人間が治療魔法を独占して亜人を支配する異世界
物語の舞台となる異世界には人間のみならず、エルフ、ドワーフ、獣人、竜族などの亜人が存在する。彼らは大気中に漂うマナを魔力に変換することでさまざまな魔法を使用できるが、傷病に有効な治療魔法を扱えるのは人間だけである。そのため、生命の危機に陥った亜人は人間に頼らざるを得ない。こうした背景を人間は政治的な駆け引きに利用して亜人を支配し、万物の霊長として君臨している。
異世界の医学は未発達
異世界には治療魔法が存在する一方で、医学はまるで発展しておらず、生物を苦しめる「病」の原因は専ら悪霊や呪いによるものだと信じられている。細菌やウイルスの存在も確認されていないため、衛生環境を整えて病気を予防するといった元の世界では当たり前のことすら実施されていない。
医学がもたらす変革を拒む人間たち
異世界へ転移した天海唯人は医師として貴賤(きせん)なく命を救うのみならず、「病院の設置」「医学知識の伝授」「医療品の再現」なども積極的に行っており、治療魔法に頼りきりだった異世界の文明に変革をもたらしていく。しかし唯人の活動は、治療魔法を独占して利益を得ていた人間からすれば、許し難い行為にほかならない。治療魔法師を管理する立場にある大司教・エクレスは、技術が他種族に広まれば国家存亡の危機に瀕すると警鐘を鳴らし、六人の司教から成る「六星」に対応をせまっている。
登場人物・キャラクター
天海 唯人 (あまみ ゆいと)
古都大学付属病院に勤務する総合診療医の男性。柔和な顔立ちで、栗色の髪にはアホ毛がある。他人のために身を粉にして働き続ける無私の人で、周囲からの信頼も厚い。研修医時代から働き詰めで、病院関係者からは病院に引きこもっていると揶揄されるほど。もともとは酒を嗜んでいたが、患者の容態が悪化したときに酔っていたら後悔するからと、現在は酒を控えている。出世に興味がなく、子供が生まれる予定の同期の身代わりに、離島にある西和島診療所への異動を買って出た。診療所に到着して間もなく、不思議な雷に打たれて医療器具を満載した鞄と共に異世界へ転移した。その後、現地で出会った謎の液状生物・エルを引き連れ、異世界の人々に治療を施すようになった。獣人の少女・コロネ、森神さま(キマイラ)との出会いを経て、世界樹の洞へ出立。洞で暮らす亜人たちと交流を深め、すべての病める者を救うための病院の設立を決意する。なお、異世界の住人からは傷病を癒す「治療魔法師」と誤認されている。
コロネ
獣人の少女。体毛は紫色で、目が赤く、猫耳と尻尾と牙が生えている。母親はコロネを産んですぐに、父親は狩りで負った傷がもとでそれぞれ命を落としている。祖父は獣人たちが暮らす村の村長を務めており、衰退の一途をたどる村を救おうと奔走している。アナフィラキシーの症状で苦しんでいた際に天海唯人に救われ、一命を取り留めた。奴隷として人間に差し出されることが決まっていたが、村で暴れていた森神さま(キマイラ)を鎮めた唯人への対価という体裁で、彼に従って村を出ることを許された。唯人の「医療は限られた者だけの力ではない」「学べば誰にでも扱える」という言葉に感銘を受け、唯人のもとで医療を学びながら、彼を補助する看護師のような役割を担うようになった。将来的には自分の力で傷病に苦しむ人たちを救いたいと考えている。
クレジット
- 原作
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津田 彷徨
書誌情報
高度に発達した医学は魔法と区別がつかない 8巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2022-05-09発行、 978-4065276860)
第2巻
(2022-09-22発行、 978-4065290859)
第3巻
(2023-01-23発行、 978-4065302323)
第4巻
(2023-07-21発行、 978-4065318409)
第5巻
(2023-11-22発行、 978-4065337011)
第6巻
(2024-03-22発行、 978-4065349519)
第7巻
(2024-07-23発行、 978-4065357026)
第8巻
(2024-11-21発行、 978-4065374597)