あらすじ
第1巻
宇宙に人類が移り住むようになった時代。人々のあいだでは、国同士の勝負を決めるために、特殊なドレスを着て宇宙を飛び回る究極のレース「ドレース」が盛んに行なわれていた。鳩家孤児院で暮らすキュウは、ドレースレーサーになる事を幼い頃から夢見ていたが、貧しさと境遇から夢をあきらめ、宅急便の配達員を続けていた。そんなある日、ドレースの国際大会が開催され、キュウは悔しさを抱きながらも、レースの様子を眺めていた。そんな彼女の前に世界一のレーサー・ミュラが現れ、キュウに愛用のドレス「リリー」を渡す。さっそくドレースを楽しもうとするキュウだったが、ミュラクロが現れ、リリーを譲渡するよう要求してくる。断ったキュウはスパイ容疑で捕まってしまい、リリーも奪われてしまう。囚われた先で、キュウはかつての学友ロコモカと再会する。しかしロコはキュウの事を覚えておらず、そこにアヴリルレッドレオが現れる。キュウからリリーを譲り受けたと思っていたアヴリルは、実際はゾフが無理やり奪った事を知り、リリーを返してキュウを帰そうとする。そんなアヴリルを見たキュウは、リリーを賭けたトライレースを提案するのだった。
第2巻
アヴリルレッドレオ達とのトライレースを勝ち抜き、あこがれのリリーとドレースS級ライセンスを手に入れたキュウは、鳩家孤児院を離れ命懸けのドレースに挑む日々を送っていた。晴れてレッドスターの一員となったキュウは、一見順風満帆に見えたが、実はメンバーにも隠している弱点があった。そんな中、レッドスターはスタジアムヴァレリーで開催される公式戦に向けて、惑星ヴァレリーに移動する事になる。VRでの訓練後、ヴァレリーで束の間の休日を過ごすキュウ達の前に、突如ミュラが現れる。それぞれのミュラへの因縁や思いを果たすため、改めて気を引き締めたレッドスターのメンバーは後日、キュウのプロデビューをかけたヴァレリードレース大会に挑む。しかし、レースの途中で急遽アンカーを任されたキュウは、隠していた弱点である「クイックワープ」での移動に躊躇する。幼少期のトラウマから、クイックワープに乗るとワープ酔いを起こしてしまうキュウは、さらなる苦戦を強いられる事になる。仲間に助けられなんとかワープを克服し、ファイナルステージを駆けるキュウだったが、そこにレースに参加していなかったミュラが突然乱入して来る。
第3巻
新人戦を勝ち抜いて個人戦への出場も決定し、キュウは本格的なドレースライフをスタートした。しかしそんなキュウの前に、赤黒帝国の分裂という大きな試練が立ちはだかる。帝国が分裂した事でレッドスターは解散し、メンバーはそれぞれの国に帰る事になった。場所が変わっても友達のままだと誓い合ったメンバー達は、それぞれの国に戻り、キュウも故郷である地球に戻る。地球でアオハトと再会したキュウは、地球大統領の華尾礼に、地球が帝国から独立するための地球代表レーサーになるよう頼まれる。しかし、ミュラも出場する個人戦の決勝戦も同日に行われるため、地球代表選手になると個人戦には出場できなくなると知ったキュウは、ミュラと戦うという目標のために地球代表を断る。だが慕っているアオハトから、陰で支援されていた事を知ったキュウは再び悩み、彼のために地球代表になる事を選ぶ。後日、地球争奪戦のスタジアムに立ったキュウは、ミュラとレースができなくなった事を後悔していた。そんなキュウの前に、個人戦会場にいたミュラがワープで現れ、キュウ達と共にコースに立つのだった。
登場人物・キャラクター
キュウ
鳩家孤児院で暮らす少女で、一人称は「ボク」。幼い頃からドレースの道を志し、中でも特にミュラにあこがれていた。ドレースレーサーとしての才能にも恵まれていたが、ドレースには高額な資金が必要なため、不法入国の難民であるという事実と貧しい環境から、一度は夢をあきらめる。アオハトの世話になりながら宅急便の配達員として働いているが、心の底ではドレースレーサーの夢をあきらめきれずにいた。 ミュラとの出会いをきっかけに、リリーを得てレーサーとなり、本格的にドレースの世界に飛び込む事になる。幼い頃から何かと周囲の人に譲る遠慮がちな性格だったが、ドレースへの熱意は人一倍強い。配達員をしているためバランス感覚に優れており、ドレースにも活かしている。 ミュラクロとの遭遇をきっかけにトライレースに挑み、レッドスターの一員となる。以降、ミュラとのレースを夢見ながら、期待のルーキーとして活躍するようになる。ドレース中に心的変化が起こると、シエルに変貌する。元は紛争地帯にある惑星クルポト出身で、幼少期にクルポトから脱出するためのワープに搭乗した際、移動中の事故で両親を亡くした過去を持つ。 そのトラウマから、クイックワープに酔うという弱点を持つ。
シエル
キュウがドレースの最中に、心的変化によって出現させたもう一つの人格。「キュウの夢」を名乗っているが、正体は不明。以来、ドレースのたびに時折出現するようになる。「シエル」という名はミュラによって名付けられた。普段のキュウの黒髪のショートカットの髪型から、一瞬で髪が生え変わって空色のロングヘアに変化する。 性格も、キュウよりクールで少し強気になっている。レースが終了すると髪が再び生え変わり、元のキュウの姿に戻る。髪型・髪色の変化は、キュウの本来の故郷である惑星クルトポの一部地方に見られる遺伝的特徴だが、空色に変化するのは非常に珍しいと言われている。
ハトピー
キュウのペットで、幼少期からいつも連れ歩いている、青い子鳩。ドレースの時もキュウの傍についている。鳴き声は「クポ」や「プポ」。キュウがシエルに変化すると、姿を消す。
アオハト
キュウが幼少期から世話になっている男性。キュウからは「おじちゃん」と呼ばれている。キュウが幼い頃から彼女を見守り支えて来た、一番の理解者でもある。鳩家孤児院に訪れた際に幼いキュウと出会い、彼女の境遇や優しさを知って支援するようになる。キュウが昔から何かと他者に譲ってしまう優しい性格や、ドレースにあこがれながらも夢をあきらめている事を心配している。 同時にキュウの夢を心から応援し、全力で力になろうとしている。元は親の会社を継ぎお金持ちだったが、キュウの支援のために会社を手放し、さらに華尾礼から多額の借金をしている。
トイチ
キュウと同じ鳩家孤児院で暮らす少年。アオハトやイチゴとも仲がよく、共にキュウのドレースの夢を応援し協力している。
イチゴ
キュウと同じ鳩家孤児院で暮らす少女。二つの大きなおだんごで髪をまとめている。キュウの事を「ネェネ」と呼び、慕っている。アオハトやトイチとも仲がよく、共にキュウのドレースの夢を応援し協力している。
ミュラ
ドレースの全冠を誇る、世界一の天才レーサーの女性。超大国UB連盟の「ホワイトフォース」に所属しているゴッドエース。キュウが子供の頃から、強いあこがれを抱く女性でもある。気高くレーサーとしての誇りを持っており、大衆の前に全裸で現れるなど、大胆な性格。差がつきすぎた試合は、試合中でもどこかに抜け出してティータイムを過ごしているという噂もある。 お金と環境の問題から夢をあきらめていたキュウの前に突如現れ、愛用のドレス「リリー」を無償で譲った。爆発のリスクがあるリリーをキュウに突然譲るなど、その真意は不明。
ミュラクロ
赤黒帝国軍代表チーム「レッドスター」でセカンドエースを務める女性。ドレースのために量産されたミュラのクローンの一人で、ミュラと同じDNAを持つ96番目のクローン。冷静な性格で、計算が得意。ミュラのドレス・リリーを狙っており、リリーを譲り受けたキュウの前に突如現れレースを挑む。キュウとのトライレースで彼女の実力を認め、レッドスターの一員となった彼女をチームメイトとして支える。 自身の大元であるミュラに対しては、複雑なコンプレックスを抱いており、本当の自分を見つけようとしている。
ロコ モカ
日本メタル公社の社長令嬢。3年前のドレース入隊テストで、夢をあきらめたキュウから1位を譲り受けた。のちにプロのドレースレーサーとなり、赤黒帝国軍代表チーム「レッドスター」の一員となっている。キュウとは学友関係だったが、スパイ容疑で拘束されたキュウに再会した時は、彼女の事を覚えていないふりをしていた。 少々意地っ張りな性格だが、レッドスターの中では最下位で、いつチームをクビになるかわからないというプレッシャーや焦りを感じている。また、本来入隊テストで1位を取っていたキュウには劣等感を感じており、環境に恵まれながらもレーサーとしては凡人である事に、コンプレックスを抱いていた。キュウとのトライレースで彼女の実力を認め、レッドスターの一員となった彼女をチームメイトとして支える。
アヴリル レッドレオ
赤黒帝国レッドレオ王家の継承順位5位のプリンセス。ドレースの有名レーサーでもあり、帝国軍代表チーム「レッドスター」のエースを務めている。お嬢様言葉で話す。ミュラをライバル視しており、つねにミュラへのリベンジを夢見ている。曲がった事が嫌いな性格で、つねに奪うためではなく守るために、ドレースに挑んでいる。 昔、ドレースの最中にクラッシュによる事故で首から下を失っており、普段は特殊技術で取り付けた体で行動している。ドレース中は首だけの状態でドレスをまとい、体がない分体重も軽くなるため、加速による重力負荷もかかりづらくなっている。キュウとのトライレースで彼女の実力を認め、レッドスターの一員となった彼女をチームメイトとして支える。
ギンザ
赤黒帝国軍代表チーム「レッドスター」の、リーダーを務める褐色肌の女性。しっかり者で冷静な大人っぽい性格で、個性的なチームメンバーをまとめている。曲がった事が嫌いで、ゾフの冷酷なやり方にも、時おり疑問を抱いている。過去のドレース個人戦での優勝経験を持つ、実力者でもある。また、ミュラに敗れるまではドレースの頂点に立つ女王だった。 新人だった頃のミュラを知っており、彼女が密かに抱いている孤独感も理解している。キュウとのトライレースで彼女の実力を認め、レッドスターの一員となった彼女をチームメイトとして支える。
ゾフ
赤黒帝国軍中佐の女性。帝国代表チーム「レッドスター」のマネージャーも務めており、チームを仕切りながらメンバーをサポートしている。キュウが譲り受けたリリーを奪うため、スパイ容疑を名目に彼女を拘束する。キュウの家族を人質に取るなど、目的のためなら手段を選ばない冷酷な性格。帝国議会をも支配する権力を持つ、政治一家の娘でもある。 ギンザからは「ヤバイ奴」と評されている。当初はキュウのリリーを強引に奪おうとしていたが、トライレースでキュウの才能を目の当たりにし、新たなメンバーとして迎え入れる。
ソーエン
ミュラの後輩の女性。超大国UB連合の「ホワイトフォース」に所属している。ミュラの頼みでキュウとシエルの関係を調査していた。
ハサミン サチコ
レッドスターのメカニックを担当している女性で、メガネをかけている。地球の北海道出身。普段は、キュウをはじめとするメンバーのドレスのメンテナンスをしている。つねに敬語で話す、丁寧で穏やかな性格。メカニックであると同時にレーサーでもあり、自分が仕立てたドレスでドレースに挑むのが幼い頃の夢だった。新人戦3回目に参加する事で自分の夢にけじめをつけ、メカニックとしてレッドスターを勝たせる事を目指すようになる。
華尾 礼 (はなお れい)
地球の暫定政府を預かる地球の代表者で、大統領に近い立場の人物。中世的な外見をしている。赤黒帝国の分裂をきっかけに、地球の独立を目指すようになる。ドレース地球争奪戦で、地球代表選手として出場する事をキュウに依頼する。また、キュウを密かに支援していたアオハトに、多額の融資をしていた。
シスター
キュウが幼い頃から住んでいる、鳩家孤児院のシスター。幼少期からキュウを世話してきた、彼女のよき理解者であり、相談相手でもある。また、アオハトがキュウを密かに支援していた事も知っている。
集団・組織
レッドスター
ドレースの赤黒帝国代表チーム。ギンザがリーダーを、アヴリルレッドレオがエースを務めている。のちにキュウがチームに加入する事となる。
場所
赤黒帝国 (あかくろていこく)
レッドスターが所属している、複数の惑星を擁する巨大帝国。主に惑星メカメロンの「黒龍民主共和国」と、惑星ツインテイルの「レッドレオ王国」で構成されており、地球をはじめ複数の星を領土に持つ。この二国の独裁体制への批判を込めて「帝国」の通称で呼ばれる事も多い。また、両国の対立から、つねに分裂の危機に瀕している。のちに分裂して大きく二つに分かれ、分裂を機に地球では華尾礼による、本格的な地球独立活動が開始される。
イベント・出来事
新人戦 (ちぇりーかっぷ)
ドレースの新人レーサーのみで開かれるドレースの事。ただし新人レーサーは一生に3回までであれば参加できる。本戦まで勝ち進めば、あこがれのプロレーサーと戦う事も可能になる。
個人戦 (くいーんかっぷ)
チーム戦ではなくレーサー個人同士で勝敗を競う、特別なドレースの事を指す。個人戦で優勝したレーサーは、トップレーサー「女王」の称号を得る。かつてはギンザが女王だったが、ミュラが優勝して以来、ミュラが連続で女王の座を維持している。
その他キーワード
ドレース
異星に移り住むようになった人類が、国同士の対立を決着させるために実施している、特別な国際レース。資源や領土への権利を決める手段としても開催され、現在は戦争への抑止力ともなっている。選手達はエンジンなどが搭載された「ドレス」と呼ばれる特殊な衣装をまとい、音速を超えるスピードで宇宙を駆け回って順位を競う。レース中は「ワープカップ」と呼ばれるワープ装置を使い、複数のステージを移動する事もある。 また、レースを通してさまざまな星にワープする事もできる。出場選手は「レーサー」と呼ばれている。ただしレーサーとして活動するには、高額なドレスを購入したりカスタマイズをするための、高額な資金も必要となる。世界中の多くのレーサーが熱中しており、全宇宙の新人レーサーの数だけで三億人にもなる。
リリー
ミュラが使用していたドレース用の超高級ドレス。正式名称は「リースリリー」。バックシートが花型になっている。ミュラがキュウに譲ったため、現在はキュウのドレスとして使用されている。もともとは高額な資金を投入して、ミュラが作らせたもので、多くのレーサーのあこがれの的ともなっている。しかし「レースに敗北すると爆発する」という、恐ろしい代償もある。 フルスペックモードにしなければ爆発のリスクはなくなるが、その分本来のスピードが出せなくなってしまう。ほかのドレスにはないスピードと多種多様な機能を備えているが、その潜在能力は未知数で、キュウも把握しきれていない。
ブラックアウト
ドレースの最中に発生する事がある症状で、主に音速を超える加速によって発生する。強力な重力(G)がかかって体内の血液を乱し、脳に血液が巡らなくなる事で色を認識できなくなる「グレーアウト」が起こる。この状態で無理にレースを続けると、気絶状態となる「ブラックアウト」が起こる。
ワープカップ
ドレースで使用されるワープ用の球体。ドレスの腰の辺りで棒状の支柱に支えられており、ドレース中はレーサーの頭部の後ろに位置する。カップはマトリョーシカのような形状になっており、何層ものカップを重ねる形で構成されている。カップ自体は大人二人がギリギリ入るサイズで、何層にも重ねられたカップの内側を転送させる仕組みになっている。 一見4枚重ねのように見えるが、カップの残数を隠すためのフェイクであり、実際はそれ以上の枚数を重ねる事もできる。レッドスターでは最高23枚重ねのワープカップも作成できる。主に、ドレース中のステージ(コース)移動に使用されているが、普通のワープ装置として惑星間の移動にも利用されている。
ヘルメット
事故などからレーサーの頭部を保護するための、ワープを利用した緊急救命装置。普段の見た目はネックレスのような形状だが、レーサーの危険を感知して変形するようになっている。ヘルメットなしでのドレースは、命綱なしでバンジージャンプをするのと同等に危険とされる。
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