することとなる。日比野カフカを「お笑い枠」として揶揄(やゆ)しているが、自分と同じく「持たざる者」である彼に一種の共感を抱いており、カフカに期待している。
四ノ宮 キコル (しのみや きこる)
第3部隊に配属された新人の女性隊員。金髪ツインテールの美少女で、文武両道、才色兼備のエリート中のエリート隊員として注目を集めている。一見すると高飛車な物言いをするが、元防衛隊第2部隊長である四ノ宮ヒカリの娘で、幼い頃から過酷な英才教育を受けてきた努力の人。その努力で才能を開花させ、精鋭ぞろいの同期の中でも頭一つ抜きんでた実力を誇る。第3部隊がドキュメンタリー取材を受けたのも四ノ宮キコルの存在が大きく、取材中に新人では異例の専用武器が支給され、怪獣相手の実践テストが行なわれた。
クレジット
- 原作
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松本 直也 , 安藤 敬而
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怪獣8号 (かいじゅうはちごう)
松本直也の『ねこわっぱ!』『ポチクロ』に次ぐ連載作品で代表作。怪獣が跋扈(ばっこ)する世界。民間清掃会社「モンスタースイーパー」に入社して生計を立てていた日比野カフカは、市川レノとの出会いをきっかけに... 関連ページ:怪獣8号