概要・あらすじ
1949年、人気アメリカンコミック『ビリーバット』の作者であるケヴィン・ヤマガタは、仕事場に来た刑事から「日本で作品にそっくりなコウモリの絵を見たことがある」と告げられる。真偽を確かめるため日本に渡ったケヴィンは、似た作品を『ビリーバット』以前に描いていた漫画家・唐麻雑風と知り合い、原稿を託されることになった。
以降ケヴィンは漫画を描く際、未来を予見するかのようなコウモリの声が聞こえるようになり、いったんは漫画から逃げてしまう。しかしケヴィンを追っていた政府機関の関係者スミスの説得で復帰。コウモリの声に従い描いたその漫画はアメリカ大統領ジョン・F・ケネディの暗殺を示す内容だった。
暗殺を止めるため実行犯になる予定のオズワルドを説得するケヴィンだが、結果的に暗殺は発生してしまう。その後「日本に行け」と書かれたスミスからの手紙を受け取ったことで日本を再訪。旅の途中で知り合ったジャッキー・モモチたちとともに、コウモリと深い関わりがある光森村へ足を踏み入れる。
コウモリの目的は何なのか、ケヴィンをはじめ、コウモリの声が聞こえる人間を中心に、歴史の裏に隠された深い闇が描かれていく。
登場人物・キャラクター
ケヴィン・ヤマガタ
日本名は山縣金持。日系人の漫画家で、アメリカンコミック『ビリーバット』の初代作者。他の代表作に『テキサス捕物長 ピストルヘアー荒野を行く』がある。『ビリーバット』の主人公にそっくりなコウモリの絵を日本で見たことがあると刑事から聞かされ、真実を確かめるため訪日。 そこで唐麻雑風に出会い、彼を師匠と呼んで師事する。コウモリの声が聞こえる人物の1人で、唐麻雑風から原稿を託された後は、コウモリの声にノイローゼになった。アルコール中毒寸前まで行ったもののスミスの説得により復帰。声に従い描いた漫画でジョン・F・ケネディの暗殺を知り、オズワルドに接触して阻止しようとする。 結局暗殺は起きてしまったが、暗殺現場ではまだ幼いゴールデンコーラ社の御曹司ケヴィン・グッドマンを流れ弾から守り、命を救った。その後「日本に行け」と書かれたスミスからの手紙を受け取り、ゴールデンコーラ社長からケヴィンを救った礼として受けた日本旅行で、再び日本に渡る。同じくゴールデンコーラ社のキャンペーンで日本旅行を当てたジャッキー・モモチとその父親と旅行中に知り合い、ジャッキー・モモチが受けたコウモリからの伝言を知って、唐麻雑風がいる光森村へ足を踏み入れる。 しかし、そこで何者かに銃撃され生死の境をさまようことに。
唐麻 雑風 (からま ぞふう)
『BILLY BAT』の登場人物で、ケヴィン・ヤマガタの師匠。元々は紙芝居屋だったが、手塚治虫の『新宝島』に影響され漫画家となり、ケヴィンよりも先に『ビリーバット』にそっくりなキャラクターが主人公の漫画『こうもり小僧の大冒険』を執筆した。コウモリの声が聞こえる人物の1人で、描いた絵により下山事件など未来の出来事を予言。 ケヴィンに執筆途中の原稿を託して姿を消した後は光森村に身を隠し、山下を弟子にして過ごしていた。
来栖 清志 (くるす きよし)
日本で旧友が殺されている姿を見たケヴィン・ヤマガタの前に現れ、ケヴィンが殺人を犯したと思われないよう、死体を電車に轢かせて身元不明にさせる策を授けた。その後オズワルドの前に現れ、英雄になるようオズワルドを焚きつけるなど歴史の裏で暗躍する。コウモリの存在を追い続け、月にコウモリがいるとの話を聞きソ連の協力を得て月面着陸までも果たすが、自身にはコウモリの声を聞く能力はない。 また、絵心も皆無。
勘兵衛 (かんべえ)
戦国時代の伊賀忍者で、ジャッキー・モモチの祖先から、伊賀の里を守るため巻物を届ける任務を受ける。俊足と、目的のためなら仲間も裏切る卑怯さを持つ。任務の途中で巻物からコウモリの声を何度も聞くようになり、巻物を狙う子供時代からの仲間や、命を救ってくれた恩人を失うはめに。 最後には巻物が不幸を呼ぶ存在だと考え、任務を放棄して巻物を埋めてしまう。その後はのちに光森村となる場所で、旧友や恩人の地蔵を彫り、鎮魂に生涯を捧げた。
チャック・カルキン
ケヴィン・ヤマガタのアシスタントだったが、ケヴィンが日本に発った後は仕事場を訪れた男の口車に乗り、『ビリーバット』の2代目作者となる。しかし話を持ちかけてきた男が『ビリーバット』の作者として世間への露出を担当し、チャックはゴーストライターとして漫画を描き続けるだけの30年間を過ごした。 ケヴィン・グッドマンの描いた『ビリーバット』を見たことで、ケヴィン・グッドマンを3代目『ビリーバット』作者にすることを決心。ケヴィン・グッドマンが3代目作者として世間からも認められてからは、ケヴィン・グッドマンのアシスタントとしてサポートする。コウモリの声を聞く能力は持っていない。
ケヴィン・グッドマン
ゴールデンコーラ社長の御曹司。赤ん坊の時にジョン・F・ケネディ暗殺事件の現場でケヴィン・ヤマガタに命を救われた。大学生に成長してからは街の壁にビリーバットのイラストを描いていたが、その絵が認められ『ビリーバット』3代目作者のオーディションを受けることになる。 チャック・カルキンに認められ合格を果たす。コウモリの声を聞くことができ、描いた漫画は未来を予言していると世間で話題に。幼い頃からケヴィン・ヤマガタ版『ビリーバット』を読んでいたため、作風はチャックよりもケヴィン・ヤマガタ寄り。
リー・ハーヴェイ・オズワルド
現実のジョン・F・ケネディ暗殺事件で実行犯とされた、実在の人物・リー・ハーヴェイ・オズワルドをモデルにしている。アメリカ生まれの海兵隊員だったがソ連に亡命し、ソ連のスパイとしてアメリカに舞い戻った。コウモリの声が聞こえる人間の1人。英雄になることを強く望んでおり、コウモリから「この国の英雄にならないか」と持ちかけられる。 ジョン・F・ケネディの暗殺現場に居合わせたことで、暗殺の容疑者とされた。
ジャッキー・モモチ
アメリカ在住の日系人の女子大生。コウモリの声を聞く能力があり、コウモリの言うままに話したことが大学の教授に気に入られ、フィールドワークとして日本に行くことを勧められた。ゴールデンコーラの日本旅行プレゼントキャンペーンに当選したことで父ともども訪日し、祖先ゆかりの地である光森村へ、旅の途中で知り合ったケヴィン・ヤマガタとともに行くことになる。 ジョン・F・ケネディの暗殺現場ではオズワルドとも偶然会った。
山下 (やました)
光森村にやってきた唐麻雑風の漫画に心酔し、一方的に弟子を名乗る。関西弁で坊主頭にランニングシャツ姿の男。村の危機を察した雑風から完成した漫画原稿を託され、ケヴィン・ヤマガタに渡した。後に日本版ビリーランドにアルバイトとして潜り込み、社長にまで出世する。
スミス
下山事件の容疑者としてケヴィン・ヤマガタを調査したCIAのエージェント。下山事件の10年後、政府のある機関の関係者として再びケヴィンを追い、アルコール依存症寸前となっていたケヴィンを再起させる。ジョン・F・ケネディ暗殺の計画をケヴィンの漫画で知り、ケヴィンを逃がそうとした際に左目を負傷。 姿をくらました。後にケヴィン・グッドマンの前に現れ、身を守る方法を教える。ケヴィン版「ビリーバット」の大ファン。
コウモリ
『BILLY BAT』に登場する、人知を超えた存在。歴史的な事件や人物には必ず関わっているとされる。コウモリが羽を広げた抽象画や、漫画『ビリーバット』の姿で限られた人間の前に出現。未来を予見するような言葉を伝える。白と黒の2種類があり、黒は破滅をもたらすとされる。
ティミー・チャールズ・サナダ
幼少時にケヴィン・グッドマンに才能を見出され、10年後に作品を持ち込んできた青年。創作に行き詰まっていたケヴィン・グッドマンにヒントを与え、2001年のアメリカ同時多発テロを予見するかのような『ビリーバット』の新作を、ケヴィン・グッドマンと連名で発表する。
集団・組織
ゴールデンコーラ
『BILLY BAT』に登場する企業。アメリカの飲料メーカー。社名と同じ炭酸飲料ゴールデンコーラが主力商品で、アメリカ国内ではシェア2位だったがフルチショフに気に入られたことでソ連での独占販売が認められ、業績を大きく伸ばした。王冠を10個集めると日本への旅行をプレゼントするキャンペーンを行ったことがあり、ジャッキー・モモチが父親とともに日本へ行くきっかけとなった。 ケヴィン・グッドマンはこの会社社長の御曹司。
場所
光森村
『BILLY BAT』に登場する村。日本の和歌山県内にあり、戦国時代を生きた忍者・勘兵衛が最後にたどり着き、旧友や恩人の鎮魂のため地蔵を掘り続けてすごした地。1970年代には日本のビリーランド建設のため、買収の話が持ち上がった。同時期、唐麻雑風は東京を離れた後、この地で漫画を描き過ごしている。
ビリーランド
『BILLY BAT』に登場するテーマパーク。アメリカにあるビリーバットをテーマにした遊園地で、夢の国を標榜している。チャック・カルキンが描く『ビリーバット』が国民的人気を得たことでオープンした。オズワルドはかつてここでビリーバットの着ぐるみを着て働いていたことがある。後に日本へ進出する計画が持ち上がり、和歌山に1970年代の買収交渉を経てビリーランドがオープンした。
その他キーワード
ビリーバット
『BILLY BAT』に登場する漫画。ケヴィン・ヤマガタにより生み出されたアメリカンコミックで、擬人化されたコウモリのビリーが主人公。ジャングル探検やスパイアクションなど、さまざまなシチュエーションでビリーが活躍する。作者が移り変わっており、2代目作者チャック・カルキンの作品はビリーランドを生み出すほどの国民的人気作となったが、チャック・カルキンの絵柄の影響でキャラクターがかわいく仕上がっており、ケヴィン・ヤマガタ版を知る者からは子供だまし以下との評価をよく受けている。 3代目作者ケヴィン・グッドマンの作品は、ケヴィン・グッドマンが幼いころからからケヴィン・ヤマガタ版に慣れ親しんでいたため初代寄りで、子供も古くからのファンも満足いく仕上がり。 未来の事件を予見するようなストーリーも話題となった。4代目作者ティミー・チャールズ・サナダの作品は、ケヴィン・グッドマン以上にストーリー面で未来の予見を感じさせるもの。
クレジット
- ストーリー共同制作
書誌情報
BILLY BAT 20巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2009-06-23発行、 978-4063728125)
第2巻
(2009-11-20発行、 978-4063728538)
第3巻
(2010-03-23発行、 978-4063728880)
第4巻
(2010-07-23発行、 978-4063729221)
第5巻
(2010-11-22発行、 978-4063729559)
第6巻
(2011-05-23発行、 978-4063870015)
第7巻
(2011-07-22発行、 978-4063870374)
第8巻
(2012-02-23発行、 978-4063870787)
第9巻
(2012-05-23発行、 978-4063871098)
第10巻
(2012-09-21発行、 978-4063871418)
第11巻
(2013-03-22発行、 978-4063871968)
第12巻
(2013-08-23発行、 978-4063872309)
第13巻
(2013-11-22発行、 978-4063872729)
第14巻
(2014-04-23発行、 978-4063883268)
第15巻
(2014-09-22発行、 978-4063883602)
第16巻
(2015-03-23発行、 978-4063884272)
第17巻
(2015-08-21発行、 978-4063884876)
第18巻
(2015-12-22発行、 978-4063885484)
第19巻
(2016-06-23発行、 978-4063886092)
第20巻
(2016-09-23発行、 978-4063886436)