概要・あらすじ
2060年、南アフリカで発生した“暴露系”ウイルスクロージャー・ウイルスの大流行によって人類が危機に直面した世界で少年エノアと少女ハナはウイルスによる病魔に冒された末期状態の科学者モーリス・レインと共に、3人で暮らしていた。自分たち以外には生き残りはいないと思っていたが、ある日、エノア達の住む地へ原父(プロパテール)と名乗る軍隊を載せたヘリが降り立つ。
彼らの襲撃により“世界はまだ終わっていない”ことを知ったエノア達は、保護者であった科学者の死後、その土地で2人で生きていくことを決意する。そしてその20年後、エノアは南米の麻薬カルテルのボスとなっていた。原父連邦と敵対する立場となり、ハナと彼らの娘であるマナは、原父連邦に人質として囚われの身となっていた。
一方、彼らの息子である、エリヤは誘拐から間一髪逃れ、自律学習式機能を持つAIケルビムと2人で南米の僻地をさまよっていた。
登場人物・キャラクター
エリヤ・バラード
南米最大のカルテルのボスであるエンノイア・バラードを父に持つ。作品内では15歳〜19歳の期間が描かれている。父の組織と対立する原父連邦に、誘拐されかかったが、一人だけ逃げ出すことに成功。原父連邦外へ脱出しようとする。南米の僻地で出会ったノマドと共に原父連邦と戦う。 その後、マフィア同士の諍い、母と妹の奪還作戦を経て、自分のおかれた状況を嫌でも自覚し、理不尽さ悲観しつつも生き抜く事を決意する。娼婦である10歳以上年上ヘレナ・モントーヤに恋をしたり、純粋で家族思いの優しい性格であったが、過酷な戦いや仲間達の死を目の当たりにする経験を経て、裏切り者を冷徹に切り捨てるなど、どこか刹那的で、冷めた物の見方をする青年へと成長する。
エンノイア・バラード
エリヤの父。生まれつきクロージャーウィルスに対する耐性を持っており、ウィルスが流行した際も感染せず、父の友人である科学者モーリス・レイン、後の妻となるハナと米領バージン諸島の研究施設跡にて、少年期を過ごした。軍用A・I「ケルビム」を偶然見つけ、自力で修復するなどメカにも詳しい。 友人ニッコー・オブライエンによると根っからのリーダー気質。その後、南米最大のカルテルのボスとなり原父連邦と対立。その抗争は家族や仲間を巻き込んで行く事になる。ボスという名に違わぬ冷静沈着な性格。家族に対してもあまり執着していないように見える。
ハナ・バラード
エリヤの母。エンノイアと同じく生まれつきクロージャーウィルスに対する耐性を持っており、少女時代、彼と共に暮らしていた。海でエビを採ってきたり行動的。その後エンノイアの妻となり、エリヤ、マナ、ジナの三人の子供を産む。 娘マナと共にコロンビアの空港にて原父連邦に拘束され、その時の銃撃が原因で植物状態となる。
マナ・バラード
エリヤの妹。空港内で原父連邦によって、母ハナと共に誘拐される。リマ空港での人質取引が失敗した後は、オーストラリアの学校に通わされている。逃亡防止用のナノマシンを体内に注入されており、常に監視下の状況で自由に行動が出来ないにも関わらず、友人達とそれなりに楽しく学園生活を過ごしている。 兄のエリヤの救助を信じ、過酷な状況におかれながらも明るく屈託のない性格。水泳が得意で放課後はプールで過ごす事が多い。
ジナ・バラード
エリヤの姉。家族と共にコロンビアに移住した際、ミゲルという恋人がいたが、彼がカルテルの資金を持ち逃げしたため、父エノアに殺された。父への憎悪から、自暴となりヘロイン中毒となっていたが、家族の協力の元、症状を克服。その後医者になる事を決意し、ボランティア活動をしていたが、とある教会にて麻薬カルテルをねらった爆破テロの犠牲となる。 バラード一家に大きな悲しみとその後の家族内のしこりを残した。
モーリス・レイン
エリアの両親エノアとハナが共に暮らしていた科学者。エノアの父であるクリスの幼なじみで、同性愛者である事が原因で同級生にいじめられていたレインをクリスが助けた事から彼に対し尊敬と恋愛が入り交じった感情を抱いていた。ウィルスに対し抗体を持っていたわけではなく、エノアとハナから採取した免疫グロブリンを利用して生き延び、二人の親代わりをしていた。 徐々にウィルスに冒されており車いすで生活している。
ヘレナ・モントーヤ
コロンビア人。故郷の村を焼かれ、山岳ゲリラに従軍していたインディオの女性で娼婦をしながら生活をしている。肌の色はブラウン。ゲリラのキャンプで危機に陥り、その際、エリヤとノマド一団に助けられる。その後行動を共にする。エリヤと共に無事連邦外へ脱出した後、リマ市内で偶然にも警察に暴行を受け瀕死のエリヤと再会する。 自身の所属する売春宿へと連れ帰り、共に生活をしていくうちに深い関係となる。口は悪いが仲間思いで性病や暴力沙汰への対処にも慣れており面倒見が良い。娼婦仲間にも一目置かれた存在であるが、それが仇となり仲間の恋人から拷問に合い、右耳を切断され、右目を失う。
ケンジ・アサイ
日本人。ノマドのメンバー。ナイフを使わせたら右に出るものはいないほど。ナイフだけでなく、超人的な体術と精神力、銃器や爆発物の扱いなど幅広い技術を持つ。ノマドリーダーであるナザルバイエフ・カーンの手により訓練され、作りあげた最強の戦士。 常に目つきが鋭く、平気で人を殺していく冷徹な性格であるが、ソフィア・テオドレスに対しては従順でまるで子供のように大人しくなる。少年時代は日本の僻地で兄アサイ・リュウイチと共に暮らしており、兄に対して絶対的服従を強いられていたが、愛情や憧憬も抱いていた。兄をナザルバイエフ・カーンにより殺害された事がトラウマとなり、時折情緒不安定に陥る。
ソフィア・テオドレス
ノマドのメンバー。実年齢は41歳だが、少女型サイボーグ手術を受けており見た目は10歳の少女。IQ210の天才ハッカー。浮気性の母を持ち、その母に何も言えない父親、厳しい祖母がいる殺伐とした家庭環境で育ち、生きている実感を持てなくなり、リストカットなどの自傷行為を繰り返す。 少女時代はセックス依存症となり、奇行と淫行に明け暮れるが、数学とコンピュータの扱いに関しては超絶的な才能を発揮。その能力を買われ、原父にスカウトされ一時原父が管理する施設に住み、日々与えられた難題をこなしていた。施設内においても男漁りを続け、全て父親の違う8人もの子供を産む。
ナザルバイエフ・カーン
ノマドのリーダー。はグルジアの軍人であった。口ひげを生やしており左目に2本の大きな傷跡がある。冷静沈着な性格で、戦闘内におても適格な指示を出す。「大佐」と呼ばれ、戦闘を生き甲斐とする根っからの軍人気質。ケンジ・アサイの戦闘能力の高さを気に入り、ノマドのメンバーに引き入れようとする際にケンジの兄を射殺。 ケンジに対し自分を憎むようにけしかけ、それを生きる糧にするよう教え込む。
ワイクリフ
ノマドのメンバー。ドレッドヘアの黒人で両目をサイボーグ化している。トラップのスペシャリスト。元は中米で軍人をしていたが、自分の作った地雷により村の人々が虐殺に合う光景を目の当たりにし、助けられなかった事を悔やんでおり、共に旅をしていたカチュアを、命に替えて守ろうとする。
ミリアム・アローナ
ペルー警察の警察官。10歳の頃までイギリスに在住。その後SASの隊員であった父の殉職をきっかけにペルーに移住。同僚レオナルド・ペッソアの死の謎を追うためエリヤと共に行動する。ロングヘアを束ね、パンツスーツを着用している事が多く男勝りのサバサバした性格で口も悪い。 ムエタイを習得している。24歳で処女である事をエリヤにしばしネタにされる。
ニッコー・オブライエン
アイルランド人。コンピューター分野に詳しく、AIのスペシャリストで、かつてエリヤの父、エノアの「左腕」であったが、荒っぽい世界に嫌気がさし、現在はカルテルの家業からは足を洗い、妻リタと共にコンピューターの部品などを扱うジャンク屋を営みながらひっそりと暮らしている。 現場は引退したとはいえ、未だにその腕は現役。エリヤが共に旅してきたケルビムを修理し、エリヤが持ち込んだディスクを解読する。
トニー・アイモア
アイルランド人。エリアの父、エノアの「右腕」。アフリカのマリ共和国出身の黒人男性で、カルテルの重鎮である。額部分サイボーグ化している。エノアがリマ市を離れている間、そのエリアの麻薬市場をまかされている。警察相手にも決してひるまない態度で接し、仲間や部下からも頼られ一目置かれた存在だが、そのシマを奪おうとする輩から常に目をつけられている。 ヘレナの働く売春宿を取り仕切っており、エリヤをそこで働かせるように取りはからう。
集団・組織
原父連邦 (ぐのーしあ)
『EDEN 〜It's an Endless World!〜』に登場する組織。猛威を振るうクロージャーウィルスに対しなす術を持たず、何も対処しようとしない国連と、先進各国ばかりが特権を持つ事に反発した勢力が独自に立ち上げた国際組織。当初は単なる研究者団体であったらしい。主な領土は南米の北半分、中東の一部、アフリカ南部、東南アジア、オーストラリア、日本。 途上国の発展や特権向上のためという信念を元、武力と暴力による強引な周辺国の併合を繰り返しすが、帝国主義的だとして反感を持つ者が数多く出現し、対抗勢力となっていく。秘密裏に開発、量産した生物兵器アイオーンを有し反逆者と敵対者を冷徹に殺戮する。また、ヘロインを密造し資金を得ている。 世界中にネットワークを持つエノアのカルテルと敵対。エノアの妻子を人質にとる。
カルテル
『EDEN 〜It's an Endless World!〜』に登場する組織。エンノイア・バラードの組織した世界市場の40%をカバーする国際麻薬組織。かつて島で二人で生活していたエノアとハナがコロンビアに移住し、その際知合ったトニー・アイモア、ニッコー・オブライエンらと共にわずか20年足らずで強大な組織となる。 主にコカインを扱っている。中毒者が多くおり、その事が原因でバラード一家を憎悪する者も多数存在。原父による、エノアの妻子であるハナとマナの誘拐以後、共通の敵を持つノマドと互いに協力しながら、原父と対決していく。
ノマド
『EDEN 〜It's an Endless World!〜』に登場する組織。ソフィア・テオドレス、ケンジ・アサイ、ワイクリフ、ナザルバイエフ・カーン大佐らが所属する団体の通称。本来の意味は「遊牧民」であるが、特定の民族、宗教、土地の一切を所有せず、軍事力を商品として世界各地に戦闘員を派遣する国際武装集団。 ケンジやカーン大佐のような武闘派がほとんどを締めるが、ソフィアのようなITのプロフェッショナルも所属し、様々な分野において最高レベルの人材を擁する。構成員はアフリカ人、南米の遊牧民や日本人など少数民族出身者が多いとされる。