世界観
本作『FINAL FANTASY LOST STRANGER』は、実在のTVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズと「異世界転生」の融合がコンセプトとなっている。そのため、本作に登場する「異世界」はゲームには存在しないオリジナルのものだが、随所に「FINAL FANTASY」シリーズの要素が詰め込まれている。また、主人公の佐々木正吾は「FINAL FANTASY」シリーズの大ファンであり、彼の視点からそれらの要素が解説、描写される演出が特徴となっている。
あらすじ
第1巻
TVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズにあこがれて、ゲームメーカーのスクウェア・エニックスに入社した佐々木正吾は、あこがれだけではやっていけないという現実に打ちのめされていた。妹の佐々木夕子に励まされ、心機一転して仕事に打ち込もうと考えていた正吾だったが、その直後、二人はトラックに轢かれてしまう。意識を取り戻した正吾は、自分が見知らぬ異世界に迷い込んでいる事に気づく。冒険者であるシャルル・リンキンフェザーに拾われた正吾は夕子と合流し、元の世界に戻るため冒険者として生計を立てていく事を決意する。しかしある日、彼らは明け無しのホワイトドラゴンと遭遇。その場に取り残されていた子供を救う事に成功するものの、夕子が死亡してしまう。夕子が死んだ事に絶望する中、自らに「ライブラ」の力が備わっている事を知った正吾は、夕子を復活させるため伝説の「レイズ」を探す事を決意する。レイズの情報を得るには一人前の冒険者になる必要があるため、正吾は雪辱戦ともいえる「明け無しのホワイトドラゴン討伐戦」への参加を決めるのだった。
第2巻
佐々木正吾達は、かろうじてランドルフ・アマランスの指揮する「明け無しのホワイトドラゴン討伐戦」への参加が認められた。「アイテム組み合わせ」という新たな力を編み出した正吾はドラゴンにもダメージを与え、戦いは有利に動いているかに見えた。しかし、ドラゴンの反撃で隊は壊滅。正吾達は絶体絶命の危機に陥ってしまう。「FINAL FANTASY」シリーズの知識からドラゴンの正体に気づいた正吾は、瀕死の仲間達を助けるため捨て身の特攻を行う。倒れた仲間達の力を借りた一撃は、ドラゴンを倒す決定打となる。勝利した討伐隊は町へと凱旋し、正吾もランドルフから一人前の冒険者として認められるのだった。その後、「レイズ」を探すべく、正吾達は新たな地、ミシディアを目指す。情報屋で情報を得ようとした一行だったが、情報のあまりの値段に門前払い。同じく門前払いを食らったサラ・ミシディアンと正吾達は意気投合し、彼女の探す猫を見つけたら、正吾達をレイズの手がかりが眠る大図書館に入れるという取り引きを交わす。しかし猫探しは一筋縄では行かず、またサラを狙う「禁術倶楽部」まで加わり、一行は騒動の渦中に足を踏み入れていくのだった。
第3巻
佐々木正吾達は禁術倶楽部の「メーガス三姉妹」と戦う。正吾は不意をつく事でサラ・ミシディアンを逃がす事に成功するが、正吾に興味を示したマグに敗れ、パーティごと囚われてしまう。メーガス三姉妹のアジトに囚われた一行は、正吾の「アイテム組み合わせ」の力を使って脱出。無事にミシディアの町へと戻るが、正吾達は自分達が「サラ姫殺人未遂犯」として指名手配されていた事を知る。流されるままガシュイーンに囚われる一行だったが、再会したサラが彼等を弁護し、仲間だと宣言する事で冤罪を晴らす事に成功するのだった。メーガス三姉妹との戦いで装備を失った正吾達は、サラの計らいで新たな装備を得て、彼女に力を貸す事を誓う。敵の目的がバリアの塔に守られた「ミシディアの羽衣」だと推測する一行だったが、そこにメーガス三姉妹が差し向けた「カルコブリーナ」が襲い掛かる。ガシュイーンをはじめとする魔法騎士団が応戦するが、倒しても倒しても復活するカルコブリーナに、次第に劣勢になってしまう。そこにカルコブリーナの正体と能力を見抜いた正吾が策を提案。ガシュイーンと共闘しつつカルコブリーナを倒す事に成功するのだった。
登場人物・キャラクター
佐々木 正吾 (ささき しょうご)
株式会社スクウェア・エニックスに入社して4年目のプランナーの男性。黒い短髪の青年で、子供の頃からTVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズが大好きで、ゲームを作るため現在の道を志した。しかし多くのしがらみで、自由にゲームが作れない現在の職場に不満を溜め込んでいる。妹である佐々木夕子と共にトラックに轢かれ、「異世界」に転生する。夕子に引っ張られる形でシャルル・リンキンフェザーのパーティに合流。彼らと交流を育んでいく。しかし、明け無しのホワイトドラゴンとの戦闘で夕子と死別。一時は絶望するが、その事件をきっかけに佐々木正吾自身に宿る「ライブラ」の力に気づき、夕子をよみがえらせるため、同じく伝説とされる「レイズ」を探す事を決意する。職は当初は「無職(すっぴん)」だったが、ミシディアでギルドに登録して「弓術士」に転職しいる。高校時代、弓道部に入っていた経験から使用武器は弓。またライブラの力を検証している内に「アイテム組み合わせ」という新たな力を手に入れ、自身の遠距離戦闘に取り入れている。「メーガス三姉妹」との戦いで装備を失ったあとは、サラ・ミシディアンに用意してもらった「ルーンの弓」を使っている。
佐々木 夕子 (ささき ゆうこ)
株式会社スクウェア・エニックスに入社して2年目の営業職の女性。佐々木正吾の妹で、長い黒髪をポニーテールにしている。兄と違って社交的で要領がいいため、順調に出世街道を邁進している。ただし本人は、出世よりも兄のゲーム作りを手伝いたいと思っている。兄と共にトラックに轢かれ、異世界に転生する。とまどう兄とは違い、持ち前のポジティブさであっさり異世界に順応し、兄を引っ張っていく。元の世界に戻る方法を探すため冒険者になる事を考え、シャルル・リンキンフェザーのパーティに弟子入りという形で入る。しかし、明け無しのホワイトドラゴンに襲われている子供を助けるため、体を張った際にドラゴンの攻撃を受けて即死した。死後、その身体はクリスタルとなり、彼女を復活させるため正吾は「レイズ」を探す旅に出る事となる。佐々木夕子のクリスタルはシャルルによって首飾りにされ、ふだんは正吾が首から下げている。子供の頃、TVゲーム『FINAL FANTASY Ⅸ』の主人公であるジタン・トライバルが口にした「誰かを助けるのに理由がいるかい?」というセリフで正吾によく慰められたため、この言葉が彼女の中でとても大切なものになっている。
シャルル・リンキンフェザー
ニルポの冒険者の女性。長い薄緑色の髪をした人間の少女で、明るく心優しい性格をしている。職は回復魔法を習得した白魔道士で、レイ・ハガクレ、[◆ダストン・ヴァルタ}と共にパーティを組み、一行のリーダーを務めている。ケガ人を見かけると回復させずにいられない性質を持ち、負傷者には回復魔法を連発する。ただし使えるのは、初級回復魔法の「ケアル」のみ。効果の低いケアルでケガを癒やすためには、ひたすら連発する必要があるため、彼女が治療を始めるとひたすらケアルを叫ぶ姿が見られる。また一心不乱に魔法を連発するため、治療が終ると魔力切れで倒れてしまう。そのため、パーティでは彼女の悪癖だと認識されている。佐々木夕子と佐々木正吾のパーティ加入を快く引き受け、右も左もわからない彼らに異世界の事を教えた。夕子が亡くなった際にはその死を悲しみ、落ち込んだ正吾に対しても献身的に接し励ました。正吾が「レイズ」を探す事を決意した際には、その決意に同調し、探す事を手伝う事を約束した。「メーガス三姉妹」との戦いで装備を失ったあとは、サラ・ミシディアンに用意してもらった「魔道士のつえ」を使っている。
レイ・ハガクレ
ニルポの冒険者で、褐色の肌をしたエレイン族の女性。シビアな性格で、初対面の人間には強く警戒して接する。職は頑丈な鎧を身にまとった戦士で、シャルル・リンキンフェザー、[◆ダストン・ヴァルタ}と共にパーティを組んでいる。リーダーのシャルルの事は信頼しているものの、見ず知らずのケガ人を癒やして回ったり、佐々木夕子と佐々木正吾をパーティに加えようとした際には反対している。ただし最終的には根負けして渋々、彼女の言い分を受け入れるのが、パーティ内でのお決まりとなっている。新入りである正吾に対しても厳しく接したが、夕子が亡くなった際にはその死を悲しみ、正吾の事も心配していた。正吾が自分の実力不足で落ち込んでいた際には、彼の成長を認めるのを言葉にして伝え、彼女なりの方法で彼を励ますなど、ふだんは厳しい物言いが目立つが、仲間意識は人一倍強い面を見せた。戦闘では斧を武器にして戦う前衛。「メーガス三姉妹」との戦いで装備を失ったあとは、サラ・ミシディアンに用意してもらった「ミスリルアクス」と新しい鎧を使っている。
ダストン・ヴァルタ
ニルポの冒険者で、ヒュージ族の男性。髭を生やした左目に切り傷の跡がある。人当たりがよく、面倒見のいい性格をしており、シャルル・リンキンフェザー、[◆レイ・ハガクレ}のパーティ内では二人のフォローに回る事が多い。職は攻撃魔法をあやつる黒魔道士で、戦闘では主に炎の魔法「ファイア」を使う。初心者の佐々木夕子と佐々木正吾にも分け隔てなく接し、シャルルと共に彼らの面倒を見ている。実はがたいのいい見た目に反して手先が器用で、凝り性なため料理が得意。彼の作った料理は見た目も味もよく、パーティ内ではかなり好評だった。「メーガス三姉妹」との戦いで装備を失ったあとは、サラ・ミシディアンに用意してもらった「ほのおのロッド」を使っている。
モグ・モグカン
シャルル・リンキンフェザー達のパーティと行動を共にするモーグリ族。胸のふさふさした毛の部分に、細工のされた胸飾りを付けている。レイ・ハガクレやダストン・ヴァルタなど、身近な存在の真似をして同じポーズを取っているパーティのマスコット的な存在。佐々木夕子が触った感じでは、胸の毛の部分は実家の犬によく似た手触りらしい。「クポ」としか鳴かず、言葉は交わす事はできないが、夕子にはなついていたようで、夕子が亡くなったあとは寂しがっていた。
ランドルフ・アマランス
ニルポの冒険者の男性。職はナイトで、目つきが鋭く、冒険者ギルドでは上位ランカーとして名を馳せている。名声に見合った実力を持ち、シャルル・リンキンフェザー達のパーティでは、総がかりでも苦戦するモンスター・クアールを単独で切り伏せるほどの剣の腕前を持つ。明け無しのホワイトドラゴンに無謀にも挑み、佐々木夕子を死なせた佐々木正吾を厳しく弾劾し、彼に現実を突きつけた。実は「冒険」は「遊び」ではないという信念を持ち、人が無為に死ぬ事を忌避する実直な性格をしている。正吾に厳しく接したのも、実力を弁えない正吾が無駄死にするのを避けるためであり、遠まわしに実力に見合った仕事をするように忠告していたのだった。そのため「明け無しのホワイトドラゴンの討伐隊」を主導して結成した際には、正吾のがんばりを認め、三つの誓約を守る事を条件に、討伐隊に加わる事を許可している。ドラゴンの討伐戦では主力として戦うが、カウンター攻撃を受けて重傷を負う。しかし、正吾がドラゴンを倒す事で九死に一生を得た。戦いのあとは、正吾を一人前の冒険者として認め、握手を交わした。
ニ=エルート・ロウ
ニルポの冒険者で、キャッター族の女性。お調子者な性格をしている。職はシーフで、ランドルフ・アマランスのパーティに所属している。ランドルフに好意を抱いており、彼が厳しく接する佐々木正吾にも嫌味な言動を繰り返して行った。ランドルフの主導する「明け無しのホワイトドラゴンの討伐隊」にも参加。討伐戦ではたまたま正吾の近くにいたのが幸いし、ドラゴンのカウンター技から逃れる事ができた。重傷を負ったランドルフから、自分を見捨てて生き残りを逃がすように言われるが、これを拒絶。正吾達にこれまでの行為を謝罪し、涙ながらにランドルフを助ける事を懇願した。ドラゴンの討伐後は、討伐戦で見た正吾の奮戦を見て自身の未熟さを痛感し、初心に帰ってやり直す事を決意。討伐戦で手に入れた素材で「竜の首飾り」を作り、正吾にお礼として手渡する際に、その決意を伝えた。
サラ・ミシディアン
ミシディアで飼い猫であるルカーンを探していた金髪の少女。情報屋でルカーンの情報を求めたものの、代価が「自身の情報のすべて」だったため断念した。同じく情報屋に門前払いされた佐々木正吾達に、大図書館に入る手伝いをするのと引き換えに、ルカーンを探すのを依頼した。町中では頭巾を被って正体を隠していたが、その正体はミシディア王家の王女その人。王女の存在をつけ狙う「メーガス三姉妹」から、正吾に逃してもらった事で彼等を信用し、その後、王女殺害未遂犯の濡れ衣を着せられて囚われた正吾達を助けた。正吾達との出会いをきっかけにして、腐敗した王家の現状に向き合う事を決意。父王であるアルス・ミシディアンに、次代の王になる事と正吾達が仲間である事を宣言し、正吾達に掛かった冤罪を晴らした。その後、サラ・ミシディアン自身と戦う事を決意してくれた正吾達に、ポケットマネーで装備を買い与えている。
ルカーン
サラ・ミシディアンの飼い猫。その正体はTVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズに登場するモンスター「ゲイラキャット」。ゲームでは凧を背負った空飛ぶ猫として描かれているが、異世界ではふつうの猫と見分けがつかない姿をしている。ただし、自分でハンガーや布を集めて凧を作る習性を持っており、サラの所から逃げ出したあと、街中のハンガーや洗濯物を盗んで時計塔で凧を作っていた。ゲームの時と同じく浮遊する魔法「レビテト」を使用可能。サラが時計塔より落ちた際には、レビテトを使ってサラを助けた。
アルス・ミシディアン
ミシディアの国王を務める男性。かつては心やさしく聡明な人物で、腐敗していく国の未来を憂いており、娘であるサラ・ミシディアンからも尊敬されていた。しかし王妃の死を境に人が変わり、現在では腐敗した貴族達の言いなりとなっていた。王女殺害の未遂犯として佐々木正吾達が濡れ衣が着せられた際も、サラの言い分に耳を貸さず、貴族達に言われるがまま、正吾達を処刑を王命として下した。しかし、処刑場に現れたサラの心からの叫びを聞き、処刑の命令を取り下げる。
ガシュイーン
ミシディアの近衛魔法騎士団の団長を務めるエレイン族の男性。眼鏡をかけている。お転婆なサラ・ミシディアンの言動に頭を痛めている。ミシディアの名家の跡取り息子と、異国の出身者の母親のあいだに生まれたハーフ。実家が母親の存在を認めず、幼い頃に引き離されたせいで、母親との思い出は極端に少ない。また血統主義に凝り固まったミシディアの貴族社会では、異国とのハーフであるため爪弾きになっていたが、その中で実力で成り上がった人物。母親はサラの侍女として働いており、母親がサラを刺客から守って死んだ際にも現場にいたが、母親を侮蔑したかのような態度を取ったため、サラから反感を持たれていた。実は若い頃は、自分の苦しみの元凶といえる存在として母親を憎んでいたが、誰よりも苦しみの渦中にいながら、自身にやさしく微笑み掛けてくれた母親を、内心では気高い存在として尊敬している。その母親が命を懸けて守ったサラの事を何としてでも守る事を、ガシュイーン自身の誇りとしており、カルコブリーナとの戦いでサラが危機に陥った際には躊躇(ためら)わず身を呈して彼女を庇(かば)った。当初は佐々木正吾には警戒心を抱いていたが、カルコブリーナの戦いで共闘し、お互いに認め合う仲となる。
パロム
ミシディアの宮廷魔道士。マルオーン族の男性。少年のような見た目をしており、ポロムとは双子の兄妹。サラ・ミシディアンの家庭教師を務めている。サラの行く末を案じており、腐敗を正すため敢えて険しい道を行こうとするサラを優しく諭しつつ、どの道を選んでもサラと共にあるという自分達の決意を伝えた。戦闘ではポロムと共に戦う。かなりの使い手で、幼い見た目に反して上級魔法すら使いこなす。ポロムと共に、TVゲーム『FINAL FANTASY Ⅳ』に登場する双子魔道士と同じ名前。
ポロム
ミシディアの宮廷魔道士。マルオーン族の女性。少女のような見た目をしており、パロムとは双子の兄妹。サラ・ミシディアンの家庭教師を務めている。サラの行く末を案じており、腐敗を正すため敢えて険しい道を行こうとするサラを優しく諭しつつ、どの道を選んでもサラと共にあるという自分達の決意を伝えた。戦闘ではパロムと共に戦う。かなりの使い手で、幼い見た目に反して上級魔法すら使いこなす。パロムと共に、TVゲーム『FINAL FANTASY Ⅳ』に登場する双子魔道士と同じ名前をしている。
明け無しのホワイトドラゴン (あけなしのほわいとどらごん)
ニルポの北の隧道に棲む白い龍。本来は雪山に棲んでいたが、町の近郊に姿を現わすようになって来たため、ギルドにより討伐依頼が出ていた。何組もの冒険者パーティを返り討ちにする強力なドラゴンで、町の年寄りは「御山のヌシ」として恐れている。町の近郊に出現し、逃げ遅れた子供を助けようとした佐々木夕子を殺した。並の攻撃ではびくともしない強靭な鱗に、巨大な体から来るパワーは強烈そのもの。口から吐くブリザードブレスは、対象を一瞬で氷漬けにする威力がある。また霧状のバリアをまとう事で、攻撃して来た敵全員を凍らせる凶悪なカウンター攻撃を放つ事も可能。佐々木正吾は、このカウンター技をTVゲーム『FINAL FANTASY Ⅳ』に登場した「ミストドラゴン」と同じだと考えた。その後、その存在を危険視され、討伐に2000万ギルの褒賞金がかかる。ランドルフ・アマランス主導による大討伐隊が結成され、棲み処としている雪山で決戦を行う。数に圧されるもののカウンター技で討伐隊を全滅寸前まで追い込む。しかし正吾が捨て身で「ボムの塊」を口に放り込んだ事で、体内から爆発されて死亡した。
マグ
メーガス三姉妹の長女。グラマラスなスタイルに扇情的な格好をした美女。三姉妹のリーダー的な存在で、妹のドグ、ラグと共に禁術倶楽部に所属するテロリストとして指名手配されている。知識欲の権化ともいえるマッドサイエンティストで、自身の知らない魔法の知識を求めている。貧民階級の出身で、権威主義が蔓延(はびこ)って学術都市として本来の意義を失った現在のミシディアには失望しており、現体制を崩壊させて新たな国を興す事を目論む。そのための犠牲は必要なものと割り切っており、一般人に犠牲者が出る事も厭わない。自らの野望を達成するためサラ・ミシディアンを付け狙うが、佐々木正吾に邪魔をされて失敗。その際の正吾の言動から、彼が伝説の魔法「ライブラ」を持つ事を見抜いた。正吾とシャルル・リンキンフェザーに強い興味を示しており、彼等をパーティごと拉致し、マグ自らの目的を語って聞かせた。戦闘では鎌のような形をした魔杖を使い、浮遊魔法や重力魔法など多彩な魔法をあやつる。また三姉妹ならではのコンビネーションを得意とし、その実力は大魔道士クラスと称された。
ドグ
メーガス三姉妹の次女。スレンダーなスタイルをした緑髪の女性。軍帽のような帽子をかぶり、槍型の魔杖で武装している。マグやラグに比べて口数が少なく、あまり自己主張をしない。だがマグを「姉者」と呼んで慕っており、彼女の命令には忠実な性格をしている。戦闘では停止魔法の「ホールド」、炎の攻撃魔法「ファイア」など多彩な魔法をあやつる。
ラグ
メーガス三姉妹の三女。ゴスロリドレスに身を包んだ小柄な少女。二刀流のナイフの形をした魔杖で武装している。戦闘では伏兵を担当しており、マグやドグが敵を引き付けているあいだに、魔法で援護をするのが役目。佐々木正吾とメーガス三姉妹が戦った際に、マグが無詠唱で「ブリザガ」を唱えたように見えたのは、ラグが物陰に隠れて行ったもので、姉妹の連携の要となっている。ゲームのメーガス三姉妹の知識を持つ正吾に見抜かれ、正吾が咄嗟に名前を呼んだ事で困惑。連携を崩してしまった。
ボーゲン
ミシディアの伯爵の男性。恰幅のよい髭面の老紳士で、非常に傲慢な性格をした現在の腐敗したミシディアを象徴とするような人物。貧民階級のメーガス三姉妹を拾って、教育を施したが、それらは善意ではなく、自分の手駒を欲した行為で、彼女達に論文を書かせて自らの名前で発表していた。またメーガス三姉妹がテロリスト活動をしていると知りつつも、自らの別邸に匿って利用している。大魔道士と謳われた先祖を持ち、実家の館の隠し部屋で、伝説の魔法「ホーリー」が記された先祖の手記を見つける。手記に施された封印を解除し、復活したホーリーの力でミシディア王家に取って代わる事を目論む。しかし、実はマグ達に蛇蝎の如く嫌われており、彼女に封印解除を依頼した際に、封印解除のために必要な眼球をえぐられ、大ケガを負う。その後、一命を取り留め、メーガス三姉妹をミシディア王家に告発するものの、逆に彼が犯行に関与していると疑われ、テロリストの主犯格として囚われてしまう。
グリード・トレード
情報屋を営むマルオーン族の男性。白と黒のツートンカラーの髪に、モノクルをかけ、子供のような姿をしている。迷子の猫から伝説の魔法に関する事まで幅広い情報を扱っており、その情報の精度の高さもかなりのもの。ただし同時に金の亡者といわれるほどの守銭奴で、情報には相応以上の高い代償が求められる。そのため「強欲のグリード」と呼ばれる事もしばしばで、情報の質の高さは知れ渡っているが、利用する事を躊躇う人が多いほどである。
カルコブリーナ
3体ずつ計6体1組で行動しているモンスター。ふだんは「カルコ」と「ブリーナ」と呼ばれる女の子の人形の姿をしており、カルコとブリーナのどちらか片方だけ全滅させると残った人形が合体し、巨大な赤ん坊のような姿をした人形モンスター「カルコブリーナ」へと変身する。分裂状態ではそこまで攻撃力はないが、合体すると巨大化し、脅威的な攻撃力を持つ。カルコブリーナは一定時間経つと、再びカルコとブリーナの6体に分裂してしまう。倒すにはカルコブリーナが分裂する前に一気に破壊するか、カルコとブリーナ6体を一気に倒す必要がある。また異世界ではゲームと違い、ある程度ダメージを受けたら分裂するようになっているため、実質的に分裂状態を一気に叩くしか倒す方法が存在しない。さらに複数のカルコブリーナが襲い掛かって来た場合、分裂したカルコとブリーナは、同じカルコブリーナから分裂したグループを倒さなければならない。このため、複数のカルコブリーナが襲い掛かった場合、違うグループのカルコとブリーナが入り混じって乱戦となってしまうため、倒す難易度は非常に上がってしまう。TVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズに登場するモンスターでもある。
集団・組織
メーガス三姉妹 (めーがすさんしまい)
TVゲーム『FINAL FANTASY』に登場する三人1組のキャラクター。ゲームではシリーズによって敵モンスターとして扱われたり、召喚獣として扱われるが、異世界では三人姉妹の魔女となっている。長女のマグ、次女のドグ、三女のラグの名前はゲーム時代と変わらず、姉妹ならではのコンビネーション攻撃を得意とする。禁術倶楽部に所属し、ミシディアで破壊活動を行っているため、ミシディアではテロリストとして指名手配を受けている。
情報屋 (じょうほうや)
グリード・トレードが営む、情報を取り扱う店。グリードが情報屋として有名であるため、「グリード・トレード」がそのまま情報屋を指す場合も存在する。ミシディアに立派な店を構えており、情報を求めて来た人間に対して法外な報酬を要求する。佐々木正吾が「レイズ」を求めて訪れた際には、「6億ギルの一括払い」という条件を提示し、門前払いをした。
禁術倶楽部 (きんじゅつくらぶ)
ミシディアで活動する研究機関。貴族達に私物化された学術都市に見切りをつけ、あらゆるしがらみから学問を解き放ち、純粋に魔法の道を究める事を目的としている。そのためには過激な行動も止むなしと考えており、実際に一般人にまで被害が出ているため、ミシディア上層部からは危険なテロリスト組織として認識されている。また組織の基本方針として「ライブラ」などの特別な力を集めている模様。構成員にはメーガス三姉妹がいる。
場所
ニルポ
巨木に囲まれたのどかな町。町の周囲には多数のモンスターが存在するが、冒険者達がそれらを駆除して日銭を稼いでいるのもあり、町は平和そのもの。シャルル・リンキンフェザーのパーティも拠点にしており、彼女達に案内されて佐々木正吾と佐々木夕子が異世界で初めて訪れた町となった。ただ冒険者が登録するためのギルドはないらしく、新しく冒険者になる場合は、ほかの大きな町に行かなければならない。平和な町だったが、明け無しのホワイトドラゴンの出現によって存亡の危機に立たされてしまう。しかし正吾達によってドラゴンが倒された事で、危機を乗り越え、再びのどかで平和な町に戻った。
異世界 (いせかい)
トラック事故に巻き込まれた佐々木正吾と佐々木夕子が迷い込んだ世界。TVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズの影響が色濃く出ている世界で、「FINAL FANTASY」シリーズ由来の種族や魔法、街などが存在している。モンスターも存在し、冒険者達は人に仇なすモンスターを退治したり、秘境を探索したりして生計を立てている。なお、「FINAL FANTASY」シリーズ由来のものではない、異世界オリジナルの要素も存在し、例えば異世界に住む種族は「エレイン族」や「ヒュージ族」など、「FINAL FANTASY」シリーズにはない独自の名称になっている。
ミシディア
魔道技術を生み出す学術都市。TVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズに登場する町でもある。異世界では最先端の魔法の知識によって栄えており、世界中の魔法の知識が集まる「大図書館」が存在するが、一般には開放されておらず、著名な冒険者や国賓でもなければ入る事はできない。王と貴族が治める魔法王国でもあり、王城には王家に伝わる秘宝が存在するとされている。また研究機関である「王立アカデミー」で成績を残せば、成り上がる事ができる実力主義の極競争社会とされているが、実態は貴族達の権威がとても強く、市民の成果はすべて貴族が横取りしているのが実態である。近年は貴族の権威主義が行き過ぎており、一般階級の市民も税金とは別に、賄賂を貴族に贈らなければ満足に生活する事もできなくなっている。また金のない市民は貧民階級に落とされ、まともな仕事に就く事もできず、搾取されるだけの奴隷のような扱いを受けてしまう。貴族達の専横はミシディアの社会問題となっており、禁術倶楽部のテロリスト活動を招く要因にもなっている。
バリアの塔 (ばりあのとう)
ミシディアの王家に存在する三つの塔。ミシディア王家の秘宝である「ミシディアの羽衣」が眠る「ミシディア大聖堂」を守るように配置されており、三つの塔が力を送り込む事で、外敵の侵入を阻む無敵の結界を張り巡らしている。バリアの塔は初代ミシディア王が作り、その血を用いて結界の力を制御していた。そのため王家の血を引く者であれば、結界に引っかからずに通過する事ができる。また王族の「成人の儀式」の際には大聖堂が使われるため、結界が解かれる。そのため、この日だけは王族以外の者も結界内部に入る事ができる。カルコブリーナ襲撃の際に一部を破壊されたが、塔には自動修復機能があり、多少の損傷ならば時間を掛ければ自然と修復する。
その他キーワード
ヒュージ族 (ひゅーじぞく)
筋肉質で大柄な体を持つ人間の種族。恵まれた体格を活かし、力仕事に就いている者が多い。『FINAL FANTASY XIV』に登場する種族「ルガディン」に似ている。
ボムのかけら
「ボム」というモンスターが落とすアイテム。自爆して周囲を破壊するボムと同じ性質を持ったアイテムで、使うと爆発が生じる。ただし品質が安定しておらず、火気を近づけたら爆発する物、衝撃を与えたら爆発する物などが存在する。それらの品質を見抜く方法がないため、狙って爆発させるのが難しく、使い勝手は悪い。そのため、異世界では基本的にマッチやライターの代用品として使われている。弱いボムを倒せば簡単に手に入れる事もできるため供給も多く、ニルポの街では1個1ギルで投げ売りされている。佐々木正吾は「ライブラ」でボムのかけらの品質が見抜けるため、適した品質のボムのかけらを集め、「ボムの矢」や「ボムの塊」を作った。
エレイン族 (えれいんぞく)
尖った耳を持つ人間の種族。種族柄、長身痩軀の体をした者が多く、人間より平均身長が高い。『FINAL FANTASY XIV』に登場する種族「エレゼン」に似ている。
ケアル
ケガを癒やす初級の「治療魔法」。上位魔法に「ケアルラ」「ケアルガ」が存在する。TVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズに登場する魔法でもある。異世界ではメジャーな回復方法となっており、佐々木正吾によれば、その効能は「温かく気持ちがいいサウナ感を凝縮したような感じ」。ただしケアル系統の魔法は、あくまで応急処置レベルの治療しかできない。止血や痛み止め、体力回復には大きな力を発揮するが、骨折や部位欠損、致命傷の治療には、上級の「ケアルガ」でも気休め程度の効果しか発揮しない。そのため大ケガした場合は、ケアルで応急処置を受けたあと、きちんと包帯や傷薬で治療を受けなければならない。シャルル・リンキンフェザーの得意技で、ケガ人を見つけるとひたすら連発している。
キャッター族 (きゃったーぞく)
猫の耳や尻尾を生やした獣人の種族。生えている尻尾や耳の色や形は個人差が大きく、同じ種族でも大きく違う場合がある。『FINAL FANTASY XIV』に登場する種族「ミコッテ」に似ている。
クリスタル
人が死んだあと、肉体から抜き出る「魂の結晶」を指す。TVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズにも登場するキーワードだが、ゲームの場合はシリーズによって意味合いが異なる。異世界では異世界では、一般的に死体といっしょに埋葬されたり、生前の親しい人物が形見として肌身離さず持ち歩いたりと、大切に扱われている。明け無しのホワイトドラゴンに襲われて佐々木夕子が死亡した際に、現実世界からやって来た彼女の亡骸からもクリスタルは現れている。夕子のクリスタルはシャルル・リンキンフェザーが回収して首飾りの形に加工し、佐々木正吾に手渡した。それ以降、正吾は夕子のクリスタルを肌身離さず持っている。
職 (じょぶ)
冒険者が就く職業。ギルドに申請する事で登録する事ができ、未登録状態は「無職(すっぴん)」といわれる。佐々木夕子と佐々木正吾はなにも知らずに冒険者になったため、当初は二人とも揃って「無職」状態だった。ニルポにはギルドもなかったため登録できずにいたが、のちに正吾はミシディアにあるギルドで登録し、「弓術士(きゅうじゅつし)」に転職した。
アイテム組み合わせ (あいてむくみあわせ)
佐々木正吾が「ライブラ」の力を応用して生み出した技。アイテムの能力には、ほかのアイテムと組み合わせる事で効果が大きくなるものが存在し、それらのアイテムをライブラで識別すると「組み合わせ可」の表示が出る。正吾は「ボムのかけら」と「上質な木の矢」をライブラで見た際に、その事に気づき、二つのアイテムを組み合わせる事で、両方のアイテムの性質を持つ「ボムの矢」を生み出した。アイテムの組み合わせは不思議な力による自動的なものではなく、手作業で矢にボムのかけらをくっつけただけのものだが、成功するとライブラで表示されるアイテムの名前が新しいアイテムの名前となる。また明け無しのホワイトドラゴンの討伐戦では、火気に触れたら爆発する「ボムのかけら」を集めた「ボムの塊」を用意しており、勝負の決め手となった。
レイズ
戦闘不能になった者をよみがえらせる「蘇生魔法」。TVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズに登場する魔法でもある。異世界では、お伽噺に伝わるだけの存在しない魔法だとされていたが、佐々木正吾は同じくお伽噺にのみ存在するとされる「ライブラ」の力に目覚めたため、その存在を信じ、佐々木夕子をよみがえらせるため探し出す事を決意した。
マルオーン族 (まるおーんぞく)
人間の子供くらいの背しかない小人の種族。一見すると人間の子供と見分けがつかないが、頭が大きく、2頭身から3頭身くらいの背丈しかないのが特徴。また耳がエレイン族のようにとがっているため、比較的簡単に人間の子供と見分ける事が可能。『FINAL FANTASY XIV』に登場する種族「ララフェル」に似ている。
ライブラ
異世界に伝わるお伽噺で、「万象を見通す神の目」として扱われている魔法。実在しない伝説の魔法とされていたが、佐々木正吾が異世界に渡った際に身につけた。TVゲーム「FINAL FANTASY」シリーズに登場する魔法でもある。「FINAL FANTASY」シリーズでは対象の能力や弱点を見抜く能力だったが、異世界では対象としたアイテムを識別する能力へと変化している。アイテムを見ると、そこからウィンドウがポップアップされ、アイテムに関する詳細な情報を見抜く事ができ、加工品などの場合は原材料なども表示される。また正吾は能力を検証していくうちに、さらに集中して識別する事で、アイテムの効果や状態、「アイテム組み合わせ」の情報も表示される事に気づく。
クレジット
- 原作
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水瀬 葉月
書誌情報
FINAL FANTASY LOST STRANGER 12巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックス〉
第9巻
(2022-07-12発行、 978-4757580251)
第10巻
(2023-03-10発行、 978-4757584662)
第11巻
(2024-01-12発行、 978-4757590021)
第12巻
(2024-11-12発行、 978-4757595101)